女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#1(6)-6


「…にしても、何か嬉しいな。 弓ってマイナーって思われてるか知らんけど、あまり使う人居ないからな」
「いえ、そんな人居ないですよ、弓は熟練者の武器だと思います。 ビアンカさんも、技の修得には苦労されたんでしょう?」
「おお、ごっつ苦労したでー。 今度ゆっくり聴かせたるわ」
「わ、楽しみですー♪ 是非教えて下さいね!」

いい感じ…。
これなら、ビアンカから何か聞き出すのも、そんな難しくないかもしれない…。

シャルルは、そう思いつつビアンカの指導を待つ。
力の掛け具合を手ずから教えるために、ビアンカは背中に近づいていると思っていた。
だが、その背に唐突に感じたものは、戦場で生きてきたシャルルにとって、あまりにも馴染み深い感情だった。

「(…え、何これ…?)」

強烈な違和感。
何故、この感覚を、この場で覚える…?

…まさか!?


シャルルがその場、その背で感じたものは「殺気」だった。

「ふっ!」

シャルルが振り向こうとしたその刹那、ガシィという音と共に、ビアンカの手刀がシャルルの後頭部に炸裂する。


「…その『今度』は、永遠に来えへんけどな」

薄く笑うビアンカ。
そしてシャルルは、糸が切れた人形のように、そのままゆっくり崩れ落ちていく。

「堪忍な、姉ちゃん…。 何でかは知らんけど、ウチを嗅ぎ回ってたのは頂けんからな」

そして、そのままシャルルは、ビアンカの足下に倒れ伏した。
ため息を付きつつ、ビアンカはさっきまで、二人で囲んでいた食卓を見る。 
まだ、互いのグラスにワインは少しばかり残っていた。

「悪い人やなかったみたいなんやけどな…」

そう呟きつつ、落ちていた弓を回収する。

「もう逢う事はないやろ。 さいなら」

そうして、ビアンカは部屋を出ようとしたが…。


「待って」

いきなり、床に伏せていたシャルルから、右足首を捕まれた。
状況を判別するより早く、残った左足でシャルルの頭を蹴り飛ばそうとしたが、既にシャルルは後頭部を押さえつつ起きあがっていた。

「痛っ…!」

「嘘…! ウチの手刀で気絶せぇへんて、アンタ何者や!?」

それはシャルル自身が聞きたい台詞だった。
殺気を感じた瞬間、わずかに首を竦めて急所を外しにかかると同時に、「練気」で全身を硬化し防御したが、その防御を軽々と破る一撃を加えてきた。

今も、「練気」…、気を練っている感覚はない。
なのにあの手刀には、十分に気が乗っていた。
おそらく、微かな全身の気を、一瞬だけ手刀に集めたのだ。
そうでなければ、自分の防御は破れない。

もう間違いない。 このビアンカという弓師は、通常のG級ハンターよりも遙かに高いレベルで「練気」をコントロールできている。 
自分の直感に、間違いはなかった…!

「…待って! 別に、私は貴女を嗅ぎ回ってるつもりなんて… ぐっ…!」

後頭部に走る激痛に、言葉が思わず途切れ、目の前がチカチカとしばたたいた。

だが、シャルルがそんな隙を見せているというのに、ビアンカは突っ立ったまま、攻撃する様子もなく話掛けてくる。

「なぁ、姉ちゃん、一つだけ教えてくれん?」
「…何?」
「ウチな、できるだけ自然に行動してたつもりやってん。 …けど、何かおかしな事でもしたかな? 最初から、こない目を付けられるとか、思ってもみいひんかったわ」
「…何で、私が貴女に注目してる、って分かったの?」

多少先走りし過ぎた所は確かにあった。
でも、「え、この人、何で私にこんなベタベタしてんの? ちょっとキモくなーい?」程度で済むレベルだったはず。 多分。
不意打ちを受けて逃げ出されるほど、怪しい事をした覚えはなかったのだが…。

「だって、あの3人組、攻撃もせんでウチをガン見してたで? あれ、アンタの差し金やろ? どんなアホでも、監視されてるって分かるわ」

…あのバカッ! パフェ奢り損だったじゃないのー、もぉ!

