女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(12)

「…笹神龍心(ささがみりゅうしん)です」

その偵察兵の報告を聞いて、同席していた大臣達の半数ほどが、一斉にどよめく。

「…なんだと!」
「まさか、『笹神龍心』とは…! 信じられぬ!」
「エイグリルは、彼の方と、交流があったのか!?」

だが、会議の中心であるイルモードは、その「笹神」なる人物に、聞き覚えはあるものの、誰だか思い出せない。

「あの、『弓の英雄』でございます! およそ半世紀前に、この大陸に名を轟かせた…!」
「…ああ」

そこまで言われて、やっとイルモードはその名の人物に思い至る。

かなり昔、東方の島国で行われた戦争にて、敵の大軍数千を単騎で迎え撃ち、これを退け、国を救ったと言われる伝説の弓師。
その多大な武功によって、生きながら国王に贈名された男。

人呼んで『弓皇翁(きゅうこうおう)』笹神龍心。
その技量、無双にして無二の弓兵。

彼の逸話は、この遠く海を挟んだ大陸においても、過去の英雄達をまとめた本に載るほどの、別格の存在である。
確かに、笹神を知っていた大臣たちは、軒並み高齢の者ばかりだった。

「あの英雄が生きていたのか…」
「いや、信じられぬ! 今、また、あの名を耳にする事になろうとは…!」

自分達と同じ世代を共にした英雄の名前。
それが今も現役と知って、高齢の大臣たちは、そのしょぼくれた目を輝かせ、しばし昔語りに浸っていたが…。

「…やかましいッ! 娘子のように何をお喋りに興じている! 下らん、実に下らんぞ、貴様等ッ!」

この王室にそぐわない、その色めき立った雰囲気は、イルモードの一喝で吹き飛んだ。

「今必要なのは、昔話に興じる事か? 違うだろうが!」
「も、申し訳ございません…。 しかし、相手があの弓の英雄だとしたら、これはまさしく脅威では…」
「何が脅威だ! そもそも、そんな話からして、極めて疑わしいわ! 半世紀前の英雄? もはや棺桶に片足突っ込みかけた爺であろうが! 弓? そんな時代遅れの兵科が、現代の戦場で何になる!」

あまりにも冷徹な現実を突きつけられ、高齢の大臣たちは皆、肩を落としてしょぼくれる。

確かに、今から遙か昔、前王朝からその前の時代には、戦争における投射武器の代名詞は「弓」だった。

馬に乗って弓をつがえた、筋骨隆々の益荒男が、剛弓を一閃すると、敵兵が何人も貫かれ倒される…。
手の付けられぬ敵の荒武者を、美丈夫の狙いすました弓が一撃で沈黙させてしまう…。

過去の武人たちなら、こんな古代の戦記物語の一場面に、高揚で胸を躍らせた事があるはず。

だが、旧態然とした「剣」での肉弾戦が、時代の変遷と共に、「槍」での組織戦へ変化していった様に、「弓」も、新たな兵科の登場によって、その立ち位置を次第に失いつつあった。

火薬武器「ボウガン」の台頭。

そもそも弓は、命中精度と火力を上げるには、それなりの修練が必要で、誰にでも扱える武器ではなかった。
特に、目標までの距離を測るエイミング能力は重要で、これを維持するためには、日々のたゆまぬ訓練が必要とされていた。

そのため、戦場での鍵を握る射撃部隊の養成には、かなりの投資と時間を要したのだが、新しい兵科である「ボウガン」が登場した時、その状況は一変した。

扱いが面倒であったり、弾薬の経費がかさむという問題もあったが、ボウガンは弓と異なり、誰が使ってもある程度安定した火力を発揮するうえ、スコープによる高い命中精度も、また魅力だった。

育成に時間のかかる弓兵を錬磨していくより、多少単価が高かろうが、ちょっとの訓練で射撃部隊を増産できるボウガンの方が効率的、と判断した国は多かったのだろう。
この時期、技術革新と共に、ボウガンの威力が飛躍的に向上したのも追い風となって、弓は戦場から次第にその姿を消していった。

