女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#1(6)-1

「ハチミツちょうだい」

そのフレーズを唐突に聞いた時、俺は思わずどもってしまった。

「も、ももも、持ってねぇよ! ハチミツ、持ってないぃ!」

そう焦って返事すると、目の前の少年は「なんだこの挙動不審なオッサン」的な一瞥を浴びせ、自分の重銃…「ボーンシューター」の整備に戻る。


…俺はこの赤毛の少年と、とある酒場で出会った。
誰もがその危険性故に、飛び込もうとしなかったクエストを、こいつは躊躇なく請けた。 
しかも、最弱のヘヴィボウガン「ボーンシューター」を担いでだ。

こういうのもなんだが、俺はその態度に、なんとも底知れぬ予感を感じた。
依頼主の女の子を救う様子が、たまたま戯曲「銃の英雄」のモデルである「A GUNNER」に似てたせいもあっただろうが、俺はとにかく、コイツはただ者じゃない、と感じた。
その、期待にも似た予感を確認するために、この闘いの結末を見たい、と思ったのだ。

幸いな事に、俺は依頼主…テネス村からやってきた兄妹と、この少年の会話に割り込み、クエストへの同行を許可された。
というのも、なんとも無謀な事に、この赤毛の少年は文無しだったのだ。
資材なしで密猟クエストに挑む気なのかと呆れたが、金銭的に余裕のあった俺が、馬車の手配や支給品を用意した形で今ここに居る、という訳だ。

今、俺たちは馬車に揺られて、雪山のド真ん中にあるらしい、テネス村へと向かっている。
その途中、お互い黙々と武装や携行品のチェックをしていた。
いわゆるクエストの準備中です…って奴なのだが、冒頭の「ハチミツちょうだい」は、そんな最中に言われた一言だった。

「2個で良いんだが、それすら持ってないのか?」

少年は、銃の点検のために、広げた布…最初に逢った時、全身を覆っていた奴だ…の上で銃を分解しながらそう言う。

「に、2個? 2個で良いのか?」

…てっきりいつもの様に、10個全部要求されたのかと思った。

「ああ」
「いや、まぁ、2個くらいならあるけど」
「くれ」

「(そういや、コイツさっき『ハチミツちょうだい』じゃなくて、『ハチミツを持ってないか』って言ったんだったな…。 聞き違い…。 俺も大概、負け犬根性染み着いてんなぁ…。)」

自分の悪癖を恨めしく思いながら、俺はハチミツを差し出す。 もちろん、回復薬との調合用に持ってきてた奴だ。
2個と言うから、てっきり栄養剤Gから秘薬でも作る気なのかと思ったが、そいつは普通に「回復薬G」を調合した。 
なんだコイツ。 それなら、俺の持ってる奴くれてやったのに。 ハチミツちょうだいとか言うなよ。

だが、その赤毛の少年は、人からそうしてもらうのがさも当然の様に、礼もなく作業を続行した。

こうして見ると、美少年と呼んで差し支えないほどの端正な顔立ち。 ナルガXシリーズを装備した肩口の素肌は、少女のように白く、作業の機械的な動作とあいまって、まるで石膏像のようにも思える。

だが、それらの印象を、その紅い瞳が全て拒否していた。
命なき白石像の中に宿る、激しい意志と生命の証。

まさに焔のように煌々と燃えるその瞳を、俺はなんとなく見つめ続けていた。

「(…って、んな事してる場合じゃねぇよ、俺)」

男をずっと見つめ続けるとかねーだろ。
その前に、コイツに言うべき事があるはずだ。

「…ところで」
「なんだ」
「何だ、じゃねーだろ? お前、人からモノを貰う時くらい、こっち向いてろよ! 後、礼くらいしろ!」

そう言われると、少年は銃の点検作業を中断し、きょとんとした様子でこちらを見る。

「ああ…。 そうか、そうだな、悪かった。 ありがとう」

と、淡々と礼を述べた。

「大体なぁ、最初に野良でパーティ組む時は、挨拶して自己紹介するのが礼儀だろ?」

「そうだな」

…だが、そいつはそう言ったきり、何も言おうとしない。

「おい、お前、だから挨拶を…」
「するんだろ? お前が」
「は?」

何言ってる、コイツ? 俺が先に挨拶?

