女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#1(6)-5

まず最初の目的は、村を襲ったドドブランゴを、協力して探し出す事。
その目的こそ一致していたものの、同時に提案した、お互いの手段は決定的に違っていた。

「じゃあ、二人で一緒に行動するか」俺。
「例のドドブランゴだが、分かれて捜索しよう」JJ。

…ちょっと、待てよ。
何言ってんだお前、村での話聞いてなかったのか?

「聞いていたとも。 標的の目撃例は、ほぼ1体だっただろう? 単独で行動しがちなのだから、二人で探せば、効率が良い」

そう言って、JJは三角型の小型信号弾を投げてよこす。
思わず受け取ったそれは、緑色の煙を中空に浮かせる花火で、離れた狩人同士が何か合図したい時に使う奴だ。

「あのな、村に降りてきたのは1体だっただろうが、ここにはおそらく2頭以上が居るんだぞ? 挟撃されたら危険だし、個別に殲滅していくのにも、二人掛かりの方が良いに決まってる」

それを聞くと、JJは俺を正面から見据えて言った。

「…僕には時間がないんだ。 二人で同じエリアを捜索だとか、そんな悠長な方法は採用したくない。 それに、相手は上位だろう? ニ体同時でも十分凌げるはずだが?」

痛い所付いてきやがる。
G級ハンターのくせに、上位二頭にビビっているのかと、暗にそう言っている。
だが、それはギルドアイルーが居てくれた時の話だ。

「捜索より、戦闘の方に時間が掛かるだろうが! ここは堅実に行こう。 それに、上位二頭って決まった訳じゃないんだ」

正直、上位二頭でも単独で相対する場合は相当に危険だ。 ブランゴを呼ばれでもしたら、確実に乱戦になる。
しかも、上位二頭というのは、ギルドのクエストを基準にした、最も確率の高い想定に過ぎない。
読みが外れてG級の個体が混じったり、数が二頭以上という状態に陥ったら、危険度は飛躍的に増す。
ドドブランゴの生態を調査し、クエスト名を特定するまでは、二人で行動すべきだと改めて主張した。

「…なら、今回はお前の主張を飲もう。 そこまでする必要はないと思うがな」
「あのな、少なくとも俺の方が狩人としての経験は長いんだ。 その俺が言ってるんだから、素直に聞いてろよ」

お互いぶつくさ言いながら、歩を合わせて行動を開始する。
この雪山の山頂は、地図によれば5つのエリアに分かれており、今俺たちが居るのが、中央部のエリア1だ。
そこから東側にエリア2と3、西側にエリア4と5。
エリア2と3には繋がった小道があり、それは4と5も同様であり、エリア5は麓から登る崖道と繋がっている。
ルート的にざっくり言えば、∞の形をしていると言えば良いか。
まぁ確かに、東と西に分かれて捜索すればてっとり早いのは間違いない。

「とりあえず、東側のルートから探すか」
「エリア2からだな」

初っぱなから意見が割れた俺とJJ。
だが、このクエストにおけるルート捜索については、尋常ならない物だと直感し、用心していた俺の方が、やはり正しかった。



「…うぉ!」
「!!」

エリア2は、片面が山肌の影、片面が崖となってはいるが、わりと開けた平地のフィールドだ。
だが、エリアの奥で目撃した光景に、あやうく声を上げてしまいそうになった。

「ギョァ! ギョア! グゥ…!」
「ガフ、グゥ、グルルァァア!」

そこで展開されていたのは、狩りの光景だった。
と言っても、俺たちハンターのではなく、モンスター同士の。

雪獅子ドドブランゴの群れが、食餌と見定めたドスギアノスを、取り囲んで狩っていたのだ。

…いや、群れというのは(俺のビビりから来る)言い過ぎで、よく見て判別すれば、成体のドドブランゴが2体、その周りを(気持ち大きめの)ブランゴが3体ほど取り囲んでいる。
成体2体は、デカいのと普通サイズのが居て、ブランゴと合わせると、大・中・小の猿と言った感じだが、主にその巨大な方のドドブランゴが、ギアノスの親玉である「ドスギアノス」と格闘中だった。
と言っても、ドドブランゴとドスギアノスという組み合わせがまともな対決になるはずもなく、あっという間にドスギアノスは首根っこに噛みつかれ振り回され、氷盤と化した雪面に頭から叩きつけられた。

