女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#1(6)-8

JJの凄まじい戦闘能力によって、まず1体目のドドブランゴは瀕死に陥った。
止めを刺すには至らなかったのものの、ペイントボールをしている事から、追跡は容易。
このまま一体ずつ殲滅していければ上々、と考えた俺達は二人は、補給も兼ねてエリア中央へと戻る。

ここは各エリアの中継地点のため、ここをドドブランゴを通過する(していた)確率はかなり高い。
どこに逃げようと、即座に補足できるはず…そう思っていたのだ。

だが、エリア中央に着いた時、俺たちの思惑とは反対の展開に、お互い顔をしかめざるを得なかった。

「…やられたな」
「…ああ」

確かに、ドドブランゴはここを通過していた。
点々と続くペイントボールの痕跡があったからだ。
だがそれは、広場の途中で忽然と消え失せていた。

ドドブランゴには、グルーミング(毛づくろい)という習性がある。
それで、ペイントボールの付いた箇所の毛をまるごと引き毟っていたのだ。

山から吹き下ろす風が谷を通る度、ヒョオオオと悲しげに吼える。

「くそが…。 また最初からやり直しかよ!」

俺は思わず、そう毒付く。
奴はこの一帯の山々のどこかに、忽然と姿を隠してしまった。
せっかく瀕死にまで追いこんだのに、むざむざ休息を許してしまったんじゃ、一からやり直しだ。
あと何頭いるかも分からないのに、このままじゃ、持久戦に持ち込まれて本当に負けちまう。
JJもそれを悟ったらしく、珍しく端正な顔に渋面を浮かべている。

「おい、弾薬をくれないか」
「…弾薬? 何のだよ」

俺はアイテムボックスじゃねぇぞ、と一瞬思ったが、さっきの戦いぶりから、戦闘能力としてはJJの方が上であると認めざるを得ない。
持久戦覚悟の今、予備に持ってきた弾丸は、俺が持つよりJJが持っていた方が効率的だろう。

「貫通弾Lv1。 あと、ランポスの牙とカラの実もあるだけ全てだ」
「!? …お前、さっき使ってた弾丸は、貫通弾だったのか!?」
「ああ」

JJは、エリア片隅に作った資材保管用のカマクラから、俺の持っていた資材をありったけ受け取る。

「(まさか、実戦で貫通弾を使っているなんて…)」

通常弾で展開していたかに思えたあの弾幕は、貫通弾でのものだったのか。
それなら、非力なボーンシューターで、G級ドドブランゴを急に押し返せたのも納得が行く。

貫通弾は、「A GUNNER」を初めとする、古い世代のガンナーたちが好んで愛用した弾丸だ。

回転する銃弾が貫通性能を持ち、敵の脳天(口腔)、延髄(咽頭)、脊髄(胸郭)を貫く事で高火力を叩き出し、その威力は最大で通常弾の3倍近くに達すると言われている。
だが、貫通弾が真価を発揮するためには、相手の正中線を撃ち抜ける場所…つまり、敵の真正面に位置しなくてはならない。

老山龍や仙高人(シェンガオレン)ような、巨大で動きの鈍い相手には推奨されているが、敵の正面に立つという危険性から、実戦で使いこなせるのは上級者に限られている。

「(それを、あれだけ撃ち込めるなんて…)」

相手は、小型で、かつ俊敏なドドブランゴなんだぞ…。

「おい、次は二手に分かれるぞ!」
「え、え?」
「相手は弱ってる! 奴を探し出して仕止めるなら、二手に分かれた方が確実だ!」
「あ、ああ、そうだな…」

なりゆきではあったが、一度分業を許可した手前、二人での共同捜索なんて、とても口には出せなかった。
おそらくは、弱ってるのを見つけたら、1対1になろうとも、即座に仕止めにかからないといけないだろう。
もちろん、真新しい個体を見つけた場合は話は別だろうが、それまでは危険な単独行動を余儀なくされる。

…でも、着いてきてほしいとは、間違っても言えない。
言えるはずがない。

JJと俺はジャンケンでルートを決め、JJは今まで戦っていた東側のエリア2、3の再捜索、俺は西側の4、5の捜索を行う事になった。

「くそぉ…」

JJが銃弾を補充してさっさと居なくなってしまうと、俺は身も蓋もなく、しゃがみ歩きをしながら壁を伝い、慎重にエリア4へと進入した。
親兄弟が見れば確実に泣くレベルの格好悪さだが、この際、体裁など気にしてはいられない。
問題は、どうやってクエストを達成し、無事にこの山から降りられるか…なのだ。

「…何体居るんだよ、ちきしょうめ」

千里眼の薬でも持ってきておけば良かった。
ペイントした所でどうせ剥がされるだろうが、無いよりマシってもんだ。

いずれにせよ、知らない内に複数から挟撃されるのが、考えられる最悪のパターン。
万一囲まれた場合、脱出するには、閃光玉で相手を拘束するしかない。
ポーチ内の閃光玉を、俺はお守り代わりに撫でると、入り口よりエリア4全体を見回す。

