女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」♯1(2)-2

ここで話は2日前、ノーブル城から逃げてきたシャルルが、馬小屋の飼い葉倉庫で眠りにつき、目を覚ました場面から始まる。

「うぉぐ…」

乙女の寝起きとは思えない声を漏らしながら、シャルルは起きあがる。
朝の日差しで目が覚めたものの、背骨と脳に鉛が入ってるんじゃないかと錯覚するほどに、体が重い。
のみならず、首、肩、腕、わき腹、腹筋、腰、太股、ふくらはぎ、足裏と、全身漏れなく筋肉痛になっていた。

軍人として、苛烈な鍛錬に臨んでいた日々。
多少の戦闘では消耗する事などなく、例え戦場に出たとしても、一晩寝れば完全に回復する。
そういう風に自分を鍛え上げてきたつもりだったし、事実そうだった。

しかしそれでもなお、ここまで自分を消耗させていたとは、昨晩の戦いは本当に骨身を削るものだったらしい。

「(まいったなぁ…)」

座ったまま柔軟を行い、バキバキと音が聞こえそうな全身をゆっくりとほぐした後、黒龍の鎧を袋に詰め、痛む全身を引きずりながら、シャルルは人目を忍んで馬小屋を出た。

彼女が今居るのは、バルベキア三国の最も東に位置する、オネスト郡県(ランド)の中央通り。
地方都市にしてはそれなりに発展しており、石と煉瓦作りの街道は、意匠を凝らされた造形の看板があちこちに立っている。
そこかしこに点在する、鍛冶屋、武器防具屋、道具屋、ギルドを兼ねているであろう酒場や宿などからも、行商人や客の出入りが多く、また兵士やハンターの姿も見える。

もちろん、普通の店舗だけではなく、青空の下、路地にはあちこちに露天商が軒を並べ、美味しそうな果物、雑貨類、乾物がこれでもかといわんばかりに軒を連ねている。 そしてそれを求めて行き交う、大勢の人々。

政治に関わる者なら喜ぶべき、住民の生活力のサイクルが十分に漲っている様子が伺えた。

「どうしよう…」

だけどシャルルは、そんな街の様子に気をやる余裕は全くなかった。

…すっごくヤバいよ、私のお腹。

肉がこんがり焼かれる匂いと、果物の甘い香りに引きずられ、ふらふらと、足が意図せず露天商の方に向いてしまう。

背中の皮とお腹の皮がくっつきそうなほどの、とんでもない飢えと渇きがシャルルを襲っていた。
鎧の副作用だとは分かっているが、たった1日しか経ってないのに、もう何日も断食した後のような飢餓感。
今、目の前にある露天で売ってる、完熟マンゴーとか食べたら、間違いなく美味でほっぺが落ちちゃうだろう。

…でも、手元には、300zしかない…。

着のみ着のままでノーブル城を逃げてきた、シャルルの全財産。
だけど、食事なんぞに無駄な時間を使っている場合じゃない。
一刻も早く、この命尽きようと、エイグリル将軍を助けなくてはならないのだ…!

だけど、そのためには、どうしたら…?





「さぁさ、どうだい、そこの可愛いお嬢さん! この良い出来の完熟マンゴー! メリーランド産の、取れたて旬ものだよ! 1個たったの150zだ!」
「マンゴーひとつお願いします」
「おっ、さすがお目が高いね! はい、お釣り50万zだよー!」

もちろん貰ったお釣りは50z銅貨だが、シャルルは貰った完熟マンゴーを、まるで宝石を見るように手に取った後、その場で思いっきりかぶりついた。

「おいひい…!」

思わず声が出てしまう。 砂漠で飲んだ水なんぞ比較にならないくらいの、至高の美味。
夢中で残りの部分も食べ尽くし、ヘタと種だけになってから、シャルルは我に返った。

「ど、どうしよう」

なけなしのお金が、いきなり半分になってしまった。
だけど、完熟マンゴーの栄養分が、ちょっと脳にも回ったせいか、シャルルは打開策を思いつく。

「(…そうだ、少しの間、ギルドで働こう)」

今の自分に必要な物は、情報。
エイグリル将軍を救出できる可能性のある「笹神龍心」を見つけるには、情報が集中する場所に行く必要がある。
味方に見つかる危険はもちろんあるが、軍の動向を把握するためにも、変装してハンターズギルドに潜り込むのは有効な策のはずだ。