「キュゥウゥゥ…」

獲物の首が変な方向に曲がり、動かなくなったのを確認した巨大なドドブランゴは、僅かに痙攣するばかりのそれを、普通サイズのドドブランゴに放り渡す。
それを噛みくわえた普通サイズのドドブランゴは、俺らの居る場所とは反対の、エリア3へ繋がる小道へと単身向かおうとしていた。 

…ここまでを確認して、俺はほっと嘆息する。

運が良かった。 
連中は自分たちの狩りに熱中してて、こちらには気づいていない。
もし直接ハチ合わせしてたら、ごった返しの乱戦になっただろう。 
ホント、そうならなくて良かった。

「(やはり、2頭以上だったか…。 やはり、前任のハンターは、これでやられたんだな)」

「(だが、いきなり最初のエリアで、成体が2頭も見つかったという事は、他にももっと居る、という事か…?)」

そんな恐怖に怯えた思考がチラリと脳裏をかすめるが、先に相手を捕捉しえたこのアドバンテージを逃すまいと、ペイント弾を用意した。
まずあの二体にペイントして動向を把握しつつ一時待避、ニ体が分離したのを見計らって、各個撃破で叩くべし。

「おいJJ、お前もあのデカイのペイントしろよ」…そう伝えようとして、JJの方を向いた。

…が、奴は俺の横には居なかった。

「え?」

って、ちょっと、お前?

そのJJは、既に抜銃しながら、俺を見捨てて雪をサクサクと踏み散らしつつ、連中に近づいてってた。

いや、ちょっと、それ、相手の視界に入る…。

そして叫んだ。

「…この雪山を統べる白獅子よ!」
「…猛き牙持つ野生の王よ!」

…はぁ!?

「…我が名は、ユ…  『J・J』!」
「…貴様の牙に噛み砕かれた者達の魂が、俺を此処に導いた!」
「…自らの強さこそが、己の存在の証明であると、その牙と爪に問えるかッ!? もし、そうであるならば…」
「…父と、子と、精霊の名に掛けて…」
「…貴様の血と魂に、一切合財の決着を付けてやる!」

目の前のJJは、ドドブランゴ達の尻めがけて、ボーンシューターの銃口をビシッと構えた。

「…受けきれるか、この炎!」

…コイツ、何言ってんの? 
相手は貴族じゃないぞ、猿だぞ。 モンスターだぞ。

先にJJが吐いた文句は、俺も聞き覚えがある。
確か「サウザンドなんちゃら」とかいう、貴族同士が一体一の決闘をする事になった時の名乗りだ。

これは相手の事を、自分と互角の相手と認め、そしてそれを否定するために、持てる全身全霊を込めて戦うという意味も含んでいる。
正当な貴族なら、相手の家柄の否定。 
騎士出身の貴族なら、相手の流儀(剣法)の否定。 
僧侶出身の貴族なら、宗派の否定…。

それは、死を以て決着する、尋常ならざる決闘の宣誓。

ちなみに、何故俺がこんな事を知っているのかというと、訓練生時代に、同僚の貴族のボンボンを怒らせて、これをやられた事があるのだ。 
ただ、俺は当時、この後に続く「我を天照らす銀の日輪とするならば、貴様は地を駆く金の月輪…」という対句を知らなかったので、決闘がそもそも成立せず、おかげで命拾いした。

…ってか、そういう事じゃねぇェェエエェェエ!!
おまっ、何言ってんだこのバカァァァッッ!!

それは、JJの「正々堂々と戦う」という意思表示だったのかは知らないが、その名乗りを聞いて、当然のようにドドブランゴの一群がこぞってこちらに気づき、振り向く。

先制攻撃のチャンスを全く無駄にしちゃったじゃねーかよ!