弓は、今では一部の狩人のみが、モンスター相手に細々とその技術を伝えるのみ。
戦場における投射武器の代名詞だった時代は、もう年寄り達の記憶の中にしかない。

そして、ささやかにその場に残っていた懐古の雰囲気も、先ほどの一喝で根こそぎ押し流されてしまった。

「おい、そこの。 エイグリルの手紙を見せてみろ」
「は、はい…」

よって、イルモードは、エイグリルが「弓兵に救援を依頼する」という事自体、全く信じられなかった。
彼が見立てるに、エイグリル将軍は間違いなく正気のはず。

仮に、裏をかこうとする意図があったとしても、この状況は、既に誰か個人の戦闘能力でどうにかなるレベルではない。
端的な話、世界最強の誰かがやってきたとしても、クリス王子をぶつければいいだけの話だ。
だから、この状況においては、個人ではなく、絶対に複数の戦力が必要。

どう考えても、正直村の連中に「危険を承知で救援依頼をする」のが最上の選択のはず。
単独の相手、しかも骨董品の弓兵などに、救援を依頼をするなど、全くの想定外。
きっと何か裏がある、と意気込んで手紙を読み始めたのだが…。

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拝啓 弓皇翁どの

エイグリルです(ぺこり)

暑さ厳しくなる昨今ですが、貴公におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
こちらは、将軍職という肩の凝る職業について以来、平々凡々と日々を過ごしております。

さて本日、私が久しぶりに自ら筆をとりましたのは、唐突ではございますが、貴公の素晴らしき弓の腕を、もう一度拝見したく思っているからです。

と言いますのも、長く続く平和により、いささか我が軍の皆も気が抜けてきた部分がございます。
臣下一同、仲むつまじく穏やかなのは素晴らしい事ですが、平和な時にこそ、戦争の心構えを忘れず、と申します。
特に、これから我が国を担う王子たちには、貴公の弓技をご披露頂く事で、軍人としての心意気を見せたく思っております。

ご多忙とは存じますが、もしご了承頂けるなら、こちらからお迎えにお伺いしたく思いますので、日時をお知らせいただければ幸いにございます。

それでは、この辺りで失礼をいたします(ぺこり)
本日もどうぞ、良き狩りを!  草々

--------------------------

「なんだこれは」

一通り読んで、流石のイルモードも絶句した。
彼の予想の斜め上を行く、全く意味不明な手紙だった。
報告に来た偵察兵も、さもありなんという顔をする。

伝説の英雄に、武芸上覧を依頼するという、実にのんびりした雰囲気の手紙。

これが、真に救援を求めたものだとは、到底考えがたい。
実際に、この手紙を回し読みしている大臣たちも一様に、不可解という顔をしていたが、誰からともなく、極めて妥当な解釈の意見が出てきた。

「…あの、イルモード宰相…。 失礼ながら、エイグリル殿は、もう既に正気を失ってらっしゃるのでは…?」

「ぐ…」

この手紙を読めば、誰でもそう思うだろう。
小バルベキア公が生きていた、かりそめにでも平和な時代であったなら、確かに、こんな手紙をエイグリルが出してもおかしくなさそうな気がする。

だが、エイグリルは、正気であるはず…。
だからこれは、きっと、何かを伝える暗号か何かであるに違いないのだ。

「あ、暗号、ですか?」
「そうだ! そうに違いない! これは間違いなく、救援を求める手紙であるはずだ! 貴様等、何か思いつく事はないか!?」

皆、イルモードに言われて手紙を見るが、誰からも返事はない。

「あの、手紙の冒頭に…」
「何だ、何か分かるか」
「『暑さ厳しきおり』と書いてございますが、今は、冬でございます…」

だが、皆、「それがどうした」的な表情を浮かべるばかり。

「季節も分からないとなると、エイグリル殿は、やはり、もう既に前後不覚なのでは…」

それはない。 それはないはずなのだが…。

この手紙は、何かの暗号、あるいはアナグラムかと思い、文字を入れ替えたり、文脈を入れ替えたりするが、全く意味をなさない。

それに、この文面には、もう一つ困った部分があった。
仮に、これが全くの暗号だとしても、何かしら不穏な部分があれば、それを謀反心ありとして冤罪を捏造し、エイグリルを処刑するための材料として使う事ができた。

