女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(25)


岩山龍は、血の涙を流しながらも、進軍を続けていた。

「血の涙」…それはおそらく、もう岩山龍が瀕死である事を示すサイン。
ズタズタになった循環器から漏れ出た体液が、眼球など他の組織にも浸潤し、衝撃によって体外に漏れ出てきたのだ。
予想以上の体力を持つ相手だったが、この物理的な瀕死の兆候がある以上、あと一息で倒せる事は間違いない。

そう信じて、青年ハンター「A GUNNER」は幾度もの銃撃を繰り返す。
皆も自分の指示通りに攻撃を加え、岩山龍の進軍を首尾よく幾度も阻止している。

…しかし、岩山龍の進軍は、それでも完全には止まらない。
いくら心臓を弾丸の槍で刺し貫かれようと、銃撃の炎を浴びようと、顔面を重塊で抉られようと、彼は決して歩みを止めない。

この村の最終防衛線である、「大城門」には、ミナガルデ郊外の砦に備えられている「撃龍槍」のような迎撃施設は存在しない。
また、この戦法は、ディキシー達の攻撃が起点になっているため、奴らの戦うスペースが潰されると、岩山龍を怯ませられず、弱点狙撃は困難となる。

つまり、どうあっても大城門到達までに決着を付けなくてはならないのだ。

「…お前は、もうこれ以上、先には進ませネェッ!」
「そうだ、その意気だッ! ここで、仕留めるぞッ!」

ディキシーの上げる怪気炎に、銃撃の炎で応じる青年ハンター。
しかし既に岩山龍は、大城門前の広場に大きく乗り込み、その半分にまで到達していた。
大城門到達まで、彼の目視で、およそ400m…。

倒せる。
岩山龍は、絶対に倒せるはずだ。
だが、いつになったら、この相手は、地面に倒れ伏すのか…!?


その頃、場面は「大城門」の上、岩山龍と青年ハンター達の戦闘を観戦していたブロディに移る。
その脇には、村長であるセレトが控えており、共にハンター達の姿を見ていた。

「おい、見ろよ、ジジィ! 岩山龍の奴、結局ここまで侵攻してきちまったぜ! どうだよ!」

どうだよ、とは、戦局の趨勢を伺う言葉。
ブロディが見る限りは、岩山龍は頻繁に怯んでおり、ギルドのハンターはよくやっているように思える。
クソガキハンターのディキシーとマイノも、積極的に頭を攻撃しに行きつつ、攻撃はしっかり避けている。
シェリーに爆撃の指示を出しながら、4人できちんと役割分担をして効率的に戦っている事が、素人目でも分かる。
予想以上の健闘だ。

だが、岩山龍の進軍は、止まらない。 
上から見ていても、その速度は、一向に緩む様子がない。

それさえ無かったら、奴らを手放しで褒めたっていいのに、こんな遠距離にも関わらず、岩山龍は恐るべき圧力を周囲に撒き散らしながら、村の方に一直線に進んでくる。

「なんとか言えよッ、爺ィ! アレ、ダメなんじゃねぇのか!? もしかすると、もっと攻撃を加えないと、倒せないのかッ!?」
「…ワシにも、分からん! ただ、奴らは、信じられんほど、よくやっとる!」

特に、ディキシーとマイノの勇敢な健闘ぶりは、奴らをよく知る人間からは、信じられない程だった。
まるで別人だ。 正直、あれ以上の攻撃など、奴らには望むべくもないだろう。
実際に、彼が、あの戦闘をつぶさに見ても、岩山龍は頻繁に怯み、苦悶の咆哮を上げ続けている。
それでも、岩山龍は、こちらへの進軍を止める事はしない。

これは…もっと、然るべき備えが必要だったのか。
より堅牢な砦、より強靭なハンターの育成、そしてギルドからの多数のハンターの招聘…。
そうしなければ、奴と戦う事自体おこがましい事だったのか。

しかし、彼…セレトは、もうこれ以上は望めない、と思っていた。
半年前のあの日から、出来うる限りの努力をしてきたのだ。

村人は皆、不平不満もあったろうに、それでもこれだけの巨大な砦を、いくつも作ってきた。
その苦労は、砦の造成指揮をしていた、自分とブロディ達が何よりもよく知っている。
村の若者に、皆ハンター業を経験させ、生き残った面子はあれだけだった。 
人から見たらどうかは知らぬが、彼にとっては、奴らは選ばれたハンター達なのだ。
そして、村中のお金を掻き集め、中央ギルドのハンターを要請した。
生活が苦しかろうと、村人は皆、文句も言わずお金を出した。

これ以上、神は我らに何を望む!? 我らが、一体何をした!?

