女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(14)-2

「親愛なる同志よ、今から3日後の夜、満月の輪が火竜座の尾の星に差し掛かる時刻、救出作戦を決行します。
 ノーブル城、東門前にて『砂塵の嵐』及び『ヴェルド軍』の旧友の面々とともに突撃し、クリストフ王、イルモード宰相を抹殺する予定です。
その時、貴方には、我々を入城させる手引きをお願いしたい。 笹神龍心」

…これは、笹神龍心が持ってきた、救出計画の手引き!

遂に来た助けの手に、逸る気持ちを抑えつつ、読みにくい字で書かれた文面を何度も読み返す。
だがそのうち、シャルルは妙な違和感に捕らわれ始めた。

「(クリストフ王、イルモード宰相を抹殺します…?)」

何か、おかしい。
彼女の本能が、危険を予感した。
何がおかしいのかを必死で考え、やがて彼女は結論に達した。

…この手紙の主は、あまりにも内情を知りすぎている。

外部からは、先王死去の後、クリス王子が次世代の国王となった事は知れている。

だが、その際にあったトラブル…。
長男であるクリス王子に継承されるはずだった王権は、ユリウス王子に譲られた。 だが、その場で突発的に発生したクーデターによって、クリス王子に王権が戻ったのだ。

これは外から見れば、順当に第一王子が王権を継いだ、としか見えないはず。
そのいきさつを、エイグリル将軍の暗号文だけで、果たしてこれほど詳細に理解できるのか?
仮に、内密に入国して情報を仕入れたにせよ、あまりに早すぎないか?

それに、「砂塵の嵐」はともかく、ヴェルド軍にまで救出を頼むとなれば、これは状況によっては、後日、戦争の火種になりかねない…。

「うぅ~! あぇ~、うぁ~!」

突如、その浮浪者が、シャルルの腕を掴むと、何かを寄越せ、というように、空いた左手を差し出して来る。

「あぁ~! あぅ~あ~!」

その表情には、なんとなく覚えがある。
長く孤児だった彼女には、その浮浪者の歪んだ表情が意味する所が、なんとなく…。 
いや、ほぼ確実に理解できていた。

…彼は、酒か金を要求していた。

この人物は、笹神龍心ゆかりの人物などでは、ない!

「(…これは、罠だ!)」

だが、彼女がこの状況を罠と悟ると同時に、見計らったように周囲から十字槍を構えた警備兵がバラバラと出てきた。

「そこで何をしているッ!」

「ヴォーデン!?」
「おい、そこの! 何をしている! シャルル将軍、その者は何者ですか!?」
「これは…!」

だが、警備兵長であるヴォーデンは、シャルルの返事を聞くより早く、兵士達を指揮して二人を包囲した。

「この者は、この城に迷い込んできた者だ! 病気で苦しんでいるらしい! 誰か、薬を!」

シャルルがとっさに指示を出すが、警備兵たちは、誰もその場を動こうとしない。

「申し訳ありませんが、お二人の身を改めさせて頂きます! 宰相殿から、国内に侵入者が居る、とも聞いております…! 怪しい者はまず身を改め、逆らう場合は殺してよい、と下知されておりますゆえ」

「私を疑う気か!? 黒龍騎士団団長の、この私をか!」

「むろん、団長殿が怪しいとは露ほども思いませぬ! しかし、軍の一員であれば、宰相の発せられた軍規に従うのは道理! ご理解頂けるならどうか、自ら規範をお示し下さい!」

シャルルの胸のうちを、焦燥感が駆け巡る。

今、やっとこの状況の全体像を理解した。
この浮浪者が持っていた手紙は、明らかに自分を陥れるための、罠。
反逆者であるエイグリル将軍の救出のみならず、王子と宰相の殺害、ヴェルド軍への帰順…。 
これらの罪を被せられれば、どうあろうと死刑は免れない。

「おい、誰か! そいつの身体検査をしろ! 何者かを聞き出せ!」
「了解しました!」

浮浪者はうう、と呻きながら、屈強の兵たちにたちまち四肢を押さえ込まれ、殴られ、服を破かれながら身体検査をされていく。

「…失礼します、団長どの!」

シャルルに対しては、流石に兵長のヴォーデン自身が調べる事となった。

「よかろう。 気が済むまで、徹底的に調べれば良い」

虚勢は張ったものの、正直どうすべきかを、シャルルは決めかねていた。
幸い、さっきの手紙は二通とも自分が持っている。
アンダードレスの裏生地に、ちょうどポケットになる部分があるので、折り畳んで胸元からそこに滑り込ませている。
身体検査をされた所で、裸にでもさせられない限り、なんとか隠し通せるはず。

だがもし、ヴォーデンがイルモード側の人間であったなら、その可能性は0ではない。
…いや、この兵士たちは、おそらくこの冤罪の目撃者として用意されたもの。 それはむしろ十分にありえる。

その時は…どうする?
この兵士たちを全員倒して脱出するのか?

