女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」♯1(3)-2

「笹神龍心」の情報を求めて、リズ…変装したシャルルは、ギルド集会所を兼ねた酒場に潜り込んだ。
無銭飲食という手段で強引に職を得たものの、人間悪い事はできないもので、その日の夜、彼女にとって早速の「受難」が、取り巻きを連れてやってきた。

「ふしゅ~、僕のロイヤルハニーは元気してるかにゃん? にゃんにゃん」


「ちょ、おま」

突然、現れるはずのない客の登場に、オーナーのママとバーテンダーは、揃って声を失う。
肥満が過ぎて、まるで酒樽そのままの体格、脂肪が付きすぎて、顔中心に目や口のパーツが集中したかのような巨漢。
給仕嬢に乱暴が過ぎるという理由で、店に出入禁止になったはずの男。

「ぐひひw あのボルカとか言うDQNは氏んだって聞いたし、もうここは僕の天国確定だぉ! ヂュクシwww」

イースベルト伯爵家の四男…「貴族の恥部」とあだ名される、ダレル・イースベルトだ。
それが、3人ほどの取り巻き…多分ボディガード…を連れてこの店にやってきている。

そう言えば、あの騒ぎがあった時、イースベルト家の二男もここに居た。 用心棒のボルカが壊されたのを聞いて、今なら自分を追い出せないだろうという算段での来店か。

「ママ! ママぁー! 女の子! 女の子、ちょー、だいっ!」

その、人として何か大事な物をいくつか忘れたダミ声を聞いて、酒場中の視線が、さっとダレル・イースベルトの方に集まる。
こいつも悪い意味で有名人、これ以上店の中で好き勝手されたら、黒龍騎士団のせいで減った客がさらに減る…!と思ったオーナーのママは、意を決し、本来なら用心棒の役目だった客払いを、自ら代行する。

「あのう、大変申し訳ありませんが、貴方様は、当店に出入り禁止とさせて頂いたのをお忘れでしょうか?」
「何でだぉ! 女の子! 出入り禁止になったのは以前の僕だろ? 女の子! 今の僕はもうとっくに改心してるぉ! 女の子! だから、何人か僕に女の子つけてぉ! 女の子! それと個室よろしく! 女の子!」

会話の中にわざわざ「女の子」というフレーズを挟み込む、常軌を逸したしゃべり方に一瞬気が遠くなるが、かろうじて持ち直したママは抗弁する。

「あの、酒場はそういう所ではありませんし、以前貴方は個室で…」
「金ならあるぉ! いいから早く個室に案内するぉ! もう僕、いろんな意味でパンパンなんだぉ! 早く女の子つけてぉ! キララちゃん…は兄貴に怒られるから、マナちゃんとレイラちゃんとエリスちゃん頼むぉ!」
「ちょっと、貴方、一体何を言って…!」

だがそこで、ダレルの隣にいたボディガードが、オーナーの手首を握りつつ声色低く忠告してくる。

「主(あるじ)がわがまま勝手なのは重々承知ですが、よろしく頼みます。 あなた方も、極力いざこざは起こしたくないでしょう? 最近は風紀統制のため、軍の見回りも厳しくなっていると聞きます…。 問題を大きくしないためにも、ここらへんで妥協を」
「う…」

…妥協も何も、拒絶が過ぎれば、軍に働きかけると暗に脅されている。 やましい事がなくとも、何度も酒場に軍の監査が入れば、客はいずれ居なくなるだろう。

「わ、分かりました…。 ちょっとお待ち頂けませんか、都合の付く子を相談してきますので…」
「とっととするぉ! もう僕、いろんな意味でハチキレそうなんだぉ! 女の子!」

待機していた女の子を集めて、誰かダレルの相手をしてくれる人は居ないか、と一応聞いたママだったが、全員が首を横に振った。

それも当然で、ダレルは見た目も嫌われているが、何より酒場の女の子を、自分の性的欲望を発散させるための「道具」として扱う態度が、最も嫌われている理由だった。
最初に、何も知らず彼の相手をした給仕嬢は、翌日自ら店を辞め、そのまま行方不明になったほどだ。

「おーい、まだかぉ! いい加減にしないと、僕もう怒っちゃうぉ! とっとと決めるぉ!」

「…誰か、相手してくれる奴は居ないのかい? 今回に限っては、全額ボーナスにするから…!」

しかし、それでも首を縦に振る人間は居ない。
どうしたら、と思っていると、誰かが小さく、こっそり呟いた。

「…あの~、役立たずのリズって奴を~、当てたらどうですか~?」

給仕嬢全員が、それは名案と言った表情をする。
もう、誰がその提案をしたのか詮索せず、皆はその提案に食いついた。

「そう、そうだね、それが良いよ…!」
「少しは店の役に立ってもらわなきゃ…!」
「これも人生経験だよね…!」

たちまちのうちに、客を応対していたリズが途中で呼び出されて、ダレルの応対をする事になった。

「どうですか、このリズって娘は? 貴方様にお勧めの、期待の新人なんですよ?」
「…悪くないぉ。 むしろ良いぉ」

ダレルは、リズの体を上下に往復して眺めつつ、そんな感想を漏らす。

「なら、この娘だけでも構いませんか?」
「まぁ、良いことにするぉ。 その代わり、一晩貸し切りぉ」
「それはもう! …おい、リズ! こちらの方はね、大貴族様の御曹司なんだよ! くれぐれも、失礼がないようにね!」
「はぁ…。 あの、えと、一晩の間、普通にお話すれば良いんですよね?」
「…まぁ、そうだよ。 決して粗相がないようにね」

