女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(11)

イルモード宰相は、エイグリルが正気で、ユリウス王子の居場所を知っており、そしてシャルルが裏切者だと確信した。
ほどなく、奴は何がしかの実力行使に及ぶだろう。
エイグリルに対してはもちろん、シャルルに危険が及ぶ事も明白であった。

そして、ユリウスをも殺すと言っていた、イルモードの言葉…。
あれもおそらく、本気である。
エイグリルの口から、ユリウスの行き先を言わせるのが効率的なのは間違いないが、このまま行き先を言わぬままなら、人海戦術に出るのは十分ありえる話だ。
それをわざわざ口にした…。
自らの手の内を晒したのは、こちらの反撃を引き出すための「圧力」だ。

こちらがユリウス王子を探し出すなり、援軍を呼んだりしようとすれば、それを逆手にとって、ユリウス王子を殺し、自分たちを罪に陥れ、合法的に抹殺する気なのだろう。

そうせざるを得ない状況に、奴は「手」を進めてきた。

どうする。
この状況で、どんな「応手」がある?
奴が想像し得ないような、奇襲攻撃…。
そんな方法が、何か、あるのか?

「…援軍を呼びましょう」
「シャルル…!」
「この状況下、ほかに有効な方法が考えつきません…。 『正直村』の方々に頼りましょう。 将軍、もう、それしかありません!」

「…待ってくれ」

しかし、エイグリルは片手で顔を覆い、もう片手でシャルルの発言を止める。

「…少し、考えさせてくれ」

絶体絶命の状況下、エイグリル将軍は、彼らの戦力としての可能性に、再度丁寧に思いをめぐらす。

「喧嘩師」、「蒼梟」、「山猫」、「碧風」…。

かつて愛銃と共に、酒を酌み交わしあった狩り仲間。
その、皆の姿が思い出される。

無名にして名誉を求めぬ彼らだが、エイグリル将軍が認めるだけあって、彼らの実力は本物だ。
一騎当千の戦力を持つ奴らなら、確かにシャルルが言うように、このような城などたやすく攻め落としてくれるに違いない。

「喧嘩師」の突撃を先頭に、「蒼梟」が千変の遊撃に徹し、それを双の一門たる「山猫」が援護狙撃し、「碧風」が「蒼梟」と共に全員を支援する。

たった数人だが、不死身にして不屈の一団。
あの無双の狩人たちが、この国の悪しき流れを断ち切る、そんな光景を、一瞬だが、夢見た。

本当に一瞬、そんな夢想にすがったが…。


「(…ダメだ)」

それは、彼らの戦力としての話ではない。
彼らは、傭兵として戦うには、あまりにも誠実で、実直過ぎるのだ。

彼らは、皆オネスト群県(ランド)に居を構え、そして、なんと真正直な事に、ギルドへの登録の際、本名も併記している。

「正直村」の存在を知り、今、この国のハンターズギルドの頂点に立っているイルモードならば、彼らの事はもちろん、その身内…。 彼らの友人、恋人、子供の事までをも把握しているはず。

「正直村」は、確かに自分が打てる最大最強の手。
だからこそ、イルモードは、確実にこの「応手」に、罠を張って待っている。

「(く…)」

彼らの戦力と可能性を信じるという方法もある。
彼らであれば、仕掛けられた策も罠も、もしかしたら見破ってくれるかもしれない。
その可能性はある。

だが、それもイルモードがどういう人物かという、予備知識があればこそだ。
相手の事を知らずに戦いに挑むのは、戦場においては愚の骨頂でしかない。

まして、イルモードの側には、クリス王子が居る。
仮にこの政権が打倒できたとしても、彼ら全員が、無傷で生還できる可能性はかなり低い。

何度、どんなシミュレーションをしても、エイグリルの脳内で、誰かが犠牲になった。

「(ダメだ…)」

国家の危機の今、人間一人の命にこだわっている場合ではない。 多数を生かすために、少数を殺す。
それは政治家としての基本的原則だ。
もしもエイグリルが、全く彼らと面識がなければ、もしかして、彼らに救出依頼をしていたかもしれない。
そしてもしも犠牲者が出れば、組織の長として、そうなった者の冥福を祈り、悼み続けるだろう。

