女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(7)-2

ここで、時間は半日が過ぎ、場面は変わる。
ノーブル城は基本的に、戦闘用の山城が発展した形式の城であり、現在では王宮としての居住用のスペースはあるものの、その本来の役目は敵が攻めてきた時の最終防衛線であり、迷宮のような複雑な構造をしている。

そして、城の中央部から少し離れた所に、小さな尖塔があった。
尖塔の中は、装飾も何もない石壁の部屋であり、部屋の扉の代わりに、巨大な鉄の格子枠が填められている。
ここは、外に出す事のできない、城内で出た罪人たちを閉じこめておくための、冷たい石牢。

そこで、一人の壮年の男性が、拷問係の雑兵に鞭で打たれていた。
バシィ、バシィと響く、鞭打の音と共に伝わる苦悶の声。

「ぐあっ!」

「こいつめ! まだ『鎧』の場所を吐かんのかッ!」

「うぐぅっ!」

「『奴』をどこに逃がしたッ!」

「あぐぅうっ!」

雑兵が、その男に拷問しつつ質問を繰り返すが、男は鞭で打たれ悲鳴を上げるばかりで、木枠の手錠を填められたまま床に俯せ、もはや身動きをしようともしない。

「う…。 あう…。」

「こいつ…! こらっ、起きろッ、エイグリル! さっさと鎧の在処を吐くんだっ!」

雑兵が息も荒く、その男性…。
元「黒鳥騎士団」団長にして、この国の元宰相。
そして、今は国家反逆罪で幽閉されている重罪人「エイグリル=ローグ」を、鞭罰で拷問している最中に、ここ尖塔にやってきた人間が居た。

「ご苦労。 どうだ、鎧の場所は分かったか」

それは、銀髪と褐色の美貌を持つ女性騎士だった。

「シャ、シャルル将軍! わざわざご足労頂き、ありがとうございます!」

シャルルは、開け放してあった石牢の扉をくぐり、中に入ってくる。

「それで、残った鎧の場所は分かったのか? 残る黒龍の『小手』と『脚』の場所は、吐いたのか?」
「ま、まだでございます」

「何をしているッ!」

そう言って、シャルルは雑兵の顔を平手で張る。

「お前の気合いが足りないから、まだ吐かんのだッ! 罪人には容赦なく責めを負わせろッ! 貸せッ!」

シャルルは雑兵の手から鞭を奪い取ると、エイグリル将軍に向かって、猛烈な鞭打を喰らわせ始めた。

バババババ、と連続する空気を叩く音に相まって、エイグリル将軍の絶叫があがる。

「吐けッ! エイグリル、吐け! ユリウス王子をどこに逃がしたッ! 『小手』と『脚』の場所はどこだッ! 死にたくなくば、今すぐ吐けッ!」

その光景には、流石に拷問係の雑兵も目を剥いた。
相変わらず、シャルルの責めは強烈だ。
普通の人間に何も考えず鞭を打つと、30発も喰らわす前に、大抵激痛でショック死する。
なので、時間をおいてゆっくり一発一発打ち込むのが、鞭を使う時の「拷問の鉄則」だ。
いくらエイグリル将軍がこの国一番の猛者だと言っても、あんな責めを喰らっては即座に死にかねない。

「貴様、何をボケッと突っ立って見ているッ!? やる事が他にあるならば、さっさと任務に当たれッ!」
「りょ、了解いたしましたァッ!」

殴られた雑兵は、これ以上シャルルの癇癪を喰らっては大変と、あわてて牢屋を飛び出し、この尖塔から去っていく。

石畳に響く足音が、完全に遠ざかるのを確認すると、シャルルはそっと、床にうつ伏せている男に、小声で囁いた。

「…将軍。 エイグリル将軍、もう大丈夫ですよ」
「…ありがとう」

そう言って、さっきまで鞭で打たれ、激痛に悶えていたはずの男は、むくりと起きあがった。
シャルルは、エイグリルの前にひざまずいて、腰に付けていた皮袋を差し出す。

「例の物をお持ちいたしました」
「すまないね、何度も何度も危険を侵させて…。 しかし、本当に、君の演技で助かったよ。 素人に打たれる鞭は、予想している場所と別な部分に来たりして、かなり応える」

そう言って、エイグリルは手錠をしたまま、全身の痛みを紛らわすかのように、あちこち伸びをする。

「ええ、将軍のお顔に鞭が入りそうになった時は、こっちがハラハラして、思わず拷問係の顔を叩いてしまいましたわ」
「ははは。 いや、しかし、君の鞭捌きも堂に入ってきたものだな。 あのおてんば姫が、一足飛びに女王様になってしまったのではないかと、鞭撃たれながら心配したよ」
「も、もう!」

シャルルは、高速でエイグリルを鞭打しているように見えて、実は服の金属部分や、肉の厚い部分を軽く叩いていた。 それを派手に見せかけるため、手数を増やし、空気を派手に鳴らす事でごまかしていた。

