女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#1(5)-2

俺は、酒場で自らに問いかけていた。

俺には…。 俺には、何が足りない…?
どうすれば、俺は強く…。 
誰よりも「強く」なれるんだ…?

数年前から…。 いや、狩人になろうと決めた時から、幾度となく自身に問いかけ、そして未だに答えが見いだせぬままの疑問。

(兄ちゃん、頑張ってくれよ…! 兄ちゃんなら、きっと一流ハンターになれるよ)

あの時、弟は笑っていた。
その意味が…。 今では、なんとなく分かる気がする。
俺が故郷を捨てた日、弟は一人、そう言って俺を送り出してくれた。
 
だが、その笑顔は今も、俺の心を激しく問いつめる。

(うん、兄ちゃんなら、きっと凄いハンターになれるよ…。 僕は信じてる。 兄ちゃんなら、きっとやってくれる、って)

その瞬間、目の前で一際大きい歓声があがった。
戯曲「銃の英雄」がクライマックスを迎えたのだ。

「A GUNNER」が、あの超人的な連射を以て、岩山龍を倒したシーン。
 
だけど、戯曲が伝える「A GUNNER」の戦い方は、単に「超遠距離からの連射狙撃」というだけ。 それがどんな射撃だったのか、どうすれば成しうる秘技なのか、それを具体的に伝える要素は何もない。



「くそったれが…」

普段なら、高揚を感じるそのシーンで、逆に俺は毒づいた。

…誰か、俺にその答えを、教えてくれ。
「A GUNNER」さんよ、どうしたらアンタみたいになれるんだ? どんな訓練をすればいい?
同じ人間だろう? 俺とアンタと、何が違うってんだ…?


そして、戯曲は終劇を迎える。
死闘の末に岩山龍を倒して、村人から英雄扱いされる事になった「A GUNNER」は、村人に見送られて村を去る。 
そこを、ヒロインの女性…シェリーが追いかけていって、無事ハッピーエンド、という幕切れ。
囃し声と共に、酒場の中からも一斉に拍手が巻き起こったが、それは随分と遠い場所から聞こえるような気がした。

起きた後、ずっとこの戯曲を聞いていたので、今ではもう酔いは殆ど覚めていた。
コップに残った冷水を飲み、演奏隊の連中にお捻りを投げてやろうとした時。

場の空気が落ち着くのを待っていたのか、子供がさっと、その停滞した場の中にうまく割って入ってきた。

「あの、すみません…!!」

何だ、という周囲の視線が、その子供…黒髪の少年に向く。 年の頃は10歳そこらだろうか。 
そして、その少年の後ろに隠れるように、栗色おさげの女の子が走り込んできた。 こっちは…5、6歳くらいか? 二人とも、割と顔立ちが似ている。 多分、兄妹なのだろう。

「僕、チアフルから来た、カインって言います! ハンターの皆さんに、お願いがあって来ました!」

カインという少年は、そこで一拍おくと、皆を見回しながら続けた。
それを見る、周囲のハンター達がざわ、とどよめく。

「今、僕たちの村に、巨大な猿がやってきて、村人を襲っているんです!」
「どなたか…。 どなたか、腕に自信のあるハンターさんは、いらっしゃらないでしょうかっ!? 是非、あのにっくき猿を倒して下さい! お願いします!」

その声を受けて、酒場の中がざわつく。
ハンター連中が、それぞれ顔を見合わせるが、何か行動を起こそうという間は誰も居ない。 当然だ。

「どなたか、志のあるハンターさんは、いらっしゃいませんかっ!? 是非、僕たちの依頼を請けて下さい! お願いします!」

発音が悪かったと思ったのか、少年がもう一度繰り返すが、やはり誰も行動を起こさない。
それどころか、少年の「志のあるハンター」という表現に、皆忍び笑いを漏らす。
その様相に、少年の表情が期待から困惑に変わる。

それはそうだろう。
地方のお登りさんが、都会の常識も知らず、突然こんな素っ頓狂な依頼をする。
こういう光景、必ずしも珍しい訳ではない。

「おーい、オージーの兄貴! ギルドに、クエスト斡旋の依頼だぜ!」
「なんだ? 誰だよ?」
「そこのオチビちゃんたちだよ!」

誰かが、子供たちを嘲るように、ここのギルドマネージャーを呼ぶ。
カイン、という名の少年は、その方向をキッと睨むが、オージーと呼ばれた、髭もじゃの強面が出てくると、あからさまに動揺した様子で…だが、それでも踏みとどまり、虚勢を張って強面と話はじめた。

