女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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GUNNER'S HEAVEN(2)

シュゲール平原にて正面から対峙する、ヴェルド王国軍と独立自治国バルベキア軍。
だが、バルベキア軍の精鋭部隊「黒鳥騎士団」から先陣を切って現れた黒騎士の正体は、うら若き女性だった。

陽光に輝く美しき銀髪と、艶やかな褐色の美貌。
その身に纏うは、黄金紋様の装飾が施された、儀礼用の黒鎧。
この戦場にはあまりにも不似合いな、女性騎士の可憐な出で立ちが、兵士たちの視線と動きを止めていた。

そして女性騎士は、その背から、小柄な体躯によくぞ隠れていたと思わせるほどの、巨大な武器を取り出す。
それは、戦場ではほぼ目にする事がない武器…「大剣」だった。
白い刀身に紫の帯が巻かれたその巨剣を、彼女は重量も感じさせず水平に引き抜くと、天に掲げて、自分の名を叫んだ。

「我が名は…!」

その女性の甘い、だが凛とした声が、乾いた戦場に響く。

「我が名は、黒龍騎士団団長『シャルル=サンドリオン!』 この大地を戦で汚す愚か者どもよ! 貴様らの剣に、正義はあるかッ!? …もしもそう信じているのならば、その誤謬、打ち砕いてやろう! かかって来るが良いッッ!」

「な、なんだと…ッ!?」

ヴェルド軍の軍師であるジェノアは、双眼鏡で見るその光景に、我が目を疑った。
その若き女性騎士は、大剣を高々と掲げて何事か叫ぶと、馬から降り立つ。

馬上の優位を捨てた事だけでも驚きだが、なお驚愕すべきことに、彼女は、陣を固めて待ちかまえる兵士達に向かって、真正面から突っ込んでいったのだ。
まさに、戦記物語にでてくる、クルアーン大帝さながらの蛮勇。

「なんだ…! 誰だあいつは!? エイグリル将軍ではなかったのか!?」
「申し上げます! 敵将の正体が判明しました! 敵は、黒龍騎士団団長、『シャルル=サンドリオン』と名乗っております!」

前線に飛ばしていた斥候から、敵将の情報がもたらされる。

「(シャルル…?)」

だが、ジェノアの脳内では、その聞き覚えのない名前を復唱するよりも、もう一つの言葉の方が気にかかっていた。

「…黒龍…騎士団だと!?」

ジェノアが考えていた事を、隣で同じく報告を聞いていた、オーソン大将軍が口に出して反復する。

そう、バルベキア軍の精鋭部隊は、指揮官であるエイグリル将軍の異名に由来する「黒鳥騎士団」という名前だったはず。

「『黒龍』とは…。 まさか、バルベキア三国のあの噂は本当、だったのか?」
「バカな、コケ脅しに決まっております! 仰々しい名前を付けて、我々から士気を削るためだけの、虚勢に過ぎません!」

かつて、バルベキア三国の先王、イェルザレム二世が存命中だった頃、外貨貿易の交渉会談に、オーソンとジェノアは駐留部隊の管理者として同席した事がある。

イェルザレム二世は、かなりの高齢ではあったが、全身から放たれる並々ならぬ威圧感と、そして何よりも、常時右腕に装備していた「黒龍の小手」が、嫌が応にも目を引いた。

本人よりも圧倒的に禍々しい「瘴気」を噴出するその鎧の小手部分は、バルベキア三国のどこかに眠る「黒龍ミラボレアス」を現世に召還するための祭器だと、イェルザレム二世は、王都の外交大臣相手に放言していた。
これが、バルベキアを完全に侵略しきれなかった、もう一つの理由。

バルベキア三国には、黒龍が眠る…。
相手国内の事だけに、それはずっと確証の取れぬ事実であったが、ありえないと思っていた。
むしろ、外交を優位に進めるための恫喝だと理解していたのだ。

だが、良く見れば、黒鳥騎士団のトレードマークだった「大鴉と骸骨」の旗印は、軒並み不吉な「黒龍と塔」に塗り変えられている。

相手側にとっては当たり前の事かもしれないのだが、オーソン大将軍は、バルベキア三国軍の兵士たちが、その旗印をさも自然に受け入れているのが不気味に感じた。
自分達の国に、「黒龍」が眠っているのを、承知であんな旗を掲げているのか、と…。