天を見上げても、そこには未だ薄暗く続く曇天。
セレトは、その遥か上におわす神々に、呪詛の言葉を吐きかけたいような気持ちだった。


「おい、岩山龍はどうだッ! あとどん位だッ、ウィー!」
「ハンセン! 皆の避難は終わったのか!?」
「ああ、老人連中は、俺らの家に押し込んで来たぜ! 他の連中も、おおよそは高台に避難してる!」
「おおよそ!? 全員じゃないのか!」
「ジアドの馬鹿が、家財道具持ってくるって言いやがって、嫁さんと一緒に戻りやがったよ、ウィー!」
「なんと! 止めなかったのか、お主?」
「止めたけどよ、あいつは嫁のデケェ尻に敷かれてるから、俺らの言う事なんか聞きゃしねぇよ、ウィー」
「そうそう、ほっとけ! 嫁の尻じゃなくて、岩山龍に敷かれればあの世で眼を覚ますだろうさ!」
「むぅ」

「それより、どうなんだよ、岩山龍の方はッ、ウィー!」

セレトとブロディは、何も言わず、視線で眼下の戦闘を直接見るように促す。
大城門の端に張り付いて状勢を望むと、そこでは、ディキシーとマイノを先頭に、岩山龍を挟撃する形で、シェリーとギルドのハンターが射撃を行っていた。

既に岩山龍は、この大城門まで、あと300mほどの位置に到達しつつあった。
この大城門前の広場の直線距離がおよそ800mであるから、やはりあの岩山龍の全長が150mほど。
300mは結構な距離がありそうだが、あの巨体と比べれば、もう幾らもないようにすら思える。

ハンセンも、セレトとブロディ同様、彼らが善戦しているという事は、見てすぐに理解した。
だが、それでいてなお、岩山龍は依然として進軍を続け、もうすぐそこまで肉薄しつつある。
奴らのこれ以上ない闘いぶりを見ながら、でも成果の出ないじれったさに、思わず声が出てしまう。

「おい、お前ら…! 頑張れ…! 頼むから、もっと頑張ってくれ…!」

身を乗り出すようにして戦闘風景を眺めるハンセンの口から漏れ出た、悲痛な祈りの声。
それを聞いたセレトとブロディは、何かに気づかされたように、自分たちも城門の端に張り付き、揃って声を張り上げる。

「おーいぃ! お前ら、頑張れーッ! ディキシー、マイノ、シェリー、ギルドのハンター、頑張れッ!」
「頑張るんじゃ、お前たち! ここが踏ん張り所じゃぞ! 頑張れッ!」

もう、彼らに出来る事は、応援くらいしかない。
それでも、自分に何か出来る事をせずにはいられなかった。

「くそぉ…。 くそぉ、テメェら、こんな奴に負けるんじゃねぇ! 負けるんじゃねぇぞッ!」
「絶対に、村に入らせるんじゃないぞッ! 何があっても、侵攻だけは阻止するんじゃッ!」


ここで場面は、岩山龍と交戦している、ディキシー達に移る。
青年ハンターの作戦は、首尾よく上手く行き、順調に岩山龍にダメージを与えている。
彼らにも、それは雰囲気で伝わっているし、手ごたえもある。 
実際に、岩山龍は、血の涙を流してすらいるし、生物として、そんな状態がまともであるはずがない。
多分、もう相当弱っているはずだ。

だが、それなのに、岩山龍は歩みを止めない。

「…畜生、なんでコイツ、死なねーんだよッ! 痛ぇんだろうガッ!」
「ディキシー、気を散らすなッ! 3! …2!」

マイノは、一瞬ぬかるむ地面に、足を取られかけた。
気のせいか、足が相当重くなっている。 
いや、気のせいじゃない。 疲労で力が入らなくなっている。
テンションが上がっているせいで、完全に自覚できてはいないのだが、この作戦、恐ろしいほどに集中力と体力を消費する。

「1ッ!」
「(…!?)」

掛け声とともに、岩山龍の顔目がけて、同時に大剣とハンマーと振るうディキシーとマイノ。
だが、声を掛けた当人であるマイノの攻撃がわずかに遅れ、ガツガツッと言う音を立て、時間差でヒットする。