「それで、何でウチに着目したん? 何を以て怪しい、って思ったん?」

答える必要は無かったのだが、このビアンカという女性は、こんな状況にも関わらず、さっきの自分の質問に素直に答えてくれた。
なんとなく、義理を欠かす訳にはいかないと思ったシャルルは、真面目に返事する。

「勘よ…。 私も、それなりの経験があるから分かるけど、その体の鍛え方、気配の遮断、『練気』のコントロール」…全ての要素が、尋常じゃなかったもの」

その返答を聞くと、ビアンカは軽く驚いた表情をする。

「はぁ、これはこれは…。 気も抑えてたのに、バレるとは思わんかったわ…。 なぁ、ギルドの受付嬢って、そんな鍛えてるモンなん? ちょっと、ウチ天狗になり過ぎてたなぁ」
「ねぇ、教えて…。 貴女、何者?」

その質問を受けると、ビアンカは困ったように頭をかく。
だが、そんな無造作な動作にさえ、一切の隙はない。

「ああ、その質問には、ちょっと答えられへんなぁ」
「なら、貴女が何者かは問わないわ…。 でも、お願いがあるの」
「お願い?」
「私に、力を貸して欲しいの」
「そらまた、どういう事やねん」
「貴女、多分恐ろしく強いわよね…?」
「…」
「その強さを見込んで言うわ。 ある戦いに参加してほしいの」
「戦い?」
「そう…。 詳しくは言えないけど、私にとって、大切な戦いが」

ビアンカはこき、と首をならしつつ返答する。

「何や、ようけ事情があるみたいやけど、断らせてもらうわ」

「…!?」
「ウチもな、ちょっと人の使いでお仕事してる最中やから、寄り道できひんねん」
「そこをあえて曲げて欲しいの。 お願いできない? 後で、私も組織と共に、貴女の目的に無条件で協力する事を確約するから、どうか」
「悪いけど、急ぎの仕事なんや。 そのために、ギルドカードが必要やってん」

「なら、貴女の目的に、先に協力させてもらうわ」

シャルルのこの申し出には、ビアンカも目を丸くした。

「アンタも大概、強引やなぁ…」

そして、少し逡巡する様子を見せたが…。

「でも、どっちも断るわ。 お仕置きが、ごっつ怖いもん」
「お仕置き?」
「何でもない、こっちの事やねん。 な、分かったら、通させてくれん? さっき叩いたのは謝るわ。 でも、ウチの攻撃を耐えきれるんやから、そんな大した事ないやろ?」

だが、シャルルは扉の前にスッと移動し、道を塞ぐ。

「…そんな痛かったか、ごめん」
「痛くはないわ」
「じゃあ、そこ通してくれん?」
「…凄く痛いわ。 涙出ちゃうくらい。 だから、どちらか、譲歩してくれない?」

それを聴いて、ビアンカははぁ、と嘆息した。

「…何で、そこまでするん?」
「人の命が掛かってるから」
「アンタにとって大事な人か」
「そう」

私だけじゃなくて、この国全ての人にとって。

「ウチの実力がヘボかったらどうすんねん」
「それはないわ。 貴女は強いと、今はそう間違いなく確信してる」

そう言われたビアンカは、腰に手を当てて、やれやれと言った感じで首を振る。

「…そか。 そこまで見込まれるって、悪くないな、光栄かもしれんな。 正直、ちょっと情が移りそうや」
「だったら…」

一瞬、顔を綻ばせかけたシャルルだったが、ビアンカはカラッと笑って答えた。

「でもごめんな! やる事やったら、またここに来るから、その時また誘ってや!」
「う…。 どうしても、ダメなの? 何をしても?」
「ああ、悪いけどな、何してもダメや。 どうしても今のウチに言うこと聞かせたかったら、実力でねじ伏せるしかあらへんで」

