女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(15)-1

それは、今から3年前の話。

「いくよ、シャルル…」
「どうぞ、クリス王子! 遠慮は無用ですよ」

ノーブル城から外れた郊外の森にて、当時14歳のクリス王子と、17歳のシャルルは、お互い骨剣・ボーンククリを持って、模擬戦闘を行っていた。
剣技の向上を目指すための、真剣を使った1対1の組み手。
もちろん切れ味は赤ゲージになるまで落としてあるが、木剣ではないので、当たればそれなりに怪我はする。

「…いいのかい? 防具も付けないなんて、随分余裕こかれてる気がするんだけど」
「ご心配なく、これでも『黒鳥騎士団』の千人隊長ですから、王子のへなちょこ剣など当たりませんよ」
「言ってくれるな! 当たって泣き言言っても知らないぞ!」
「それは頼もしいです、うふ」

猛々しい構えを取るクリス王子に対し、まるで散歩しているかのように、飄然とした構えのシャルル。

「いくぞ! …おおおっ!」

クリス王子は、盾を構えながら威勢良く突進し、振りあげた左手の剣で、隙だらけのシャルルに一撃を加えようとする。
だがシャルルは、一切の動揺なく、クリス王子の剣と体、そして盾が直線を描く場所に、わずかに移動する。

「!」

そこは、盾が邪魔になって、最も片手剣の攻撃が届きにくい所。 立ち位置の微かな遷移だけで、攻撃が既に殺された事を悟ったクリス王子は、剣盾コンボに移行したが、

「えいっ」

あっという間に懐に踏み込んでいたシャルルから、体ごと盾を横から押される。 どういう力学の理屈なのか、そのわずかな衝撃で、体勢は危ういほどに崩れる。

「もらいましたっ、王子! めんっ!」

シャルルの明るい声と共に、横に倒した片手剣が、ぽかんとクリス王子の頭を打つと、「うわぁっ!?」と王子は尻もちを付いた。
その喉元に、しゅるりと片手剣の刃が延びてきて、シャルルの宣誓。

「はい、王子死亡~。 バルベキアの未来は閉ざされちゃいました☆」
「…勝手に殺さないでくれよ」

そう言って、むくれた顔で、クリス王子は立ち上がる。

「…もう一本お願いします」
「でも、これが実戦なら、本当に死んでますよ」
「わ、分かってるよ! いくぞ、シャルル!」
「だから、闇雲に組手を繰り返してもダメですって。 片手剣を使うなら、相手の隙を見極めながら、細かいラッシュを仕掛けるのが鉄則です。 意気込むのは良いことですが、王子の攻撃は大振りすぎるんですよ。 もっと冷静に」

そう言われて、クリス王子は、自分の剣をまじまじと見る。

「…そ、そうかな? そんなに荒い?」
「ええ、一死一生…。 戦場において、一度逃した機会は、二度やってきません。 だから、失敗を繰り返さないよう、常に反省する心構えが大事なんです」
「わ、分かった…。 じゃあ、今度は慎重に行くよ」
「分かればよろしい! では、どうぞ!」

そして、30分後。

「…『相手の隙を見極めながら』って、隙なんてないじゃん、シャルルの嘘つき」
「んー、自分としては出血大サービスしたつもりだったんですけどねぇ…」

組み手はクリス王子の大敗北で終了した。
シャルルは、寝転がっている王子の隣に腰掛けて、ボコボコに腫れ上がった顔に、沢で絞ってきた冷たい布を当ててやる。

「やっぱり強いなぁ、シャルルは…」
「王子もそれなりに強いですよ、『平等の家』の子供たちなんかよりも全然」

平民、しかも子供と一緒に扱われて、クリス王子は苦笑する。

「でも、その程度じゃダメなんだよ…。 次期国王たる者は、もっと強くないと」
「…今のままでも十分だと思いますけど? それに、王子は頭が良くあられるじゃないですか。 きっと、民の皆を安んじて下さいます」

だが、シャルルの誉め言葉を聞いても、クリス王子は表情を変えない。

「…それじゃ、ダメなんだ」
「…どうしてです?」
「エイグリルは、真の平和国家がどうの、って綺麗事を言ってるけど、この国は『南方の弾薬庫』って言われるように、その地形上、永遠に続く戦争を宿命付けられてる」
「王子」

「だから、父がそうであるように、バルベキアを継ぐ者は、軍の頂点に立たなくてはならない…。 この国の王に求められるのは、知恵じゃなくて、力なんだ」
「そんな事ありません、例え個人の武勇に優れなくとも、賢帝と呼ばれた歴史の例は、いくらでもあります」
「…いや、他がそうであっても、この国では違う。 それに、弟に負ける弱い王なんか、誰も尊敬しないに決まってる」