ヴォーデンの手が、彼女の体のかなり際どい部分まで検査をしてきたが、さすがに彼も手を出しにくい部分があったのだろう、裸になれとまでは言わず、身体検査を終えた。

目の前では、浮浪者が相変わらず兵士たちに殴られながら、自分が何者かを詰問されていた。
だが、もちろん返事は不可能で、うめき声を上げるばかり。
それを見て、シャルルは内心、安堵のため息を付いた。
彼には悪いが、彼が喋れなかったのは、不幸中の幸いだった。

これで、この場を凌ぐ事はできる。
しかし一体、この罠はどうやって仕掛けられたものなのか…?
仕掛けたのはおそらくイルモード宰相だろうが、そもそもあの浮浪者は、なぜ自分が笹神に出した手紙を持っていた?
それに、近く笹神の使者が来る事を知っているのは、自分しか居ないはず…。 それをどうやって知った?

自分しか…?
いや、もう一人…。
もう一人、この事実を知る人間が居たような…?

一瞬、安心して気が緩んでいたのだろう。
疑問に心を奪われていた矢先、シャルルの全身を、ガチャガチャと警備兵たちの十字槍が取り囲む。

「な、何だ…! 何をする、貴様たち!」
「大変残念です、団長どの…。 まさか、貴女が、謀反などという、大それた事を企んでいるとは、思いもしませんでした」
「何を言う!? どのような根拠でそんな妄言を吐く!? 証拠でもあるのか!」
「いえ、確かに、貴女様からは見つかりませんでした…。 ですが、この浮浪者然とした男からは、これこの通り」

そう言って、ヴォーデンは、シャルルの目の前に、あの手紙…笹神龍心の計画書を見せた。

「…謀反の証拠が、明確に」

そして、ヴォーデンは、これ見よがしに手紙の内容を読み上げる。
事情を知らぬ兵士たちの間からは、動揺の声が漏れた。

「(バカな…!?)」

一瞬、叫びそうになった。
あの手紙は、二通とも自分が持っている。
ならば、あの浮浪者は、最初から「計画書」を二通持っていたのか…?
いや、ヴォーデン自身が別に持っていたのかもしれない。
万一、自分が完全に隠し通した時の保険のために…。

「シャルル将軍…。 クーデターの件は、我らも多少は聞かされておりますが、まさか、事実だとは思いませんでした」
「…エイグリル将軍を筆頭とする『黒龍騎士団』が、クリストフ王子の即位を良しとせず、ユリウス王子を立て、この国を奪おうとしたと!」

「バカな、何を言う! エイグリル将軍を含め、我々にそんな意志はない! 我らが、どれだけこの国に尽くしてきたか、お前たちもその目で見ているはずだろう!?」

「それが我々を欺くための演技でなかったら、の話ですが。 嫡男が国を継ぐのは国家の道理。 なのに、なぜ先王は、ユリウス王子に国を譲られると? それがエイグリル殿の陰謀でなかったのなら、その理由は何なのですか?」

「それは…!」

「それは、どうなさいました」

その質問は、既にエイグリルに問うている。
だが、エイグリルは、その質問には正確に答えなかったのだ。
あの曖昧な答えで、人を納得させられるはずがなく、この場を凌ぎきれるとは思えない。
それでも、何か旨い言葉がないかと逡巡している間に、ヴォーデンは言葉を続ける。

「この手紙を見るまでは、私も半信半疑でありました…。 ですが、それでも貴方方を信じていたのは、仰るとおり、あなた方のこの国に対する姿勢を見させて頂いていたからです」

「…ですが!」

そこで、ヴォーデンは語気強く言う。

「今ここに、それらは全て偽りと分かった! シャルル=サンドリオン、貴方こそが敵国の間者であり、獅子に潜む虫だ!」

その宣言に、警備兵たちは急に色めき立つ。
お前こそが敵か、戦争もお前のせいだったんだな、などと見当違いの事までを叫びたてながら、十字槍を構えて、シャルルの包囲を狭める。

「いくら団長殿といえど、大剣も持たずに、この人数相手に立ち向かおうとは思いますまい! 我らとて、自らの力量は弁えておりますゆえ、貴女が僅かにでも身動きされれば、それ即ち、反逆の証と見なさせて頂きます! さぁ、大人しく、裁きを受けられよ!」

…なんという茶番劇。
これは最初からここまで、筋書きどおりの展開だったのだ。
自分はその罠に、まんまと掛けられてしまった。

全身を取り囲む、十数本の槍。
その中で、シャルルは顔を伏せ、震えて泣いていた。

だが、それはこの槍が恐ろしいからではない。
この罠を仕掛け、シャルルを陥れた真犯人の存在に気が付いたからだ。

「(…どうして? 何故こんな事をするの、貴女は…?)」


真犯人…。 
それは多分、彼女の養母である、エミネムだった。

あの浮浪者が、笹神宛てに出した手紙を持っていたのは、多分イルモードに捕まえられた使者の分を回収したか、エミネムに任せた分だろう。
それに、自分が笹神の到着を待っているのは、自分以外にはエミネムだけしか知らない。
どんなに可能性を排除して考えても、彼女以外にこの罠が用意できる人間は居なかった。

「(でも、何故…? どうしてなの、エミネム…!?)」

…イルモードの圧力に負けて裏切ったのか? 
あるいは、貴女も罠に? 
でも、どのような?