…敵はいない。 

轟、という吹雪の音だけが辺りを埋め尽くしている。
俺は挟撃を受けないよう、背後と壁面に時々目をやりながら、エリア4の中央部にまで進んで、素早く全体を見回す。
ここは今、完全に不在のようだ。
退路の方向にもう一度目をやってから、再度エリアを確認するが、特に異常は見受けられない。
壁面にも何もいない。

エリア4には、そのままエリア5に繋がる小道があると地図に記載してあったが、俺は安全性を最大限に重視して、そこを通らない事にし、一度エリア中央に戻ってから、反対側の小道からエリア5に進入した。
未だJJから信号がなく、エリア4に敵が居ないのであれば、こっちに敵がいる可能性は比較的高い。

「…え?」

…ところが俺の想像に反し、こちらにも、何も居る様子がない。
エリア4に比べると、山を隔てている分、やや風は穏やかで、視界も比較的良好だ。

という事は、西エリアは無人、JJの居る東エリアに2頭とも居る、という事だろうか。 …それはそれで困る。 

JJの技量なら、二頭同時くらいなら、なんとかなるかもしれない。
ただ、この雪山に何頭居るかは、まだ分かっていないのだ。
もしも複数…三頭以上を同時に相手取る事になれば、あのパフォーマンスが維持できるかは甚だ疑問だ。
奴が倒されたら、俺の身までもが危険になる。
とりあえず、急いでこのエリア5の探索を終えよう。

「…おお」

だが、しばらく進んだ所で、俺は珍しい物を見つけた。
それは、崖の窪んだ所に設営された、今は残骸と化したベースキャンプだった。
この雪山山頂に上るには、洞窟と崖の2ルートがあるのだが、エリア5はその崖(正確には山道)と繋がっている。

山道を通った先人たちが、ここにキャンプを作ってビバークする事で、この雪山を開拓していったんだろうな。
このクエストに先に挑んだ例のハンターも、もしかしたらここを利用していたかもしれない。

何か残した資材でもなかろうかと、貧乏根性を出してそっと近づいていくと、その臆病さが幸いしてか、俺の方が先に気づいた。
…ベースキャンプの残骸周辺から、ゴオォォ…。グォォ…。 といびきのような音がするのだ。

まさか、あのドドブランゴか!?
だが、周囲に俺が聞き耳を立てると、ちょっと信じがたい事だったが、どうもそのいびきは、その残骸のさらに奥、岩壁の中から聞こえてくる。
一体どういう事かと、ほふく前進でゆっくりと近づくと、ベースキャンプの骨支柱に隠れていて分かりにくかったが、奥の岸壁に大きな亀裂があった。 

…そうか、多分、中に空洞があるんだな。

亀裂の入り口から、顔だけ出して中を覗く。
最初こそ真っ暗闇で何も分からなかったが、目が慣れるにつれ、徐々に全体像が浮かび上がってきた。

「…!」

俺は思わず息を飲む。
中は直径10m程度の空洞になっていたが、そこにドドブランゴが、いびきをかいて寝ていたのだ。

だが、それはさっきまで交戦していた個体じゃない。
なぜなら、先ほどのものより随分体躯が小さいし、左目周辺に傷がない。 
何より、こちらに腹を見せて寝ているが、その腹…いや乳房に、沢山のドドブランゴの子供たちが群がっていたからだ。

「(…授乳中…? そうか、これは…!)」

やっと、分かった。

敵が何体居るか悩まされたが、ついに判明した。
このクエスト、ドドブランゴは2頭だけだ。
ほぼ間違いなく、さっきの個体とこの個体だけで確定。
村人の複数報告は、大きめのブランゴを見間違えたものだろう。

…何故なら、このクエストのタイトルはおそらく「雪山の大家族」だからだ。

ドドブランゴは、元々単独行動を好むが、繁殖から子供の独立までの期間は、家族あるいはコロニー(群れ)を作って生活する。
そのライフステージに応じて、ギルドはクエストを設定しているのだが、それが

(1)繁殖地確保のため、他の雄を追い払う:「雪獅子、二重の咆哮(集会所上位)」
(2)つがいによる繁殖~養育:「雪山の大家族」
(3)幼体~青年が狩りを覚える:「ドドドドブランゴ!(村上位)」
(4)青年~成獣となった個体の独立:「集いし白獅子(集会所上位)」
(5)成熟~壮年まで:「雪山の主、ドドブランゴ(集会所G級)」

こんな感じだ。
そして、俺たちが今請け負っている密猟クエスト(2)「雪山の大家族」は、ドンドルマの街の勃興期、ギルドで正式に交付されていたが、今は廃止されたクエストの一つだ。
というのも、このクエストにおいては、親が子供たちを守ろうとして凶暴化するため、上位ではあったが、実際はG級相当の高難易度クエストとして認識されていた。