それは、話の流れの中で生じた、いわゆる言葉の綾、というものであった。
彼女は確かに強い。 天狗になっていると自分でも言っていたし、それにそういう自負も、当然あるだろう。
だが、自負と自惚れは、時にその境界を越える事もままある。

「実力でねじ伏せるしかない」…それはまた、このビアンカなる謎の弓師が、自分を過信し過ぎた故に吐いた一言だったのかもしれない。
この機会、軍神が剣たる自分に与えたもうた僥倖かもしれないと、この時シャルルは思った。


「それは…失言じゃないかしら?」
「…ふに? 何が?」
「言うことを聞かせたかったら、実力でねじ伏せろって」

「それが、どうしてん?」
「私にねじ伏せられたら、どうするの?」
「手刀をあっさり喰らったアンタに、それができんの?」
「…その言葉、今になって撤回しても、もう遅いわよ」

シャルルはビアンカに対し半身に構え、両腕を胸の高さに持ち上げる。

…そして、練気。
臍下丹田に込めた気を、呼吸の力で燃やし、全身の経絡に流す。 
炎のように沸き上がる力が、たちまち全身を覆い始めた。

「おい…」

もっと。 もっとだ。
気を全身に流し続けると、猫科動物のようにしなやかな体躯に、漲る力が乗る。
血流と同調した体が、自然とリズムを刻む。 
愛らしい、赤い瞳孔が拡大する。

全身で気を練り、闘争心を全開にし始めたシャルルの姿を見て、ビアンカの表情が強ばった。

「…遠慮なく、力ずくでねじ伏せさせてもらうわ」
「おいおいアンタ、洒落ならんで…。 まだ力隠してたんか…? ホンマ何モンや」


だが、シャルルは唐突に突っかける事なく、気を全身で練る姿を見せつけながら、ビアンカに話かける。

「あなた…ガンナーよね? 近接の人間を相手にして、格闘で勝てると思ってるの?」
「…アンタ、やっぱ普段は狩人してたん? で、武器は何? 片手剣? 双剣?」
「大剣よ」

ぴゅぅ、とビアンカが口笛を鳴らす。
だが、その様子に、シャルルは困惑を隠せない。

そもそも相手は弓師、大剣使いであるこっちが気を練れば、どれほどの訓練を積んできたかは容易に推し量る事ができるはず。

だから、今の「勝てると思ったのか」発言は、相手を威嚇するものではなく、自分の練気を見せつけて「ご、ごめんな! そこまでムキにならんでもええやん…? アンタの言うこと聴くさかい」

と、譲歩を引き出すために一拍置いただけだ。

…そう。 黒龍騎士団団長である自分の本気を見て、腰が引けない人間など、この世には居ない、と思っていたのだが…。

「当てれればな。 当たらんかったら、どうという事もあらへんで」

いくら何でも流石にナメすぎだろと、カチンと来たシャルルは、ちょっとお灸を据える気になった。
なんせビアンカは、腰が引けるどころか、対抗するために練気をする様子すらなかったのだ。

体格はあちらが良いが、室内で武器なしの格闘戦なら、タックルから脚を取り、転がして寝技に持ち込んでKO、というのが鉄板パターン。
そこに体格の差はさほど必要ない。

自分以外にも、この世にまだまだ強者は存在するのだ。
その天狗の鼻を叩き折って、少し見識を広めてもらおう。

「ってか、アンタ滅茶苦茶やる気やけど、ウチは喧嘩する必要ないもん」

だが、その考えを見透かしたかのように、ビアンカはテーブルクロスをさっと引く。
食器やワイングラスが、ガチャンパリンと盛大な音を立てて床の上に砕け落ちる。

「(…!)」

いきなり、タックルを封じられた。

「ごめんな、せっかく料理用意してくれたのに」

というか、練気をしないのは、別にナメてる訳じゃなかった。
この状況で本気を出さないという事は、気を練るシャルルの姿を見て、徹頭徹尾、逃げに徹する気なのだろう。 
速攻を封じると共に、今の音で、誰かが様子を見に来るのを待っているのだ。