「ああ。 そもそも、お前が僕たちの会話に割り込んで来たんだろう? 自分の立場を理解してるなら、まず自分から自己紹介したらどうなんだ?」

俺は内心舌打ちした。
若い奴らは、こういう所が総じてウザい。
何でも素直に自分からやれよ。

年上から先に自己紹介させる気か、とイラついた俺は、勢いまかせで反論した。

「割り込んできたのは、お前だろ!? あの時、俺ぁまだ、このクエストを断るって言ってなかっただろーが! …『難しい』って言っただけで! それに俺が金出さなきゃ、馬車も出せなかっただろうがよ!」

「僕は、あの時『誰も請ける奴は居ないか』って確認していたはずだが」

「…」

…はい論破ー。
俺がコイツらに参加させてもらったのを認めるしかなくなり、自分からギルドカードを見せた。

「…マルク=ランディッツ。 メリーランド出身のライトガンナーだ。 HRは9。 よろしく」

だが、そいつは自分のギルドカードを出すでもなく、ただ不思議そうに俺のギルドカードをのぞき込む。

「ほう…。 これがハンターズギルドのギルドカードか…」

…? 何の話?

「お前、ギルドカードは?」
「この形式の身分証明書か? …あいにくだが、持っていない」
「はぁ!?」

なんだその嘘!? ハンターがギルドカード持ってねぇ訳ねーだろ! 
ギルカ交換しないとか、どんだけ無礼なんだよ! と一瞬キレかけたが、それをすんでの所で抑える。

「…わ、分かった。 じゃあ、名前は何てんだよ」

そう譲歩したのに、そのガキはしばらく考え込む様子を見せた後…。

「…『J』。 『JJ(じぇいじぇい)』で良い」

うおー、偽名で良いと来ましたか! 
ってか、それ今考えただろ! 本名名乗る気無しかよ!

今度は本気で怒鳴りつけようかと思ったが、俺の中で長年培ってきたチキンセンサーが「旦那ヤバいっすよ」と発動する。 
…えと、何このイヤな予感?

「(…もしかして、コイツ生粋の密猟者?)」

とっさに、そんな考えが脳裏に思い浮かび、俺は怒気をすんでの所で抑え込む。
それなら、素顔を見せないあの格好をしてた事、密猟クエに名乗りを上げた事、ギルドカードを持ってない事(本当は見せたくないだけなのだろうが)、偽名を名乗った事全てに説明がつく。

一瞬、ヤバい件に足を突っ込んだか、と思い少年の全身を改めて観察するが、どうにも違和感は拭えなかった。

というのも、この少年は「増弾のピアス」を身につけているのだ。
銃の扱いに優れ、代用銃匠(ニア・ガンスミス)として、自己改造による装填数の増加を許可された証。 
そして、これはハンターズギルドの訓練所を制覇しないと認可されない。
俺だってG級ハンターだから、その他のピアスなどと見間違えたりはしない。 …多分。

こいつは、密猟者などではなく、間違いなくギルド所属のハンターだ。 …の、はずだ。

防具も、これも間違いないと思うが、ナルガXシリーズだった。
間違いなく、ギルド純正のG級ハンター装備。

「(ギルド所属のG級ハンターで、密猟者…?)」

そして、俺の疑問に拍車をかけたのが、使用武器が「ボーンシューター」という所だ。
そこらへんで購入した訳でもあるまいに、何でそんな弱い武器を選んで使う? 
ギルド所属のハンターでも、密猟者でも、武器はできるだけ強い物を選ぶはず。
わざわざ弱い武器を使うその意図がさっぱり読めない。

だが、俺がそう思っている間も、そのガキ…「JJ」は、真剣に「ボーンシューター」の点検をしている。 
特にジャミング防止のための発射機構の清掃と、パワーバレルに歪みがないかの精度の確認は、執拗なくらい徹底していた。