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「…何なん、これ?」
「お帰り、ビアンカさん! 『異常震域』突破おめでとう!」
「あ、ああ…。 おおきに」

「雲竜の宴」亭の二階、個室にはちょっとした宴席が設けられていた。
二人分の肉料理とパスタにサラダ、そしてワイン…。

クエスト「異常震域」を突破した後、ギルドカードを交付してもらうため、肖像画を描いてもらったビアンカ。
だが、亭につくなり他の給仕嬢に二階に連れてこられ、扉を開けて最初に見た光景が、これだった。

「で、改めて聞くけど、何なん、これ?」
「え、もちろん、貴女のギルドカード交付記念よ! 私の思ってたとおり、凄いハンターだったのね! おめでとう!」
「あ、うん、おおきに。 ほんで、ギルドカードはどないすん?」
「うん、今からその説明するから、さぁ席に着いて!」

そう言って、シャルルはビアンカの席を引き、背中を押して座らせる。
ビアンカは、鉄板の上でジュゥジュゥと今も良い音を立てる分厚いステーキを見ながら、ボソリと呟いた。

「…この国では、たかがハンター登録で、わざわざこんな事してくれんの?」
「もちろん全員じゃないわよ? でも、貴女みたいな、ギルドに貢献してくれそうなハンターには、こうやって期待してる、って伝える訳」
「はは、なるほどな」

「これは私の奢り。 さぁ、食べましょう!」

シャルルはそう言って、席に座る。

「あの、先にギルドカードの事を聞きたいねんけど」
「あ、じゃあ手早く説明するわね? 食事が冷めちゃうから」

シャルルは、ビアンカから肖像画をもらうと、代わりに一枚の羊皮紙を渡す。

「これは?」
「とりあえず、貴女がギルド所属のハンターとして認められた、仮ギルドカード。 肖像画入りのを後に再交付するから、引替時に必要になるわ」

ビアンカは、その安っぽいギルドカードを、しげしげと見ながら言う。

「これは、なんか制限とかついてんの? 下位限定とか、有効期間1ヶ月とか…。 あと、肖像画入りの本物は、ここでないと交付できんの?」
「制限解除にサインしてるから、上位クエストまでなら自由に受けられるわ。 有効期間は3ヶ月、肖像画入りギルドカードの正式交付は、どこの出張所でも有効よ」
「おっ、それは助かるわー! おおきにな、姉ちゃん!」
「どういたしまして。 じゃあ、食べましょうか」
「あ、ワイン注ぐで」

ビアンカは、テーブルからひょいとワインボトルを奪い取り、シャルルのグラスに注ぐ。
シャルルもビアンカのグラスに返杯し、二人は食事前の一礼をした。

「じゃあ、頂きます」
「ああ、頂くわー。 旨そうやな」

だが、食事が始まると、再びビアンカは、羊皮紙のギルドカードに目を落とす。

「…食べないの?」
「うん、もうちょっとしたら頂く。 ちょっと、自分がハンターになった証を見てたくて」
「でも、貴女、以前もハンター経験あったんでしょう? そう言ってなかったかしら?」
「そうやけど、どんな狩人も、新天地に赴いた時の感慨は別モンやで」
「それもそうね」

美味しそうに食事にありつくシャルルを見て、ビアンカも少しずつ食事に手を伸ばす。

「…貴女、小食なの?」
「意外やろ? にしても、アンタは小柄なのに、結構食べるなぁ」
「よく言われるわ。 そんな食べ方してたら、ババコンガみたいなお腹になるぞって、よく脅される」

そう言って、快活に笑うシャルル。
その無邪気な笑顔を見て、思わずビアンカの表情にも笑みが浮かんだ。

「…ありがとな、ウチにこんな親切にしてくれるなんて」
「なんの、貴女は将来有望な、ギルドの期待の星だもの! これくらい安い物よ! これからバンバン稼いじゃってね!」
「あははは」

そう言って、二人はとりとめのない会話をしながら、食事を続けた。

会話の中で、シャルルが気掛けていた事は、ビアンカを誉め、ご機嫌を取る事だった。
親密さを構築する事で、二人の距離間を縮め、隠した秘密を教えてもらうための基礎工事。