「エイグリル将軍ではない、とは…。 ふざけおって…。 しかも戦場で大剣、だと…。」

ジェノア軍師は、オーソン大将軍の隣で毒づき、軍を指揮する太鼓隊に向かって指示を出す。

「全員、突撃! あの女を血祭りにあげろッ! 黒龍騎士団とかほざく連中に、本物の戦を教えてやれっ!」

ここで、軍師が強気の指示を出したのには理由がある。
それは、あの女性騎士が「大剣」を持っていた事だ。

この大陸に、戦闘を生業にする者は数多く存在するが、大きく分けると二つになる。
それ即ち、「兵士」と「狩人」。

一見、同じような戦闘職に思えるが、実際には両者は全く異なる存在であり、「狩人」は「兵士」には決して逆らわないのが世の常であった。

何故そのような事になるかと言うと、それは戦う対象が全く異なるため。
かたや対人間、かたや対モンスター。
戦う相手が異なれば、武器防具の設計思想までもが異なってくる。

兵士の鎧は、対人戦を目的とした物であるため、スティールメイルの様に、隙なく全身を覆い、斬撃や刺突に耐える事を目的とした装備が多い。

対して、狩人が着る鎧は、人間の能力を遙か越えるモンスターの攻撃に耐えるため、複合装甲による対衝撃性を最優先に設計されていた。
また、全身に鋭角的な意匠を施したり、その素材元のモンスターの姿を真似る事で、危険物や、同族に対する攻撃忌避性を最大に誘発し、防御力を高める工夫がなされている。

同じ理屈は、防具だけでなく武器にも言えた。

本来、人間を殺傷するためには、せいぜい片手剣程度のサイズの武器で事足りる。
先に述べたように、狩人達の装備は、必ずしも斬撃や刺突を耐えるのには向かない。
彼らの装備に良くある「隙間」に、片手剣の一撃を差し込んでやるだけで、それは致命傷となり得る。

ハンターの鎧は、相手が知性を持たず、道具も使えぬモンスターだからこそ、初めて鎧として成立するのだ。

しかも、「大剣」や「ハンマー」等のような、狩人が使う巨大で鈍重な兵器など、一瞬が生死を分かつ戦場では無用の長物。
実際にそれらの兵器が、過去の歴史上、戦場に出てきた試しは殆どない。

よって、「狩人」と「兵士」が戦った場合、武器防具の相性に加え、対人間の戦闘技術を日々錬磨している事も手伝って、軍配は大抵兵士側に上がる。

だが、あの女性騎士は、一体何を考えているのか、胸元が大きく開いた儀礼用の鎧を着用し、狩人を象徴する武器である「大剣」を装備している。

最初こそ、黒騎士の格好、蛮勇溢れる態度にこちらも身構えていたが、いざ正体を晒してみれば、知将・エイグリル将軍ではなかったどころか、まともな訓練を受けた「兵士」ですらないようだ。
多少腕に覚えのある「狩人」が、のぼせ上がって戦場に出てきたのだろう…。

そのような人物が先頭に立つ騎士団など、恐るるに足らず。 包囲により殲滅して、敵軍に先制の一撃を加えるべし。

ジェノア軍師はそう考え、全軍突撃の指示を出した。
ヴェルド軍とバルベキア軍の先陣が、それぞれ歓声を上げて激突する。

…だが、事態はジェノアの予測しない方向に展開していった。
前線の兵士たちは、その女性騎士相手に群れをなしてかかっていくのだが、雲霞を払うが如く、瞬く間に斬り伏せられているのだ。