そう思ったシャルルは、ズタ袋を背に構えると、別の露天商で変装に必要な品物…このラティオ活火山帯の特産品である「センショク草・黄」を有り金叩いて買い込むと、酒場を探し始めた。
ハンターズギルドを兼ねてそうな、出来るだけデカい酒場か、宿…。

「(…あれがいいかしら)」

その店は、ちょっと裏手に位置し、少し怪しげな雰囲気があったが、ハンター達らしき人物が幾人も出入りしている。 活気がある証拠だ。 怪しげな雰囲気も、身分を隠しながら活動するには、都合が良いと思おう。

「(…名前は…。『雲龍の宴』亭ね、よし)」

店の名前を確認したシャルルは、そこで働くべく、酒場の扉を叩いた。


そしてそれから2日後、「雲龍の宴」亭の夜。
雲龍の宴亭は、昼の健全な飲食店から様相を変え、酒とタバコ、そして香水の香りが漂う、いかがわしげな酒場へと一変していた。
それを金髪の給仕嬢、リズが周囲を見回しながら一言。

「…にしても、また随分とお客さんが入るもんね」
「ヴェルドとここの国境付近で、何かイベントがあるらしいんですよ~。 見物ついでに、この国でお金を稼いでおこう、とかそういう事らしいです~」
「へぇ、イベント…何なの?」

リズとしては「女性と喋って鼻の下を伸ばす男連中のなんと多いことか」という意味で言っていたのだが、元々給仕嬢歴が長いマナには、そうは受け取って貰えなかったらしい。

「何だか、有名なハンター同士が対決するとか何とかって話だそうで」
「へぇ~、そんなのに、これだけの人が集まる訳?」
「あたしはよく分からないですけど、ハンターにとっては、見逃せない一戦みたいですね。 …ほら、あそこでもその話をしてますよ」
「ホントだ、相手の男の人、メチャメチャ気合い入れて喋ってるね。 レイラは全然聞いてないけど」

この酒場では、男性と給仕嬢が一対一でお酒を飲む、というシステムになっている。
指名があれば、その娘が客の相手をする事になるが、そうでない場合は、誰か手の空いている者が入り、他はお酒やおつまみの準備、配膳などを行う。

リズとマナはお客には付かず、お酒の給仕を行いながら、この盛況を眺めて、そんなやりとりをしていた。

「でも、マナ、ごめんね、あたしが貴女のお客を追い返したばっかりに、貴女まで暇にさせちゃって」
「良いんですよ~、逆に助かりました☆ それに私も、お姉さまに付いていた方が楽しいですし~☆」

夜は昼と違い、酒とつまみの出はのんびりしたものなので、指名がなければそこそこゆっくりできる。
あれこれ雑談をしていた二人だったが、そこに顔色を変えて、オーナーのママがやってきた。

「ちょっと、リズ! アンタの出番だよ! あの疫病神が、やって来やがった!」
「…疫病神? あの、マルクさんってハンターですか?」
「わ、本当だ!」

入り口に目をやると、バーテンダーと、あの昼間のハンターが、入る入れないで揉めている。

「ごめんなさい! 私、厨房に隠れますね~!」

マナはさっさと厨房に隠れてしまったが、リズは、しばらく考えて…。

「…分かりました。 じゃあ、私があの席に入って、彼のお相手をします」
「いや、アイツをつまみ出して貰えれば良いんだよ! また、黒龍騎士団の連中が来たりしたら、こっちも困るんだから!」
「大丈夫ですよ、ご心配なく」
「アンタがそういうなら、任せるけど…。 くれぐれも穏便に頼むよ」

-----------------------------------------------

「こんにちは、ご機嫌いかがです?」
「何でお前が出てきてんだ、おい」

俺は思わず毒付いた。

この「雲龍の宴亭」に入ろうとして、またも入り口で止められ、バーテンダーと口論となった。
俺のせいでマナが辞めた、お前が居ると被害ばかりだから、出てってくれと言われて頭に来て、そんなモン冤罪だろが、とモメにモメた。

結局は、こうして渋々と中に通してくれたが、俺をさらにイラだたせ、思わず毒づかせたのは、昼間の金髪女が出てきた事だった。

「おい、俺はマナを指名したんだけどよ」
「昼も言いましたけど、マナは退店してますんで、それは無理です。 お気に召さないかもしれませんが、代わりに私がお相手させて頂きたいと思うんですけど…いかがです?」