幸いにも、こうして向かい合って見てみれば、彼女はかなりの美人だった。 美人で強く、なおかつ気さくな性格であるとくれば、誉めるネタにも困らない。

「黒を基調にしたコーディネイト? そうやなぁ、やっぱ基本は黒子系かな? でも、剣士やったらグラビドとか、黒ディアもあるかもしれへんな」
「私はあの無骨なデザインがちょっとねー。 もしも自分で装備するなら、黒じゃないけど、蒼レウス系でシャープに纏めた方がクールだと思う」
「お、そう来たか…。 確かに、パッと見た目のシルエットは大事よな」

ちょっと常人とは趣が違うが、狩人同士、お洒落(装備)に関する話題も堪能だった。
そして程良く食事が進んだのを見計らって、シャルルは肝心要の話題を振ってみた。

「…そう言えば、貴女、何で弓を使ってるの? 今時のハンターにしては、結構珍しいな、って思ってたんだけど」

今時というより、紛争の渦中にあるバルベキア三国においては、傭兵と狩人を兼ねる事ができる「ボウガンナー」の数が絶対的に多い。
他の土地柄ならまだしも、ボウガン勢が台頭するこの国では、相性という理由で、弓を使うメリットは殆どないのだ。
この国の内情を知っており、そしてある程度行き先が選べたのなら、そもそもこの国に来ようとはしないはず。

…つまり、この質問は結構踏み込んだ内容なのだが、意に反して、ビアンカはサラッと答えた。

「別に、そこまで深い理由はあらへんよ。 爺ちゃんが弓師だったから、ウチも弓使え、って教え込まれただけ」
「…え、じゃあ、単純に弓しか使えない、って事?」
「ああ。 ホントはガンランスとか使いたいんやけど、爺ちゃんがうるさいし」

そして、壁に立てかけた「パワーハンターボウ2」を見て答えた。

「それにまぁ、事実、弓で何の不自由もないしな」

…凄い自負ね。

シャルルは内心、そう思う。
弓で何の不自由もない…というのは確かにそうかもしれない。
対モンスターにおいて「決定的に苦手な相手は居ない」というのがその理由だからだ。
しかし逆に、元々の火力の貧弱さゆえに、他武器を圧倒できるシーンも多いとは言いきれない。

だのに「不自由はない」と言い切れるという事は、ただの世間知らずでなければ、その火力の貧弱さをカバーできるだけの修練を積んできたという事だからだ。

「へぇ、貴女を育てたお爺さまは、何てお名前なの? さぞかし高名な弓師だったんじゃないのかしら」
「言っても、知らんと思うで?」
「なんて方?」

一瞬だけ、シャルルは期待した。
もしかしたら、という予感があったのだ。
この、目の前の女性…。
ビアンカは、エイグリル将軍が呼び寄せているはずの希代にして無双の弓師、「笹神龍心」の関係者という可能性が…。

「『太刀河雲黒斎』。 知ってる?」
「え…。 え? 聞いたことはあるような気はするんだけど…。 知らないわ…、不勉強でごめんなさい」
「聞いたことあるような気はする、かぁ…。 まぁ、逆に知ってたら凄いけどな」
「本当にごめんなさい…。 あ、あの、えっと」

苦笑するビアンカを見て、シャルルは何とか場を取り繕うとする。

「ゆ、弓って凄いわよね! 奥深い武器だって聞いてるけど、実際どんな練習してきたの? 興味あるなぁ」

「なら、アンタも弓、ちょっとやってみるか?」
「え?」
「貸したるわ、ウチの弓」

…さっきの発言は、どんな訓練をしてきたのかを聞きたかっただけなのだが。

しかし、ここで相手の話の腰を折るのは不味かろう。
それに、実際に弓を扱わせてもらえるとなれば、それにかこつけてアレコレ話が聞けるかもしれない、そう思ったシャルルは、表面上は喜んでレクチャーを受ける事にした。

「じゃあまず、弓を構える所からやってみようか」

そう言われて、シャルルはビアンカのパワーハンターボウ2を受け取った。 正直言って、弓は全くの門外漢なのだが、一応ギルドに携わっていた人間なので、そこそこ基礎は押さえている。