王子の本音が、ポロリと漏れた。

第二王子のユリウスは、エイグリル将軍直々に稽古を付けてもらっているが、天賦の才か、それとも指導者の技量ゆえか、13歳にして「ヘヴィガンナーの申し子」と周囲に評されるほどの、恐るべき才能を開花させつつあった。

シャルルが見ても、その技量は圧倒的で、残念ながらクリス王子が自虐的に言ったとおり、軍の頂点に立つにふさわしいのは、なるほどユリウス王子かもしれない。

しかし、クリス王子は、寝転がったまま、握り拳を天に突き上げて言う。

「だけど、僕は、きっと強くなってみせる…。 弟よりも、皆にふさわしい王だと認められるように、そして、王として皆を守れるように…。」
「王子…! その志があれば、王子は、きっと立派な王になれますよ。 間違いないです、私が太鼓判押しちゃいます」
「そ、そうかな?」
「ええ、やんちゃ坊主のユリウス王子なんかより、クリス王子の方が断然、王様の貫禄ありますもの!」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいな」
「私も期待してます! この国の皆を守れるように、お互い頑張りましょう!」

そう言って、シャルルはクリス王子に微笑みかける。

この時、クリス王子は、自分の顔がボコボコでよかった、と痛切に思った。
そうでなかったら、この年上の女性に、自分が顔を赤らめたのを見られていただろう。

「(僕が、本当に守りたいものは…)」

隣に座る、この銀髪の女性の笑顔は、何よりも美しく、そして太陽よりも眩しかった。
いつか自分は、人を守れるくらい、強くなれるだろうか…? 

いや、強くなる。 強くなってみせるんだ…。
この愛する人を、守るために…。


それから3年の未来を経た現在、ノーブル城郊外の森を遙か過ぎた所で、20歳になる現在のシャルルと、17歳になるクリス王子は、お互いに『黒龍の鎧』の力を発動させ、人間とは思えぬ速度で、地を飛ぶように疾駆する。

地煙を巻き上げつつ逃走するシャルルだったが、胸中にせり上がってくる、どうしようもない絶望感に歯噛みしていた。

黒龍の鎧を装着し、その力を発動させた時の高揚感。
あの時自分は、世界最強の存在になったと感じる事ができた。

だが、その感覚は全くの間違いだった。
確かに、鎧の加護はもの凄く、人間を越える超常的な力を易々と与える。
だが、エイグリルは「最小限の加護しか得られない」と言っていなかったか。
それがどういう事なのか、その答えが、彼女の真後ろにあった。

後ろからもの凄い勢いで追いすがってくる、クリス王子の全身を包む邪気。
それは、同じく鎧の力を発揮させている、自分の数倍にも達する。

かつてシャルルは、武術師範として、クリス王子に格闘術や剣技を教えていた。
彼の才能はさほどでもなかったが、練習には根を上げず、真摯に付いてきた事だけが取り柄の青年だった。
だが、クリス王子の「本質」とは、そんな事ではなかった。

王子に装着されている鎧が、王子の血…美蜜を吸って歓喜し、暴力の喜びに打ち震えているのが、鎧を通して伝わってくる。
シャルルのそれとは全く比較にならないほどの、圧倒的な鎧の加護。 しかも、それが「胴」と「腰」の二部位。
それは彼女の技量をしてもどうにもならない、絶望的なまでの圧差。

彼は、かつて自分が思っていた「頼りない王子」などではない。 鎧の力を最大限に引き出せる一族「黒龍の神官」なのだ…!

今日に至るまで鍛え上げてきたシャルルの足腰。
それに黒龍の力を足して、必死に逃亡してなお、シャルルとクリス王子の距離は、ぐんぐんと絶望的なまでに狭まってくる。

「(なぜ逃げる、シャルル…)」
「(僕の妻になると言ったはずじゃ、なかったのか)」
「(逃げないでくれ、シャルル…)」
「(あの日、君が言った事は、何だったんだ…)」

背後からの刺すような視線と共に、鎧の脚部が、ねっとりとした怒気を伴って、繰り返しそう囁きかけてくる。

「…シャルル! 何故、逃ゲるンだッ!?」
「(僕の側に居てくれないのか、シャルル…)」

後ろから聞こえる、王子の嗄(しわが)れた叫びと同時に、鎧の脚からこみ上げる絶望と懇願の思念。
倍に増幅されて叩きつけられる感情が、シャルルの脳裏に痛いほど響く。

今、はっきりと分かった事がある。
自分が、遠くから走ってくるクリス王子の存在を感知できた理由。
そしてクリス王子が、遙か遠くに逃げた自分の場所を察知して、ここにたどり着く事ができた理由。