少年の話をまとめると、このラティオ山岳地帯の山頂近くに、テネスという寒村があるらしいのだが、そこに巨大な猿…牙獣種が現れた。 
最初こそ、村人が力を合わせて対抗しようとしたものの、その圧倒的な力には誰も叶わず、全員が返り討ちとなった。
しかも、村人を蹴散らしたその猿は、堂々と村の中を荒し周り、この冬を越すための、村の食料倉庫の場所を嗅ぎつけた。

食害を防ぐため、収穫物を各々が分配して持ちだし、各家庭で保管する、という形で対応したのだが、それが裏目に出た。

その猿は異常な嗅覚で食料の場所を察知し、先日、とある家が襲撃されたのだ。
子供たちは無事に逃がされたものの、逃がした両親は、モンスターに重傷を負わされ、今も起き上がれない状態だという。
その逃がされた子供が、目の前でギルドマネージャーに事情を説明している、カインという少年だった。

「…ふん。 それで、金はいくらあるんだい?」
「5000zあります! これを、報奨金にして下さい!!」

意気揚々と伝える少年の言葉を、ギルドマネージャーは大笑いで一蹴した。

「全然足りねぇな」
「なっ…? 何で!? 僕が子供だからって、嘘を付くなよ!?」
「嘘なんて言ってねぇよ」
「嘘だッ! 人をバカにするな! そこのクエスト依頼票にも、このくらいの額のクエストが、ちゃんとあるじゃないか!」

そう言われると、ギルドマネージャーは、困ったようにポリポリと頭をかく。

「いいか、ボウズ、別に俺たちはな、意地悪でこんな事言ってるんじゃないんだぞ…。 まぁ、確かに見た目は良い人に見えないって、よく言われるがな」

ギルドにクエストの依頼をする際、事情を何も知らない人は、大抵がこの少年のような誤解をする。
…実は、「クエストの依頼料」は「報奨金の3倍」程度が相場なのだ。

仮に、その猿…。
ババコンガかドドブランゴかは知らないが、仮にそれが報奨金が5100zのクエスト「牙獣たちの逆襲!」に相当するとしよう。
すると、依頼人は最低15000zを持ってこないと、ギルドには正式なクエストとして受理されない。

なぜなら、ギルドも慈善事業で経営をやっている訳ではない。
正体不明のモンスターが現れた、と依頼があったら、まずギルドが、所属のギルドナイトと王立書誌隊、場合によっては古龍観測局との合同調査を行う。
そこで、モンスターの種類と生息域、生態観察によっておおまかな強さが測定され、報告のあったモンスターに、下位~G級のランク付けが決定される。

たいていの場合、大きければ大きいほど生育した個体であるため、体躯の測定だけでランク付けは事足りるが、その強さが測りがたい場合…例えば、若い個体でも、その巨体ゆえに、G級相当の戦力を持っている事もある。
その時には、ギルドナイト自身が直接交戦して測定する事もあるのだ。

このように、クエスト前の調査費、アイテムボックスに準備しておく携帯用支給品の購入費、さらには、クエストに赴くための馬車賃、力つきた時のための「救援用ギルドアイルー」の手配料…。

クエストが成功、あるいは失敗に終わるにせよ、どちらにしても必ずこれらの準備は必要となる。

そのため、ギルドはハンターと依頼人、双方にこの煩雑なハンターランク制度を遵守させる事に極めて厳格であり、依頼額が基準に満たない場合は、決してギルドのクエストとして登録する事はなかった。 
ギルドの依頼に、王族や軍隊、名のある者からの依頼が多いのは、そういう理由もある。

「だ、だけど、G級ハンターなら、そんな簡単に、倒されたりしないはず…! 本当に強いハンターは、支給品にも頼らない、って聞いてるぞ!」
「そうだ、確かにお前さんの言うとおりかもな。 なら、ここで募集してみたら良いぜ。 ギルドの仲介抜きで、クエスト受ける奴が居るかどうか。 密猟になるのはこの際見逃してやる」

そこで少年は、声を張り上げ、再度誰か居ないか呼びかけたが、帰ってくる返事はなく、忍び笑いがまたも彼を押し包むだけ。

そもそも、ギルドは、腕の立つ貴重なハンター達を、決して死なせないように、救援用ギルドアイルーの育成や、療養所の設置、武器防具、罠の開発はもちろん、どんな重傷でも癒せる薬の研究などにも存分に投資し、力を入れている。