…ビアンカから譲歩してくれないかと思っていたが、もう、そうも言ってられない。

こちらから仕掛けるのみ。
純粋に打撃で吹き飛ばすか、体勢を崩し、立ち関節か締め技で落とすしかない。

そう思ったシャルルは、先手必勝とばかりに、右肩でフェイントを入れてから、全力の「右」ストレートを打ち込む。

だが、ビアンカはフェイントには引っかからず、シャルルのストレートを右腕の「外回し受け」で受け、拳を下に落としながら円を描くように肘に手を入れ、そのまま腕を絡めて来た。

「(…ヤバい!!)」

シャルルの全身を悪寒が貫く。
このまま右手を拘束され、肉薄されたら逆に詰む。
右腕を引き抜こうと思ったが、時既に遅く、肘を固定されたのか、力を入れても引き抜けない。
右腕が使用不可能なのを悟ったシャルルは、左足で思い切り床を踏み、右腕を引きながら、相打ち覚悟で、ビアンカのボディをしこたま打つ。

「ぐっ…!」

ドズンというその衝撃で、右腕の拘束が緩み、慌てて腕を引き抜くシャルルだったが、驚くべきは左手に残る感触だった。

…まるで、ドスファンゴの横腹を直接殴りつけたような、あまりにも”分厚い”堅さ。 
ダメージが通ったという感覚はまるでなく、とても人間の腹筋とは思えない。

「あ痛ぁ…。 アンタ、ホントに何者なん?」

そう言ってビアンカは苦笑するが、今のは力の入らない体勢からだったといえ、格闘士相手でも悶絶必至の一撃だったはず。
気を集中させて防御したにせよ、そもそもビアンカは気を練ってすらいないのだ。 それを「あ痛」で済ますとは。
ナメていたのは、自分だったかもしれない…。

「…ま、ええわ。 これで、一発ずつの貸し借りなしやねんな?」

距離を取ったビアンカが、大きく息をつく。
そして、シャルルを不敵に見つめて、上下にリズムを取り出した。
呼吸を整えた彼女の全身から放たれるのは、シャルルにとっても馴染み深いもの。

「(練気…!?)」


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「…我が名は、ユ…  『J・J』!」
「…貴様の牙に噛み砕かれた者達の魂が、俺を此処に導いた!」
「…自らの強さこそが、己の存在の証明であると、その牙と爪に問えるかッ!? もし、そうであるならば…」
「…父と、子と、精霊の名に掛けて…」
「…貴様の血と魂に、一切合財の決着を付けてやる!」

目の前のJJは、ドドブランゴ達の尻めがけて、ボーンシューターの銃口をビシッと構えた。

「…受けきれるか、この炎!」

それは、JJの「正々堂々と戦う」という意思表示だったのかは知らないが、その名乗りを聞いて、当然のようにドドブランゴの一群がこぞってこちらに気づき、振り向く。

おいおい、おめー、ペイントもせずに何やってんだよ!
先制攻撃のチャンスを全く無駄にしちゃったじゃねーかよ!

こいつは不味い、と思った俺は、慌ててクリティカル距離の長い通常弾Lv3を装填し、エリア3に行こうとしている、小さい方のドドブランゴにスコープで狙いを付ける。

さっきの名乗りからして、あいついきなり交戦する気だ。
今まで体験したアイツの反応から察するに「2対2なら1人1体ずつの担当でソロ戦と同じ」という理屈だろう。

冗談じゃねぇ、と思った俺が選んだ方法は、とりあえず、まだこちらに気づいてなさそうな個体への一撃。
リオス種のように、不意打ちに驚いて、とりあえず逃げてしまうモンスターは結構居るが、それができないか試そうとしたのだ。