しかし、この文面には、そんな事が何一つ書いてない。
実に穏当、当たり障りのない内容であるため、エイグリルを陥れるためには使えないのだ。

「…捕まえたエイグリルの使者は、何と言っていた?」

「それが、『将軍が遂におかしくなり、過去の妄想に囚われ始めたのを不憫に思って、せめて手紙を出すように言われた』と言うばかりでした」

「…やはり、エイグリル殿は、おかしくなってしまったのでしょうか」

「それはないッ! もしそうだとしても、それは『手紙を届けるフリをする』だけで足りる! わざわざシキ国まで届ける理由など皆無だ!」

「しかし、それでは文章の中身が説明つきませぬ」

「この文章とて、単に、捕まった時に言い逃れるためだけのものよ! この内容であれば、運悪く捕まろうとも、病人の夢物語に仕方なくつきあっただけ…と、いくらでもシラが切れる」

「ですが、宰相が仰るように、この文面が内密に救援を求めるものだとしても、どこをどう読めばそうなるのか、皆目検討が付きませぬ。 …端的な話、この手紙が救援を求めるものだとしても、実際、それが相手に伝わるのでしょうか?」

「…!」

それが、イルモードとしても甚だ解釈に困る部分だった。
彼が正気だとするなら、この文面は万一に備えて言い逃れができるように作ってあり、かつ他者には簡単に解析できないようにしてあるはず。
多分、エイグリルと笹神…。
両者だけの共通項が、この手紙を読み解くキーワードになるはず。

「…『笹神龍心』という人物の、正確な人間像を知っている者が居るか」

イルモードが大臣たちを見回しながら聞くと、40代ほどの壮年の将軍が、恐れながら、と一歩前に出て報告を始める。

「皆様の前で、失礼いたします! 聞いた話ですが、エイグリル殿は、今のお話に出てきた笹神殿と、若き日に戦場で合いまみえた事があるそうで…」

その報告に、その会議に参加した者たちから「おぉ…!?」と驚愕の声があがる。
まさか、伝説の人物と、自分の国の将軍とが交戦経験がある…などとは、誰も思っていなかったのだろう。

「それだ! その話が、この手紙を読み解く鍵のはずだ! 二人が戦った場所は、どこか分かるか?」

だが、イルモードにそう言われると、その壮年の大臣は、言いにくそうに返答する。

「それが、一度だけではなく、二人は幾度か対決した事があるそうで…。 笹神殿は弓、エイグリル殿はヘヴィボウガン、時にガンランスを使って対峙したと言う事です」

「なんだと!? それで、どうなったのだ!?」
「はっ、相手は恐るべき強さだったそうですが、エイグリル殿の勝ち越しに終わっているそうです」

なんじゃと、と言う悲鳴のような声が、高齢の大臣たちの口から上がる。

「何度か戦った事があると…。 それは、間違いなくエイグリル本人から聞いた話なんだな?」
「そうです」

複数の交戦経験があるという事は、両者に共通する思い出も複数ある、という事になる。
イルモードは、手紙を読み解く上の思い出…キーワードを「地名」ではないかと疑っていたのだが、残念な事に、その線は限りなく薄くなった。

…それと、少し意外な事に、「伝説の弓師」と言う割には、エイグリルに負け越しているらしい。
数千の敵を一騎で倒したとか言う逸話があったが、随分派手に尾ヒレが付いたものだ。

さっきの大臣たちも、想像上の英雄の「実像」を知って、意外に普通の人らしいと認識を改めたらしく、動揺や失望の声が漏れている。

だが、それこそ最もな話だ。
そもそも、弓師が火力でボウガン使いに勝てる訳がない。
認めたくはないが、エイグリルとて、凄まじい技量を持つガンナー。
笹神とエイグリルが同じ力量であれば、ボウガン使いに勝利の天秤が傾くというのは、至極現実的な結果だ。

「他には? 笹神の人となりや、他の武器を使っている可能性は? エイグリルは何と言っていた?」
「外見について聞いた事はないのですが、笹神殿は猛々しい性格、かつ非常な頑固者で、弓しか使わないと聞いています」
「…なんだそれは? じゃあ、エイグリルと戦った時、その笹神とやらは、毎回弓で挑んだと…。 そういう事なのか?」
「そう伺っております」
「…バカな! それでは良いところなど、まるで無いではないか!」

