女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(29)

「…どっちが、本当の貴方なの?」

「どっちが…って、どういう事だい?」

「最初、私は、貴方に親しみを感じてたの…。 村長にガッカリされてたから、弱くても、自分なりに頑張ってるハンターなんだろうな、って」
「私も、知ってのとおり、弱いハンターだった…。 弱い者同士、同じように、私の立場を理解してくれてるんだろうな、って思ってた」
「だから、私に優しくしてくれてるんだって、そう思ってた」

そこで、シェリーは一息つくと、言葉を続けた。

「でも、貴方は、私だけじゃなくて、コルネットにも優しかった。 それに、あんな凄い力を隠し持ってるなんて、全然知らなかった…。 私には、教えてくれなかった」

「貴方が、私に優しくしてくれてたと思ったのは…。 私の、勘違い、だったのかな」

だめだ、混乱しているのが、自分でも分かる。
これじゃ、あの人に伝わりそうもない。
一言、たった一言で良いのに。


「(私のこと、好き…?)」


それさえ聞けば、それで済むことなのだ。
だけど、それだけはどうしても言えなかった。
言えぬ代わりに、押し殺した感情が、別の言葉になって出てくる。

「あなたと一緒に狩りができて、凄く楽しかった…。 ずっと、貴方に付いていきたいと思ったの」
「だけど、岩山龍戦の貴方は、別人みたいだった…。 まるで、今の貴方のその態度すら、作りものみたいに思えるほど」
「あたしは、貴方に、付いていきたい…。 でも、どっちの貴方を信じればいいの…? ねぇ、教えて」

…実は、彼女の意志は、余さず青年ハンターにも伝わっていた。 
この村は、彼女の故郷。
それを捨てても、彼に付いていきたいと言っている。
その告白を聞いて、彼女の本心が分からないほど、青年も朴念仁ではなかった。

しかし同時に、一抹の罪悪感が生まれる。

青年は彼女を騙していた…と言えば、その通りかもしれない。
ギルドナイトという身分の枷がある以上、クエストの最中で、特定の個人に過剰に肩入れする事は許されない。
それが今ここで、彼女の誤解を生んでいる事は明白だった。

だけど、青年も、彼女に対して、ささやか以上の好意を抱いている。
その彼の思いをきちんと彼女に伝える事ができれば、彼女は多分納得するだろう。

ただ、問題なのは、今のシェリーには、青年の言葉が本当かどうかを判断する根拠を持っていない。
仮に、青年がシェリーを抱きしめて「愛してるよ」と言っても、彼女にはその言葉が、本当かどうかを判別できないのだ。
彼女の言うとおり、青年は、あの村に居る間、ギルドナイトとしての仮面を被っていたから。
彼女と、本音で向き合っていた時間は、ほとんど無いに等しかったから。

「ねぇ、教えて」

青年ハンターは、内心苦笑する。
だのに、シェリーはその、自らにも判断できないはずの本音を聞きたがっているのだ。
どうすれば、自分の思いが伝わるのか。
初めてさらけ出す自分自身を、どうやって真実だと、彼女に伝える事ができるのか…。

少し考えて、彼は覚悟を決めた。

「…わかった。 じゃあ、僕の本音を聞かせてあげるよ。 一回しか言わないから、よーく聞いてくれよ」

嘘や小細工は通用しない。
なので、青年はシェリーに対し、心の底からの、掛け値なしの本音をぶつける事にした。

青年は、シェリーに近づくと、無造作に肩を抱いて、強引に引き寄せ抱きしめる。

「!? ちょ、ちょっと…!?」
「いいから。 誰にも聞かれたくないんだ」

思わず目をつぶって体を堅くするシェリー。
彼女の髪を右手でそっとかき分け、青年は、耳元にぼそぼそと何事かを囁いていく。

「…。」

「…?」

「…!?」

見る見るうちに、シェリーの顔が紅潮する。

「ちょ、バ、バカッ! アンタ、一体何考えてんのよ、このスケベッ! どいて! 手を離してよ!」
「痛ぇっ!」

シェリーは青年の顔を殴りつけ、強引に腕の中から逃れる。

「何!? 何アンタ、まさか、あたしと一緒の時に、そんな事考えてたの!?」

「そうだよ」

殴られた部分をさすりながら、悪びれずに答える青年ハンター。

「…し、信じられない! それじゃ、ディキシー達と、全然一緒じゃないの! バカ! このド変態!」
「…変態呼ばわりは心外だなぁ。 っていうか、本音を聞きたがってたのは君だろ?」
「そ、それは確かにそうだけど、…っ!」
「うん、だよね? だから、本音も本音、僕が君に対して、思っていた事を全部伝えたんじゃないか」