ハンターは、自らの命を張って金を得る商売である。
だが、どんな大金が得られようと、誰とて命は惜しい。
そこにロマンなどの入り込む余地はない。

だから、大抵のハンターは、ほぼ例外なくギルドに所属している。
ギルドに所属しない連中は、犯罪に荷担している密猟者か、さもなくば命知らずの大馬鹿者かのどちらかだ。

それに、地方にもハンターが居ない訳ではないのだ。
彼らとて、既に地元のハンター達に討伐を依頼したはず。
だのに、彼らがここに依頼を持ってきたという事は、明らかに地方のハンター達では対応不可能な「焦げ付いた依頼」なのである。

それが皆、分かっているから笑っているのだ。
おそらく、その正体不明の「猿」は上位以上のモンスター。
個人で請け負うにしても、ギルドの庇護下にないのなら、一度の気絶で命を落としかねない危険な依頼。
仮に腕に覚えのある狩人が請けた所で、たかだか5000zでは、報奨金はおろか、経費としてほとんど消えてしまうだろう。
どう見ても、割に合わない依頼。
請けるハンターなど、誰も居ないだろう。 
実際、俺だってゴメンだ。

その事情を、ギルドマネージャーは、その少年に懇切丁寧に話した。
その少年は、最初納得がいかない様子で、頑強に食い下がっていたが、丁寧な説明を聞き、やがて絶望と共に理解した様子だった。

「ねぇ、お兄ちゃん、どうしたの」
「ダメだ、って…。 こんなお金じゃ、ハンターは雇えない、って…。」
「うそ! だって、お父さん、それでハンターをやとえる、って言ってたもん!」
「だから、お金が足りないんだよ…」
「なんで!? 家のを、ぜんぶ持ってきたのに!」
「分かってる、シェリー…。 でも、ダメなんだ…」

…あのおさげの女の子、シェリーって言うのか。
戯曲「銃の英雄」の、ヒロイン役の女性と同じ名前だ。

「どうしてダメなの…!? お父さん言ってたよ! 強いハンターさんなら、きっとモンスターを倒してくれる、って…!」
「でも、ハンターさんも、生活がかかってるんだよ…! 只でモンスターを狩ってくれるなんて人は、居ないんだ…!」
「これじゃ、ダメだったの!?」
「もっと、沢山のお金が必要なんだよ、シェリー…」

そう言われた妹は、周囲を見回して、

「ハンターさん、おねがいします! お父さんと…お母さんを、助けてください! こんど襲われたら、もう、食べ物が、なくなっちゃうんです!」

と訴えかけ、あちこちのハンター連中に駆け寄るが、当然次々に首を振られる。
それでも少女は諦めず、酒場に居た強そうな奴に、声を掛け続けた。

正直、今、酒場の中は、結構居たたまれない空気になってる。 
…誰か、酔狂な奴が請けてくれないもんか、とは思うが、残念ながら、そうはならないだろう。

「わりぃけど、俺達、蟹狩りに行く予定だからよ、雪山には行けねーわ。 …もっと強そうな奴に頼んでくれよ」

屈強な奴はもちろん、普通の連中にも断られ、少女は泣きそうな感じで肩を落とす。
そして不意に俺と視線が合うと、こっちに駆け寄ってきた。

…お、俺にも来るのかよ!

「おじさん! お願いです! わたしたちの家族を…。 助けて下さい…!」

その幼い顔に、かつての弟の顔が、一瞬だけ被った。

だが、俺は情に流されず返事する。
周りの連中もやらねーんだ。
自分だけが貧乏くじを引くこたねぇ。

「あ、あのな、悪いけどよ、お嬢ちゃん、悪いけど、さっきの髭のおじちゃんの言うとおりなんだよ…」

「言うとおり、って…?」

「モンスターを倒すには、準備にお金が掛かるんだよ…。 おっちゃんはライトガンナーだから、特にお金掛かるし」

「足りないの…?」

厳密には、足りないなんて事はない。
弾丸だけならなんとか揃えられるだろう。
しかし、どの牙獣種が出てくるのか分からないのがネックなのだ。
ババコンガなら罠生肉と爆弾、ドドブランゴなら火炎弾、…ないとは思うが、ラージャンなら氷結弾。
全ての牙獣種に対応した準備を行おうとすれば、それはかなり大がかりなものになる。

「…ごめんな。 おじちゃんにはちょっと無理かもしれない…」

「うぇ…。 ふぇぇ…。」

俺がそう断ると、そのシェリーという名のおさげの女の子は、火がついたように泣き出した。

「お、おい、この子、どうにかしてくれよ!」
「シェリー! こっちに来るんだ! 帰るぞ!」
「やだぁ! お父さんとお母さんに、ハンターさんをつれて帰る、って言ったんだもん!」
「もう良い、もう良いんだよ! 兄ちゃんがどうにかするから…!」