「ぐオッ!?」
「があッ!」

たったそれだけのミスで、ディキシーの「バスターブレイド」と、マイノの「ウォーメイス改」は、無様にも弾かれる。
力が乗った分、弾かれた衝撃ももの凄く、二人は後ろに尻もちをつくようにして転倒した。

「(し、しまった…!)」
「何やってんだヨ、マイノ! テメーが遅れてどうすんダッ!」
「す、すまないッ!」

今のミスで、「7秒」カウントがどうなったのか、分からなくなった。
さっきの中途半端な攻撃は、岩山龍に「痛い」と認識されているのか…?
もし、そうでないとしたら、むざむざ相手に、7秒のリードを許してしまう。
「ここは改めて攻撃すべきだ」と判断し、掛け声をかけようとした時、青年ハンターの銃弾が、マイノの遥か上空を通過した。

それをマイノは直観的に、青年の「待て」の合図だと認識した。

「おい、マイノ、攻撃に行かねえのかッ!?」
「待てっ! 今ので、カウントが分からなくなったッ! おい、シェリー、攻撃は一旦中止だ!」

手を挙げて、シェリーに合図をすると、左肩周辺で拡散弾を撃ち続けていた彼女もそれにうなずき、また距離を取り始める。

「何やってんだヨ、馬鹿ガッ! もう、門に到達するまで、時間ねぇんダゾッ!」
「分かってる! 今のは俺のミスだッ! だけど、もう少し待ってくれ!」

…さっきのカウントが有効だとすると、多分、あと3秒後には、例の攻撃が来るはず。

マイノは、全くの無傷であったが、「回復薬G」を飲み、続いて「元気ドリンコ」の蓋も開栓する。
それを見て、ディキシーも、あわてて元気ドリンコを飲み始める。

「(2、1…。)」

心なし、疲労感は去った気がする。
度重なる衝撃で失われた握力も、わずかに回復した感じがあった。

「(…0)」

…だが、目の前の岩山龍の攻撃は、ない。

「(1、2…)」

自分がカウントをミスしているのかと思い、少し待ったが、やはり、さっきの攻撃は、失敗…。 
怯ませるには威力が及ばず、取るに足らないもの、と奴には認識されたようだ。

「(何てことだ…!)」

マイノは、思わず後ろの大城門を一瞬見やる。
もう、門に到達するまで、距離はあと200m足らずしかない。

「…おい、ディキシー」
「何だヨ! 攻撃に行かねぇのかよ、マイノッ!」
「…お前の命、俺に預けてくれ」

「…あア!?」

何の事か分からず、一瞬聞き返すディキシー。

「もう、時間がない! 今から、タメ攻撃の機会を、倍にするぞッ!」
「な…!? どういう事だヨ!?」
「いいから、俺を信じろ! 俺のタイミングに合わせて、剣を振れッ!」
「わ、分かっタ…!」

そうすると、マイノは、両手を挙げて、シェリーと青年に大声で叫んだ。

「今から、タメ攻撃の機会を、倍にするッ! みな、それに合わせてくれーッ!」

こんな拙い説明で、ボウガンを握っているあの二人に、果たしてどれだけ自分の意図が通じたものか。
だが、頼む。通じてくれ。 俺のやろうとする事の意味を汲み取ってくれ。

「行くぞ、ディキシー! 3!」
「おお、行くゾッ!」
「…2ィッ!」

二人は、今度こそタイミングを完璧に合わせ、またも岩山龍の頭に攻撃を加えんと、全身の力を武器に込め始める。

「…1ッ!!」

大剣とハンマーが、ピタリ同じタイミングで振り下ろされ、強烈な破砕音とともに、岩山龍の頭をのけ反らせる。
その瞬間に、シェリーと青年が、銃撃を行っているのをマイノは確認すると、ディキシーに呼び掛ける。

「おい、ディキシー、来いッ! もう一度だ! この7秒の間に、もう一度タメ攻撃を食らわせる!」
「!?」

一瞬、躊躇したディキシーだったが、次の瞬間にはマイノの意図をやっと理解したらしい。
二人してすぐさま岩山龍の頭から距離を取ると、またも大剣とハンマーを背に担ぎ、駆け出した。

「…5! 3ッ!」

だが、7秒の間に、もう一度タメ攻撃をブチ込んだとして、その先はどうする?
もし、この岩山龍が、この二度目の「痛み」を認識していたら、反撃で、連続で頭を振りまわす…という事がありえるのではないか?

