女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(15)-4

…王子が、シャルルを探しながら走り始めた感覚が伝わってくる。

「(シャルル…。 シャルル、どこだ…!?)」

それらの声を一切無視し、ただひたすらに走り続けるシャルル。

だが次の瞬間、鎧から受けた妙な感覚に、一瞬だけ足が止まった。
それは、この場で感じるには、あまりに違和感のあり過ぎる光景だった。

あまりにも唐突に、シャルルの脳裏に、もっと若い頃のシャルルの姿が写し出されたのだ。 

それは比較的漠然としたイメージではあったが、クリス王子が想い描く、小柄で銀髪、褐色の肌の女性となれば、自分に間違いないだろう。

「(何これ…?)」

シャルルは、何とも形容しがたい思いに囚われる。
王子は、自分を追跡しながら、昔の自分との思い出を回想していたのだ。

騎士団で隊長を勤めていたシャルルにとって、クリス王子とは武術の師弟という間柄でもあり、自然、王子とシャルルの思い出は、訓練の時のものが多くなる。

それは3年前、王子との格闘術の訓練をしていた時の頃。
夏の暑い真っ盛り、徒手空拳での格闘戦…。 剣を失い、槍が折れた絶体絶命の危機という仮定の元、戦場においてどのようにして戦い、生き延びるかを目的とした訓練。

鎧装備を付けた場合、当て身はもれなく効果を失う。
懐に潜り込んでの崩しから、投げ技、立ち関節、周囲に誰も居なければ寝技に移行する…という組み手をやっていたが、あまりに暑かったので、シャルルは薄着でその訓練をしていた。

だが、年頃の男子にとって、年上の女性のそんな姿は太陽以上に眩しく、やらなければボコボコにされると分かっていても、手が出しづらいものだった。
特に、投げ技の時は腰に手を回すし、関節や固め技なら、太股にも手が伸ばさざるをえない。

しかし、当時のシャルルは、そんな事おかまいなしに、クリス王子に体当たりをかまし、投げから関節、寝技を容赦なく仕込んだし、時には自分を実験台として、技を掛けさせていた。
シャルルは、当時の王子を「男性」ではなく「やんちゃな弟」程度としてしか認識していなかったのだ。

「(…これは)」

シャルルは、王子の脳裏に映し出された過去の記憶を共感し、その落差に違和感を感じる。

確かに、クリス王子とのこの思い出は、自分の中にもある。
だけど、これほどの眩しい思い出ではない。
自分としては、単に夏の暑い最中、めったにないであろう状況での練習を淡々とこなしてただけだ。
あの時、王子の手が縮こまっていたのは、格闘が苦手な訳ではなかったのか。

そして、ノルマとしての訓練をこなす中、途中で泥だらけになってしまったので、その後滝に、水泳の訓練と称して水浴びに行ったのも覚えている。
それは、格闘訓練の最後を締める余興のようなもの、のはずだった。

だが、クリス王子の記憶の中では、それはまさに恋人との逢瀬の如く描かれ、そこに映るシャルルは、まるで女神のような眩しさを湛えていた。

滝壺の真下に広がる湖で、勢いよく泳いではしゃぐシャルルの姿。
褐色の肌が水を弾き、焼けた岩の上に飛び乗った、その姿はまさに人魚のよう。
髪の後れ毛が、信じられぬ程の色気を醸しだし、濡れた服が全身に張り付き、体の線が如実に現れて、クリス王子は耐えきれず視線を逸らす。

そして、何よりも…。
シャルルが印象的に感じたのは、当時、彼女が付け始めた化粧水、カブレライトローズの香り。
それは、少年だったクリス王子にはあまりにも強烈な、女性の色香そのもので、彼の鼻腔に陶然たる刺激として残った。

「(…。)」

同じ事象であっても、立ち位置が違えば、これほど違った思い出になるとは…。
そして、自分の姿を外から見るという事が、こんなに違和感を感じるものである事を、初めて知った。

その後も、王子のシャルルとの思い出の回想は続く。
その殆どが、かつてのクリス王子が、シャルルの姿を見かける度に胸ときめかせ、そして年上の女性の香りに酔いしれ、その度自分の痴情を戒める、という青臭い内容だった。

正直、シャルルには、今の王子の考えが、全く読めなかった。
さっきの蹴りを食らって、頭がどうにかなったんだろうか?
愛の語らいの最中ならまだしも、逃走劇の最中に、こんな事を思い出しているなど、全く意味不明だ。

「(…やはり、頭をどうかしたのかしら…?)」

いくら耐えたとはいえ、あの会心の一撃を喰らって、全く何ともない、というのも考えがたい。
多少躊躇したが、シャルルは立ち止まると、王子の意識を覗き込む事に集中する。

王子は、相変わらず以前のシャルルとの思い出を回想し続けており、そのせいでかなり読みにくかったが、王子の視線は足元を向いている。

…まっすぐ走れているようだ。

なら、脳や平衡器官はおそらく大丈夫だろう。

だが、そう思うとすぐに、クリス王子は、街道の両脇にある森に駆け込み、森の中を走り始めた。

「(…な!?)」

王子の意識を確認しようとするシャルルの意志を感じ取り、動揺を誘う作戦なのか、それとも今まで真っ直ぐ走っ
ていたのは、たまたまだったのか。
森の中を走る王子の、いかにも走りにくそうな感覚が、シャルルを惑わせた。