「あっ…」

だが、俺が通常弾を打ち込む前に、ドスギアノスを口にくわえたドドブランゴは、次の瞬間、恐るべき跳躍力で崖を駆け上り、あっと言う間に姿を消してしまった。

「(しまった、元々エリア移動するんだったら、迷わずにペイント弾撃っとけばよかった…!)」

俺がそんな益体のない一人相撲を取っている最中、JJはボーンシューターを構えて悠然と待つ。
それと同様、相手の巨大ドドブランゴは、配下の3体のブランゴを従えて、俺たちを恐れるでもなく悠然と、吹雪の帷をかき分けて、こちらに歩み寄ってきた。

「(でけぇ…。 それに、何だこの威圧感)」

遠目に見てもデカイとは感じていたが、近くで見ればさらに大きく、ちょっとした小山のようにすら感じた。
全長は7m余、全高は6mほど…。
通常のドドブランゴの1.5倍はあろうか。
分厚く、デカい。 そして、この威圧感…。
雪獅子の牙すらが、ちょっとした太刀になりそうなほどに鈍く輝いている。

こいつは間違いなくG級クラス、それも金冠サイズだ。
…しかし、G級個体は、子育てを終え、老成して群(コロニー)から外れた単体雄が殆どだ。
なのに、なぜそんなのが群れている?

その、金冠ドドブランゴは、ある程度の距離まで来ると、俺たち二人をそれぞれ見定め…。

「フォゴッ!」
「ホフゥッッ!」

敵だと認めたのだろう、白い息を漏らすと、いきなり威嚇の声を挙げてきた。

「ボウォォォォォォォーーーーッッ!!」

それは一個の生命として、一匹の雄として、相手を萎縮し怯ませるための、野生の咆哮。
そのあまりの音圧で、振りしきる周囲の雪すらが軌線を変える。

「ガオゥッ!」

野生の咆哮は、部下への攻撃開始の合図。
咆哮を皮切りにして、配下のブランゴ達が、弾け飛ぶ鞠玉のように俺たちに次々と襲いかかって来た。

「うおおっ!」

二匹のブランゴが、時間差で俺に猛烈なタックルを敢行して、後からのを食らってしまった。
鎧を着ているから、ダメージはなんて事はないが、問題はそこではなかった。

尻餅を付きかけた俺に、離れた場所に居たドドブランゴが、ぐるんと右腕を回すのが見えた。

「(…ヤベェッ!)」

回避が遅れかけた俺は、全力で右に転がって避けようとする。

刹那、俺のすぐそばを、巨大な圧力を持った質量が、もの凄い勢いで通り過ぎていった。
ドドブランゴの、体ごとぶつかってくるラリアットだ。
だが、俺には大砲の砲弾にも思えた。
当たれば間違いなく、首から上がすっ飛んでいっただろう。
背を流れる冷汗は、それが間違いない事を直感として認識させた。

「ぜえッ!」

俺とJJは、ラリアット直後、雪面で制動をかけているドドブランゴに、背面から揃って銃撃を浴びせる。
だが、俺の火炎弾がドドブランゴの肉を焼いた様子はないし、JJの弾が痛手を与えた様子もない。

それもそのはず。
昔、近接ででも(下位と)戦ったことがあるから分かるが、ドドブランゴは甲殻がないから柔らかい、なんて事はない。

奴らの針のような体毛、それが幾重にも折り重なる毛皮の堅牢さは、簡単な作りのスケールメイルよりも上であるし、なにより野生ゆえに鍛え込まれた筋肉の強靱さと、それをこの極寒から守る皮下脂肪、それらが合わさって鋼の硬度を作り上げているのだ。
むろん、鋼の硬度というのは比喩であり、文字通り弾丸が弾かれるとかいう訳ではない。
だが、あの巨大な個体の筋肉の鎧を貫き、内臓に届く致命傷を負わせられるかというと、それは少々疑わしく感じる。
G級になると、その耐久力と生命力が違いすぎ、まるで別の生物のようにすら感じるのだ。
そう、あの「悪王」こと、バッドキングが、同じ人間でありながら、全くそうは思えないように…。

