女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」♯1(1)-2

「『雲龍の宴』亭はここかッ!?」
「な、何だよ、アンタたちは!」
「警備隊だッ! 勅命により、この酒場に逃げ込んだ犯罪者を探しているッ! 『マルク=ランディッツ』って奴が此処に居るだろう!? 隠すとタメにならんぞッ! 捜査協力のため、営業を今すぐ中止しろッ!」
「な、何だってーー!?」

その言葉に、酒場の中が一気にざわつき始める。
ヤバい、と思うと同時に、警備隊の連中が、ドカドカと酒場の中に十字槍を構えて入り込み、楽しく酒を飲んでいた連中を威圧した。

「全員、動くなッ! 今の命令を聞いて、なお動いた者は反乱の意志有りと見なす! 立っている者は、その場に座れッ! 貴様もだッ!」

内心で舌打ちし、逃げようとしていた俺は仕方なく座席に着席する。

「ちょっとちょっと、何だよアンタ達! 店の営業妨害も良いところだよ!」
「何だ貴様は? バルベキア三国民でありながら、我々に反抗するつもりか!? 誰のお陰で店が営業できていると思っている!」
「あたしが届を出したのは、商工組合(マイスターギルド)の方にだよ! アンタらこそ、ウチらの縄張りで、我が者顔して欲しくないね! まず、その物騒な得物を引っ込めな! そんなモンちらつかせてちゃ、お客さんが安心して飲めないだろ!」
「なんだと、貴様…!」

この「雲竜の宴」亭のオーナーであるママと、警備兵が口論となる。 …肝っ玉だけは大したもんだ。
この混乱の政情下、勅命(王の命令)って事で乗り込んで来たという連中相手にそんな啖呵切ったら、下手すりゃ首が飛ぶぞ。
俺自身、そんな悪さをした覚えはないし、この嵐のような騒動の中に顔を突っ込む気もないので、とりあえず静観する事にした。

「我々バルベキア三国の警備兵に逆らう気か!? 貴様、命が要らないようだな!」
「きゃあっ!?」

この店のママが槍を突きつけられ、恰幅に似合わない可愛らしい声を出した直後、当の警備兵が不格好な姿で吹っ飛ぶ。
さっきの、格闘士出身の用心棒が二人の間に割り込み、兵士を殴り飛ばしたのだ。

普通、武器を持っている者とそうでない者が対峙した場合、素手の者の力量が遙か上回っていないと勝負にならない。 しかも王直轄の警備兵をあっさり殴り飛ばすとは、あの用心棒、やはりかなりの実力者だった。

「な、何だ、貴様ッ! 我々に刃向かうのかッ!」
「お前等、いい気になるんじゃないぞ…。 軍人だから、市民に何をしても良いと思っているのなら、それは大間違いだからな…!」

そう言って、その用心棒は両腕を交差しつつ半身に構える。 重心は前後にバランスよく取られており、どこからの攻撃にも対応できる構えだ。

「我々に手間を取らせるな! 酒を飲んでいるだけの、貴様ら一般市民と違って、我々は多忙なのだ!」

「…酒場の邪魔が仕事たぁ、いい身分だな、木っ端役人どもが!」
「…そうだそうだ! 俺たちの憩いの一時を邪魔すんじゃねーよ! 行け、やっちまえ!」

いい雰囲気を邪魔された酒場のあちこちから、用心棒を後押しする声援が飛び、警備兵と再び小競り合いとなるが、その格闘士は、槍の間合いなど物ともせず、兵士の懐にスルスルと入り込み、次々と兵士をブン殴っていく。

っていうか、いくら酒場のもめ事は表沙汰になりにくいとは言え、王直轄の警備兵にそんな事してたら、後で確実にお咎め来るだろうに、大丈夫なんだろうか…と俺が心配するくらい、その用心棒は容赦が無かった。 
いわゆる「軍人嫌い」なんだろうか?