俺の怒りの視線を受け流し、フラヒヤビールのボトルとジョッキ、そしてボイルドミックスビーンズのお通しを出してくる。

「おい、俺こんなもん頼んでねぇけど」
「サービスですよ、私の」

そう言って艶っぽく微笑む金髪。

…美人じゃん。

昼間、さんざ口論したこの女は、間近で改めて見たら、もの凄い美人だった。
吸い込まれそうな緋色の瞳と、大きく開いた豊かな胸元。
スリットから覗く太股は、大きめのリボンで装飾されてて、思わず目が引き込まれてしまう。

「…どこ見てるんですか? …目線が下がってますけど?」
「…いや、俺、財布持ってたかなと思ってさ」

…困った事に、俺の怒りは、穴の開いた風船みたいに、ひゅるひゅると萎んでいった。
男の悲しい性なのだが、美女には…逆らえないのだ。
自分でも驚くほど怒りのボルテージを下げた自分を、我ながらみっともなく思ったが、女は俺のそんな変化には気づくでもなく話かけてきた。

「せっかくですから、飲みません?」

そう言って金髪の女は、くせっ毛なのか、一房跳ねてる前髪をひらひらさせながら、俺にフラヒヤビールを注いでくれる。

「どうぞ」
「…さ、サンキュ」

「ところで、お客様はハンターとお伺いしてるんですけど、どんな狩りをされてるんです?」
「あんたに喋って分かるのかよ」
「多少は分かるかもしれませんよ?」

ジョッキ半分を一気に空けた俺の杯に、女は再びビールを注ぎ足してくる。
面倒だったので、細かい解説などは加えず、自分が流れのライトガンナーである事、自分なりの狩りの仕方などを、あれこれ足早に説明した。

「…へぇ、ガノトトス亜種に毒弾を持ち込むなんて、随分相手の弱点を狙い尽くした戦いをされるんですね」
「…あんた、分かんの?」
「ええ、原種には毒はあまり効きませんし、普通は貫通弾を持ち込むのがセオリーですから、わざわざ毒弾を持ち込むなんて、相手を隅まで研究し尽くしてないと、普通はしようとしませんね」
「…詳しいな。 でも、貫通弾は正面に立たないと意味ねーからな。 側面から攻撃できる火炎弾や、電撃弾の方が安全という意味では効率的なんだぜ」
「経費は嵩みますけどね」

だが、女は俺の話に、全然余裕で付いて来た。

「(…何モンだ、コイツ)」

とても、酒場で付け焼き刃の知識を教え込まれた物とは思い難い。
そう意識した途端に、この女の肩や二の腕が、女性にしてはかなり太く、鍛え込まれてるのがはっきり分かった。

「…アンタ、もしかして、ハンターなのか?」
「元、ですけどね」
「道理で、妙に詳しいと思ったよ…。 HRは?」
「想像にお任せします。 …でも、貴方が想像しているよりは、かなり低いですよ」

そう言って、誰もを虜にするような、魅力的な笑顔でふふふ、と笑った。
まぁ、こんな美人で腕っこきのハンターだったら、ギルド中の噂になっていたろう。
一応古株の俺が、噂を全く聞いたこともないという事は、細々と仲間内だけで狩りをやってたか、ある程度のレベルで敵の強さに付いていけなくて引退したのに違いないだろう。

「まぁ、狩りの世界は厳しいからな」
「ところで、ちょっとお伺いしたいんですけど…。 最近、国境近くで開かれるイベントって、何なんですか? 最近は、ハンター同士で戦う見せ物でも出来たんです?」

女が、身を乗り出してきて、そう聞いてきた。
大きく開いた胸元の谷間がチラリと見え、思わず目が行きそうになる。

「…? ああ、そうだけど…。 いくらアンタが詳しいっつても、知らないと思うぜ」
「一応、どんなものかだけでも」
「正直、かなりくだらねーけどな…。 あんた、『プロハンター』って知ってる?」
「『プロハンター』? …何ですか、それ」

以前は、ごく一部の者しか就職できなかった、この「ハンター」という職業。 
ミナガルデの黎明期、ハンターの数が少なかったのは、この職業が、己が身一つで大自然と渡り合うという苛烈さ故だった。