こうして、リズはダレルに手を引かれ、二階の個室に連れていかれた。

その様子を、ダレルの素性を知ってるなじみの客や、他の給仕嬢は、皆一様に沈痛な眼差しと共に、鉤状に折り曲げた人差し指を、顎に当てて見送った。

これで、なんとか今回のトラブルは凌げるだろう。
彼女にとって、今宵は悲惨を極める夜となるだろうが、用心棒不在の今、最小限の被害に押しとどめる事ができて助かった…と、誰もがそう思っていたのだ。

…ところが、ほどなくして、二階から乱闘を思わせる振動と騒音、そしてぷぎーという、プーギーの鳴き声のような悲鳴が聞こえてきた。

それを聞いたダレルのボディーガード達は、一斉に階段を駆けあがり、次々と部屋に飛び込む。
その部屋から続く、くぐもった悲鳴と乱闘の音。

「え…、ま、まさか、リズの奴、殺されちゃったんじゃ…?」

給仕嬢の誰かがそんな事を言う。
ダレルに迫られて拒否するのは予測できたが、よもや全力で抵抗するあまり、椅子や花瓶でダレルを殴りつけたのでは…。
貴族のボディガードもそう判断して、部屋の中に飛び込んだのだろう。

ただ、基本的に酒場は法律の目の届かない場所。
貴族の息子が、酒場に繰り出したあげく痴情のもつれで死んだ、などという話になれば、それは社交界で永遠の笑い者となる。
だから、酒場でのトラブルは、極力「なかった事」にするのが鉄則。
リズという給仕嬢の存在自体を、「なかった事」にされたのかと、ぞっとするような想像と戦慄が皆を襲ったが…。

「ぷぎゃーーーーーっっっ!!」

肉の塊…いや、ダレルが悲鳴と共に、階段をドドドと転がり落ちてきた。

「…全く…、何だってのよ、ずっとお話をしてれば良いんじゃなかったの? 何が僕のドールちゃん、よ」

二階の階段から、リズがゆっくりと降りてきた。
ドレスの肩口の布地がむしりとられて、胸がはだけそうになるのが気になるのか、そこをちょっと強引に結び直しつつ、ダレルを見る。
ダレルはボコボコにされて血塗れだったが、リズには肩口が破れた以外、特に目立った外傷はない。

…さっきの、部屋に飛び込んだボディーガード達はどうしたのだろうか?

「あひゃ、ひいっ…! お、お前、何だぉ! 何で僕に逆らうんだぉ! 僕はイースベルト伯爵家の四男なんだぞ! ちょっとくらい喧嘩強くたってなぁ、お前みたいな奴、パパに言っていつでも抹殺できるんだからな!」

だが、リズはダレルの恫喝なぞ全く無視して、取り巻いて見ていた給仕嬢と、オーナーのママに話しかける。

「…あの、この酒場って、いつもこんな事やってるんですか? こんな行為、法で禁じられてるんじゃありませんでしたっけ」

リズの周囲の空気が硬質なものに一変している。
蛇に射すくめられた鼠の如く、ママはその質問に直立不動で答えた。

「い、いや、普段はそんな事やってないんだよ…。 その貴族達に脅されて、仕方なく…。 今、ウチには用心棒も居ないから…。 ほ、本当だよ!」

ここで、リズはダレルに初めて向き直った。

「…という事だそうですよ、ダレルさん」
「?」
「このお店は、そんな事する所じゃなくて、皆で楽しくお酒を飲む店、という事です。 なので、貴方みたいな人は、出ていってもらえますか?」

客の間から、おお、という小さな歓声が上がるが、その発言に対して、紅潮した顔をさらに醜悪に歪めるダレル。

「な…何だぉお前、僕を怒らせるなぉ…。 貴族である僕のバックに、誰が付いているか、分かってるのか?」
「どなたです?」

もし、自分が無事生還できて、再び軍務に帰り咲く事があれば、その組織は潰してやろう。 リズはそう思った。

「…この国最強の軍隊、『黒龍騎士団』だぉ」

その返事を聞いて、リズは盛大に噴いた。
笑い転げるリズのその様子を見て、ダレル始め、あっけにとられる周囲。

「それはそれは…。 黒龍騎士団とかなら、団長でも、右騎将軍でも、左騎将軍でも、誰でも連れてきて頂いて結構ですよ。 本当に、貴方にそれが可能なら」
「…!? お、お前、一体、何者だぉ…。」