「な、何だ、コイツ…! 将軍! カッツェ将軍! お助け下さいッ!」

すると、入り口の方から、兵士達をかき分けて、金髪の男が姿を見せる。

「まぁ、まぁ、まぁ、まぁ! それぐらいにしてやってもらえませんかね、用心棒さん!」
「何だ? 貴様も警備兵の一員か?」

…そう言われると、その金髪の男はちょっと困ったような表情を浮かべる。

「いやぁ…。 まぁ、やっぱ、鎧を付けてないと、雑魚っぽく見えるのかなぁ、これでも俺、精一杯威厳保ってるつもりなんだけどな」

そいつは、表情とは裏腹な、実に爽やかな声でそう言った。
だが、威厳と言っても、そりゃ無理な話だろう。
何故なら、声だけじゃなく、平均より少し低い背に、細めの体躯、延ばした金髪を後ろでくくるというファッションは、顔立ちの端正さも手伝って、盛り場で女を口説いてる優男、という表現が似合いの風貌だったからだ。

「さっきさぁ、将軍お助け下さいって言われて、俺が出てきた訳じゃん? だから、俺がその『将軍』なんだよ」
「…何?」

その金髪の美青年は、肩をすくめた仕草の後に、足を肩幅に開くと、短く敬礼してから、用心棒の眼前に書状を取り出して、その内容を述べる。

「我が名は、バルベキア三国王直属近衛兵『黒龍騎士団』右騎将軍、シュバルツェ=カッツェ! 雲竜の宴亭内に、我々が依頼を受けた犯罪者が紛れ込んだとの事で、捜査をしている最中だ! 容疑者指名は、『マルク=ランディッツ』! ガンナーだそうだ! 手間は取らせないから、協力をお願いしたい!」

金髪がそう言うと、店内がどよめいた。
かく言う、俺も驚きだ。
俺が犯罪者扱いされているのもそうだが、「黒龍騎士団」と言えば、バルベキア三国の国民なら誰もが知る、この国最強の部隊。
その隊長格がわざわざ、こんな場末の酒場に来るとは。
そしてその正体が、こんなチャラ男だったってのも二重の意味で驚きだ。

「…貴様が、あの『金獅子』なのか?」

その告白が信じられず、用心棒が思わず問い返す。
その気持ちは俺もよく分かる。 この国に来て日の浅い俺とて、「黒龍騎士団」の武勇伝はこれでもかというくらいに聞いた。 先日だって、数に勝るヴェルド軍の攻勢を跳ね除け、徹底的に敗走させたという話があったばかりだ。

だがあの外見からは、どう頑張っても、奴がそんな歴戦の兵士だとは思えない。 実際に周囲からは、こんな緊迫した雰囲気にも関わらず「あの子可愛い~」って声すら漏れる始末。
…これだから女って奴は。

「そうそう、俺がその『金獅子』なんだよね、まぁ、ちょっとこの二つ名、いくら俺達のボスのエイグリル将軍がさぁ、『獅子将軍』っても呼ばれてるからって、金獅子じゃラージャンと被ってるじゃねーか、って言いたい訳よ。 …で、こっちが『銀獅子』こと、『ウィルフィー=ドルカーン』、俺の相棒」

そう言って、その金髪は、銀髪の青年を用心棒の前に引っ張って来る。
銀髪の青年は、表情豊かな金髪に対し、全くの無表情だったが、これまた希有な美青年だった。
タレ目で柔和な感じの金髪に対し、切れ長の眼に、触れれば斬れそうな精悍な感じを全身から発散させている。 
例えるなら、氷で出来た長剣と言った所か。

「まぁ、そういう訳でさ、俺たちの身分もはっきりした所で、さっさと容疑者を確保させてくれねぇか? よろしく頼むよ」
「…営業終了後になら、構わん」

用心棒はそう返答し、それを聞いた金髪は、意外と言いたげな表情をする。

「おいおい、犯罪者がこの中に混じってるって言ったろ? だから、治安維持のために協力をお願いしたいんだけど」
「貴様等、本当に警備兵か? 『ガンナー狩り』の連中だったら、お断りだ」
「…!」

その途端、金髪の目が、大きく見開かれた。

「最近、他国からの侵略者が来るという噂話を名目に、ガンナーを次々と襲って、武器を巻き上げている連中が居るらしいな」

用心棒は体勢を崩さず、金髪に対してそう問いかける。

「銃を失えば、傭兵も狩人も、商売あがったりだ。 …当然、彼ら相手に商売をしている俺たちもな」
「じゃあ何か、犯罪者をかくまうより、俺らを野放しにする方がデメリットがデカい、って言いたい訳かい」

まぁ確かに、ガサ入れの入った店には飲みに来たくなくなる。
用心棒の男は、俺たち客の心理を的確に理解していた…というか、自分も同じように、軍人に痛い目に逢わされた経験があるんだろうな、多分。

