女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(24)

青年ハンターは、シェリーを連れて、大広場の入り口で第5砦に最も近い部分で左右に別れ、陣を構える。
岩山龍の進撃に対し、左右から銃撃を浴びせる布陣だ。

ディキシーもマイノに促され、定位置に付く。
場所はさっきと同様、峡谷道の中央線上、岩山龍の顔が来るであろう箇所。
そこに二人がぴったり横一列に並ぶ。

一見、先刻と全く同じ布陣のようだが、その内実は全く違う。 
青年ハンターの言葉を借りるなら、今度の主役は、青年ではなく、彼ら二人なのだから。

雨は既に、完全に止んでいた。
乳白色の猛烈な濃霧が、峡谷道を静かに覆い隠している。
耳を澄ませば、風の鳴る音に混じり、遠くで何かを崩すような音が聞こえる。
岩山龍が、第5砦を完全に破壊し終わり、こちらに向かいつつある音だろう。

呼吸が、荒い。
全身から脂汗が噴出し、動悸も激しい。
極度のプレッシャーで、立っているだけでも、力が抜けていきそうだ。
武器を手に縛っておいて良かった、とマイノはつくづく思った。
縛ってなければ、汗でとうに武器を取り落としていたかもしれない。

最後にもう一度、力の流れを意識しながら、ハンマーを振る。

…軽い。
さっきとは、あきらかに武器の感覚が違う。

正しい使い方を知っただけで、こうも違うものか…と思ったその時。


「…来た」

-------------------------------------------------------------------

ここは、ウィンストンハンター学院の学長室。 
戯曲「銃の英雄」を詠っていたソルトは、岩山龍の最後の登場シーンで、唐突に詩を止めた。
そして一息つくと、弦楽器に当てていたハンカチを外し、胸ポケットにしまう。

「…あの、どうしたんですか? 詩の途中でいきなり止めちゃって」
「ん、実はね、戯曲『銃の英雄』にはちょっとお約束があってだね」

そう言うと、ソルトは弦楽器を手にしたまま、部屋の奥に置いてある蓄音器の所に向かう。

「お約束?」
「このシーンで、演奏隊にキメの曲を鳴らしてもらう事になってるんだよ」
「キメの曲? 曲って、どの作曲家のですか?」
「えと、あれ、何番だっけ…。 まぁイイや、聞けば思い出すよ、有名な曲だからさ」

そう言って、ソルトは、蓄音器の下にあるガラスケースから、金属製の筒状レコードを取り出してセットする。
そして、つまみを調整してボリュームを確かめると、ハンカチを弦楽器に当て、演奏する構えを取った。

ソルトは、演奏が始まるのを待っているのか、視線だけを蓄音器の方にじっと向けている。
だが、その調整の済んだはずの蓄音器からは、未だ何の音も聞こえない。

いや…。
よく聞くと、かすかに聞こえる。
まるで津波の前兆のような、彼方からやってくる潮騒のざわめき。

聞いているうちに、それは徐々にボリュームが上がってきて、ようやく識別できるようになった。

これは…打楽器? 小太鼓の連打?

リンがそう思った瞬間、蓄音器から、突如高らかなファンファーレが鳴る。
一瞬の拍を置いてそれに続き、ソルトが顎に構えていた弦楽器を、しゃん!と勢いよくつまびいた。
その鮮烈にして優雅な音が、まるで指揮の合図であったかのように、打楽器、管楽器、弦楽器が、揃って前奏を始める。
まるで何かを求め悶えるような、狂おしいまでの高まりの連打。

そして、その前奏の中から、突如その場に現れたかのような臨場感を伴って、管楽…おそらくバストロンボーン隊とコントラファゴット隊の、壮大な演奏が始まった。

それはあまりにも高らかで、かつ勇ましい演奏。
その旋律は、自分でも驚かされるほど、すぐにリンの魂を捉えた。

確かに…。 確かに、この曲は聞いた事がある。 

まるで、全身を叩き鼓舞するかのような、雄大で力強い響き。
女性であるリンの胸中にすら、ふつふつと闘志が湧いてくる。

そう、軍歌や行進曲にも使われるその曲は、遥か昔、ある国の皇帝が、高名な作曲家に命じ作らせた交響曲。
苛烈な戦争の最中、命を賭して自国を救った若者達の魂を讃えた詩。