イルモードが、笹神の人物像を聞いたのには、二つ理由がある。
一つは、手紙のキーワードになる要素を別に探そうとした事であるが、もう一つは、「笹神龍心」なる人物の、現実的な脅威としての情報である。

「笹神龍心」がエイグリル同様、現代の戦闘に対応し、槍や銃を使いこなす存在であり、その勇名を生かして、弟子達を多数養成していた場合、これは正しく脅威足り得る。
イルモードはそう解釈していた。
だから、弓しか使わないという報告は、にわかには信じがたい物だったのだ。

前述したように、弓は旧世代の兵科である。
ただ、それは、威力の問題ではない。
研ぎすまされた弓矢の一撃は、鎧甲を付けた兵士たちをも問題にせぬほどの破壊力がある。

だが、弓は知ってのとおり、弦を引いて撃つ。
ボウガンが最も得意とする「間断のない連射」が、弓は構造上、どうやっても不可能なのである。

そして、ボウガンが火薬に依って弾丸を射出するのに対し、弓は人力に依って矢を飛ばす。
投射武器に最も重要な「射程」において、その差は歴然であり、弓は圧倒的に後塵を拝していた。

かつての戦場で、弓とボウガンが激突し、古参にして練達の弓兵たちが、新参のボウガン隊の姑息な遠距離連射で、見る影もなく蹂躙されたというのは、腐るほど聞いてきた話。
誰もが、そこで弓に見切りをつけるのが自然な流れだったし、事実それによって、今日のボウガンの台頭は実現したのだ。

「(弓しか、使えないという事か…?)」

わざわざ負け戦に臨む武将など皆無。
弓で負けてなお、その次もまた弓を使って戦う、という事は、その人物がよほどの愚か者、あるいは弓しか使えない、としか考えられない。

結論として、笹神龍心なる人物は、本当に単なる弓師である可能性は高い。
だが、それでは「エイグリルは正気を失っている」事になってしまう。

奴は間違いなく、正気のはずなのだ…!
状況は理屈には全く合致していないが、自分の直感を信じたイルモードは、エイグリルが正気だと仮定した場合のロジックを編み始めた。

エイグリルは、正気。
奴が書いたこの手紙は救援を求めるもの。
そして笹神という男は…。 
考えにくいが、大軍を押し返したという伝説が万一真実だった場合、自分たちの測れぬ「何か」の戦力を持っているに違いない。
そして、エイグリルはその戦力の秘密を知っているからこそ、たまたま勝利できていた。 そうに違いない。

部下と大臣たちが口々に言う「エイグリルは正気を失っている」という結論が妙に耳障りに聞こえる中、イルモードは一人、煮詰まった頭で、目に見えぬ敵「笹神龍心」への対抗策を練り始めていた。


<続く>
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*Comment

NoTitle 

wao!笹神おじいちゃん将軍にぼろ負け?ww


自分を倒せるやつを求めてたんじゃなかったのかよ!ww
八百長じゃね?と思う今日この頃ww

それでですね。笹神さんは近接武器が使えると思うのですよ。
だって弓でまるボタンおせば近接になるしww


一人で数千っていうんだから何か秘密がありそうだし。


  • posted by 風霧刹那 
  • URL 
  • 2011.04/27 16:19分 
  • [Edit]

NoTitle 

次の話を読んでお分かりになったかと思うのですが、要はこの二人、「はじめの一歩」の、鴨川と猫田みたいな間柄な訳です。
「あの戦い、俺の勝ちだ!」「いいやアレは俺の勝ち!」みたいな。

もちろんモデルになった方々はこんな間柄ではありませんが…。

ちなみに、笹神が近接武器使えるというのは、かなり良い線突いているので、ノーコメントとさせて頂きますw
  • posted by 丼$魔(管理人) 
  • URL 
  • 2011.05/13 22:56分 
  • [Edit]

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まとめteみた.【GUNNERS HEAVEN(12)】

「…笹神龍心(ささがみりゅうしん)です」その偵察兵の報告を聞いて、同席していた大臣達の半数ほどが、一斉にどよめく。「…なんだと!」「まさか、『笹神龍心』とは…!信じられぬ!」「エイグリルは、彼の方と、交流があったのか!?」だが、会議の中心であるイルモー...

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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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