カインという少年は、自身も目に涙を浮かべながら、泣き叫ぶ妹を抑えて連れていこうとする。

あまりの気まずさに、店は静まりかえり、演奏隊もただ、そのなりゆきを見つめ続ける。
誰も声もなく、ただ、目の前の小さな悲劇が終わるのを眺めるだけ。


…だが、その瞬間、店の奥で声を上げた者が居た。

「…誰も、その兄妹の依頼を請けてやらないのか?」

酒場中の視線が、さっと声の主に集まる。

「(なんだ、アレ!? …髑髏!?)」

最初、そいつの姿を見た時は、何事かと思った。
皆の視線を受け、ゆっくり席から腰を上げたそいつは、一瞬、本物の死神に見えたのだ。
ローブのように、ぼろ切れを頭からゆっくり覆い被した格好に、骸骨を象ったデスマスク…。 
いや、あれはデスギアS装備か?

「…誰もいないんだな?」

その男は、皆に向かって念を押す。
そして、沈黙が支配するその場で、言った。

「なら、その依頼、僕が請けよう」

酒場中の視線を浴びながら、ゆっくりと人をかき分けて近づく死神の背中には、ヘヴィボウガンが剥き身のまま、ガンベルトで担がれていた。
風体の異様さに、当の兄妹たちまでもが恐怖で後ずさるが、それに気づいた死神は、女の子…。
シェリーの視線の高さに合わせて腰を落とすと、ローブのフードを取って、デスマスクを外した。

中から現れたのは、火焔の様に真っ赤に逆立つ髪。
そして、端正な顔立ちは、まだ少年特有の悋気に彩られ、その鋭い真紅の瞳には、意志の炎が燃えていた。

死神が仮面の下から見せた正体は、なんとまだ、15~16歳程度の少年だった。

俺はその、あまりの若さに驚いたが、しかし女の子には親近感と写ったのか、そいつに話しかけていく。

「ねぇ、お兄ちゃん…! 本当に、本当に、モンスターを倒してくれるのっ!?」
「ああ、任せろ。 猿なんぞ、お兄ちゃんがちゃっちゃっとやっつけてやるからな」
「ありがとう! ハンターは…! ハンターは、強いんだよねっ!?」
「ああ、強いよ」

そこで、その赤毛の少年は、女の子の頭を撫でながら、もう一度繰り返す。

「ハンターは、強い」

酒場の連中は、安堵の表情と共に、再度の忍び笑いを漏らしながら、自分たちの酒杯を取り直す。

今度の忍び笑いの理由も分かる。
連中は、この場面を救った赤毛のこの少年を、今時よく居る「自分は強い」と根拠なく信じこむ、身の程知らずな若者だと思っているのだろう。

相手が不明のクエスト、しかもギルドの援助なしに特攻していくなど、無謀にも程がある。
俺だって事情を知らなければ笑う所だ。

だが…。 俺は笑えなかった。

理由を挙げろと言われたら無理なのだが、予感があった。
この少年の背に担がれていた武器が…「ボーンシューター」だったのだ。
「アルバレスト改」の後継機と称されている、ある寒村で開発されたヘヴィボウガン。

そして、シェリーという少女の頭を撫でている、このヘヴィボウガン使いの少年。
この少年の姿が、俺には何故か、今はもう居ないはずの、彼…。

…「A GUNNER」の姿に重なって見えた。

何故かその姿が、彼にうり二つのように思えて仕方がなかったのだ。


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そして、後の話になるが、俺のこの予感は、ある意味正しかった。
この男は、「A GUNNER」ではもちろんない。
だがコイツは、俺にとっては、ある意味「A GUNNER」を遙かに超える存在感と意味を持つガンナーだった。

男に対して、「運命の人」と言う呼び方はおかしいが…。
もし、そんな巡り合わせがあり、そしてそういう表現が許されるのなら、俺にとっては、まさにこの瞬間が「それ」だった。

俺の人生は、この日から、この男との出会いによって、まさに劇的に変わった。
あまつさえ、俺は後に、この男の背中を追いかける事になりさえする。

だがそれを、この運命を。
この時の俺は、まだ露ほども知らなかった。

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*Comment

続きを 

歴代No1かと、続きを待ってまーす
  • posted by ゆうた 
  • URL 
  • 2011.11/10 17:35分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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