…「勇者に捧げる賛歌」交響曲第9番第2章、「英雄の証」だった。

-------------------------------------------------------------------

「…来た」

白く立ちこめる濃霧の中から、岩山龍の巨体が悠然と姿を表した。
それを凝然と見つめるディキシーとマイノの喉が、緊張でゴクリと鳴る。
第5砦が破壊された今、もう岩山龍の進軍を阻む「砦」はない。

そう…。

「お前達二人が、『壁』になるんだ。 直接、体を張って岩山龍の進軍を阻止しろ」

あのギルドのハンターが言った言葉が脳裏に響く。
次の「砦」になるのは、自分たちなのだ。

「マイノッ!」
「ああ、分かってる! おい、ディキシー、シェリー! 行くぞッ! 攻撃のタイミングは俺が指示するッ! 全員、合わせろよッ!」
「分かっタ!」
「…分かったわ!」

青年から伝授された作戦が、果たして上手くいくのかは不明だ。
奴自身、「おそらくは可能」と言っていたが、それがどれほどの確信を持って言ったものか。
失敗し、自分たちが無惨な屍を晒す事も十分にありえる。
だが…。 仮に死の危険があろうとも、やらなくては。
やらなくては、自分たちは「先」へと、進めないのだ!

待ち伏せていた青年ハンターのズガガガ、という銃撃を皮切りに、マイノ達も作戦を実行する。

一瞬だけ、呼吸を整え、ディキシーの方を見る。
奇しくも、意志がお互い通いあったかのように、ディキシーも、こちらを見ていた。

「行くぞ、ディキシー!」
「おオッ!」

二人は、こちらに侵攻してくる岩山龍の頭の直前まで走り込む。
それを見て、シェリーも同時に接近を始める。

「3!」

ディキシーは、青年に言われた通りのモーションで、駆け込みながら、大きく踏み込む。
マイノは、それに少し遅れて、ハンマーを高く背に構えながら、同様に走り込んでくる。

「2ッ!」

目の前には、ちょうど岩山龍の巨大な顔が接近している。
全くの無表情の巨魁が、グルル、という湿った喉鳴音を立てるのが、今更のように聞こえる。

ディキシーは、踏み込んだ足の力で、前進する運動エネルギーを、上方へと弾き出す力に換え、大剣に込める。
マイノは、岩山龍の顔前で急に制動を掛け、腰の位置…体幹を確認しながら、背に構えたハンマーを、踏み込みの力によって腰を支点に回転させ、遠心力を利用して、天高々と一気に振りかぶる。

「1ィッ!」
「…おおおオッ!」

迸る咆哮と共に、「バスターブレイド」の巨大な刃と、「ウォーメイス改」の鉄塊が、同時に岩山龍の顔面へと振り下ろされる。
タイミングは…ほぼ同時!

二カ所の打撃面で、それぞれ一瞬閃く火花。
グァシャッ、という、全身を粉々に砕くような凄まじい衝撃が、二人の体を貫く。 
だが、今度の大剣とハンマーは、いずれも弾かれなかった。
あれほど彼らの攻撃を弾き続け、梃子でも動かなかった岩山龍の頭が、わずかではあったが、ぐら、と歪んで地べたを見る。

「お、おい! 行けたゾ! 行けタ! 攻撃が、通ったゾ!」

…自分たちの攻撃が、通じた!
凄まじい痺れは今も残っているが、それでもマイノの全身に、震えるような歓喜が、一瞬沸き上がる。
だが、いきなり特攻しようとしているディキシーを見て、彼はそれを押しとどめた。

「バカ、ディキシー! 無駄な攻撃するんじゃない! 一度、引くんだ!」
「す、スマねェ、分かっタ!」

「…6!」

果たして、青年ハンターの推測は、確実なのか。
これが、作戦として結実するのか。
俺達の力は、奴の見立て通り、だったのか…!?

「…5!」

心中で何とも言えぬ、まるで灼熱の溶岩の如き温度の不安を感じながら、マイノとディキシーは、ただ、待つ。

「…4!」

ふと、岩山龍の脇に目をやると、シェリーが、岩山龍に近寄って、拡散弾を連射していた。
かなり近い距離…。 10m前後にまで肉薄している。
確かに、あれならどんな初心者であっても、弾丸を外す事はないだろう。

「…3! シェリー、戻れッ!」

その声を聞いて、シェリーは視線をマイノに向ける。
そして、ライトボウガンを納銃すると、全力で岩山龍から離れ始めた。

「2ッ!」

シェリーと反対側の地点では、青年ハンターが、かなり離れた所で、リロードをしている。
この後の銃撃に備えているのだ。
そして、リロードを終えた青年は、銃を構えた。

「1ッ!」

青年が、射撃を開始する。
そして、そのかけ声に呼応するように、岩山龍は、頭を天高くの伸ばしてくる。
岩山龍の紅い瞳に映る敵は、まぎれもなくディキシー達だったろう。
敵意に満ちる視線に押され、思わずディキシー達はさらに距離を取る。