狩人など、恐るるに足らず。
ジェノアのみならず、前線の兵士たちも、最初はそう思っていた。

だが、こうして対峙してみると、相手の女性騎士は、とてつもない圧力を放つ「剣士」だった。

確かに、女性騎士の鎧には、肌も露わな隙間がある。
顔はもちろん、首、胸元、脇、太股。
そこに一撃を加えれば、彼女を倒す事など造作もない。

だが、そこまでの距離…。 
たった3m程度が、恐ろしく遠く感じる。
女性騎士の持つ巨大な剣が、異様な圧迫感を以て、兵士たちの前に出る足を止めさせていた。

しかし、敵は騎士団団長と名乗っていた。
もしも、彼女を倒す事ができれば、一番槍としての恩賞は莫大な物になる。

相手は兵士ではなく狩人、かつ女なのだ。
必ずつけいる隙はある、あるはず…。 
そう信じて、欲望に目がくらませた兵士達が、彼女に一撃を加えんと踏み込む。

だが、踏み込んだそこは既に彼女の刃圏、大剣とは思えぬほどの鋭い一撃で、その兵士たちは盾ごとなぎ倒され、あるいは吹き飛ばされた。

ここに来て、前線の兵士たちも、戦場で初めて見る武器「大剣」の威力を、肌で理解しつつあった。

…片手剣では、勝てない。
確かに、一撃を加えさえすれば、こちらが勝つ事は可能。
だがそのためには、あの疾風のような攻撃を避けて懐に潜りこまなくてはならない。
しかもこちらは、弱点をつかなければならないのに対し、相手側はどこに当てても良いのだ。
あの巨剣の凄まじい一撃は、片手剣の盾などでは防御しきれるものではない。
事実、女性騎士の大剣の一撃を食った兵士たちは、鎧の上から腕を叩き折られたり、頭に一撃を喰って昏倒していた。

大剣は、戦場においては、片手剣より弱い。
片手剣の方が、大剣よりも早く確実に一撃を加える事ができるから。 
それが常識なのは、誰でも知っている。

だが、その常識を覆しているのは、彼女自身の「剣士」としての力。
片手剣に匹敵する、いやそれ以上の速度と正確さを伴って放たれる一撃は、彼らの刃を全く届かせなかった。

そう、彼女は、大剣こそ装備していたが、純粋な武人であり、凄まじい訓練を積んだ兵士だった。

「どうしたっ! 勇名で名高いヴェルド軍の実力とは、こんな物かッ!」

喧噪と怒号、そして乾いた砂の風が舞う中、その女性騎士は、まるで枯れ木を踏み散らすように、敵陣深くどんどんと進撃してくる。

「両陣、何をしている! 脇から攻めろッ! たかが一人に、何をやっている!」

ジェノア軍師は、陣中深く切り込んでくるその女性騎士に対し、側面・後方からの攻撃を強化するように指示を出す。

だが、ヴェルド軍がその動きを見せるやいなや、後方で控えていた両翼の黒騎士達が、二人同時にランスを掲げて馬を突っ込ませると、まるで演舞のような二人同時のチャージで、シャルルの側面から襲いかかろうとしている敵兵を、一気に薙ぎ払った。

「ウィル、カッツェ! 済まない、助かる!」

ランスを抱えた二人の黒騎士は、盾を揺らしてその声に応えると、先ほどのチャージから全く間断のない動作で、群がる敵兵を次々と斬り伏せる。

ここに来て、ようやくヴェルド軍も、この3人の黒騎士たちの実力を理解し始めた。

…全く歯が立たない。

確かに、馬上の槍兵は、片手剣を持つ歩兵に対しては圧倒的な優位を発揮する。
だが、そんな実力差とて、本来は数で圧倒できる。
できるはずなのだが…。


「ぐああっ!」「うぉおっ!」「な、何だ、こいつら…!」

その3人の強さは、まさに鬼神の如くであり、兵力差などを物ともしなかった。
まさに、クルアーン大帝そのままの戦法が、眼前で展開される。

戦記物語では、この後、クルアーン大帝の凄まじい強さに畏怖した兵士たちが総崩れとなり、士気を失って逃げ出す。
ジェノア軍師が双眼鏡で前線を見ていても、暴風のように突撃してくる敵軍に対し、恐れおののく兵士たちの姿がちらほらと見えた。