「…4! 2ッ!」

そんな懸念は確かにある。
だが、もう、ディキシーは考える事を止めた。 そんな事を考えていても詮がない。
今はマイノの考えを信じ、どこまでも付き合ってやろう。

「…3ッ!」

俺たちのカウントは、これが「1」。
それを理解していたディキシーは、マイノと呼吸を合わせ、再度同時に攻撃を繰り出す。
大剣とハンマーの凄まじい衝撃が、再度岩山龍の頭をぐらつかせ、進軍を僅かに止める。
それに青年が攻撃を合わせたのが、遠くから響く機銃音で分かった。

「2ッ! シェリー、逃げるんだッ!」

転がって衝撃を逃がしながらも、体勢を立て直すマイノとディキシー。

「…1ッ!」

岩山龍の頭が、天高く伸びる。 
そして、次の瞬間に、地を這い疾走するように繰り出された攻撃を、マイノとディキシーは間一髪で避けた。

「アブねぇッ!」

「おい、どうするんだ!? マイノ、次は!?」
「待て! ここで待つんだ! 攻撃をしなくても、今までの通りだッ! おい、シェリー、出るなッ!」

マイノがジェスチャーをすると、出ようとしていたシェリーは再度後ろに下がる。
もしも、さっき放った2発目の攻撃を、岩山龍が認識していたら、またも3秒後に、攻撃が来る可能性がある。
それを懸念し、シェリーを後ろに下げさせた。

青年ハンターは…。

青年に目をやると、硝煙を吐き出す銃を構えたまま、こっちを見て、手を挙げてきた。
多分、あの様子なら、こっちの言いたい事は間違いなく伝わっているのだろう。 助かる…!

そして3秒後。 …攻撃は、来なかった。

「…よし。 よしッ! 行くぞディキシー、さっきやった通りだ!」
「あ、ああ、分かっタ!」


そして、ディキシーとマイノは、再度岩山龍に斬りかかって行く。
その二人の姿を見て、青年ハンターは、正直、あの二人の唐突な行動に感嘆していた。

岩山龍の「随意行動」は、確かに7秒の時間を要する。
与えられた痛みに怒りを覚え、反撃に移るまでが7秒。
その7秒の空白に、もう一度攻撃を行う方法は、確かに彼自身も考えてはいた。
だが、岩山龍が「連続する痛みに反応するかどうか」までは、試していなかったため、確実性を重視して採用しなかったのだ。

だが、あの悪ガキどもは、この土壇場で、その考えに至り、身を呈して実行した。
そして、結果も分かった。
7秒の間に連続する痛みを与えられても、「一度攻撃行動に入ると忘れる」という結果が出た。
確かに、これだけの銃撃や攻撃を受けても、進行方向を全く変えようとしない様子からして、痛覚神経が非常に脆弱であるか、記憶力が乏しいという可能性は十分にありえる話だ。

とにかく、この7秒の間に、奴らの攻撃で、岩山龍の行動が止まるチャンスが一つ増えた。

「(…お前らの行動、決して無駄にはしないぞ!)」

岩山龍の前腕脇に空いた「穴」に、正確な銃撃をする事で、ディキシーとマイノが命を張って作り続けているチャンスを、溢すことなく拾い続ける青年ハンター。

「グゥオオオ、オオオン!」

連射される弾丸の雨に怯み、苦悶の声を上げ続ける岩山龍。

反対側では、シェリーが連射する拡散弾の爆炎が、右肩の装甲をバラバラに砕いていた。

「(お願い…! 止まって、止まってッ…!)」

もうとっくに、右肩は完全に砕け、部位破壊は終了しているのに、岩山龍の進軍速度には衰えがない。
既に、残弾が心もとなくなったポーチを手さぐりで確認しながら、マイノの撤退指示に気を払い、拡散弾を撃ち込み続ける。

「畜…生! まだ…、まだ止まらねぇのかヨ…、このクソが…ッ!」
「3ッ…! シェリー、離れろ…ッ!」

顔面を攻撃しているディキシーとマイノは、二人とも荒い息をついていた。
短距離走のように、息つく暇もなく全力で攻撃を繰り返しているためだ。
酸欠で頭と全身がふらつくが、ここで倒れたら本当におしまいだ。