「そもそも、『ガンナー狩り』を指揮しているのは、『金獅子』と『銀獅子』だと聞いている」
「ほぉ…。 よく知ってるね。 でも、一応弁解させてもらうと、ちゃんと市民の安全のために警備してるんだし、ガンナーの武器を預かっているのも、テロなんかを避けるためになんだよ、お兄さん」

…連中、本当に「ガンナー狩り」だったのか。
だがその用心棒は、金髪の弁明など、聞き耳もたん級のガン無視だった。

細かく上半身を揺らしてリズムを刻みながら、いつでも撃ちかかれる体勢の用心棒。 隙を見せれば、砲弾のような両拳が、連続で金獅子の顔面にめり込むだろう。

「帰れ。 ここはお前ら役人の来る所じゃない」
「悪いけど、そうも行かねぇんだよな。 …任せたぜ、相棒」
「…了解された」

用心棒の攻撃の気を外すように、バックステップする金髪と、代わりにスッと割り込む銀髪。

だが用心棒の男は、相手が誰だろうと問題ない、と言わんばかりに、躊躇せず距離を詰める。
そして、銀髪の顔にワンツーを撃つと見せかけて、強烈な左ローキック。

…うお、あの動きはホンマモンの格闘士だ。
対角線のフェイントを交えた攻撃は、周囲から見れば動きの流れが分かるものの、対峙した相手からは、非常に避けにくく、素人なら100%被弾する。

バシィという音と共に、強烈なローが、銀髪の太股に入った…と思ったが、銀髪はちゃんと膝を上げて防御していた。

自分の攻撃が防御されたという事態に、一瞬驚愕の様子を見せた用心棒だったが、次の攻撃を繰りだそうとした所で、彼の動きは失速した。

用心棒の次の攻撃は、高速のジャブだった。
だが、それを僅かに首を振るだけで避けた銀髪が、ストレートへの繋ぎのタイミングを見極めて、懐にダック(もぐり込み)しつつ、用心棒のストレートの手首を外に弾いた。

一瞬空いた、用心棒の右半身のガード。
そこにボゴゴという打撃音がしたかと思うと、用心棒は力が抜けたように体勢を崩し、程良い高さに膝を付く。
そこに、銀髪の回し蹴りが顔面にヒットして、床を転がりながら吹っ飛んで行った。

そして、カウンターに激突した用心棒は、そのまま大の字に寝そべった。 どう見ても気絶している。
口が舌と共にだらしなく開いているが、多分顎を砕かれて閉じられないのだろう。
あのボゴゴという打撃音は、銀髪の拳撃だったのか。

「きゃああああっ!?」
「うおおおっ、ま、ボルカ兄ィがやられたなんて!」

店のママと若いバーテンダーが揃って驚愕する。
あの動揺ぶりからすると、よほど高い金を積んで呼び寄せた、強い用心棒だったのらしい。

「おいおい、ウィル、あいつお前のワンツーだけで失神してたろ? 蹴りまで入れたら殺しちゃうぞ」
「…蹴られたから蹴った」
「相変わらずだなー。 まぁ、流石の鉄壁ぶりだぜ、相棒」
「…どういたしまして」

だが、金髪と銀髪にとっては、その用心棒の強さなど大同小異、懸念する材料にもならなかったらしい。
あのデタラメな強さ、やはり本当に「黒龍騎士団」の隊長、なのか…?

「で、そこのお二人、どう? 調査に協力してくれるかい?」
「ひいいっ!?」
「す、するよぉ! だから、ウチの店で、これ以上暴れないでくれよぉ!」

金髪がそう声を掛けたが、ママと側に居たバーテンダーは共に化け物を見るような目つきで後ずさり、悲鳴を上げて懇願した。

「…あ、ごめん、別に暴れるつもりはなかったんだけどね…。 いや、ウチの若い衆が、先に乱暴したのは謝るよ。 だけど、そっちの用心棒さんも、全く聞き分けが無かったからさ、俺たち全員の怪我と、そっちの用心棒さんの怪我でチャラって事にしてくれないかい?」
「そ、それで良いよ! いいから、さっさと調査を済ませておくれよ!」
「ご協力感謝します、マダム」

そう言って、酒場と警備兵の険悪さが微妙にほぐれた空気…いや、今ではもう、目の前の警備隊を野次ろうとする連中は居なくなり、皆給仕嬢と共に、席で小さく固まっていたが、金髪がママと何事かを話した後に、ママはテーブルに散っていた女の子を集めて、何事かを聞き出していた。
その中には、当然俺を見るマナの姿もあった。