「間もなく、カルネラ大臣が来られる! 貴様は、大臣の前で、全ての罪を吐露し、大人しく裁きを受けるが良い!」


ヴォーデン配下の警備兵が、城の中に急ぎ戻ると、イルモード宰相と、カルネラ大臣に連絡を行う。

「良くやった、これで我が国に謀反心を持つ者を一掃できるぞ!」
「それで、将軍の今後の処置はいかに…」
「今から私も下へと向かう! 貴様達はシャルル…いや、裏切り者を決して逃がさないように包囲していろ! その場で確認出来次第、簡易裁判を行う!」
「了解いたしました!」

警備兵たちの報告を聞くと、カルネラは自慢げな笑みで、イルモードは興奮に満ちた笑みでお互いを見る。

「もう既に罠を張っていたとは思わなかったぞ、大した手際だな、カルネラ」
「ええ、人はどんな荒唐無稽な話でも、信用できる相手からでしたら、疑わず飲み込んでしまう物ですゆえ」
「…どうやってエミネムに、シャルルを裏切らせた」
「配下の下女たちを、今後王子の『供物』にしないという条件で、でございます。 あの婆の頑固さにはかなり閉口いたしましたが」
「そうか、何にせよご苦労だった」
「王子に知られる前に疾く行きましょう。 シャルルめを公開処刑するのに、機会を逃してはなりませぬ」
「ああ、皆の頭が興奮で茹だっている間にな。 冷静になれば、奴を惜しむ声が上らんとも限らぬ」


茶番は、まさに予定調和だった。
すぐさま城から出てきたイルモード宰相とカルネラ大臣は、シャルルの…いや、ヴォーデンが持っていた「計画書」を読むと、大仰に驚き、怒髪天を突く真似すらしてみせた。

「貴様が裏切り者だったのか…! 先のヴェルドの侵攻も、貴様の手引きか!?」
「残念ですぞ、シャルル将軍…。 国に尽くしてきた貴女が、何を思ってこのような事をなされたか!」

「私…じゃない、私は…そんな事を考えてない、その計画書に、私の名前はなかっただろう…!? 私宛のものではないのだ!」

しかし、今となっては、一切の抗弁が無駄だった。

「あの浮浪者の男は、間違いなく貴女に手紙を渡そうとしておりましたぞ! 目撃した兵がそう証明しておりまする!」

この通り、どんな道理も弁術も、皆が敵と分かっている中では通用するはずもないのだ。

そう、敵…。
イルモード達はもちろん、見込みのある青年兵だと思っていたヴォーデンも、養母のように接してきたエミネムも…。

「(全員、グルだったの…?)」
「(それも、私を陥れるためだけ、に…?)」

目の前では、カルネラ大臣が、裁判が云々、国家の法律が云々と小難しい事を言っている。
だけど、何を言いたいのかは聞かなくても分かっている。

「…以上により、簡易裁判を終了する! バルベキア三国王直属近衛兵『黒龍騎士団』団長、シャルル=サンドリオンを、前述の咎により、ここに極刑と処する! この場に居合わせた、真実の目撃者たちよ、異存はないかッ!?」
「異存はありません!」
「異存ありませぬっ!」

異様な興奮に包まれる周囲の声を、どこか遠くに聞きながら、シャルルは絶望と共に、自分の無力さを痛感していた。
また、自分は、エイグリル将軍を救えなかった。
自分を救ってくれた彼のように、自分も誰かを救いたいと、そう思っていたのに。
たかが、城の周囲をうろつく事すら叶わなかったとは…。

「皆の者、陣を組め! …処刑用意!」
「さぁ立てッ! 刑は、この場で執行するとの仰せだ! 立たねば、無理矢理にでも立ち上がらせるぞッ!」

しかし、シャルルは立とうとしない。
その様子に苛立った兵士の一人が槍の杖で、俯くシャルルの頭を小突いた、その時。

ヴ…。

「?」

ヴル…。

「…何だ、この唸り声」

ヴォルルルゥ…。

その微かな唸り声を聞いて、イルモードとカルネラは、慌てて周囲に視線を走らせる。
この状況を見咎めて、クリス王子が現れたのかと思ったのだが、そうではなかった。

<続く>
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*Comment

 

う~ん、続きが気になります。
まさかシャルルさんの腰装備はミラバルカンスパインだったり…?
  • posted by 634 
  • URL 
  • 2011.06/01 17:59分 
  • [Edit]

Re: タイトルなし 

> う~ん、続きが気になります。
> まさかシャルルさんの腰装備はミラバルカンスパインだったり…?

流石に良い所突いてますね~。 
俺も構想段階ではミラバルカンスパインにしてたのですが、話が微妙な事になるので、モデルになった方の装備に似た装備…ゴシックメタルシリーズを選びました。

でも三菱VIZAカードの特典装備だとは知らなかったんだぜ(ぉ

  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2011.06/04 20:40分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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