「それにしても、戦場では大活躍だったそうだね、シャルル」
「いえ、活躍などとは、とてもとても…。 一騎打ちでも負けてしまいましたし、何よりも、『黒龍の力』を使う陛下を、またお止めする事ができませんでした…。 本当に申し訳ございません」

そう言って、シャルルは深くエイグリルに頭を垂れる。

「いや、君は本当によくやった。 極力死人を出そうとしなかった、君の試みは立派なものだ。 犠牲が出る事は戦乱の世の定めだが、愚にもつかぬ、正面からの殺し合いなど、もっての他だからな…」
「なんと、もったいないお言葉を…。」


その頃、ノーブル城の地下では、クリス王子が目を覚ましていた。
目の前には、血を吸われて絶命した下女二人の遺体。

「(そうか…。 また、この鎧の力が、無意識に暴走したのか…)」

クリス王子は、二人の遺体を一瞥すると、よろよろと「古龍の血」で満たされた浴槽へと向かう。
そして、その人型の浴槽にたどり着くと、浴槽の形に体を合わせ、ゆっくりとその身を沈めていく。

…すると、キュキィィ、という奇怪な音とともに、鎧がざわざわと蠢き始めた。

なみなみと血で満たされていたはずの浴槽は、まるで栓が抜けたかのように、見る見るうちに水位が下がり、浴槽の中から再びクリス王子の姿が見えてきた。

クリス王子は、浴槽の中で半身を起こすと、顎を手で撫でてみる。 そこには、自分の皮膚の感覚。
全身に鎖のごとく絡みついていた「棘」は、満足して引っ込んだようだ。

クリス王子は、ブラックヘルムを脱ぐと、浴槽のすぐそばに置いてあった『黒龍の兜』のそばに置く。
黒騎士の鎧の中から現れた、「クリストフ=イェルザレム」王子の姿は、蒼みがかった黒髪の、病的に痩せた青年だった。

ブラックヘルムを脱いだ途端、半ば腐りかけた血の風呂の、濃密な悪臭が鼻を襲う。
思わず吐き気を催してしまうが、それをワインビネガーやブルーチーズのようだと自分を誤魔化しながら、再び血の風呂に浸かる。

全身を襲っていた、もの凄い激痛と倦怠感が、ゆっくりと引いていき、代わりに溢れるような力と、強固な意志が全身に満ち満ちてくる。
顔にも、知らず凶悪な笑顔が浮かんでくる。

この「黒龍の鎧」の力は、流石だ。
さすがに、代々のバルベキア三国王…。「黒龍に仕える神官」が装備するだけの事はある。

「頭」「胴」「腰」の部分は揃っている。
後は、ユリウスが持って逃げた「小手」と「脚」の部分を取り返し、この本物の「頭」装備を装着すれば、圧倒的な「力」が蘇る。

…正直、今彼が身につけている、「胴」「腰」の部分のパーツだけでも、このとおり身体に凄まじい負荷が掛かるが、何のことはない。

まさに、この強さこそが、彼が望んでいた全てだったから。

「エイグリル…」

クリス王子の口から、思わず声が漏れる。
既に、棘が完全に引っ込み、結合が緩くなった鎧部分の小手は完全に外れるようになっていた。

その両手…。 細く、白い両腕を見ながら、彼は言う。

「僕は、強いぞ。 こんなに強くなったぞ」
「王族という者は、やはり『選ばれし者』だ」
「貴様ら貶民とは、全く違う。 違うんだッ…!」
「貴様らが、どんなに努力しようと、才能があろうと、全く無駄なんだッ…!」

そう言って、哄笑しながら、腐り掛けた血の風呂に、またも頭から突っ込む。

「そうだ! そうだろう!? 僕こそが強者だろう!? …エイグリルよッ!!」


ここで、場面は再び尖塔に移る。
牢屋内では、シャルルがエイグリルに持ってきた皮袋の栓を開けていた。

「…薬湯にございます。 将軍が昔いらした東国の物には及ばないかもしれませんが、何、我が国のも捨てたものではございません」

シャルルは、手錠を掛けられているエイグリルに、皮袋を口元に持っていって飲ませる。

「すまないね。 君には何から何まで、迷惑を掛ける」
「いえ、将軍さまこそが、我が国の生命線でございますから…」

エイグリル=ローグ。

身長は180センチ強の、鍛えられ、均整の取れた体格の、壮年の男性。
浅黒い肌に、左頬には過去の物と思われる傷跡。
その表情は険しいながらもおだやかで、優しい。

…だが、彼の両の瞳、特に左目は、まるで人形のように白く濁っていた。

若い頃から戦場で戦い抜き、生粋の傭兵でありながら、その実力によって将軍の地位まで上り詰め、「焼鉄の黒翼」との異名を持った、バルベキア三国最強の男。

…その彼は今、眼病を患い、光を失いつつあった。

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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