女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(5)

悪名高いギルモア将軍との一騎打ちの最中、致命的な隙を見せたシャルル。
それは相手にとっては必殺の機会であったはずだが、何故か槍の一撃は撃ちこまれなかった。
代わりに喰らったものは、盾によるシールドバッシュだった。

「…今の攻撃は危ない所だったぞ、団長殿! だが、まだまだ戦いは始まったばかり! さあ! いざ、参られい!」

「く…」

巨漢の槍兵に全力で突き飛ばされ、小柄なシャルルは大剣ごと何メートルも吹き飛んでいた。
追撃すれば決着もありそうな状況であったが、ギルモアはシャルルの反撃を用心しているのか、盾を構えたまま微動だにしない。

「さぁ、参られよ! それとも、黒龍騎士団の団長とは、その程度の実力か!?」
「舐めるな…。 私はまだ、負けてない…」

シャルルが、砂を噛みながらも体を起こし、立ち上がろうとしたその時。

突如、バルベキア軍の中から、片手剣を装備した、四人目の黒騎士が、シャルルに向かって馬をゆっくりと寄せてきた。

「!?」

一騎撃ちは、通常どちらかの死を以て決する。
よって、乱入は絶対の御法度。 
それは戦場の誰もが知る常識であるが、それをまるで理解していないかの如く、悠々と歩みを進める黒騎士は、シャルルに対し、馬上から声を掛ける。

「お前の負けだ、シャルル。 僕と代われ」

…何だ、コイツ?

ギルモア将軍は、その黒騎士の発言の意味を理解しかねた。
お互いの誇りが勝敗を決する一騎撃ちの最中に、のこのこ乱入してきたのみならず、自分の判断で勝手に決着を下すとは、何という非常識極まる不作法。

それに、一騎打ちに応じた以上は「不利になったから交代」などという事が許されるはずがない。
それは一騎討ちの意味、原則そのものを無意味たらしめんとする行為だ。

この、戦場に緩やかに出てきた黒騎士の素性が掴めないため、怒りに任せて討ちかかるような愚行は控えたが、あと一歩で蹂躙できた獲物を横取りされ、ギルモアは怒り心頭の状態にあった。

「貴様! 大帝の英霊が審判を下すこの一騎打ちにおいて、無粋にも割り込んでくるとは、なんたる狼藉か! 名を名乗れ!」

声の若い感じ、そしてこの不躾な態度からして、おそらくこいつは、エイグリル将軍ではない。
それに、この黒騎士の全身からは、強者にありがちな覇気も威圧感も、何も感じられなかった。

だが、それが逆に不気味だった。
それなら、何故この戦場に出てくる?
一体、この男は、何者なのか…?

「いけません、『王子』…! 私はまだ、破れておりませぬ!」
「勅命に逆らうか、シャルル。 『王』たるこの自分に」

ギルモアは、その会話を聞き咎め、またも耳を疑う。

「シャルル、大帝の戦法を真似た、お前の策はこのとおり破綻した。 最初から、僕の言うことに従っていれば良かったんだ」

その黒騎士の言葉は、まるで要領を得ず、どこか遠くから響いてくるようだった。 
シャルルという女性騎士は、素晴らしい強さだった。 ただ、それ以上に強い自分が現れたから、彼女の戦法は成就しなかっただけで、クルアーン大帝の戦法を模した彼女の策そのものに誤りはなく、普通なら十分に通用していただろう。

だが、そんな事は問題ではない。
今の会話、もっと聞き捨てならない部分があった。
だが、まさか、現実にそんな事がありえるのか?

「一騎打ちは、僕が引き継く。 ギルモア=ソースクラブ、貴様のような人間離れした強者こそが、僕の相手としてふさわしい」

「…貴公、名は」

疑念が一杯にわだかまる胸中、ある確信を以て名を問う。
彼の推測が確かであるなら、奴は…。


「バルベキア三国王第三世、『クリストフ=イェルザレム』ッ! この名に不満でもあるか、悪将軍よ!」

…!!

やはり、という確信と、まさか、という困惑が、ギルモア将軍の胸を同時に叩く。

いや、もしそれを比較するなら、困惑の方が遙かに勝っていた。
この「黒龍騎士団」は、国王の旗印こそ掲げていたが、ギルモア将軍は、オーソン大将軍、ジェノア軍師の解釈とは異なり、この四人の黒騎士は、全員が影武者とばかり思っていた。

何故なら、本当に国内の政情が不安定ならば、まずはそちらに力を注ぐべきで、わざわざ戦場に出てくる理由など何もない。
それに、やはり万が一にでも、国王が戦の最中に命を落とせば、それはすなわち国を失うのと同じ事。
通常の戦であっても、王が控える本陣は、奥に配置されるのが普通であり、本物のクルアーン大帝でもない限り、前線に国王を据える戦法などありえない。