だが近年、ギルドの規模拡大と共に「安全かつ安心な狩り」が出来る環境を整え、より強いハンターの育成を推し進めた結果、ハンターという職業の敷居は恐ろしく下がり、同時にその数は右肩上がりに増え続けた。

その中で、いずれ登場を予見された連中が、遂に現れたのだ。
自らを「プロハンター」と名乗る、自身の戦闘能力に、尊大なまでの自負を持つ連中。

大自然の中では、本来格上の存在であるはずのモンスター達を、罠も資材も使わず、己の武器のみで叩きのめしてしまう連中。

最初、その話を聞いたとき、俺は耳を疑った。
人間の身でありながら、明らかに生物としての上位存在者である「モンスター」を越えられるはずがない、と。

だが、それは事実だった。
俺がその話を確認しようと腰を上げた頃には、ギルドは既に、闘技場にモンスターを放り込んで、それを狩人が単独で、何の資材も使わずに狩る…という見せ物が行われていた。

「その、喧嘩自慢…プロハンターの代表とも言える存在が、『悪王』…BAD=KINGって奴なんだよ」

「…へぇ~、そんな方居るんですか」

「…ちょっと待って? おいおい、あんた、『悪王』知らないのかよ!? もの凄い有名人なんだけど!」

全身を特注のディアブロZシリーズで包んだ、素性が一切不明の、巨漢のハンマー使いにして、太刀使い。
その威名はギルド内に余すことなく轟き、一流のハンターですらが、彼の影を踏むことすらをも避ける、現役にして既に伝説のハンター。 それが『悪王』。

彼は一般の観衆の視線にも触れる闘技場での戦闘を好んだし、その姿はギルドの広報誌でも頻繁に取り上げられている。 
一般人ですら知る彼を知らないなんて、こいつ本当に、ハンターなのか?

「申し訳ありません、仲間うちでしか狩りをしてなかったもので…。 で、その方が?」
「何と言ったら良いんだろうな…。 彼を軸に、時代の流れが出来始めた、とでも言えば良いのか…」
「時代の流れ? またスケールの大きな話ですね」

比喩でも何でもなく、それは一つの時代だった。
悪王…彼の特筆すべきは、何と言っても、その並外れた強さ。

俺が見た時は、彼は太刀を使っていたのだが、彼の一挙一投足は、長年の戦闘経験がなせる業か、まるで流水のように、全く無駄のない動きで相手を避けていた。
そして、放たれる太刀の一撃は必殺で、ティガの渾身の一撃を太刀の刀身で押し返し、最も堅牢と言われるグラビモスの胸部装甲すらをも断ち割っていた。

食物連鎖…生物のヒエラルキーの逆転を体現した、その圧倒的強さに、若いハンター達は驚嘆し、賞賛し、そして魅せられた。
「A GUNNER」が銃士に対し、凄まじい影響力を持っていたように、剣士の誰も彼もが、「悪王」の真似をし、彼の主張を受け入れはじめたのだ。


「…そんな強い方だったんですか。 じゃあ今度、その方が、別のハンターと戦うと?」
「…らしいね。 俺も正直、あの『悪王』に刃向かう奴が居たなんて、ちょっと信じられないな」
「相手の方は、なんて人なんです?」
「…たしか、『銀狼』って二つ名のハンターなんだけど、俺は聞いたことないな」
「へぇ~、隠れた実力者、て訳ですかね」
「そうだろうな…。 実際、売名に全く興味のないハンターも居るから、在野に無名の強者が居てもおかしくはない。 噂には良く聞くよ」
「悪王さん、どんな人なんですかねぇ。 一度見てみたいなぁ」

…緋色の瞳が、興味でキラキラと輝いていた。
やっぱ女は、強い男が問答無用で好きなんだよな。

モンスターの世界においては、例外なく、強い雄が弱い雄を駆逐し、雌を優先的に確保する。

そして皮肉な事に、知性ある人間の世界においても、この摂理は当てはまる。
強い者だけが、女も、富も、栄誉も独占する事ができるのだ。
弱い者にとっては、その中の一つですら、満足に手にする事は難しい。
時代の流行がどうなろうと、こればかりは不変の真実だ…。

「おい、ビールくれよ、ボーッとしてんじゃねぇぞ!」
「あ、ごめんなさい…。 でも、この先は有料になりますけど? …それに、あたしで良いのかしら?」
「良い。 アンタで良いよ。 ビールも追加してくれ」
「かしこまりました」