もうこの先の展開は想像しなくても分かる。
ドカドカと、十字槍を持った連中が、俺の周りを取り囲んだ。

「貴様が、『マルク=ランディッツ』だな! 神妙にしろッ!」
「(…さっきからしてるじゃねーか)」

俺は両手を挙げて顔を下げ、反抗の意志がない事を示す。
容疑者の確保が済むと、金髪はママに話掛ける。

「ママ、悪いけど、奥のテーブルを借り切って良いかい? 時間ないんで、この人の事情聴取もここで済ませたいんだけど」
「…もう、勝手に何でもやっておくれよ」

そう言って、黒龍騎士団の隊長格…金髪と銀髪が、俺の方にやってくる。
その周りを、槍を持った警備兵が隙無く取り囲んで、この「雲龍の宴」亭の片隅は、例を見ないほど険悪な雰囲気の空間となった。
特に、周囲の客が「あいつ誰? 何をやったの?」的な視線で俺を見てるのが非常にいたたまれない。

俺と、金髪銀髪が一番奥のテーブルを挟んで腰掛けると、銀髪がメモ用の羊皮紙の束、金髪が資料を部下から渡してもらい、それを見ながら話しかけてきた。

「えー、貴方が『マルク=ランディッツ』君?」
「…はい。 『君』っていうか、多分、アンタよりは年上ですけどね」
「こりゃ失礼。 はいマルク君、ギルドカード出して」
「(…この野郎)」

俺は、自分のギルドカードをテーブルの上に出す。
金髪は、それをしげしげと眺めながら、確認するように独り言を言った。

「マルク=ランディッツ。 本籍(出生地)は西ドンドルマ領のメリー郡県(ランド)。 …ここから随分離れてるねぇ」
「ええ、この国にお世話になってるのも最近の話です。 なんせ流浪のハンターなもんで」

「お、初回登録はドンドルマか。 結構古株だね」
「ええ、まぁ、もう10代のガキの頃には家飛び出して、それからずっとハンターやってましたからね」

「武器使用頻度は、ライトボウガンがトップで、後は平均的にちょこちょこか…傭兵経験は?」
「いや、無いです」
「ライトガンナーなのに、傭兵経験なし? 珍しいね」
「まぁ、自覚してます」

ちなみに、隣の銀髪が、この事情聴取の内容を黙々とメモに書きとっている。
俺の素性が確認できた所で、金髪は俺の方に視線を寄越し、本題に入った。

「で、君、何で俺たちから、こんな聴取受けるか分かってる?」
「いえ、何にも。 さっぱり分からないですね」
「ホントに? …ヒエロ男爵の件、って言っても、何にも思い当たらない?」

ヒエロ男爵、と言われて思い当たる事はあった。
というか、本当は最初から分かっているのだが、この場を無難に乗り切るため、相手の出方を見ようと、俺は何も知らないフリをする。

「さぁ、何でしょうねぇ…。 金にうるさい人でしたけど、特に思い当たる事はないですね」
「ヒエロ男爵のあの態度が『金にうるさい』で済むんなら、君も相当だね? ってか、君が2日前に承けた、バサルモス駆除のクエストの件だよ」

やっぱそれか。

「それが、どうかしたんですか? ギルドこそ介してませんが、契約も正式な物でしたし、特に問題はなかったと思うんですが」
「それなんだけど、君と男爵が交わした狩猟契約ね、納得できない条文があるって事で、わざわざ男爵から、再調査を依頼されたんだよ。 俺たち軍人も、貴族様からのご依頼は無視できないしね」
「納得できない条文? …どこですか?」
「…君、ホントは、分かっててトボケてない? 例の、『クエスト達成の時には、討伐に必要とした資材の適正な経費を支払う』って一文」
「…それですか? 報酬金とは別に、使った弾丸の経費を請求しただけですけど、それが何か?」

そう返事をすると、俺を見る金髪の視線が冷ややかになる。

「…あのさ、どこの世界の狩人に、バサルモスを倒すのに『散弾』を持ち込む奴が居るんだい」

…こいつ、兵士のくせに、狩人の事にも結構詳しいな。

「ヒエロ男爵もね、金にはガメツい男だけど、仕事してくれればそれなりの報酬は支払う、って言ってたんだよ。 だけど『バサルモスを倒すのに散弾使いましたから、その代価を支払って下さい』って言われて、納得する奴が居ると思う?」