だが、そんな常識などどこへやら。
それどころか、この国王は、わざわざ馬を下りての一騎打ちがご所望だという。
何を望んで国を失うような行為を自ら起こすのか、その心中を察しようとも、考えつきすらしなかった。

「ふ、ふふ…。 はは、はははははは!!」

よって、彼の口から意味不明の哄笑が漏れ出た所で、それも無理からぬ事だろう。

「(…こいつ、ド阿呆か?)」 

一言で表現するなら、それが率直なギルモアの感想だった。
王を装った影武者である可能性はまだわずかに残っているが、それでも敵将を二連覇した事になるだけで、こちらに全く痛手はない。
それに、あの女性騎士の切迫した感じからして、本物の王である可能性の方も十分にある。

仮に、一国の王を単身討ち取ったとなれば、その恩賞は莫大な物となる。
個人では浪費し尽くせぬ巨万の富と贅の数々、そして周囲に侍る美女の群れ。 
それらが現実として手に入る事になろう。
「ポポが鍋担いでやってきた」所の話ではない。

「いや…! いや! 不満など何があろうものか! 王の勅命とあれば、残念ながら戦場の作法とて曲げざるを得まい! むしろ貴公こそ、覚悟はよろしいか!?」
「いけませぬ、クリス王子! 戦いに臨むのはお止めください!」
「くどいぞ、シャルル! 僕の邪魔をするな! ウィル! カッツェ! シャルルを下がらせろ!」

黒龍騎士団団長、シャルルは同僚達に付き添われ、周囲の円の中に観客として戻る。
だが、獲物を奪われた事も、今は惜しいとは思わない。
早鐘のように打つ心臓が、全身に沸騰する程の熱い血液を送り込み、興奮で視界すら赤く染まりそうだった。

今、目の前の敵…。
バルベキア三国王を倒せば、莫大な恩賞が手に入る。
これ以上はない、まさに最上級の獲物だ。
どれほどの腕前かは全く読めないが、命を賭けて挑む価値がある。


クリス王子と呼びかけられた、今はバルベキア三国王と名乗る黒騎士と、ギルモア将軍は、先ほどと同様に、大帝の英霊の御前で、正式な騎士の決闘の誓いを立てる。

その光景を、シャルルは絶望と共に見ていた。
自分の力が至らないばかりに、遂にこの、年若い国王の無謀な行動を許す事になってしまった。
あれほど、あれほどクリス王子を絶対に守ってみせると、心に誓ったのに!

どちらが勝つかなど、戦いの結末は、始まる前からもう決まっている。
戦力差は大人と子供以上、絶対的に差がありすぎるのだ…。

だが、そんなシャルルの心痛を余所に、戦いは無慈悲に始まる。

「いくぞ、バルベキア公!」
「望むところだ、悪将軍!」

シャルルの時にも勝る興奮に身を任せつつ、またもギルモア将軍は、序盤は丁寧に、守備重視の構えで相手に突きかかる。

相手は片手剣、仰々しい角の生えた黒甲冑を着てこそいるが、基本の歩兵装備。
対してこちらは、重装甲で隙なく固めたランス。

歩兵と槍兵では、そのリーチの違いゆえに、圧倒的にランス有利であり、片手剣側が僅かにまさる速度と手数を、どれだけ生かしてランスに対抗するか…という戦闘になる。
よって、よほどの機動力、あるいは力量差がないと、片手剣はランスにはかなわない。

ゆえに、ギルモア将軍は、自分が絶対有利と確信していたが、決して慢心せずに、序盤は様子見に徹した。

槍兵と歩兵の組み合わせ、これは戦場では日常的に見られる光景。

槍兵である自分に叶う兵士など、そうそう居るものではない。
まして片手剣使いで、自分に叶う者など、この大陸のどこを探しても居ないに違いない。

それを知った上で、なお自分に片手剣で挑んでくるこの黒騎士の存在は、このうえもなく不気味だった。
少なくとも、厳重なほどの用心を、幾重にも重ねる必要がある。
ギルモアの本能も、そう言っていた。
よってこの、緩い雰囲気を持つ黒騎士を嘗めてかかる事なく、丁寧に戦い続けたのだが…。

「(…!?)」

戦闘中に感じる、この違和感。
こちらが隙なく身構えているというのに、それすら見えていないのか、まるで殺されに来ているかのように、安穏と間合いに入ってくる相手。

そこから突き出された、余りにもスローな一撃。
何のための攻撃か、と理解しかねたが、念のために槍の穂先で弾く。
一瞬、剣先に麻痺毒でも塗ってあるのかと思ったが、そうではないようだ。

だが、そこから数撃を経ていくうち、徐々に信じ難い事実が、目の前に浮かび上がってきた。

こちらの一撃に、いくらも過ぎてから、ようやく対応する反応速度。
常に真正面で対峙するという、機動力と盾を全面に押し出して戦う、片手剣としての特長を微塵も理解していない体捌き。
こちらが一瞬隙を見せても、それと理解できないのか、何の行動も起こさない相手。

…これは、演技なのか?
訝しむギルモアは、試しに相手を挑発した。

「…弱い! 弱すぎるぞ! これがバルベキア三国王の剣か? これならまだ、ドスランポスと戯れる方が練習になるわ!」
「侮るか、下郎!」

本気を出させるための挑発。
相手の声の調子は、間違いなく怒っているように思える。
だが、動きは大して変わらず、速くも強くもなっていない。

…本気か、こいつ?

