女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(7)

「王子…。 王子の様子は大丈夫なのかッ!?」
「分からない…! まだ、『棘』が自分で動いてないから、大丈夫だと思うんだけど、とにかく、早馬を飛ばして『祭壇』の準備をするように、城に伝えて! カッツェ、ウィル、王子をお願い! 私が退却の指揮を取るから!」
「分かった!」


シュゲール平原における、ヴェルド軍とバルベキア軍の激突は、バルベキア軍の大勝利にて幕を閉じた。
その最大の功労者となったのが、バルベキア三国王・クリス王子だった。

クリス王子は「鎧の力」を使い、勇猛さと残虐さにて全土に名を馳せた、ギルモア将軍を一騎打ちにて惨殺し、ヴェルド軍を恐怖のどん底にたたき落とした。

ヴェルド軍が、戦意を失い総崩れとなる中で、わずかに残っていた勇猛な将軍たちが、ギルモア将軍の仇、とクリス王子に襲いかかってきたが、クリス王子は我が身に降り注ぐ剣戟や銃撃を全く避ける事なく跳ね返し、返す刃で相手の将軍たちを斬り伏せ続けた。
まるで戦場を、無人の野のごとく闊歩するその姿に、ヴェルド軍の最後の勇者たちも恐れをなし、進軍を命ずる大銅鑼など無視して、全員が脱兎の如く退散し始めた。

通常なら、バルベキア軍はここで追撃を行い、敵軍を最後の一人に至るまで壊滅させる所だが、そうはならなかった。
バルベキア三国王・クリス王子の身に、突如異変が起こったのだ。

戦場のど真ん中で、突如膝をつき、力尽きたように倒れ込むクリス王子。

黒龍騎士団の面々は、それが「鎧の力」の副作用である事を理解していた。
急いで城に戻って、祭壇で「力」を補充しないと、王子の命が奪い尽くされてしまう。
騎士団長・シャルルは、即座に全軍撤退の指示を出した。

早馬を飛ばして、「祭壇」の準備をさせ、ウィルとカッツェが馬車を使ってクリス王子を慎重に運ぶ。
そして、全軍の後詰めをシャルルが指揮する。

ヴェルド軍を追撃できない事に不満を訴える、血気盛んな兵士も居たが、シャルルはそれを一喝すると、撤退してゆくヴェルド軍を見やる。
こちらの急な撤退の様子も、相手に見えているはずだが、とって返してこちらを攻撃してくる様子はない。
もう、これ以上の交戦に勝算はない、と踏んだのだろう。

シャルルは内心、これ以上の血が流れずに済んだ事に感謝していた。
裏目には出てしまったし、甘い考えであるのも分かっていたが、自分だけでも、できるだけ相手を殺さず、戦意だけを殺ごうと「荒くれの大剣」という弱い武器を使った。

だけどこの戦争、彼女一人で戦っている訳ではない。
「戦争」である以上、どうしても犠牲者はでる。
それがこの、戦乱の世の定め。

だが、だからと言って、失われて良い命などない。
エイグリル将軍は、ことある毎に自分達にそう訓辞していたし、何よりも自分こそが、それをよく知っているから。

シャルルは、黙祷すると素早く十字を切り、犠牲者たちの冥福を祈る。

この戦乱で命を落とした無数の兵士たち。
そして、一騎打ちで切り結んだ、あの無双の槍兵を悼んで。


ここで、場面はバルベキア三国の首都、ノーブル城へと移る。
バルベキア三国は、その名が示す通り、元々はノーブル、オネスト、ナスティという、3つの小国だった。
だがそれを武力で統一し、一つの国として支配下に置いたのが、この国の祖・大バルベキア一世こと「レニチェリア=イェルザレム」公だった。

彼は冷徹無比な暴君だったが、ヴェルド王国の圧政に反逆し、国民達の尊厳を見事守り抜いた勇者として、今も町中のあちこちで、その銅像を見る事ができる。

ノーブル城の王室は、辺境の国家とは思えぬほどの豪奢な装飾で彩られていたが、その中央に位置する玉座は群を抜いて圧巻だった。
グラン(大)・バルベキアはよほどの巨躯だったのだろう、大の男でも優雅に座れるサイズ。 
そして椅子の背、肘掛けの脇などには、当時の工房における究極の技巧と極大の宝石をちりばめた、贅ここに極まる意匠が施されていた。
それは、この椅子を作った者の人間性をそのまま現しているようでもあり、座るものに王たる威厳を与えるための物のようでもあった。