城門に到達されるまで、あと、100mもない。

そして、段々と城門が迫ってきて初めて気がついたが、もしも岩山龍に大城門に到達されたら、自分たちの戦うスペースがなくなる。
この攻撃の起点が自分たちであるのなら、どうあっても、岩山龍が門に到達するまでに、決着をつけなくてはならない。

「ディキシー! ここが…正念場だッ! 全部の力を…、吐き出せッ!」
「おうヨッ! 行く…、ぞ、コラァァァッ!」

岩山龍は、今や「血の涙」のみならず、鼻と口角からも出血をしていた。
相当なダメージがあるのは、見てわかる。 どう見ても明らかに瀕死の様子。
その姿を糧に、疲労で震える全身を振るい立たせ、「あと少しだ」と信じて、何度も何度も、タイミングを合わせ、斬りかかり続ける。
それに合わせ、青年とシェリーも、左右からこれ以上ない頻度の銃撃を続ける。

だが、その4人の猛烈な波状攻撃を掻い潜るようにして、なおも岩山龍は進軍を続ける。

「(お父さん…! お願い、今この瞬間だけで良いから、力を貸して…!)」

まるで祈りを捧げるように、シェリーはグレネードボウガンを抱え、正確に肩へと撃ち込んでいく。
岩山龍の肩は既に周囲の装甲までもが剥がれ落ち、肉は大部分がありありと露出している。

「(倒れて。 倒れて、お願いだから…!)」

剥き出しの肩の直接狙いを付け、弾丸を撃ち込むシェリー。
拡散弾の爆炎が炸裂するとともに、焦げる肉の破片が、悪臭とともに周囲に飛び散る。

「(お父さん、お母さん…。)」

肖像画でしか見たことのない両親の笑顔が、何故か脳裏に浮かぶ。

「(お婆ちゃん…。)」

そして、祖母の姿も。 

「(…。)」

ふと、祖母が何事かを、シェリーに言ったような気がした。
微かに動いた口が、何と言ったのかは分からない。
だが、いつもシェリーに厳しい事を言っていた祖母の顔は、何故か、満面の笑顔だった。


…やがて、その瞬間は唐突に訪れる。

「大城門」到達まで、残り30mという所で、シェリーの放った拡散弾が、右肩で爆裂した時。
岩山龍の右肩が、グラリと大きくかしぎ、それに連れるようにして、左腕も内側に折れる。
まるで、何かに引っ掛かり、つんのめるような動作。
そして、ゆっくりと…。 
まるで、スローモーションのようにして、ぬかるむ地面を叩く大音響と凄まじい振動と共に、岩山龍は頭から地面に倒れこんだ。

「うおっプ!」
「ぐっ!」

岩山龍が倒れこんだ際、周囲に飛び散った土砂が顔にかかって、一瞬視界を奪われたディキシー達。
だが、顔を拭って面を上げた時、そこには、まるで彫像のような岩山龍の顔面が…。

首を捻った状態で、横向きに倒れていた。

「お…おおッ」

一瞬の凝視の後、猛烈な幸福感がディキシー達の全身を包む。

「…お、オイ! やったのカ!? 俺たち、やったのカッ!?」
「…やった! おい、遂にやったぞ、俺たちッ!」

ディキシーとマイノが、思わず肩を抱き合って喜ぶ。

「やった、やったぞ、馬鹿野郎ッ!!」
「ザマァみやがレッ! 俺達にかかれバ、こんなモンなんだヨ! 思い知ったカッ!」

「待て、お前ら! 岩山龍は、まだ死んだって決まった訳じゃない! 攻撃の手を、緩めるなッ!」

青年ハンターとシェリーは、既に動かなくなった岩山龍に、未だ銃撃を続けている。

「そこまでする必要ねぇだロ! いい加減、もう死んだにきまってるゼ、コイツ!」
「そうだとも! なら、アンタが確かめてみちゃ、どうだ!」

岩山龍は、目、鼻、口と、顔の穴という穴から血を流し、瞼も閉じている。
どう考えても、今まで瀕死だったはずだ。
それに、この石像のようなその姿からは、生きているなどとは、どうにも考え難い。

マイノは、シェリーに対し、手を挙げて銃撃を止めるように合図する。

「おい、シェリー、お前もこっちに来いよ! もういい加減、弾丸も尽きたんじゃないのか!?」

シェリーはしばし逡巡していたようだったが、やがて納銃すると、ディキシー達の方に向かってやってきた。
その表情には、やはり戸惑いと興奮、そして隠しようのない歓喜の色があった。