「その弱さで良く、のこのこと一騎打ちの場に出てきたものよ! エイグリル将軍も、仕える王が貴様では報われまいて!」
「…なんだとッ!」

そこでようやく、相手は片手剣の本領である、連続攻撃を仕掛けてきた。
…が、あまりにも凡庸だった。

機動力を生かして接近し、相手の隙を突く連続攻撃で相手の動きを封じ、手数で押し切るのが片手剣使いの要訣なのに、途切れ途切れ、隙だらけの連続攻撃。

これら一連の事象、あまりにも理解しがたい現状だったが、こう結論付けるしかなかった。

目の前のこの黒騎士は、単なるド素人だ、と。
いや、お世辞を込めて言っても、ちょっと腕に覚えのある若武者程度の実力しかない。

そう理解すると、ギルモア将軍の内心に、凶暴なまでの殺意と破壊衝動がわき起こってくる。

もういい。 こんな奴、さっさと殺してしまおう。
相手が仮に、本当に何らかの演技をしているのだとしても、本性を発揮する前に倒してしまえば問題なかろう。

ただ、この相手は、先ほどの女性騎士とは違い、全身を隙のない鎧で覆っている。
全身黒ずくめの甲冑に、仰々しい角と、憎しみの表情の仮面。 
そして、生物的意匠の施された胴と腰、無闇に鋭角的な棘飾りのついた手甲と足甲。

それはどう見ても兵士用の防具ではなく、狩人用の防具だと見て取れた。
確かこれは「ブラックシリーズ」という、黒龍由来の廃素材で製作される鎧のはず。 
防御力は、強化してあれば、そこそこと行った所か。

…勝負は、一瞬。

どちらかの死で決着する決闘の形を取ってはいるが、相手が国王なだけに、もしも劣勢に立たされたならば、約定を破り、さっきの女性騎士たちが国王の加勢に来ると考えて間違いない。
ギルモアは、邪魔が入らぬように、相手を瞬殺するプランを脳裏で組み立てると、敵の攻撃を待つ。

幸いにも、敵の足捌きからして、ギルモアの堅い守備を力任せに崩そうと、連携の締めに「水平回転切り」を仕掛けてこようとしているのが伺えた。

「(勝機!)」

ギルモアの読み通りの「水平回転切り」。
それにシールドバッシュを合わせて押しとばすと共に、盾で思い切り殴り付ける、というおまけを加えて、相手をよろめかせる。

バッシュで相手を押して、距離が出来たその刹那、ギルモアの右腕に力が漲る。
くるり、と槍の穂先が小さな円を描くと、音を立てる豪快な踏み込みと共に、雷光のような凄まじい一撃が、黒騎士の左胸を襲った。

鎧ごと相手の心臓を貫かんとする、体重の乗った一撃。
だが、彼の槍が相手に届いた時、その衝撃にギルモアは驚愕する。

巨木の幹を突いたような鈍い反動が、ギルモアの手首にそのまま帰ってきたのだ。
相手の黒騎士の鎧は、全力を込めて放った「神龍騎槍」の一撃を、全く通さなかった。

だが、それとて、ギルモアの想定内の出来事。
相手の黒騎士は、バッシュと突きを続けざまに受けて、仰向けに転倒する。
この状態こそが、ギルモアの狙いとする理想の状況。

仰向けになって初めて見えた、顎下の「喉元」。
鎧に隙間が無ければ、作れば良いのだ。

今、極限まで高ぶったギルモアの精神に、周囲の皆の、息を飲む視線が届いたような気がした。

その感覚に押され、ごく僅かな一瞬、周囲を見回す。
それは本当に、ほんの一刹那だったが、彼の思ったとおり、全員が、自分を見ていた。

味方は皆、歓喜の表情に。
敵は皆、絶望の表情に。

あのシャルルとかいう女性騎士も、自分を見ていた。
深い後悔と絶望を表情に湛えながら、胸の前で両手を組んでいる。
その仕草は何だ? 神にでも祈っているのか?
「神様、この戦いをもう止めさせて下さい」とでも?

こみ上げてくる笑いが、止められない。
だけど現実には、戦いは終わらない。
自分は、絶対にあの隙間を、外さない。

あそこに槍を突き入れれば、俺は明日から英雄だ!
全員、この俺にひれ伏せ!
そうすれば、王たる俺が、少しは温情を恵んでやらんでもないぞ!


…だが、その隙間に向けて放たれた一撃は、その喉元で、ガグンという衝撃とともに「止まった」。

<続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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