その偉大なる王・レニチェリア=イェルザレムが初めて座り、二世の「小イェルザレム」へと受け継がれ、第三世である「クリストフ王子」へ渡されようとする、その玉座。

その玉座には、別の男が座っていた。

この巨大な椅子に十分納まるほどの巨躯、精悍な容貌にオールバックの黒髪、その視線だけで何もかもを斬り裂きそうな冷徹な眼光。
そして全身から噴出する傲慢な雰囲気と、薄く浮いた口元の笑みは、この男の「強者」としての余裕を示していた。

ブレスワインを玉座にてゆっくり味わっていた彼の前に、部下が慌てて室内に駆け込んできて、連絡を入れてくる。

「イルモード宰相! 緊急でございます! シュゲール平原にて交戦中の国王陛下が、『鎧の力』を使い倒れた、と早馬にて報告がございました! 至急、『祭壇』の準備をお願いしたい、との事です!」

「…ほう」

だが「イルモード宰相」と呼ばれた男は、全くあわてる様子もなく、別な感想を寄越して返す。

「そうか、あの小僧、また鎧の力を使ったか…。 ふん、やはりあの小娘には、クルアーン大帝の真似事は、いささか荷が重すぎた、という事なのだろうな」
「さ、宰相どの…!」
「分かっておる。 城の下女たちに命じて、地下の『祭壇』の準備をさせろ」
「げ、下女たちでよろしいのですか? もし、陛下の『棘』が動いていたら、命を落としかねませんが…!」
「構わん。 下女の代わりなど、いくらでも居る。 むしろ、兵士を犠牲にする方が無駄というものよ。 下がれ」
「ぎ、御意にございます」

だが、命令を受け退室しようとした部下を、イルモードは呼び止めた。

「待て。 それともう一つ、儀式に必要な『古龍の血』の予備が、もう我が城にはない」
「…!」
「ウィルとカッツェを、帰還し次第、古龍討伐に向かわせろ。 そうだな、とりあえず、炎王龍、霞龍、鋼龍それぞれ3体ずつで良い」
「ぎ、御意に…」


部下が立ち去った部屋の中を、その巨漢は悠然と闊歩する。 

「ふ…。 待ち望んでいた血の匂いがする」

窓を開けた先に広がるのは、鮮血をまき散らしたような夕日だった。

イルモード=ゲルギスク。

それがこの男の名前であり、前「黒鳥騎士団」副団長。
だが、現在の身分は、宰相(国王の補佐)兼、ギルドマスター。
いずれも、先王崩御の際のクーデターで、エイグリル将軍から奪った身分だった。


「開門、開もーんッ!」

クリス王子を馬車に乗せたウィルとカッツェは、ノーブル城正門前で、護衛兵に開門要求をする。
すぐさま鉄扉が両開きに空くと、隙間に滑り込むかのようにウィル達は馬車を走らせ、城のすぐ脇にある隠し入り口の前に付けた。
ここが、地下祭壇の入り口であり、そこには既に大臣や警備兵、下女達が待機していた。

「『祭壇』の準備は出来ているかッ!?」
「出来てございます! さぁ、早く、王子を!」
「気をつけろ! もう既に、王子の鎧から『棘』が出始めている!  祭壇には、俺達が連れていく!」

「お待ちくだされ」
「なんだ、カルネラ大臣!」
「ウィル将軍、カッツェ将軍…。 貴方様方には、既に別の命令が出されております」
「何だと? こんな時にか!? 王子の命が掛かってるんだぞ!」
「この命令も、王子の命にかかわる事でございます! 今、我が城には、『古龍の血』の在庫がございません! 次の機会のために、今から古龍討伐に赴かれるよう、お願いいたします」

そう言ってカルネラ大臣は、ウィルとカッツェに書簡を渡す。
そこには、ギルドマスターでもあるイルモードの名前で、古龍9体の討伐命令が記されていた。

「…今からか!?」
「本気か」

「これも王子のためでございます! 儀式は我々が執り行いますゆえ、ご理解頂いたならば、すぐにでも出発をば」
「…わかった。 今、王子は気絶している! それで『鎧』も寝ているが、王子を傷つけたりしようとすると、『目を覚ます』ぞ! 重々気を付けろ!」
「了解してございます」

そして、ウィルとカッツェが去った後、カルネラは下女二人に、王子を祭壇まで連れていくように指示を出した。

「わ、私たちだけでですか…?」
「文句があるのか、この私の指示に」
「め、めっそうもございません!」
「ならば急げッ! 王子の命が掛かっておるのだぞ!」
「は、はい!」