だが、一人の人間として。
彼らの友として。

エイグリルは、どうしてもその選択肢を選ぶ事ができなかった。

「(友よ…。 君たちがもしも私の『友』でなかったのなら、私はこんなに悩まずに済んだかもしれないものを…!)」


場面はその時、尖塔を出て王室に戻ったイルモード宰相へと移る。
深夜にも関わらず、カルネラ大臣が、イルモード宰相に火急の用と言う事で、謁見を希望してきたのだ。

「ユリウスの行き先が分かりました!」
「なんだと! 本当か、どこだ!」
「これを…! この地図をご覧下さい!」

それは、ユリウスを城下町で見かけた偵察兵たちが、その目撃情報の時間と位置を赤い点で記載した地図。

その地図によれば、ユリウスはまだ国内に居たが、バルベキアの首都であるノーブルを遙か離れ、蛇行しながら、東の方角へと向かっていた。

「ユリウスの奴、東のリーヴェル共和国に亡命する気では!?」
「それはない。 亡命した所で、奴に得るものは何もないし、城を追い出され、人に侮辱されたままで黙っている奴ではない」

クーデターで追い出される事を「侮辱」と例えた表現に、違和感を感じたカルネラだったが、イルモードは目の前の地図を食い入るように見ている。

「目撃情報が短時間で変遷している割には、移動距離が短い…。 徒歩か…。 王子様らしく、外の地理はよく分かってないと見える…。 だが、ずっと東を目指している…」

それからしばらくして、イルモードは、カルネラに唐突に命じた。

「ギルドの警邏部に命じて、ユリウスに賞金を掛けろ! 今すぐにだ!」
「お、王族に賞金を!? 今すぐにですか!?」
「ああ、奴は高い可能性で、エイグリルの私設軍隊『正直村』を求め探し歩いている! その前に奴を捕らえろ! そして、

『正直村』周辺への、偵察兵を倍に増やせッ!」
「り、了解しました!」

ギルドマスターとなって初めて知った、『正直村』の存在。
地方の片隅に潜む、狩人の仮面を被った凄腕の傭兵集団。

彼らがなぜ、こんな辺境に集団で居るのかは全くの謎だが、詳細を調べるにつれ、その実力は、一個師団どころが、一つの軍隊にすら匹敵する事が伺いしれた。

さすが「焼鉄の黒翼」。
口では平和を唱えていても、戦争を生き抜いてきた歴戦の傭兵は、しっかりと乱世への備えをしていた。

率直なところ、このユリウスの迷走は、目的とする場所を持たず、ただ東に向かっているだけという可能性もある。
エイグリルがユリウスを逃がす際、目的地が「正直村」なのなら、必ず目印や地図を持たせただろう。
そうでなければ、この迷走ぶりは、説明がつかない。

しかし、現在の盤面で、最も不味い展開が「偶然、正直村の連中とユリウスが出会う」事である。

この国の忠臣である連中を、合法的に抹殺するには、相応の冤罪を被せる必要がある。
まずはシャルル、ついでウィル、カッツェ、そしてユリウス王子、最後に正直村…。
彼を取り巻く包囲網は、決して油断ならない存在ばかり。
もし、全員が一斉に武装蜂起すれば、クリス王子の力を使っても、ここは砂上の楼閣と化す。

だからこそ、それらの戦力は常時分断しておく必要がある。
「偶然の出会い」など、全くの願い下げだ。

正直村の存在に気づいてからは、偵察兵を派遣し、ギルドの資料を元に、彼らの肉親までをもマークしていたのは極めて幸運だった。

あとは、エイグリルが、どう出るか…。
あれだけ露骨に追い込んでおけば、必ず何かの行動を起こす。
起こさねば、シャルルが裏切者として責め殺されるのが明白だと、エイグリルも理解しているはず。

「(…さぁ、どう出る、エイグリル…?)」


ここで、場面は尖塔に移る。
エイグリルの出した結論は、予想外のものだった。

「援軍を呼ぶ…? 正直村の中の方に、それができる友の方が居るのですか!?」
「…いや、友と言うとあちらが嫌がるだろうが、一人、心当たりが居るのだ」

シャルルはエイグリルのその発言に驚く。
この状況は、既に一人の力でどうにかなるレベルではない。
それでもエイグリルは、その人物に頼ろうとするのか。
それほど、その人物は強いというのか。

「この絶望的な局面を好む、うってつけのへそ曲がりが」
「ど、どんな方なんですか…?」

エイグリルは、過去を思い出すように、石牢内の、見えぬ空を見上げながら言う。

「かなりの高齢になっているはずだが、もしも彼が、未だあの頃のように健在なら…」

その白い瞳に映っているのは、その「彼」の、過去の姿か。

「自分を敗北させてくれる敵と死を求めて、命潰えるその時まで戦っているはず…。 奴ならやってくれるかもしれない」
「そんな方が、居るんですか…?」
「ああ、ちょっと常人には理解しがたいがな…。 シャルル、筆耕を頼まれてくれないか? それと…」
「何でしょう? 私にできる事であれば、なんなりと」