「ねぇ、これ、もう倒せたの…!? あたし達が、本当に倒したの…!?」
「本当に決まってるぜ! 俺らが、岩山龍を倒したんだッ!」
「おい、ギルドのハンターさんヨ! 早く、岩山龍の息の根が止まってる事を、確認してくれヨッ!」

早々に戦闘を止めてしまった連中に、青年は多少苦々しく思ったが、確かに瀕死であったろうし、割と唐突な幕切れだったな…とも思う。
無尽蔵の体力を持つ相手だ、という事を改めて実感したが、命が完全に尽きるまであれだけ動けるとは、そら恐ろしいものさえ感じる。
もう、「通常弾Lv3」も、殆ど残っていない。
シェリーの拡散弾も、残弾はほぼなかろう。

確かに、強敵だった。 
本当に、古龍とは、あなどり難い相手だ…と思った。

青年は、アルバレスト改を納銃すると、動かなくなった岩山龍に登って、前腕の脇でヘルムを脱ぎ、体内の心音を拾うべく、耳を当ててみた。


眼下の光景…岩山龍を倒したのを見て、「大城門」の上に居る三人、セレト、ブロディ、ハンセンは大喝采を送る。
岩山龍は、もう本当に、門の足元スレスレまで侵攻していた。

「お、おい、爺様、見ろよッ! 連中、やったぞ、やりやがったぞ!」
「おお、おおおっ!! 本当じゃ! 岩山龍を、まさか、本当に倒すとはッ!」
「ギリギリじゃねぇかッ、ウィー! やった、やったぞッ!」
「おいハンセン、村の連中に知らせてこい! 『岩山龍を倒した! 俺たちゃ、もう大丈夫だ! 村の未来は、保証された』ってな!」
「おお、今から行ってくるぜ! 皆、大喜び間違いなしだッ、ウィー!」

意気揚々と、門の階段を下りていくハンセン。
だが、その姿を見送っているうちに、門の下の方で、叫び声が聞こえた。


「…生きているッ!」

「うおおっ! そ、そんな、馬鹿なッ!」
「な…なんだヨ、! そんなノ、アリかヨ…!」

今まで、死んだとばかり思っていた岩山龍が、突如、赤く濁る両眼を見開き、活動を再開した。
眠れる火山の噴火のように、再び、その蒼灰色の巨体に、脈打つ命が宿る。

「グルォ…。 ウォ、ゴォォオオオッ!」

「バカな…。 そんな、バカなッ!」

しかも…。
岩山龍は、破壊されたはずの両腕を支えに、どこまでも高く、高く体を起こす。
その紅い瞳には、もうハンター達の姿は、映っていない。

そう、岩山龍は、目の前の「大城門」を破壊の標的と認識し、今まさに佇立しようとしていた。

<続く>

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*Comment

NoTitle 

どうも。モンハンやらずにサガフロンティアやってるヴぃっぱです。

今朝がた見た時には、「あれ、丼$魔さん作風変えた?」とも思いましたが、アイディア集でしたかw
では、言いつけ通りにラストシーンまで忘れている事にしますね。

あ、そうそう。何時だったか、コメントに残しましたG系ガンランスのコンプリートが終了しました。
これでもう紅蓮石集めに翻弄される事は無さそうです。

ではでは、小説の続きを楽しみにしてますね。
  • posted by 蒼星石@ヴぃっぱ 
  • URL 
  • 2010.11/04 19:57分 
  • [Edit]

 

うぁー!
これは、いわゆる、エリア4とかで見られる、ラオの大ダウンですね!
ゲームなら、攻撃チャンスなのですが、リアルなら、必死に戦っている、悪ガキ達のように、討伐したと、勘違いしてしまいますね!
倒れてくれ!って…
これから、どーなるんだぁ~
楽しみです。
  • posted by Mの人 
  • URL 
  • 2010.11/04 20:08分 
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  • posted by  
  •  
  • 2010.11/04 20:21分 
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NoTitle 

何か似た様な文章を読んだ記憶があるけど、3つ以上覚える事が出来ないスタンド攻撃を受けて忘却の彼方・・・
丼先生に触発されてボーンシューターでラオに挑戦し、ブログに更新してみました。
  • posted by kamiomiya 
  • URL 
  • 2010.11/04 20:57分 
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プロフィール

丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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