「(…く)」

だが彼女とて、訓練の組手の中で気絶させられた経験など、いくらでもある。
その基準から判断するなら、ダメージの後にこれだけ動けるなら、多分大丈夫だ。
この王子の行動は、高い確率で自分を惑わすためのブラフだ。

「(…迷うな、私!)」

自分の判断を信じろ。
それに、仮にここで王子を介抱しようとするまいと、もし捉えられれば、城で自分を待っているのは極刑なのだ。
なら、感傷に流される事なく、自分の目的を果たす事を第一に考えるべき。

そう思ったシャルルは、踵を返すと、再び風を裂くようにして逃走を続けた。


ここで、場面は再びノーブル城へと戻る。
これ以上、エイグリル将軍と会話していても無駄だと悟ったイルモードは、一人王室に戻っていた。

シャルルの追跡は、一応クリス王子のみならず、カルネラ大臣に指揮を執らせて、警備兵の一団にも行わせている。
あの超人的な速度で疾駆する連中に、馬車での追跡など全くの無駄だとは分かっていたが、もしシャルルがクリス王子相手に善戦した場合、拉致に全力を費やした王子の力が帰りしなに尽きる、という事にもなりかねない。
念のため、「古龍の血」を馬車に積ませていたから、そんな最悪の事態には陥らずに済むだろう。

…しかし、遅い。

何か、予測不可能な事態が起こっているとは考えたくないが、万一という事はある。

そう思ったイルモードは、王室内にある隠し扉の中から、「黒龍の鎧」の頭部分を取り出した。

クリス王子は、シャルルを追跡する前に「黒龍の鎧を装着した者同士は、意志疎通が出来る」と言っていた。
それをわざわざ自分に伝えたのは、堂々と城を出てシャルルを追跡する理由付けであろう。
だが、自分が「兜」をすり替えた事を知っているぞ、という言外の圧力にも受け取れた。

鎧を身につけた者同士で、本当に意志疎通が可能であるのなら、自分がかつてこの兜を身につけた事を、クリス王子は知っている事になる。
しかしあの時、イルモードの精神の中に、クリス王子の意識は流れ込んでこなかった。

自分が、激痛と高揚で王子の意識に気づかなかっただけか、王子がその時就寝中だったか、それとも他者の意識を一方的に覗くことができるのか。
あるいは、クリス王子は、イルモードが「兜」をすり替えた事を知っていながら、あえて野放しにしているのか…。

分からない事は多すぎる。
だが、自分も王子も、エイグリルが「脚」を持っている事は知らなかった。

それと同様に、王子が「兜」を自分がすり替えている事は分かっていたとしても「どこに隠しているか」までは把握できていないはず。 
万一の時は、兜の保管場所を変えればいいだけの話。

エイグリルからの情報提供が望めない今、どのような手段を用いても、この鎧の事を知っておいた方が良い。
僅かな確率だが、クリス王子がシャルルに説得され、共に手を取って逃亡する、という可能性もなくはないのだ。

クリス王子とシャルル、奴らが今どういう状況にあるのかを確認する事は、自分が「兜」を持っている事を暴露するリスクより、遙かに大きいリターンがあるはず。

そう覚悟を決めたイルモードは、兜の中…小さい吸盤がビッチリ並ぶ内側に、手を伸ばしていく。
鎧の力を解除するために、さっき馬車の手配をした際、この部屋にも「古龍の血」を分けて持ってきている。

「ぐっ…」

兜の内側に手のひらを密着させると、鎧の「棘」が吸盤の中から次々と延び、イルモードの手のひらにいくつもの穴が開く。
戦場で無数の傷を負ってきたからこそ耐えられるが、女子供なら、この痛みだけで発狂するかもしれない。

イルモードは、目を瞑って精神を集中する。
「他人と感覚を共有する」というのが、どういう体験なのかは理解できないが、クリス王子の言うことを信用するのなら、多分、クリス王子の見ている物か、シャルルの見ている物が、漠然とでも脳内に浮かび上がってくるのだろう。
僅かなイメージでも取り逃さぬよう、精神を平静に保たねば、と思っていたイルモードであったが、それは杞憂に終わる。

「(…なんだ、これは!?)」

突如、嵐のようなイメージが、風雨の如くイルモードの脳内に吹き込んできて、思わず戦慄する。
それは、黒龍の鎧の力を発動させたクリス王子が、シャルルにめった打ちにされているという、信じられない光景だった。

<続く>
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*Comment

 

おををー!!


もしかして王子がシャルルの味方になったパターン!?
それとも鎧外した感じなのかなー?


僕もこちゃこちゃ書いてみてるんですが、中二であればあるほど楽しい←
  • posted by 風霧 
  • URL 
  • 2011.07/12 21:21分 
  • [Edit]

NoTitle 

☆風霧さん
そうそう、小説は中二であればあるほど楽しいですw

創作で一番大事なのって、モチベーションですからね…。
俺は中二を大事にします!(何

あ、いつか書いた作品見せて下さいね!
  • posted by 丼$魔(管理人) 
  • URL 
  • 2011.08/02 21:47分 
  • [Edit]

お疲れ様です。 

いつも楽しみにしてますが、この文章過去掲載された気が。
その後、拷問シーンだったような。
勘違いならすいません、デシャブューが。
  • posted by ゆうた 
  • URL 
  • 2012.07/12 21:59分 
  • [Edit]

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モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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