「…た、確かに、さっきの台詞は、凄く本音っぽかったっていうか、メチャメチャ本音に聞こえた! けど!」
「けど?」

「…あの」
「何?」

「…それ、本当に…?」
「嘘なら、君を狩りになんて連れていかないよ。 お金稼ぐのも、弾丸の材料調達も、自分一人でやった方がよほど早いしね」

それを聞いて、シェリーは唖然とした表情をする。

「君とデートしたかったから、君を狩りに連れていったんだけど」
「嘘ぉ…。」

「親切なギルドナイトだって思ってたのに、下心からだったなんて…。」
「男はみんな狼だよ」
「な、何しれっと変な事言ってるのよ、バカ!」
「変も何も、事実だよ。 ただ、女性の手を噛まないように訓練されてるかそうでないか、の違いだけさ」

シェリーはあっけに取られた表情で、呆然と青年ハンターを見ていた。

未だ事実の衝撃覚めやらぬ彼女を、青年ハンターはゆっくり抱きしめると、小さく囁いた。

「…で、どうする? もうクエストは終わってるから、村の外で誰かと恋に落ちる分には、もう問題ないんだけど」
「ちょ、ちょっと…」
「出立式に居なかった君がここに居る、って事は、僕と一緒に村を出る…。 そういう意味なのかな」
「ちょっと、ズルい、そんな聞き方しないでよ」

だが、シェリーは、青年ハンターに抱きしめられる事に、もう抵抗しなかった。
一度背に手を回されると、それはなんと抵い難い抱擁なのか、自分も思わず青年の背に手を伸ばしてしまう。

そして、抱きしめられて初めて、シェリーは、青年の腕の中こそが、自分の最も望んでいた場所である事を…。

胸に広がる暖かさと共に確信した。


それより時刻は少し前。
タッシュ宅の2階では、ディキシーとマイノが、村を出ようかという話の続きをしていた。

「…確かに、シェリーの奴は、多分、もうこの村を出るだろうナ。 シェリーにとって、もうこの村に居る理由は無くなったシ、何よりも、間違いなくアイツに付いていくだろうしヨ」
「で、お前はそれを追いかける気なのか? 止めとけよ、相手が違いすぎる。 嫉妬は見苦しいぞ」

「誰もシェリーを追いかけるって言ってねぇだろーガ! 違うヨ! 俺ァ、街に出て、ハンターになりてぇんだヨ!」
「? どういう事だ? もう、既にハンターになってるだろうが」
「そういう意味じゃねぇヨ! お前、感じなかったのカ? この3日間、俺は毎日夢に見たヨ!」

そこで、ディキシーはぐっと息を詰めて答える。

「…岩山龍を、倒した時の事ヲ」

「夢の中でハ…。 俺は自分自身で、この大剣を使って、奴を倒したんダ」
「何度も何度も、夢に見るんダ…。 夢の中で、俺は必死に戦い続けテ、死力を尽くしテ、遂には奴に勝つんダ」
「奴を倒せたのが、あまりにも嬉しくて、夢の中で叫んで起きル。 そしてそこで目が覚めるんダ」