地味なメイド服を着用している下女たちは、去っていく大臣と兵士たちを恨めしそうに見ながら、王子を祭壇に連れていく準備をする。

成人男性、しかもフルプレートの鎧を付けていたら、その総重量は軽く100kgを越える。
女性二人が運んでいくには、あまりにも重すぎる負荷。
だが、この王権下では、王族の命令は絶対であり、逆らう事など不可能だ。 

その下女二人…。 
メリーヌとフィナは、二人で王子の両肩を担いで、えっちらおっちらと呼吸を合わせ、必死に地下祭壇へと連れていく。

ノーブル城の地下祭壇は、隠し階段の遙か先、かなりの地下深くに設えられている。
ラティオ活火山地帯に属するこの国の地下は、温泉がよく湧き出る事でも知られるが、近くに水脈でもあるせいか、祭壇はまるで蒸し風呂のように、ムッとする熱気で充満していた。

その祭壇の室内は、円筒形の作りになっており、周囲の壁画に沿って、数多くの蝋燭がともされている。
そして、奥座の方には、この祭壇の部屋を見つめるかのような、巨大な本尊…。 
苔むした「黒龍」の彫像があった。

そして、その彫像の足下には、人型をした浴槽があり、それは並々と「古龍の血」で満たされていた。

まるで、惨殺された生け贄が、黒龍に捧げられるかのような構図。
そして、それを祝福するかのように、異形の武器群が周囲に配置されている。

入り口近く、血の浴槽の南側の台座に掲げられ、奉ぜられているのは異形の槌。
東の台座に奉ぜられているのは異形の槍。
西の台座に奉ぜられているのは異形の大剣。
北の台座に奉ぜられているのは異形の片手剣。

黒龍像と、血の生け贄と、異形の武器。

その異常な雰囲気の祭壇は、得も言われぬ力に満ちており、この部屋に入ると、訳の分からない興奮状態に陥るため、メリーヌとフィナはなるべくここに来たくはなかった。

早くこんな不気味な場所からおさらばしようと、力を合わせて、王子をお互いの肩で担ぎながら、また一歩、また一歩、と無限に続くかのような階段を降りていく。
気絶しているのは幸いなのだが、力を入らない人間を担いで降りるのは本当に重い。
だが、やっと、祭壇の蝋燭の光が見え始めていた。

「メリーヌ、やっと祭壇が見えてきたよ、もうちょっと」
「フィナ、気を抜かないで…。 きゃあっ!?」

祭壇まであと少し、という所で、メリーヌという下女は、濡れた階段でバランスを崩し、3人揃って転倒する。
幸いにも、祭壇まで後少しだったので、何段かを踏み外して転んだ程度で済んだ。

「め、メリーヌ、何やってんのよ…」
「ごめん、足元が滑って… 痛ッ!」
「ど、どうしたの!?」
「何か…。 足の骨、折れてるみたい…。 鎧の下敷きになったのかも…。」
「大変! じゃあ、儀式を早く終えて、エミネムさまに診てもら  」


「…? どうしたの、フィナ?」

突然、フィナという下女の言葉が止まった。
その視線は、メリーヌではなく、その先の中空を見ていた。

口元から、静かに涎がこぼれでるとともに…。


フィナの顔一面に、『棘』が生えはじめた。

「きゃあああああああっ!!」

思わず逃げようとするメリーヌだったが、足の骨が折れている事を忘れて転倒する。
恐怖に駆られて、フィナの方を振り向いた時に、メリーヌは、これが何事かを理解した。

クリス王子の鎧から、数多くの棘が生え、近くに居たフィナの体をめった刺しに貫いていた。

…まさか、鎧が目覚めたの? あの転倒を、攻撃されたものだと思って?

鎧の棘に突き刺された、花のように愛くるしかったフィナという下女は、メリーヌの目の前で、病葉(わくらば)のようにボロボロに乾き、皺だらけになり、棘に貫かれたまま絶命した。

そして、フィナの全身を貫いた「棘」は、今自分の方にも伸びて来つつある。

「いやぁっ! 止めて! 止めて、助けて、お願いッ!」

だが、その棘はメリーヌの折れた足に絡むと、皮膚下に食い込む。
急激にメリーヌの全身を襲う脱力感。
必死で抵抗しようにも、体に力が入らない。

「お願い、やめて、助けて…!」

「お願い…。 お願いだから…! まだ、死にたくないよぉ…!」

「誰か…。 誰、か…」

「エミ、ネム、さま…」

だが、その叫びは届く事なく、薄暗い地下祭壇で、メリーヌは息絶えた。

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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