「何を…! 何をやっている! 連中に好き勝手させるんじゃないッ! 取り囲め! 取り囲んで全滅させろっ! 突撃するんだっ!」

だが、何度大銅鑼を鳴らそうと、前線はゆっくり潮が引くように後退していく。
奴らの活躍に勢いづいた後続のバルベキア兵までもが、自軍を徐々に圧倒し始めていたのだ。

「なんと…。 なんという事だ…。 エイグリルの奴、口では対等和平を唱えていながら、陰であんな屈強の兵士たちを育てておったとは…。」

オーソン大将軍が、将にあるまじき、自軍の不利を認める発言を漏らす。
だが、それを誰も諫められぬほど、敵軍の勢力は圧倒的だった。

「くっ…。 中央も、我らの意見を汲んで兵を増強して下さっていたら、こんな事には…! ジェノア、どうにかならんのか!」

どうにか、と言われても、打つべき手は既に打っている。
臆病風に既に吹かれている総大将を内心で苦々しく思いながら、確かに、もう少しの援軍や人材を要求していれば、もっと別な手が打てたかもしれない、とジェノアは内心で同様に悔やむ。

だが、そんな状況が、連絡兵の報告によって一変した。

「大将軍! 軍師殿! 援軍として、ギルモア将軍がお着きになられました! その数、約500にございます!」
「なんと、それは本当か!? まさか、あのギルモアがやってきてくれたのか!?」
「バカな、ギルモア将軍は、西方の異民族討伐に出ていたはず…。 まさか、もう討伐を終えた、と…?」

援軍の登場を無邪気に喜ぶ大将軍の側で、その報告を懐疑的に聞くジェノア。

だが、ヴェルド軍本陣の天幕の脇から、凛々しい駿馬に跨った、巨漢の槍兵が現れた。

鷹のように鋭い目と精悍な容貌、そして傲慢なほどの自信に満ちた表情と、不敵な笑いを湛えた口元。
間違いなく、ギルモア将軍本人であった。

「おお、ギルモアよ! まさか、お主がここに来てくれるとは思わなかったぞ! これを天の恵みと言わずして、何と言おう!」
「貴公、直接此処に来られたのか? 大守から命じられた異民族討伐は、どうしたのだ…!?」

「終わりました」

ギルモア将軍は、首をすくめ、そっけなく言った。

「遠征した次の日には、もう首魁たちを皆殺しにしました故、後始末は部下に任せてまいりました」

そして、大将軍の御前でありながら、視線を戦場に向けて言う。

「物足りませんでしたね」

「そ、そうか…! でかしたぞ! お主こそ、我が軍の英雄よ! さすがじゃ! よくぞ此処に来てくれた!」
「ええ、バルベキア方面が何やら不穏だと耳に挟みましたゆえ、万一の事をと思い、こうして推参した次第です」

何が「万一の事」か、とジェノアは内心で毒づく。

ギルモア将軍は、その人間離れした強さゆえ、ヴェルド軍…。
いや、戦場で飯を食う人間なら、大抵の者が知っている歴戦の猛将である。
戦場で、彼が遅れを取った事は一度として見た事がない。
その強さは、バルベキアのエイグリルはもちろん、クルアーン大帝にも匹敵するだろう。
彼の来訪を天の配剤と喜ぶ、大将軍の気持ちはよく分かる。

だがギルモアは、そのあまりの強さ故に、軍規など殆ど守らず、単独行動を好む戦闘狂だ。
制圧の任務に赴けば、現地で虐殺や強奪を行う事など日常茶飯事、村人たちに陵辱の限りを尽くす様は、性質の悪い盗賊となんら変わる事はない。
今回、こんなに足が早かったのも、精鋭達だけで好きなように行動していたのだろう。

結果を出すので、上層部としては重宝する存在だが、彼を配下とする軍師としては、甚だ御しにくい相手だった。

「…しかし、状況は芳しくありませんな。 軍師殿の指揮を頂いているのに、我が軍が、圧倒的不利なようにしか見えませぬ。 いや失礼、ここはさすがエイグリル将軍、と敵を誉める所ですかな」
「いや、それが、実はあの先頭集団は、エイグリル将軍ではないのだ!」
「…ほう? それは一体どういう事で?」

大将軍自らが、双眼鏡を渡してギルモア将軍に前線の様子を見せ、敵軍…「黒龍騎士団」の事と、その先陣を切る女性騎士の事を説明した。

「なるほど、了解しました。 …このままでは埒があきませんな。 私も参戦させて頂きましょう」
「どうするつもりだ、将軍」
「どうもこうも! 軍師たる貴方が、お分かりにならないのですか? あれは、戦記物語で有名な、クルアーン大帝の戦法を模したものですぞ」
「そんな事は分かっておる! だから、貴公はどんな戦法を取るのか、と聞いている!」
「知れた事。 一騎打ちにて、あの女と雌雄を決します」