「(…ボーンシューターとか、そんな弄くったって変わらないだろうに)」

確かに、銃の定期的な点検は、安全・確実な運用をする上で重要な要素だ。
だが軍用銃と異なり、そもそもギルドのボウガンは、劣悪な環境…火山や砂漠、雪山などでの酷使という条件を前提に、かなりの余裕を以て設計されている。
よほど強烈な自己改造をするのでもない限り、そこまで頻繁にメンテをしなくても大丈夫なのだ。 
気持ち、使いやすくなる程度の差しかない。

しかし、それでも真剣に部品の点検を行うJJ。
一瞬、何か違う部品がいくつか混じってたような気がしたが、それが何かと気づく前に、JJはボウガンを組み上げてしまった。
さすがに「増弾のピアス」を付けているだけの事はある。

「ところでよ」
「何だ」

…その、徹底した無愛想はどうにかならないものか…。
お前、男二人が馬車の幌でずっと無言、って居心地悪いと思わねぇの?

「いや、JJ、お前作戦とかあるのか?」
「作戦?」
「そう。 だって、相手が何かも分からないクエストに挑むとか…その、あれじゃん、相手に対応した準備、ってもんが要るだろ? …何か、考えでも?」
「ない」

一瞬、あまりの回答の迅速さに、何言われたのかが分からなかった。

「な、『ない』って、お前…。 どうやって狩る気だ?」

JJは、仮組みしたボウガンを軽く構え、重心配分を確かめつつ、言い放つ。

「ガンナーなら、相手が誰だろうと、撃って倒す。 それだけだ」
「そ、それだけ? 本当に?」
「むしろ、それ以外に何かあるのか?」
「い、いや…」

それを言われると、もはやどうしようもない。
昔、「ドスランポスが倒せません、どうしたら良いですか」という訓練生の質問を「切れ」と返した教官が居たが、アレと同レベルだ。
それどころか、JJは俺の携行品を見ると、片眉を釣りながら酷評する。

「お前こそ、なんだその資材の山は? 罠生肉とかタル爆弾とか、何に使うつもりだ」
「何にって、そりゃババコンガを眠らせて…」

そこまで言って、俺の返事は尻すぼみになる。

ああ、まぁ、一応、俺だって分かってるんだよ。
「猿」と言っても、雪山にババコンガは居ねぇって事くらい。
多分、今回の相手は多分ドドブランゴ、悪ければラージャンだ。

「(でも万一って事があるだろ…。)」

だが、俺がもぞもぞと口の中で言った返事を、JJは聞き捨てならない言葉で遮った。

「お前はそれでも『ガンナー』か?」
「…あ? ガンナー以外の何に見えるってんだよ?」

だが、俺がそう返事を返すと、意味が伝わってないと思ったのか、JJは、表現を変えてもう一度問いなおして来た。

「お前は、銃をより深く理解しようと思わないのか?」
「…何? どういう事だ?」
「お前は狩りの中で、「罠」と「銃」、どっちに力点を置いている? 僕には「罠」のように見えるが」
「…それが、どうした? 悪い事だとでも言うのか? ハンターが罠を使う事が?」

…こいつ、やはり密猟者じゃあ…ないのか…?
言葉の端に浮き上がる苛立ちこそ隠せなかったが、その違和感が俺の怒りを押しとどめる。

「『ハンター』なら、それでも良い。 だが、『ガンナー』に限っては、そうじゃない」
「どういう事だよ」

「『ガンナー』とは…」

JJは、自らに言い聞かせるように言う。
まるで誰かに、訓示されたような事を。

「『剣士』の対語のように言われているが、そうじゃない。 最初にまず『ハンター』がある。 最初に居るのは『ハンター』だけだ。 『剣士』がそうであるように、彼らがボウガンに習熟し、弾種、装填数、リロード速度、反動…。 そして発射音や抜銃音さえ体に深く染み着かせたその時に、初めて『ハンター』は『ガンナー』たりえる」
「じゃあ、何だ? 銃を存分に使いこなして初めて『ガンナー』と名乗れる、とでも言いたいのか?」
「それこそが、ガンナーとしての矜持だ。 お前はそうは思わないのか」