だが、何とも皮肉な事に、それ故に力自慢のハンター達が押し掛けることになり、一時期ドドブランゴの数が激減したのだ。
当然のように、この状況をギルドは憂慮した。
特にギルドが最も阻止したかった事が、ハンター達が子供…ドドブランゴの幼体を殺す事だった。

しばらく待てば、幼体は成熟し、素材として狩る事ができるようになる。
しかし子供のうちに殺してしまえば価値もなく、何より個体数の自然増を著しく鈍らせるのだ。
素材の高騰化などで、一時期市場が荒れ、財界から叱責されたギルドはハンターに、子供たちを殺す事を禁じた。

だが、ギルドは現場の空気を読み間違っていた。
元々ハンター達全員が、子供までもを殺している訳ではなかったのだ。
ただ、両親を奪われた子供が、酷寒の世界でそのまま生き延びられるはずもなく、そのまま餓死あるいは凍死していたのだった。

この安易な措置を指摘したハンター達の意見もあり、ギルドは正式に「雪山の大家族」のクエストを廃止、繁殖に入っているつがいと子供達の殺傷を禁じた。
そう制定されてから、結構な期間が過ぎている。
今では、この事実を知らぬハンターも多かろう。

つまり、この個体が母親で、交戦していたのが父親か。
母個体の周辺に「なぞの骨」が散らばっているが、さっきのドスギアノスだろう。

一心不乱に、ドドブランゴの乳首にすいつく子供たち。
1、2、3、4、5、6体か…。
その子供達は、組体操のように折り重なりながら、むにゃむにゃと眠りつつも乳首をくわえて離さないもの、一つの乳首を押しあいへし合いしながら交互に飲み続ける兄弟、満腹してときおり前足で顔をかいて、のんびり寝ている奴もいた。 

純粋な狩人の中には、猿を狩るのが苦手、という者が結構いる。
人間に表情が似てるから、まるで殺人のように思えて、という理由で。

しばらく、つぶさにその表情を眺めていたが、なるほどこうして見れば、人間の子供…特に赤ん坊に似ているといえなくもない。

「…起こさないように、静かに退散しなくちゃな」

俺は忍び足で、エリア5を抜け、中央エリアまで戻る。
JJの奴は戻ってきてはいないし、信号弾も未だない。
まぁ、それは良い。 この状況、奴なら問題ないだろう。
それよりも先にやることがある。

俺は散弾Lv1を補充し、大タル爆弾Gを調合した。
威力を増すために、そこらへんで拾った石ころも火薬の中に混ぜた。
睡眠時や気を抜いている時に不意打ちを食らうと、そのダメージは3倍にもなると言われている。

俺は再度忍び足で、だが急いでエリア5へと戻った。

「…よし、まだ寝てるな」

母子のドドブランゴは何も知らず、のん気に眠っている。
起きられると、このせっかくのダメージチャンスが無駄になるからな。

俺はありったけの爆弾を、こっそりねぐらの周囲に置いた。
ギルドでは、危険すぎるという理由で、爆弾を過剰に置く事は禁止されている。 
が、知ったこっちゃない。
子供を殺す事も固く禁じられているが、そもそも、ここに行動を監視するギルドの気球はいねぇからな。

「…母親と一緒に逝けるだけ、まだマシだろ」

俺はそう言うと、時限式の小タル爆弾を傍に置く。
そして、その場から離れた俺が顎の下に鉤状の指を添えると同時に、十数個の大タル爆弾Gが、轟音と共に大爆発を起こした。

爆発の白煙が上がると共に、俺はすかさずねぐらに駆け寄り、散弾を今まで連中が寝ていた場所めがけて乱射した。
「金華朧銀の対弩」の散弾Lv1は、速射になっているのだ。

「ギョウォオオアァァァッァァアアアーーーーーッッッ!!!」
「ッギョアアァァアーー…!!」

白煙に隠れて正確な場所こそ分からなかったが、銃爪を弾く度に、聞いたこともない異常な悲鳴があがる。
それは俺の弾丸が上手く命中している証拠であり、作戦が成功した合図でもある。

「ヒィ…ギャアアァァアアアーーッッ!!」

重ねて響くその悲鳴に俺は高揚し、さらに連続で引金を引いた。 さすがに全員死んだだろ。

これで、クエスト達成への大きな前進となる。
あいつにも…。 JJに負い目を感じずにすむ。

どうだ、JJ…。
俺だって、大型モンスターを、一人で倒せるんだぞ…。
これが、「狩人」って奴なんだ…。

轟々と響く風の唸りの中、俺は悲鳴が絶えるまで、執拗なほど延々と銃撃を続けた。


<続く>

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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