女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」#1(5)-1

また、俺は酒を飲みながら夢を見ていた。
幼い頃の、あの日の記憶。

「なぁ兄ちゃん、兄ちゃんは、将来の夢、って何かある?」
「何だよ唐突に」

夢の中の光景は、俺の故郷、メリーランド…。
麦の収穫が終わった夕暮れ、父はアプトノス荷車の御者席、俺と弟はその荷台に乗って、家路へとついていた。

父は運搬用に馴致されたアプトノスの手綱を黙々と繰っているが、俺と弟は、荷台に山と積まれたウォーミル麦のて
っぺんに、二人して腹ばいになっている。
収穫した麦が、荷崩れしないようロープを掛けているのだが、量が多すぎるために俺たちが重石の代わりになっている、という訳だ。

延々と続く、ウォーミル麦が風で折りなす黄金の海原。
山の稜線に沈もうとしている、茜に染まる太陽を見つめながら、俺と弟は益体のない話をしていた。

「だってさ、兄ちゃんって、いつも父ちゃんと喧嘩してるじゃん。 小作なんかやってられるかって」
「当たり前だろ? だって、父ちゃんは頭が堅すぎるんだよ。 もっと、デンデンダイコンとかサツマノイモとかの流行の野菜を植えた方が良いっつってんのに、麦ばっか作ってどうす

んだよ」
「でも、父ちゃんの言うことも一理あるよ。 それを植えるとブル…。 …あれ、なんだっけ」
「…ブルファンゴか?」
「そうそう、それだよ! アレがほじくり返しちゃうらしいじゃん」
「それがどうしたんだよ? ファンゴとか、倒せば良い話じゃねーか」
「兄ちゃんは、強いなぁ…。 僕は、子供の時にファンゴに襲われたせいか、アレがイマイチ苦手なんだよね」

弟は、頭を掻きながら続ける。
その顔は、あの夕日と同じように、茜色に染まっていた。

「でもさぁ、兄ちゃん、ブルファンゴなら僕たちでも何とかなるけど、ドスファンゴが出てきたらどうするのさ」
「それは…」

ファンゴの親玉、ドスファンゴ。
その体躯は成人男性をゆうに越え、一般人が襲われれば、まず生きては帰れない。

「きっと父ちゃんは、それを心配してるんだよ。 イモとか作って、奴らを呼び寄せる事になったら、って…」
「じゃあお前は、ずっとこの安い麦を作る気か? ゼルナッツさんみたいに、一発当てて良い暮らしがしてみたい、と思わねぇのかよ」
「それは、思うけど…。 でも、しょうがないじゃん」

そこで、俺は拳を握り、力強く指の骨を鳴らしてみせた。

「しょうがなくねぇだろ、バカ。 諦めんなよ」
「っても、どうするの?」
「…心配すんな。 俺が、何もかも一気に解決する仕事に就くからよ」
「…え? 何か、そんな仕事があるの?」

俺は、息を詰め、弟にこっそり告げた。

「…俺、もう少ししたら、『ハンター』になるぜ」
「は、『ハンター』に!? 兄ちゃん、本気!?」
「…バカ、声がデケェよ!」
「ご、ごめん、でも、そんな危険な仕事、父ちゃんは絶対に許さないよ」
「なってしまった後なら、文句も言えねーだろ」
「でも、何かツテはあるのかい?」
「ねーけど、大丈夫だろ。 人間、やる気になりゃなんだってできる。 俺が証明してやる」
「そんな事で大丈夫…?」
「いーんだよ、そもそも俺、農業向いてねぇし。 狩人の方が絶対に向いてる」
「…まぁ、それはそうかもね。 兄ちゃん気が強いし」

そう言って弟はアハハ、と笑った。

「じゃあ、兄ちゃんがハンターになれるよう、僕も応援するよ。 父ちゃんと母ちゃんは、僕が手伝うからさ、その間、兄ちゃんはハンターに専念しなよ」
「ああ、任せとけ。 ハンターになった暁には、金持ちになってお前等に楽させてやる」

そこで、弟はまたも屈託なく笑ったが、俺はその時、弟がどういう意味で笑ったのか、分からなかった。

「うん、兄ちゃんなら、きっと凄いハンターになれるよ…。 僕は信じてる。 兄ちゃんなら、きっとやってくれる、って」
「任せろ! 絶対、一流のハンターになってみせるからな!」