紅潮した顔を、今度は蒼白に変化させるダレル。
黒龍騎士団の名前を出して驚かない人間など、この国に居るはずがない…。 
そう甘く考えていたであろうダレルの顎を、リズは鷲掴みにすると、誰にも聞こえないよう、その耳元に、そっと囁いた。

「…我が名は、シャルル。 バルベキア三国王直属近衛兵『黒龍騎士団』団長、シャルル=サンドリオン」
「ぐぇ、げぇぇっ…!?」

恐怖のあまり、轢き潰されたカエルのような声をあげるダレル。
ちょっと悪ノリし過ぎたかな、と思ったシャルル…リズは、小声でフォローを付け足す。

「…今日は悪い豚さんがお越しとの事だったので、こうして見張りのために潜り込ませて頂いてました。 もう、こんなおイタしちゃダメよ」
「あわ、はぁ、ああぁぁ…!」

ガマガエルのように、恐怖で油汗を全身どっぷりと掻いたダレルは、腰を抜かして四つん這いのまま、店から逃げ出した。 
後から分かった事だが、二階に向かったボディガード達は、リズに叩きのめされて全員気絶していた。

「あ、アンタ、一体何者なんだい…?」

ママが、皆思っているであろう事を、リズに問いかける。

「うふっ。 リズ、って言います。 本名エリザベス。 昔、ちょっとハンターやってました」
「そ、そうかい…。 ハンターだから、そんな強いのかい…? …あ、あの」
「何か?」
「よ、よかったら、アンタ、しばらくの間、用心棒を…やってくれないかい? そんな強いのなら、是非頼むよ」

こんな経緯で、リズ…シャルルは「雲龍の宴」亭の給仕嬢兼用心棒役に収まる事となり、他の娘から一目も二目も置かれる立場になったのが、つい一昨日の事だった。

そして場面は、今日の「雲龍の宴」亭に移る。

「にしても~、昨日の悪王さんは~、スゴいイケメンでしたね」
「そうだね、本当に強そうだったね」
「…リズ姉さんは、興味あるのはそこなんですか~? 顔じゃなくて、強い男が好み?」
「んー、正直、表のハンターがあれほどの強さとは思わなかったから。 世間は広いなぁ、って思ってた所」
「あれほどの強さって…」

リズも相当喧嘩が強いらしいが、リズは結局、悪王と接触する機会はなかったはずだ。 見ただけで、そんな相手の強さとか分かるもんなんだろうか。

「分かる。 分かるよ。 彼の身のこなし、纏ってる『気』の質と量、一朝一夕の修練で会得できるものじゃないもの…。 あの若さで、想像を絶する訓練を積んできたんだわ」
「リズ姉さん、そこで笑うの、ちょっと怖いです」
「あ、ごめん」

兵士と狩人という道の違いこそあれど、明らかに自分と彼は同族。
我かくあるべしと、強固な信念を心の中に打ち立てた、自ら信じる「強さ」への殉教者。
自分の人生は、孤独な砂漠の旅と思っていたが、なんのなんの、市井には、似たような奴も結構居るもんだ…。

ギルドの台帳を整理しながら、そんな事を考えつつ、「これは」と思ったガンナーの名前の欄に、自分しか分からないようなチェックマークを付けていく。

…ギルドの情報を、ある程度把握できる場所に潜り込めて、本当に良かった。

もしも、「笹神龍心」がもう近辺まで来ているのであれば、それらしい情報はハンター間の噂に登るはず。
笹神が伝説どおりの弓使いであれば、元々東方伝来の技術である「練気術」を完璧にマスターしているだろう。
それは同じく、「練気術」をマスターしている自分にも知れるはず。 直接見る事さえ出来れば、普段練っている気の多寡から、ある程度目星は付くはずだ。

だが、もしも笹神が見つからなかった場合、その際には別の手段を講じる必要がある。 
それはすなわち、無名のガンナー達による奇襲攻撃。
「砂塵の嵐」の面々は、イルモードに目を付けられているため、まずもって協力を仰ぐのは不可能。
ならば、フリーランスの傭兵や、ソロ専門の狩人をスカウトして、組織し奇襲攻撃を仕掛けるというのが、一番現実的な策だった。

しかし、フリーの連中に、命まで掛けさせるのはさすがに無理だ。 それどころか、クリス王子が出てきたりしたら、連中は我先にと逃げるだろう。
また、フリーの連中を組織するには、膨大な金が要る。
それをどこから調達したもんか、とリズが思案に暮れていた時…。

「もしもし、お姉さん? あの~、ウチ、ハンター登録したいねんけど、ギルドカード発行してくれへん?」

「…え?」

リズの目の前に、いつの間にか、弓を後ろ手に持った、ポッケ編みの女性が立っていた。

…いつの間に? この自分に気づかれる事なく?


<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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