この鎧から繰り返し響く声が、その理由を雄弁に語っていた。


ここで、場面はノーブル城の石牢内、イルモードとエイグリルに移る。

「…そういう事だ! 黒龍の鎧を装着した者同士は『感覚を共有できる』のだよ! シャルルの見た風景が、王子にも見えたそうだ! それを追っていけば、どこに逃げようと、王子は奴の居場所にたどり着けるのだ!」

「(何だと…!?)」

エイグリルの顔が、蒼白に歪む。
それは、確かに彼自身も知らぬ事。
王権の象徴たる鎧を、複数の人物が装着した事例など、過去にないせいだが、そんな効果もあろうとは、ついぞ知らなかった。

「鎧は、どんなに分かたれようと、鎧自身の意志によって一つに集まる! 何よりも、鎧自身がそれを望んでいるのだからな!」

そう叫びながら、イルモードはエイグリルを見る。
エイグリルの驚愕の表情に、自分が一歩先んじた確信を得、それが彼を饒舌にさせた。

「そして、黒龍の神官は、鎧の加護を最大限享受できる…。 いくら生身の運動能力に差があっても、その差は決して埋まるものではないッ!」
「シャルルの持つ『脚』を合わせれば、こちらには四部位が集まる! ユリウスが持つ『腕』を求めずとも、もうクリス王子を止める者は、この地上には存在せん!」

そして、イルモードは、つかつかとエイグリルに近づくと、がつんと顎を蹴り上げた。
うめき声を上げながら、後ろに倒れるエイグリル。

「つまり、シャルルを捕まえた時が、貴様の最期という事よ、エイグリルッ! 貴様にはもう、用はない!」

だが、エイグリルは、体力を失っているせいか、床に伏したまま、何も反応しない。

「ふん…」

その様子に、イルモードは舌打ちすると、エイグリルに詰問するように、独白を続ける。

「ただ、これでまた一つ、分からない事ができた」
「…ユリウスが持って逃げた部位は、『腕』だけという事だよな?」
「…今まで、あの気性の激しい王子が、なぜ黒龍の力を使って反撃してこないのか、と疑問に思っていたのだよ」

そこで、イルモードは、床に伏せたエイグリルに近づき、その顔を見る。
エイグリルは、起きていた。
その濁った両眼を開いて、何か考え事をしているかのように、じっと床を見ていた。

イルモードは、エイグリルの喉元に、剣を突きつける。

「だが、そもそも…」
「何故お前は、ユリウスに『腕』だけを持たせた?」

クリス王子の陣営が持つ黒龍の鎧は「頭」「胴」「腰」の三部位。
ユリウス王子が持っているのは「腕」「脚」の二部位。
イルモードは今まで、そう理解していた。

だが、ユリウス王子の戦力に、「エイグリル」と「黒龍騎士団の三騎士」が加われば、戦力は逆転する。

クーデターの最中は、黒龍騎士団の面々も、事情を知らなかったゆえに動けなかった。 
下手にユリウス王子を擁立すれば、自分たちが王権に弓引く逆賊になる可能性があった。

だが、今では事態も落ち着き、ある程度状況を理解しているだろう。 彼らが覚悟を決める時間が経つほどに、エイグリル達の逆転が可能性は高まる。

イルモードは、その状況を最も恐れていた。

「ユリウスに、『腕』と『脚』の二部位を本当に持たせていれば、今頃、騎士団の力を加えての力押しが可能だったはず。 知将と呼ばれた貴様が、その可能性に思い至らなかったはずがあるまい?」

「…何故あの時、ユリウス王子に、両方とも渡さなかった?」

「というより、もっと率直に言おう」

「…貴様、本当は、『腕』もどこかに隠し持っているのではないか?」

だが、エイグリルは、それにも無言を決め込んだ。

「…」

イルモードの冷徹な眼が、より一層の悽愴な光を帯びた。
刃の先が、無防備なエイグリルの喉に押し当てられ、剣先がごくわずかに皮膚に食い込む。

「なぁ、エイグリル…。 お前、何を隠してる?」

その質問と共に、エイグリルの喉元から、タラタラと血が流れ始めた。


<続く>
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まとめtyaiました【GUNNER

それは、今から3年前の話。「いくよ、シャルル…」「どうぞ、クリス王子! 遠慮は無用ですよ」ノーブル城から外れた郊外の森にて、当時14歳のクリス王子と、17歳のシャルルは、お互い骨剣・ボーンククリを持って、模擬戦闘を行っていた。剣技の向上を目指すための、...

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