「(…0!)」

ディキシーとマイノの居た場所を、土砂をまき散らしながら、疾風を伴って轟と通り過ぎる、岩山龍の頭。
だが、ディキシーとマイノは、岩山龍の頭が通過した場所よりも数メートル先の地点で、その攻撃を突っ立ったまま、得も言われぬ驚愕と共にそれを眺めていた。

そして、攻撃が完全に過ぎ去った時…。

確信に近い予感が、彼らの胸中に到来する。
青年ハンターの予測は、正しかった。
そして、自分達の攻撃が、岩山龍に通じるという見立ても、また正しかった。

自分達の中を埋め尽くしていた恐怖感が、みるみるうちに高揚と興奮にすり変わっていき、全身に鳥肌が立つ。

行ける。 俺達の攻撃は、岩山龍に通用する。

「行ける。 俺達、行けるぞ!」
「あア、行けるゼ、マイノッ! さぁ、早く、指示を出してくれッ!」
「おおッ! 行くぞ、ディキシー! シェリー!」

右手を挙げ、全員に合図する。

青年はもちろん、離れた位置で拡散弾をリロードし終わったシェリーも、グレネードボウガンを右脇に抱え、左手を挙げて合図に応える。

「3ッ!」

全身に沸き立つ力を、その武器に全て込めて。

「2ィッ!」

この岩山龍の侵攻を、なんとしても阻止するのだ。

「1ッッ!!」

再び、バスターブレイドとウォーメイス改が、岩山龍の頭めがけて繰り出される。

…お前は、絶対に、俺達の村には、侵攻させネェ。

ディキシーとマイノは、青年ハンターに言われたモーションと、その作戦を決して外す事なく、ただ正確に切りかかり続ける。
無我夢中で戦いながらも、心中で青年ハンターに言われた作戦の内容を反芻し、それにひたすら沿おうとしていた。


「…俺は、『通常弾Lv3』で攻撃をする。 だが、この弾丸は、ちょっと特殊な運用をしないと、奴にダメージを与えられない。 そのためには、岩山龍を完全に足止めする必要がある」
「…どうやって? どうやって、奴の進軍を止めるんだ?」

「分かりきった事だろ。 お前達二人が、『壁』になるんだ。 直接、体を張って岩山龍の進軍を阻止しろ」

それを聞いて、二人は驚愕し反論した。

「な…!? バカな、そんな事が俺たちに出来る訳ないだろうが!」
「そうだッ! そレ、俺たちに死ねって言ってるも同然じゃねーかヨ! ンな事、出来てたまるカッ!」

「出来る」

「ど、どうやってだよ!」
「二人同時に、タイミングを合わせて、最大の力で『タメ攻撃』を撃ち込め。 個々の攻撃なら叶わずとも、同時に攻撃すれば、岩山龍に痛撃を与え、怯ませられる」
「…そんな事ガ、可能なのかヨ!?」
「おそらく、な。 よろしく頼むぞ」

「ちょっと、待ってくれ…! まだ質問はある!」
「何だ」
「あの、岩山龍の攻撃の事だ。 アンタは、あの攻撃を見切っているようだが、一体、どんな風にして見切ってるんだ? 俺たちが壁になったとしても、あの攻撃で吹き飛ばされちゃ、意味がないんじゃないのか?」
「…そうか、そうだったな」

今さら思い出したように、青年はかぶりを振って答える。

「というか、お前等、あれだけ戦ってて、全く見切れてなかったのか?」
「だ、だかラ、分かんねぇから、それを聞いてるんじゃねーかヨ! 素直に聞いてるんだかラ、教えてくれヨ!」
「何か、攻撃の予備動作みたいなものが、あるんだろう?」

それはシェリーも知りたい所だった。
岩山龍は、こっちの攻撃に反応しているようで、そうでもない部分があった…。
機先を制して攻撃してきたり、かと思えば全く無反応だったりして、攻撃を感じさせる予備動作、という物が全く伺えなかった。