「…」

そして、金髪は別の資料を見ながら俺に畳みかけてくる。
俺が、ヒエロの奴に送りつけた経費の請求内訳だ。

「しかもさぁ、何これ? バサルモス倒すのに、散弾Lv1、2をかなり使ってるし、通常弾Lv1の価格を一発21G、Lv2を30Gで計上してるって、どういう事? 店売りと比べても、倍近く高いんだけど?」
「…」
「しかも、挙げ句の果てには、拡散弾や貫通弾まで存分に使ってるし、こりゃどー見ても、『適正な経費』とは言えないよね?」
「なるほど、仰る事はよく分かりました。 俺が、男爵が狩りの事をよく知らないのに付け込んで、彼から経費を必要以上にボッタクったと」
「然り。 それで、彼は君を詐欺罪で訴えているんだよ」
「…酷い誤解だなぁ」

実際は金髪の言う通りなのだが、それは俺の予想の範囲内だった。 なら、十分に抗弁できる。

「誤解?」
「そう、それは酷い誤解ですよ。 そもそも、俺、バサルモスに散弾なんぞ使ってません」

それを聞いて、金髪の表情が怪訝な物になる。

「…じゃあ、何で散弾を経費に挙げてるのさ」
「雑魚掃除のためですよ」
「ほう」
「火山に狩りに行ったらですね…、隊長さん達はご存じかどうか知りませんけど、ブルファンゴやイーオスが、とにかくウザいんですよ!」

俺はそこで、心底参ったような演技をする。

「実際ですね、バサルモスを狩ってる最中、これは良い調子だと思ってたら、ブルファンゴに後ろから突き飛ばされ、そこをバサルモスに跳ね飛ばされて、危うく死ぬトコだったんですよ!」
「…古株のハンターの割には、素人みたいな事を言うんだね」

金髪は、俺のギルカのクエスト達成履歴を見ながら、そう言う。

「同じHRでも、実力がまちまちなんてのは、別に今更言う事じゃないでしょ? 実際、仲間の協力さえあれば、ハンターランクなんてどこまでも上がるんだし、あんなの水物ですよ」
「…ま、ギルド批判はそれくらいにしとこうか。 それで、危うく死ぬところだったから」
「危険を避けるために、まずは雑魚狩りから始めた、って訳です」
「ふうん。 雑魚狩りには通常弾を使わなかったのかい? あっちが安価だし、ガンナーの基本だろ?」
「狩りには迅速さも必要ですし、何よりも雑魚の数が多かったんで、散弾でも効率落ちないかなーと思って」
「ふーん。 まぁ、散弾を使った、って理由は分かった。 じゃ、この散弾の金額が通常より高い理由は?」

これには、少し丁寧な説明を要した。
まず、散弾のドンドルマ領での価格と調合法は、下記の通りとなる。

散弾Lv1:店頭価格12z
(※はじけクルミ+カラの実で調合、1~3発生産)
散弾Lv2:店頭価格18z
(※竜の牙+カラの実で調合、1~3発生産)
散弾Lv3:24z 60発 竜の牙1~3
(※竜の牙+カラ骨【小】で調合、1~3発生産)

そして、資材を行商人から購入した時の価格は

カラの実:2z
はじけクルミ:41z
カラ骨【小】:30z
竜の牙:58z

そのため、弾丸を調合で生産した時の、弾単価は下記のようになる。

(41+2)=43  =43~14z ※平均21z
(58+2)=60  =60~20z ※平均30z
(58+30)=88 =88~29z ※平均44z

店頭価格で12zの散弾Lv1は、調合で作ると平均21zのコストが掛かる、という事だ。

そして今回、散弾の使用は「雑魚が予想以上に多い」という、突発的な理由だったため、店売り分は持ち込んでいなかった。
それが経費として挙げた散弾の価格が、店売りより高い理由だ、と釈明した。

「…弾丸は購入していないのに、その資材だけは持ってたんだ?」
「竜の牙は元々、『生命の粉塵』用だったんですよ。 野良が多いから、周りのハンターに気を使うのは必須ですし」
「ふーん…。 でも、それにしても雑魚相手に消費した弾丸の数が多いね」
「さっきも言いましたけど、そこらへんは個人の技量の問題ですから」
「ま、そうだね。 寄生してG級に上がって楽しようってハンターも多いしね」