…だが、そこで夢は終わり、俺は周囲の喧噪によって目を覚ました。

残り酒で澱んだ視界で周囲を見回すと、そろそろ夕方になろうかという頃か。
昼の狩りを終えて帰ってきたのか、随分とハンター連中が多い。 
それぞれが談笑しつつ夕食を取っており、俺と違って「さぁ今から酒飲むぜ」的な雰囲気が、そこかしこから立ち上っている。

ほぁ、とため息をつくと、俺は初老のマスターに冷水を出させて、酔い覚ましに一気に呷った。
ここの酒はマズ過ぎる。 気持ちよく酔う事などできそうにない。

…とりわけ、さっきの夢は最悪だった。
故郷の事など…。 思い出したくもなかった。

(うん、兄ちゃんなら、きっと凄いハンターになれるよ…。 僕は信じてる。 兄ちゃんなら、きっとやってくれる、って)
(任せろ! 絶対、一流のハンターになってみせるからな!)

何が一流ハンターだ。 青過ぎる。 
それがどれだけの道程になるのか分かってんのか。
もしも目の前に、当時の俺が居たら、横っ面を張って、唾の一つでも吐きかけていたかもしれない。
夢の中で、あんなろくでもない事を思い出していたから、俺はこうして目を覚ましたのだろう。

(任せろ! 絶対、一流のハンターになってみせるからな!)

…でも、あの頃の俺は、確かにそう信じていた。
その志に、間違いも揺らぎもないつもりだった。

…俺はいつから、こうなってしまったんだろう。
村から町に出てきて、毎日を必死に生きてきた。
まず丁稚奉公から始めて生活費を稼ぎ、余った時間で狩人としての訓練を積んだ。

だけど、生活費を稼ぎながらの訓練は、想像以上に辛かった。
狩人の訓練は生と死が隣り合わせ、極限まで肉体も精神も酷使するため、労働後の疲労状態で身に付くものではなかった。 
教官から、それでハンターになる気なのか、この出来損ないがと、クソミソに言われたものだ。 
ハンターだけやってられる、ボンボンの貴族や生え抜きの狩人が羨ましかった。
でも、俺は家族の顔を思い出しながら、頑張り続けた。

やがて、そんな生活が2年余り続いた頃、俺は酒に手を出した。
あまりに生活が過酷だったので、これでは持たないと思って、少しは息を抜きたいと思ったのだ。
だが、初めての酒は応えた。 翌日、具合が悪くなり、スゲェ眠かったので、仕事も狩りも休んだ。
頑張っているんだから、ちょっとは良いか、と思ったのだ。

しかし、街の仕事は田舎の農作業とは訳が違う。
無断欠勤した俺を奉公先が許すはずがなく、俺は稼ぎ先を失い、また次の職場を見つけるまで、ハンターの訓練を休まざるを得なかった。
ようやっと訓練所に復帰した時には、同期の連中は、次の科目に進んでいた。

日銭を稼ぎながらの訓練、それを繰り返すうちに、どんどん差が付いていった。
訓練生としての卒業試験では、貴族のボンボンとの組み手で、還付なきまでにやられた。 
あいつらは、「名誉のため」とか言って、容赦ないのがいけねぇ。 決闘のつもりか。

そして、無様ながらもハンターデビュー。

ギルドの先達は、「武器・防具の強化が、強くなる一番の近道だ。 モンスターにやられちゃ何にもならないからな」と口を揃えて言っていた。
周囲の連中も、よりよい武器・防具の強化に必死になっていた事もあって、俺は恥も外聞も捨て、武器防具の強化に勤しんだ。

採集ツアーで素材を集めて、時に野良で素材稼ぎを依頼し、徐々に装備を強化して、相手の弱点を探しながら戦い、運良く倒せたら、時々息抜きしつつ、また最初の採集ツアーから始め

る…という、絵に描いたようなハンター生活。

それを10年近く繰り返し…。 結果、なんとかG級ハンターになる事はできた。

だが、それだけだった。
ハンターランクは同じ「9」でも、俺みたいな凡人と一流の連中とは、圧倒的な実力の壁みたいなものがあった。
ごく普通の人間と、超人の境目…とでも言うのだろうか。
物事を極めようと思えば思うほど、その違いは如実になっていった。

その代表例が、あの「悪王」だ。
あの男は、もっと年輩のハンターかと思っていたのだが、明らかに俺より若かった。
だがそれでいて、あの圧倒的な戦闘能力を身につけている。