戦闘狂の本性が露骨に出た発言を受け、ジェノアは顔をしかめる。

「バカな、一騎打ちなどを行う必要がどこにある? あの連中を叩き伏せれば済む話なのだ! 貴公は兵を連れて、前線に加勢せよ!」

だが、その指示を聞くと、ギルモアは一瞬、軍師を侮蔑するような表情を見せた。

「軍師、クルアーン大帝の戦法を本当にご存じですか」
「むろん知っておる」
「ならば、その最大の利点とは?」

過去に読んだ戦記物語の内容を反芻しながら、ジェノアは答える。

「この私を侮るか、貴公は。 味方軍の士気高揚と共に、一方的な戦力差を作る事で、兵の損害を最小限に止める事だろうが」
「その通りです。 お分かりになっているではありませんか」
「それが、どうしたというのだ!」
「敵軍は、思っているほど、圧倒的な戦力を持っている訳ではない、という事です」
「何!?」

ギルモアは、顔を戦場に向けて続ける。

「あの先頭に立つ女…。 私も狩人経験があるゆえ分かりますが、奴が着ている装備は、『荒くれの大剣』と『ゴシックメタル』シリーズですな」
「なんだその装備は? 狩人装備でも、上位のものなのか!?」
「いえ、全然。 どちらもこの地ではない、遙か異国の地で流通している物ですが、金さえ積めば案外簡単に手に入る、弱い装備です」

それがどうした、とジェノア軍師が疑問を投げかけるより早く、ギルモアは続ける。

「何故、あの女は、あんな姿で戦場に居るのでしょうな? そして、何故エイグリル将軍は、ここに居ないのでしょうか?」
「…エイグリルが居ない理由? それは、やはり国王の死去による、国内の政情不安定ではないのか?」
「その通り、国の危機であるこの戦に、エイグリル将軍が出てこないとは、よほどの事と察せられます」

そこまで言われると、ようやく軍師にも、敵軍の思惑が見えてきた気がした。
急速に、思考がまとまってくる。

「つまり、やはり連中は、先王が死去した今、全面戦争を仕掛ける余裕などなかった、と?」
「そうでしょう。 理由はどうあれ、混乱の今、奴らは極力被害を最小限に食い止める必要があった。 そのため、奴らはクルアーン大帝の戦法を採用し、大帝役をあの女が引き受けた」
「じゃあ、あの派手な装備を身につけているのは、それが理由か」
「御意。 もし、これがエイグリル将軍であれば、最初から我が軍は畏怖していたでしょうが、名も知れぬ将軍であれば、何等かの方法で、兵士の目を引きつけ、自分の威名と強さを最初に轟かせる必要があった訳です」

つまり、バルベキア軍は、実は青色吐息の烏合の衆。
それを強兵のように見せかけ、支えている屋台骨が、あの女性騎士、という事か。

「ええ、私めが、あの女を一騎打ちにて盛大に討ち取れば、我が軍の士気も回復する事でしょう」
「そうか、その通りだ! 戦場を一見しただけで、そこまで見抜くとは大したものだ! ギルモアよ、さすがの慧眼だな!」

確認もしていないのに、大将軍は無邪気に喜ぶ。
ギルモアの言っている事は間違ってはいないが、敵軍は自軍の弱点を理解し、そこに最も堅なる部分を被せる事で補強している。
敵軍の最も堅なる部分…あの女性騎士は、おそらく一騎打ちでも相当な強さを誇るはず。
どんな理由であれ、堅に自ら当たるは戦の愚策。
もう一度、ジェノアはギルモア将軍に確認してみる。

「将軍、勝算はあるのか」

そう問うと、ギルモア将軍は鼻を鳴らし、ニヤリと笑いながら答えた。

「むしろ、負ける要素がございません」


<続く>
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*Comment

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頑張ってください

続き楽しみにしてます
  • posted by 者武 
  • URL 
  • 2011.03/05 20:50分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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