だが、エイグリルの続く発言は、さらに妙なものだった。

「その…。 私は貴女が淑女だと理解しているし、貴女の字を見たことがないのを、こうして事前に断った上で言うのだが…。 できるだけ『女性らしい字』で書いてくれないだろうか」


それからしばらくの間、イルモードは、エイグリルの周辺における警備を、わざと手薄にした。

このあからさまな仕掛けに、エイグリルはどう対応するのか…。
エイグリルが何かを頼むとすれば、シャルル以外には居ない。
彼女の動向は制限しなかったが、偵察兵を倍以上に増やしたし、ウィルとカッツェは、既に「古龍の血」を8頭分集めたとの連絡があったので、さらに5頭追加しておいた。

正直村周辺の情報も、続々集まりつつある。
総勢20名の傭兵集団だと、後になって分かったが、特にエイグリル将軍と懇意にしている「喧嘩師」「蒼梟」「山猫」「碧風」「茜風」…。 彼らの素性は殆ど裸にできた。

布陣は万全。
エイグリルが、どんな手を指しても、それを逆手に取ってやる。


そしてさらに一週間後、カルネラ大臣から遂に待ち望んでいた報告があった。
エイグリルが、外部の者に手紙を出した事が分かった、という内容。
それはバルベキア三国の現状を訴え、助けを求める手紙に違いない。

「どうだ! 相手は誰だ!? どんな内容なのだ!」

血相を変えて問いつめるイルモードの前で、カルネラ大臣に連れられた偵察兵は、目を白黒させる。

「あ、あの、それが、確かにエイグリル殿の手紙だと、思われるのですが…」

「何だ! 相手は誰だ、喧嘩師か、蒼梟か、山猫か? 誰でも良いぞ! バカ正直なハンターども、ギルドマスターに刃向えるものなら、いくらでも刃向かうが良い! 奴らの親子共から順に、目の前で首を跳ねてくれる!」

「それが…」

「何だ、さっさと報告せんか!」

「…手紙は、正直村宛てではないようなのです」

「…何だと!?」

その兵士の報告によると、「正直村」の近くで、警備兵が不審な旅人を見つけた。
尋問しようとした所、その旅人は逃げたため、追跡の末にその者を捕縛し、荷物を改めた所、エイグリルの手紙が出てきた。

だが、手紙は、正直村宛てではなかった。
遙か東方の異国、シキ国イズモ村に宛てられたものだった。

東方の島国、シキ国まではかなり距離がある。
その宛先が本当なら、バルベキアからは陸路ではなく、ジュワドレイ湾からの海路を通るはず。
正直村周辺に居た不審な旅人は、囮だ。

つまり、エイグリルはイルモードの拷問を受けた直後に行動を起こし、かつ誰かが捕らわれてもいいように、複数のルートで手紙を出していたのだ。

「シキ国…? 誰だ? そんな遠方に、エイグリルを救出に来る知己が居るのか? 何と書いてあったのだ!」

「いや、それが、その…。 差し出した相手も、文面もよく理解できない内容でして…」
「部下が要領を得ない報告をするなッ! 判断は私がする! エイグリルが、手紙を出した相手は誰なのだ!」

「それが、その…。 手紙の宛先は…」

その偵察兵は、まともに返答する事すら全く不可解だとでも言いたげな、そんな雰囲気を隠さぬままに報告した。


「…笹神龍心、です」


<続く>
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*Comment

NoTitle 

連日の小説更新お疲れ様です!

「笹神龍心」は気になりますねー。
ハンターじゃないけど強い、おじいちゃんだけど強い。
神龍の化心ですねきっと。。。(ワケナイ
いろいろ想像できます。

私のハンター業は金冠があまりにでないので竜職人のトンカチ勲章
を目指すようにしてなんとなくの金冠をもう少しつけてから
再度直接狙うよう切り替えました。
自マキ無しソロでディアブロ亜種原種を連続100頭狩るのはキツイですからね。

最近、ハンマーも始めました。ハンマーっていいですね。なんとなく
「ジョギング始めたんだ。」みたいな爽やかさがあります(幻覚乙

次回小説楽しみにしております。

  • posted by 江田島J八 
  • URL 
  • 2011.04/09 09:15分 
  • [Edit]

風霧刹那 

茜風が、友人の狩人名(バトルネーム)と同じだったために見ていてびっくり!!
ちなみに、碧風ではないんですけど、緑嵐っていうのもいます。(おしい!)


一瞬、黒ディアブロスの装備をまとった例の最強ハンターさんかと思ったんですが、なんかもっとカッコイイ名前のおじいちゃんハンター出てきましたねww


展開がワクワクします。
  • posted by  
  • URL 
  • 2011.04/09 15:43分 
  • [Edit]

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by  
  •  
  • 2011.04/09 18:40分 
  • [Edit]

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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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