「…それは夢だっタ」

「でも、夢じゃなイ。 俺たちは、確かに3日前、奴と一緒に、岩山龍を倒したよナ!?」

「ああ、俺たちは、確かにあのギルドのハンターと共に、岩山龍を倒したよ」

「あの瞬間が、胸に焼き付いて離れないんダ…。 死力を尽くしテ、絶対敵わないと思っていた相手を倒せたのハ…。 涙が出るような、凄い衝撃だっタ…」

そして、ディキシーはポツリと言う。

「…もう一度、あの瞬間を味わいたいんダ」
「ディキシー」

「アイツは、ミナガルデの街から来た、って言ってたよなナ…。 もし街に行けば、あんなハンターが沢山居るのかもしれネェ」

「もっと、剣の腕を磨いテ…。 見知らぬモンスターと向き合っテ、そして勝っテ、あの瞬間にもう一度逢いたイ」

「きっと、ミナガルデの街には、俺たちが知らないようなスゲェ冒険が、きっと待ってル」

「…そう思うと、この村に居るのが、居ても立ってもいられネェんだヨ」

「…奇遇だな」
マイノがそう呟いて、返した。

「俺も、この3日間、夢を見てた。 ハンマーで岩山龍を討伐する夢だ。 お前と全く同じだ」
「マイノ」
「何と言えば良いんだろうな…。 あれだけ真剣になって戦ってみて…。 初めて『ハンター』のなんたるかが分かった気がしたよ」

ディキシーの頬が緩む。
そこに浮かんだのは、晴れやかな笑顔。

「正直な、お前と同じように、俺ももう『モンスターハンター』が止められそうにない」

そう言うと、マイノとディキシーの二人は、盛大に声を上げて笑う。

「それに、ハンターって、やはり凄い金が稼げるしナ」
「ああ、金を稼いで、街の医者に見せてやれば、タッシュの足も、きっといつか元に戻る。 ワトソンの爺いもそう言ってたしな」
「…やるしかねぇナ」
「やるしかない。 それに、街に行けば、シェリーより良い女も沢山居るだろうからな」
「おお、スゲエやる気出て来たゼ! あァ、タッシュ、お前早く目を覚ませヨ!」
「タッシュ…! ハンターってな、真剣にやってみたら、凄く面白かったんだ…。 また、俺たち3人で、大暴れしようぜ…。 だから、早く、目を覚ませよ…!」

その時、二人の呼びかけに応じてか、あれほど反応がなかったタッシュが、うめき声を漏らした。

「う…。」

「タッシュ!? おい、タッシュ! 意識が戻ったのカ!?」
「おい、分かるか!? 俺たちだ! タッシュ!」


ここで、場面は再び、ヒンメルン峡谷の、青年ハンターとシェリーに戻る。

二人は、長い抱擁の後、どちらからともなく、重なっていた唇を離した。
その時に、青年は、シェリーが背負ってたバッグの隙間から、肖像画の額縁が覗いているのを見つける。
そして、シェリーの首筋には、淡く輝くネックレス。

青年の視線に気づいたシェリーが、ネックレスに指を添えて答える。

「ああ、これ…? うん、そうなの。 崩れた家の中から、やっと取り出してきたのよ、お父さんとお母さん、そして、お婆ちゃん…」

だが、肖像画の額縁はもっと大きかったはず。
それがシェリーのバッグに詰まっているという事は。

「うん、家の下敷きになって、砕けてて…」
「そうか…。 ごめん、本当に…」
「ううん、貴方のせいじゃないよ、家が崩れるなんて、誰にも予想できなかったもの」
「いや…。 それだけじゃない、僕はあの時、君の父親の事を、侮辱した…」

そして、青年は一歩下がり、シェリーに頭を下げる。

「あの時僕は、アイアンランスで老山龍に挑んだ、君の父親の勇気を、侮辱した。 本当に済まなかった」
「…本当に、騎士みたいなのね、貴方。 …でも、いいのよ、もう」

そういうと、シェリーは青年の頬を優しく撫でた。

「お父さんが、ギルドナイトじゃなかったのは残念だったけれど、それで良かったのかもしれない、って思ってるの」

シェリーは顔を上げ、青年の目を真正面から見ながら答える。

「私は、多分、心のどこかで、この辛い現実から逃げてた…。 自分は本当はギルドナイトの娘なんだって、そう嘘を言い聞かせる事で、なんとか今までやってこれたの」

「でも、万一お父さんが本物のギルドナイトだったとしても…。 きっと、多分、私はそれだけで終わったと思う」

「空虚なプライドが満たされた所で、私の中に、何もないのは変わりないから…。 自分がギルドナイトの血縁という事に、もっとすがりきって、イヤな人間になっていたかもしれない」