「(…マズい、こいつは、持久戦になる)」

戦闘の最中、俺はそう感じ始めていた。

「ボホゥフゥッーー!」

ドドブランゴが、足下の雪面をひっくり返して、辺り一面にデカい氷塊をまき散らす。
人の頭ほどもあるその塊を、ドドブランゴの腕力でぶつけられれば大怪我必死だが、元々距離を取っている俺たちには届かない。

幸いにして、ドドブランゴは飛竜種のブレスのような遠距離攻撃を持っていないのだ。
俺とJJ、どっちにターゲットされるかさえ、落ち着いて把握しておけば、おいそれと攻撃を喰らう理屈はない、が…。

俺のボウガン「金華朧銀の対弩」が火炎弾を吐き、ドドブランゴの胴体や肩口で盛大な火花を上げるが、ダメージを通している感覚が全くない。
相手が、全く怯まないのだ。
JJも、ノールック射撃で、雑魚ブランゴを排除しつつドドブランゴに通常弾を撃ち込んでいるが、それとて効いている様子がない。

「(そりゃ、そうだよな…。 何を期待してたんだ、俺は…)」

JJの戦いぶりは安定しているが、その豆鉄砲ぶりを見て、失望感が俺の胸を埋める。
あの酒場で感じた、「A GUNNER」とのデジャブ(既視感)は、俺の錯覚に過ぎなかった。
ボーンシューターでは、どう考えても破壊力が足りない。

ヘヴィボウガンの売りはその攻撃力だが、ギルドで数値化されている「ボーンシューター」の基礎攻撃力は156。
俺の持つライトボウガン「金華朧銀の対弩」は攻撃力336で、俺の半分程度なのだ。

そして、それを覆す結果は、当然の事ながら出てこない。
そうだ、これは現実なんだ。 
夢物語「銃の英雄」のように、技量が銃の性能を超えるなんて事はないんだ。

そう思うと同時に、俺の心のどこかが、急速に冷めてくる。
…JJと二人、ここに居続けるのは危険だ。
幸い、奴の戦いぶりそのものは安定している。
なんとか、今のうちにこのドドブランゴ達を無事に倒しきって、村に戻らないと…。

だが、よろしくない出来事はもう一つあった。

「ボウォォォォォォォーーーーッッ!!」

ドドブランゴの咆哮。

「ウキョァッ!」「ゴファッ!」「ガオウッ!」

「ち、畜生…!!」

リーダーの召喚に応じ、壁面を駆けおりてきたり、雪をかき分けてブランゴが次々と姿を表し、俺たちを睨み付けてくる。
さっきから、このドドブランゴは、次々と配下のブランゴを呼んで、距離を取る俺たちの足を止めようとしているのだ。

「(弾丸が…!)」

少なくとも、ドドブランゴはもう1体居る。
あと何体居るかも分からないのに、こんなに雑魚に無駄弾を撃って良いものか…という焦燥が、徐々に胸の内を這い上ってきたその時。

「何やってる、お前!」

JJの言葉に、ハッとする俺。 
だが、次の瞬間、俺の胸元と顔に、氷混じりの雪玉がぶつけられた。

「うぶっ…!」

距離を取ってると思って、完璧に油断していた。
戦いに興奮したブランゴが、足下の雪を掬って投げてきたのだ。
まさかの雑魚からの遠距離攻撃。

「ゴアアアッ!」

それを見咎めたドドブランゴが、俺の方に駆け寄ってくる。 
俺は必死に回避しようとしたが、顔にぶつけられた雪で遠近感が掴めなくて、回避したつもりが、まだドドブランゴからは距離があった。

「…!!」

ドドブランゴが、突進を軌道修正し、俺の方に向かってくる。
その姿が、山のようにぐんぐんと大きくなってくる。
絶望が、俺の心中を支配した。

俺は、全力で壁にぶつかった時のような、あるいは高所から転落して受身を取り損ねた時のような、体ごと弾かれる強烈なタックルを受け…。
そのまま自分が意識を失い、暗闇の中に落ちていくのをどこかで実感していた。


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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