…これも、才能なのだろうか。 
人が物事の頂点に上り詰めるには、神に愛されてなくてはいけないのか。
才能がない奴は、何やったって無駄だって言うのか。


俺が、そんな愚痴を心中で吐露していた時、目の前で小さな歓声があがった。

今気づいたが、奥の方で、戯曲「銃の英雄」が演奏されていたようだ。
寝ていた間に結構話は進んでいたらしく、演奏を背にして、「A GUNNER」の役らしい、黒髪の美少女が、村人役のおっさん二人の前で大剣を振っている。

「A GUNNER」が弾切れという大ピンチを迎え、それを克服するために、助けに来た村人ハンター二人に、武器の扱いをレクチャーする場面だった。

劇内で語られるまでもなく、近接の連中にとって「身体操作」は非常に重要な要素だ。 鈍重な武器になるほど、その傾向は特に顕著で、どれだけ攻撃と回避をスムーズに行えるかは、

我流だけではなかなか身に付かないものがある。
正しい戦い方を学ぶ、という意味では、剣士に対する訓辞とも言えるエピソードなのだが、俺はその演奏を聞いて、漫然と考える事があった。

…そもそも、ガンナーの要訣とは、何なのだろうか?

今日に至るまで、長々とガンナーとして戦っておきながら、俺は多分、「ガンナーとは何か」というのが未だに分かっていない。

この話で例えるなら、俺はまだ「腕力まかせで武器を振っている」はず。
そうでなければ…。
この10年余、永く時と労力を費やしていながら、強くなれていない事の説明が付かない…。

俺には…。 俺には、何が足りない…?
どうすれば、俺は強く…。 
誰よりも「強く」なれるんだ…?

数年前から…。 いや、狩人になろうと決めた時から、幾度となく自身に問いかけ、そして未だに答えが見いだせぬままの疑問。

(兄ちゃん、頑張ってくれよ…! 兄ちゃんなら、きっと一流ハンターになれるよ)

あの時、弟は笑っていた。
その意味が…。 今では、なんとなく分かる気がする。
俺が故郷を捨てた日、弟は一人、そう言って俺を送り出してくれた。
 
だが、その笑顔は今も、俺の心を激しく問いつめる。

(うん、兄ちゃんなら、きっと凄いハンターになれるよ…。 僕は信じてる。 兄ちゃんなら、きっとやってくれる、って)

その瞬間、目の前で一際大きい歓声があがった。
戯曲「銃の英雄」がクライマックスを迎えたのだ。

「A GUNNER」が、あの超人的な連射を以て、岩山龍を倒したシーン。
 
だけど、戯曲が伝える「A GUNNER」の戦い方は、単に「超遠距離からの連射狙撃」というだけ。 それがどんな射撃だったのか、どうすれば成しうる秘技なのか、それを具体的に伝える

要素は何もない。

「くそったれが…」

普段なら、高揚を感じるそのシーンで、逆に俺は毒づいた。

…誰か、俺にその答えを、教えてくれ。
「A GUNNER」さんよ、どうしたらアンタみたいになれるんだ? どんな訓練をすればいい?
同じ人間だろう? 俺とアンタと、何が違うってんだ…?


そして、戯曲は終劇を迎える。
死闘の末に岩山龍を倒して、村人から英雄扱いされる事になった「A GUNNER」は、村人に見送られて村を去る。 
そこを、ヒロインの女性…シェリーが追いかけていって、無事ハッピーエンド、という幕切れ。
囃し声と共に、酒場の中からも一斉に拍手が巻き起こったが、それは随分と遠い場所から聞こえるような気がした。


起きた後、ずっとこの戯曲を聞いていたので、今ではもう酔いは殆ど覚めていた。
コップに残った冷水を飲み、演奏隊の連中にお捻りを投げてやろうとした時。

場の空気が落ち着くのを待っていたのか、子供がさっと、その停滞した場の中にうまく割って入ってきた。

「あの、すみません…!!」

何だ、という周囲の視線が、その子供…黒髪の少年に向く。 年の頃は10歳そこらだろうか。 
そして、その少年の後ろに隠れるように、栗色おさげの女の子が走り込んできた。 こっちは…5、6歳くらいか?
二人とも、割と顔立ちが似ている。 多分、兄妹なのだろう。

「僕、チアフルから来た、カインって言います! ハンターの皆さんに、お願いがあって来ました!」

カインという少年は、そこで一拍おくと、皆を見回しながら続けた。
それを見る、周囲のハンター達がざわ、とどよめく。

「今、僕たちの村に、巨大な猿がやってきて、村人を襲っているんです!」
「どなたか…。 どなたか、腕に自信のあるハンターさんは、いらっしゃらないでしょうかっ!? 是非、あのにっくき猿を倒して下さい! お願いします!」

<続く>

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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