「ない」
「は?」
「予備動作、じゃない。 奴の攻撃に対する反応は、『反射』で2秒、『随意』で7秒だ」
「…?」
「…これでも分からないのか?」

青年の言ってる事が掴めず、ディキシーとマイノは顔を見合わせる。

「やれやれ…。 そこから説明しなきゃとはな」

そういうと、青年は、アルバレスト改の、未だ熱く焼ける銃口を、ディキシーの腕にちょん、と触れさせた。

「アヂィッ!!」

あまりの熱さにもんどり打って倒れるディキシー。

「これが、『反射行動』だ。 危機に直面した時、反射的に出る防御行動だな」

「て、てメェ、何しやがるルッ!」

倒れたディキシーは、起きあがると、青年のマントを掴み、殴りかかろうとした…次の瞬間には、腕を極められていた。

「いデ、デ、デッ、放セ、コラッ!」
「これが、『随意行動』だ。 痛みに対し怒りを覚え、頭で考え、実行に移す一連の行動」

そういうと、青年は、ディキシーの腕を解放した。

「…テメェ、何しやがルッ! いきなり、何のつもりダッ!」
「お前等が俺にした事を思えば、可愛いもんだろ」

うぐ、とディキシーが言葉に詰まるが、青年は気にせずそのまま解説を続ける。

「このように、生物の行動には、『反射行動』と『随意行動』の二つの動作が組み合わさっているが、神経の伝達速度は、どの動物でもほぼ同じ…。 ゆえに、その速度は、体の大きさと反比例する」
「…? 体の、大きさ? 反比例?」
「そう。 簡単に言えば、体の小さい奴はすばしこく、反対にデカい奴はノロい、って事さ。 ケルビやアプトノスを思い出してみろ」

言われてみれば…。
アイルー、メラルーなどもかなり素早いし、逆にアプケロスなどは動きが鈍い。

じゃあ、あの岩山龍は…。

「奴は、あの凄まじい巨体ゆえか、普通のモンスターよりも、極めつけに鈍い。 攻撃を受け、『痛い』と思ってから、敵を認識し、反撃するのに約7秒かかる」
「…マジで?」
「実際に、計測済みだ」

じゃあ…。
あの、機先を制して頭を降ってきたのは…。

「7秒前の攻撃に対する反撃、だ」

「そ、そういう事だったのかヨ…。」
「待て、まだそれじゃ、何の解決にもなっていないぞ! どうやって、岩山龍が『痛い』と思ったかどうかを判断するんだ?」

言われてみればもっともな問題だった。
どこで、岩山龍が「痛い」と思ったのかが分からないと、反撃のタイミングは掴めない。
シェリーもそうだが、彼らが反撃のタイミングを掴めなかったのには、そういう理由もある。

「それこそ簡単だろ。 どこで『痛い』と思ったのかを判断するんじゃなくて、確実に『痛い』と思わせる攻撃をブチ込め。 二人同時にタメ攻撃をさせるのは、そのためだ」
「そういう、事か…」
「ああ。 お前等が二人同時のタメ攻撃を放ってから、7秒間の間は、ほぼ攻撃は来ないと考えていい」

そして、ここで、青年ハンターは、シェリーの方を向いた。

「シェリー、お前も、こいつらのタイミングに合わせて、肩に近寄って拡散弾を撃て。 敵の攻撃のタイミングが分かるなら、ギリギリまで接近できるだろう?」
「う、うん…」

「ま、待てよ…。 じゃあ、何だ? 攻撃の起点は、全部、俺達なのか?」
「そうだ。 さっきも言ったが、俺の『通常弾Lv3』は、岩山龍の動きを止めた時でないと、効果的に使えない。 あえてはっきり言うが、この作戦の正否は、お前達次第…どれだけ優秀な『壁』になりきれるか、だ」

「…俺らの攻撃で、岩山龍が怯まなかったら、どうすんだヨ」
「俺もお前等の攻撃にタイミングを合わせて、一緒に射撃する。 それが『痛み』になるかは分からんが、全くの無駄じゃなかろう」
「マジかよ…。 そんな事、本当にできんのかヨ…。」
「何のために、お前等に大剣とハンマーの扱いを教えたと思ってる? 完全に力を乗せきれさえすれば、顔面を攻撃して、岩山龍を怯ませる事は可能だ。 活路はある」


ディキシーとマイノの目の前には、その目的である、岩山龍の顔がある。

「3! …2ィ!」

再び、マイノが指揮を取り、ディキシーと共に、2人タイミングを合わせて、全力のタメ攻撃を撃ちこもうと走り込む。
それにタイミングを合わせ、シェリーも拡散弾を込めた「グレネードボウガン」を持って右肩付近に接近する。
青年も、それに合わせて、移動し続ける左肩の「穴」に向かって照準を合わせる。