…その物言いにはちょっとムカッと来たが、静かに深呼吸して、冷静に話を続ける。
無駄に怒って応対すると、口を滑らせかねない。
それがコイツの目的かもしんねーし。

「…まぁそういう経緯で、この経費を請求させて頂いた訳です」
「…自分の不手際を恥じて、依頼主にサービスしようと思わなかったのかい」

徹底的にツッコんでくんなぁ、コイツ。

「その気持ちはやまやまですけど、なんせ後ろ盾無いもんで、必要経費だけはガッチリ請求させてもらわないと、俺も飯の食い上げなんすよ」

そして、ついでに言ってやった。

「…それに、ここのギルド、あまり機能してないみたいだから。 自分の身は自分で守らないと、ですね」

さっきの皮肉への意趣返し。
そこまで言うと、金髪はタメ息をついて、資料を閉じた。
目配せで、銀髪もメモを取るのを止める。

「あい分かった。 この調査の内容は、一応依頼先に報告しとくよ。 多分納得はされないだろうけど、今度から、もっと実績のあるハンターに頼んだ方が良い、と併せ忠告しとこう」
「それが良いっすね~。 ってかギルドも、ソロの実力が分かる試験制度を、いい加減導入してくれませんかね」
「まぁ、世間的には、別な形で流布してるみたいだけどね。 …それより」
「何すか」

急に、金髪の気が高まり、俺に向かって叩きつけられた。

「…あまり、この国で好き勝手しない方が良い。『ガンナー狩り』は俺たちだけじゃないし、理解のある連中ばかりとは限らないぜ」

金髪だけじゃなく、銀髪が共に放ってくる威圧感。
そして、周囲の兵士たちが一斉に放ってくる殺気。
俺は一瞬、喉に唾が絡んで、旨く返事ができなかった。

「…でも、兵士が狩人の武器を徴収するのは、どの国でも禁じられてるはずですけど」
「だから、徴収じゃなくて『罰金』にさせてもらってる。 現金での支払いができない場合のみ、治安維持を兼ねて、武器を店に売って金を作ってはどうか、と勧めてるだけさ」

…一緒じゃねーか、と俺は心の中で囁く。

そもそもこの国、軍の中にギルドがある。
つまりギルドは軍の言いなりな訳で、この「ガンナー狩り」も、兵士が手あたり次第に狩人に難癖付けて、冤罪与えて、武器か罰金を徴収しちゃう、という乱暴な仕組みだろ。
何にもない所から、武器かお金が現れちゃう、独裁国家ならではの錬金術だ。
まぁ俺も、使ってもいない散弾を経費に挙げたけど。

「了解しました。 でもまぁ、俺は潔白って事が証明された訳ですから、ヒエロさんにはよろしく伝えといて下さい」
「ああ、君も、あまり問題を起こしてくれるなよ」
「分かりました」

殺気の束が俺を睨みながら去っていき、俺は大きく息をついて、ズルズルとソファにもたれ込む。
さっきのホピ酒が残ってるのを思い出して、水代わりに一気に飲んだ。

とりあえず、セーフ。
しかし、ヒエロの野郎は、俺の想像以上に金にうるさい奴だった。
たかだか3000zくらいを余計にガメただけで、軍まで動かすとは。

…周囲を見ると、酒を飲んでいた連中も、給仕嬢も俺を睨んでいた。
いや、そう見えるだけかもしれないが、どっちにせよ、こんな険悪な空気じゃ、一回出直した方が良さそうだ。
何か別のトラブルに巻き込まれないとも限らない。

店のママからスゴい目で睨まれつつ会計を済ませ、店を去り際に、中をぐるっと見回すが…。

…当然の如く、マナの姿はどこにもなかった。

<続く>
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*Comment

 

主人公はー、頭脳系キャラになるのかな?


リオ希少種を大量に狩れるんだから、強いっちゃ強いんでしょうけど・・・・・・


当たり前のようにバサルモスに散弾使ってた風霧でしたw
  • posted by 風霧 
  • URL 
  • 2011.08/01 12:32分 
  • [Edit]

 

>リオ希少種を大量に狩れる
しかし、次回真実が明らかに!(何
頭脳系と言えば頭脳系かもしれませんなー。
賢しいという意味での…。

>当たり前のようにバサルモスに散弾使ってた
何故wwwww
  • posted by 丼$魔(管理人) 
  • URL 
  • 2011.08/02 20:55分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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