弓には、矢が安定して的に当たるよう造られた「射法八節」と言う型(動作)があり、ハンターで弓師を志す者は一番最初にこれを学ぶ。

シャルルは、かなり昔に学んだそれを、必死に思い出しながら、過去の記憶の動作をなぞる。
まず、窓の外を「的」と見定めた後、正面を向いて、両足を肩幅に踏み開く。 
この時、腹下の丹田を中心にきちんと力が配分され、体幹が淀む事がないように、胴が「乗る」ようにするのがコツだ。

次に取り掛け。
矢を取り、つがえ、弓を水平に構え、的を見る動作。
もちろん本物の矢は無いが、ちゃんとそのつもりで弦を噛んだ右手の形を作っている。

「ええ感じ。 矢もちゃんと水平になってるな」

…ビアンカには、ちゃんと意図したエア矢の存在が分かっているらしい。 これは益々手を抜けない。
 
シャルルは、弓とつがえたエア矢を、そのまま静かに、両拳が同じ高さになるように、左斜めに持ち上げた。

この動作を「弓を起こす」というが、「八節」はここで、的に向かって「真正面に起こす」か、「斜面に起こす」か二通りに分かれているのだ。
が、古代の弓兵は大抵「斜め起こし」だったし、自分もそのつもりで踏み開いていたので、シャルルは斜めに起こした。

そして、「斜面打ち起こし」の構えから、両拳を左前方に軽く突き出し、右肘を固定しつつ弓を押し開き、力が均等に配分されている事を意識しながら、弓を顔のすぐそばまで寄せた。

これで、「会(射撃体勢)」の完成。 
「八節」では「離れ(発射)」に至るその時まで、このまま「気を込め続けて良しとする」はずだが…。

「ブラボー」

そう言って、ビアンカがパチパチと拍手した。

「やるやんな、アンタ…。 五重十文字には遠いけど、基礎はまぁ出来てると言っても過言やあらへんわ」

「そ、そう?」

弓を引き絞った時、上半身と下半身、そして全体での力のバランスが取れた完成形の事を「五重十文字」と言う。
シャルル的には万全のつもりだったのだが、ビアンカ的にはまだまだだったようだ。

「分ける時は、もっと左腕の押しに力を入れた方がええで? 弦を引く事に意識が行き過ぎや。 それと、矢は頬に軽く添える」
「こう?」
「ちょっとズレとる…ちょっと弦緩めて? ああ、最初から、いっしょにやってみよか?」
「…ありがとう」

そう言って、ビアンカがシャルルの背面から近づく。

「礼なんぞ言わんといて、照れくさいわ。 ほら、もう一辺。 前向いて」

全くの余談ではあるが、人間の「延髄」は各種の迷走神経が走り、また筋肉が付く部位ではないので、どんな人間でも絶対の弱点たりうる。
成人男子でも、ここに一撃を食らえば大抵の場合失神、悪ければ身体機能に障害が残るほどの急所だ。

「…にしても、何か嬉しいな。 弓ってマイナーって思われてるか知らんけど、あまり使う人居ないからな」
「いえ、そんな人居ないですよ、弓は熟練者の武器だと思います。 ビアンカさんも、技の修得には苦労されたんでしょう?」
「おお、ごっつ苦労したでー。 今度ゆっくり聴かせたるわ」
「わ、楽しみですー♪ 是非教えて下さいね!」

いい感じ…。
これなら、ビアンカから何か聞き出すのも、そんな難しくないかもしれない…。

シャルルは、そう思いつつビアンカの指導を待つ。
力の掛け具合を手ずから教えるために、ビアンカは背中に近づいていると思っていた。
だが、その背に唐突に感じたものは、戦場で生きてきたシャルルにとって、あまりにも馴染み深い感情だった。

「(…え、何これ…?)」

首筋にちりちりと感じる、強烈な違和感。
何故、この感覚を、この場で覚える…?

…まさか!?

シャルルがその時、感じたものは「殺気」だった。

「ふっ!」

シャルルが振り向こうとしたその刹那、ガシィという音と共に、ビアンカの手刀がシャルルの後頭部に炸裂する。


「…その『今度』は、永遠に来えへんけどな」

薄く笑うビアンカ。
そしてシャルルは膝を付くと、糸が切れた人形のように、そのままゆっくり崩れ落ちていった。


<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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