シェリーの瞳に、うっすらと、涙が浮かんだ。

「…貴方が、教えてくれたのよ」
「私は、私。 大事なのは、生きて何をしたか、だって」

青年は、シェリーのその言葉を聞いて、優しく微笑んだ。

「…連れていって、街に」

シェリーは、青年との距離を詰めると、その胸に飛び込む。 その背を、青年はまたも優しく抱いた。

「私は、自分が何者だったのかを、知りたい」

「そして、出来るなら、ランスの腕を磨いて、私自身が『ギルドナイト』と呼ばれるようになりたいの」

「お父さんと、お婆ちゃんが言っていた事が、嘘だったのだとしても、私がきっと真実にしてみせる。 それに…」

「…?」

それに、の後が続かない。
顔をのぞき込むと、シェリーは真っ赤になっていた。
そして、青年の視線から逃げるように、顔をそむけながら答えた。

「…が、ガンナーの貴方には、やっぱり『前衛』になれる人が、必要な気がするから…」

青年は、一瞬ぽかんとしていたが、おかしそうに笑うと、シェリーをまたも抱きしめる。

「そうだね、僕も是非、前衛は欲しいな。 将来、ギルドナイトになるって言ってくれるような有望な人なら、なおさらだね」
「…も、もう」

「…でも、いいのかい? 街に行くと言っても、この村は…君の故郷だろ?」
「ううん、大丈夫。 私、生まれはミナガルデだし、私の家族は、ここに居るもの」

そう言って、シェリーは再度、祖母の形見のネックレスを見せる。

「あ、なるほど、そっちか」
「…?」
「私の家族はここに居る…って、なんだか一瞬、プロポーズされた様な気がしたよ」
「…い、いくら何でも気が早すぎるわよ! まだ、そんな事言うわけないじゃない!」
「そうかー、残念」

そういうと、青年は、シェリーの手を引き、ゆっくり歩き始めた。

「おいで、シェリー。 一緒に行こう、街へ」
「う、うん!」


そして二人は、徒歩で街への道中につく。
ミナガルデがどれだけ凄い規模の都市かという事、どんな冒険が待っているのかという事を二人で喋っているうちに、時間は飛ぶように過ぎ、気づけばかなり遠い所まで来た。

シェリーは、ふと後ろ髪を引かれるように、今まで来た道を振り返り、セレス村の方角を見た。
雄大な青空の下、白亜の雪化粧を施した美しき山々。
ここからでは、森が陰になって見えないが、その山岳の麓に、ひっそりと佇む小さな村が、そこにある。

彼女が永く、辛い日々を送って来た村。

気のせいかもしれないが、小さな炊煙が村のどこかから立ち上っている。 

どこだろう。 コルネットの家、だろうか…?

しかし、どんな郷愁も思い出も、もはや過去の残影。
一瞬だけ心の中に、せつなさを伴う痛みが湧き上がるが、それは同じ村の思い出によって、泡沫のように儚く消えた。

彼女は、しばし目を細め、小さく呟いた。

「…さようなら」

再度、村に背を向けて、その言葉の続きを、胸の内で繋げる。

「(…さようなら、私の、もう一つの…。 故郷)」

「…どうしたんだい、シェリー?」
「なんでもない」

不安がない訳ではない。
でも、家族とは、「家」とか「土地」を意味する事ではない。 
自分が思うに、家族とは、「同じ絆を持つ人と人」との事なのだ。
そして、「幸せ」も、多分それと同義…。

だから、歩いて行こう。

どこまでも青く晴れ渡った空の下、目の前には、街へと続く道と、彼の背中が見える。
地面に降りた朝靄が、陽の光を受けて宝石のように輝き、この世界を白く淡く彩る。

もしも後悔があるのなら、それはこれからの戒めに。
そしてこれから先に、きっと沢山の希望がある事を信じて歩いていこう。


いつまでも、この人と一緒に…。


<「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(Final)~ウィンストン・ソルト・チャーチルの天体観測室~ に続く>
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Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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