…しかし、何かこの女、調子が狂う。
普通、酒場の女には「着飾らずにバカ話ができる」…という、良い意味で頭悪い女が多いのだが、コイツにはそんな影が微塵もない。
何というか、一緒に居るだけで気圧されるような、独特の威圧感があるのだ。

「何か?」
「いや、こうして見るとアンタもなかなか美人だなと思ってさ」
「ふふ、ありがとうございます」

そうだ。 多分、「表情」なんだろうな。
この女の凛とした感じ、こいつの表情には、だらしない所がないからなんだろう。
同じ美人でも、表情や仕草が違えば、これだけ雰囲気が違うのか…。

「ところで、悪王さんって、何でそんなに強いんです? 他に何か、ご存知の事はないんですか?」
「…悪王の事とか、どうでもいいじゃんよ、別の話しようぜ」

女の口から飛び出る、他の男の話ほど、不味い酒の肴はない。
だが、この世界の、狩人の神様…確か、狩りの神様は、女神様だったっけ…は、この時期の俺の事が、とことん嫌いだったようだ。

「お、うお、おおおおっっっ!!」
「……!!」
「ま、マジで…!? 何で、あの人が、ここに…!?」

俺が話を続けようとしていた矢先、酒場の入り口が騒然となる。
金髪の女もそちらに視線を向けたので、釣られてそちらを見た瞬間、俺も凍り付いた。

「ささっ! 兄貴、ここどうです? この雰囲気! 事前にリサーチして調べといたんですよ! 酒旨いし、可愛い女の子、沢山居ますよ! キララちゃんって娘が俺のオススメ!」

派手な色の髪の毛をあちこちに逆立てた、若い大剣使いが、誰かを手招きしている。

「…あのね、誰がそんな事調べといてって言ったの? 雰囲気の良い所、って言ってたでしょ?」
「良いじゃないっスか、ティアさん! 兄貴だったら、絶対こういう雰囲気好きですって! 同じ男同士、分かるんですから! 兄貴も、こういうエロいの大好きですよね!?」
「…お前と同じ見境なしじゃねーだろ、マグナス。 …コーホー」

大剣使いの後から入ってきたのは、赤いボブカットの女性の双剣使いと、全身を隆々たる肉の鎧に包んだ、ヘヴィガンナーだった。

だが、酒場に居たハンター達全員が凝視していた人物は、その後から付いてきた。

その人物は、ごく静かに、普通の歩みで入ってきた。
カスタムされたディアブロZシリーズに身を包み、ウェーブの掛かった長髪と、顎髭を少し蓄えた、眼光鋭い精悍な青年。

…俺の想像より、遙かに若い。

酒場の誰かが、その青年を見て、呻くように言った。

「…ば…、 BAD…、KING…? 本物、の…?」

その余りの強さゆえ、影を踏む事すら恐れられる、現役にして既に伝説のハンター。
素性こそ一切不明であるものの、野獣のように全身から漏れ溢れる、尋常ならぬ覇気が、この青年を本物の「悪王」だと、この場に居る全員に確信させた。

悪王は、髪の派手な大剣使いの青年に促され、予約の入っていた席の真ん中に座り込む。
その脇に、さっきのボブカットの女性…恋人、だろうか? が座り、対面に筋肉ガンナーと、髪の毛ド派手大剣が並んで座った。

そして悪王は、やや高揚している給仕嬢から、お通しのドリンクを渡されると、少し笑みを浮かべて口を付けた。


「すげぇ! スゲェ、マジで悪王見ちゃったよ、俺…!」

「何だよ…! じゃあ、銀狼と戦うって噂、本当だったのか!?」

「いやぁ…カッコいい…。 聞いてたのより全然素敵…!」

その場に居た全員が呆然となって、口々に感想を漏らす。
集団の視線が、漏れなく「悪王」一人に注がれるという、この異様な光景から俺はいち早く目を逸らしたが、あろうことか、俺の相手をしてくれていた金髪の美女も、視線は悪王に釘付けになっていた。

「(何だよ、お前等…)」

内心そう毒付きかけた時、俺は別に視線を感じた。
視線を感じた厨房の方を振り向いた時、俺はまたも、後頭部を殴られたようなショックを受けた。

「(てめぇ…。 やっぱり居たんじゃねぇか)」

…そこには、「悪王」を熱っぽい視線で見つめる、マナの姿があった。

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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