ってか、お前の認識では、『ガンナー』=『ボウガン』なのかよ。 弓が抜けてんぞ。 それに…。

「…お前、俺は『ガンナー』じゃないって言いたいのか?」
「それこそ、お前自身しか分からない事だろう? ただ、罠に頼れば、それだけ銃と会話する時間は減る。 不確定要素にもなりがちな罠を、過信はしない事だ」

そう言って、JJはボウガンの点検に戻り、一方的に会話を打ち切った。

何だコイツ。 メチャクチャ気分悪ぃ。
罠が不確定要素って、そりゃお前が罠使うの下手なんだろうがよ。

そして、さっき感じた違和感…。
こいつは、やはり密猟者ではなくて、ギルド所属のハンターだろう。
何故なら、悪王を筆頭とする力自慢の連中は、罠を使う狩人を卑下する傾向がある。 
そいつらが言いそうな事を、コイツも臆面もなく言ったのを聞いて、今時の、自信過剰な若い狩人と同類だ、と思ったのだ。

まぁ、この分かりにくい話の中で、ただ一つ分かったのは、こいつ、一人称こそ「僕」だが、「世界はオレ中心に回ってる」と考えて憚らない、慇懃無礼を絵に描いたような奴だという事だ。
まぁ、それも若くて実力のある奴にはありがちなのだが…。

手の中で、行き場を失った罠生肉をそこらに投げ捨てると、俺はやっかみ半分に、運転席で御者と一緒に座っている、依頼主の兄弟に声をかける。

「おーい、お前等の村を襲ってるモンスター…。 名前は分からないのか? お父さんや村の人は、何か言ってなかったか?」

せめて、相手が何か分かりさえすれば、心構えができると思ったのだが、幌の小窓から見る二人は顔を見合わせると、揃って困った表情をする。

「ああ、じゃあ名前は良い! 色はどうだ!? その猿は、どれくらいの大きさで、どんな形だった? 分かる限りの事を、何でも良いから言ってくれ!」
「あ、それなら分かるよ、おじちゃん!」

その兄妹のうち、妹のシェリーが、運転席を立って幌の小窓にしがみつき、元気よく返事してくる。

「白! 真っ白なお猿さんだった!」

ビンゴだ。 
白、という事は、ほぼドドブランゴで間違いない。
少なくとも、あの凶悪無比なラージャンじゃないと分かって、俺は内心安堵のため息をつく。
後は、相手がG級でなければ助かるのだが。

「その白いお猿さんがね、いっぱい居るの!」
「一杯って、ブランゴの事だろ? 任せろ、おっちゃんが余裕で倒してやるからな」
「ぶらんご…?」
「あ、ああ、小さい猿の事だよ! そいつらが一杯居る、ってんだろ?」
「…? ううん、大きいのがいっぱいだよ…?」
「何だ? そりゃ、一体どういう事なんだよ!? 相手は1体じゃねーのか!?」

だが、俺の剣幕に、小窓の格子を掴んで居た妹は怯えて引っ込んでしまった。 
代わりに、申し訳なさそうな顔で、兄…カインが代わりに説明する。

「申し訳ありません…。 隠すつもりじゃなかったんですけど、相手の猿は、どうも2体以上かも、しれないんです…」

<続く>
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*Comment

NoTitle 

お邪魔します。
GUNNER'S HEAVEN、いつも楽しく読ませていただいております。ところでJJって聞くと、自動的に赤い光弾ジリ○ンが頭に浮かびますが偶然かな? あれも銃がメインの作品でしたが……。
では、また~ノシ
  • posted by キリロクブ 
  • URL 
  • 2011.11/16 12:47分 
  • [Edit]

 

王子の話も気になりますが、こちらもドキドキ。ドドブラ祭り続き待ってまーす。
  • posted by ゆうた 
  • URL 
  • 2011.11/17 08:03分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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