「…1ッッ!!」

大剣とハンマーが、またも全く同時に振り降ろされ、ガシャッという音とともに、岩山龍の顔面の外皮を砕き、火花を上げながら炸裂する。
その衝撃を受けて、またも岩山龍の巨大な頭が、ぐらりと歪んだ。
一瞬怯み、動きが止まったその隙を見て、シェリーと青年は、それぞれ両肩に射撃を行う。

「お、おい、見ろよ、マイノッ! 岩山龍の、顔!」
「見てるッ! …5!」
「岩山龍の奴、目ん玉から、血ィ流してんじゃねーカ!? おい、俺達、イケるゾ!」
「ああ、ホントだ! …4ッ!」

僅かだが、岩山龍は、その両眼から、まるで涙を流すように、赤黒い体液を滴らせていた。

「俺達の攻撃、効いてんだヨッ! おい、マイノ、行くゾッ!」
「待て、ディキシー! …3ッ! シェリー、退避だ!」

マイノが、シェリーに向かって手を振る。
それに応え、さっきと同様に、シェリーも肩口から即座に納銃して退避する。
命中率が格段に上昇したシェリーの拡散弾は、爆風と衝撃波で、順調に右肩周囲の装甲を削いでいた。
これで右肩を完全に砕いて部位破壊すれば、さらに進軍速度を遅くする事が可能。
あわよくば、転倒も狙えるかもしれない。

「2ッ! おい、ディキシー、下がれッ!」
「なんだヨ、マイノ、行かねぇのかヨ!」
「バカ、もう忘れたのか、お前! 攻撃が来るぞッ! 距離を取るんだ!」

思い出したように、ディキシーとマイノは、そこからあわてて距離を取る。

「…1!」

もはや誰もいなくなった箇所を目がけて、頭を振り上げる岩山龍。

「…0!」

何も居ないそこに、岩山龍の頭が振り下ろされる。
力余ってか、頭は地べたを大きく削ったが、飛ばしたものは泥のみで、小憎らしいハンターたちは、既に攻撃圏外に逃れていた。

「ウホォッ、バッチリだゼ!」
「よし…。 よし!」

岩山龍の攻撃が通り過ぎたのを確認した2人は、再び武器をしっかりと握ると、一緒に深呼吸する。

「行くぞッ、ディキシー! 3!!」
「任せとけッ、マイノ!」

2人は武器を教えられたとおりに構え、またも岩山龍の頭めがけて走り込む体勢を取る。

「…2ィッ!」
「テメェは、ぜっテェ…。」

そして、全体重を乗せ、武器よ砕けろとばかりに、渾身の力で、岩山龍の顔面目がけて斬りかかる。

「1ィッ!」
「こっから先には、行かせネェッ!」


ディキシーとマイノの攻撃が、再び岩山龍の顔面で炸裂する。
その二重の衝撃に耐えかね、またも岩山龍の脚が止まった。

「(…やってくれる、あいつら)」

陳腐な狂暴性を発揮し、岩山龍に向かっていく悪ガキ。
それを横目で見ながら、青年は正確な銃撃を繰り返していた。

青年ハンターが、貫通弾の代替手段に選んだ弾丸は、『通常弾Lv3』だった。
アルバレスト改の追加改造によって初めて撃てるこの弾丸、むろん、通常時は岩山龍に痛撃など与ええない。
装甲を掘削し突き進む貫通弾と異なり、通常弾には全く貫通性能がない。
故にどれだけ強力な銃で弾丸を撃ちこもうと、硬い外殻に弾かれて終わる。

だが、今、この状況下…。
貫通弾で、外殻に「穴」を開けた状態である今なら、この弾丸を最大限に活用しえる。

「穴」を通しさえすれば、弾丸に貫通性能が無くとも、直接体内の弱点を狙撃する事が可能なのだ。
また、『通常弾Lv3』には、先端の加工により、跳弾するという特性が付加されている。
岩山龍の弱点である心臓は、脊髄と、胸郭を覆う肋骨で、まるで檻のように護られている。
跳弾性能を持つ『通常弾Lv3』にとって、この「檻」の中こそが、その性能を最大に発揮できる箇所。

仮に弾丸が心臓に着弾せずとも、脊髄と肋骨で跳弾させて、心臓周囲の循環器を引き裂く事ができるのだ。
精度にはかなりのバラつきがあるものの、もし上手く二度、三度と跳弾すれば、一発でも相当なダメージになる。
後は、装填数9発という連射性を駆使し、貫通弾に劣るダメージを物量でフォローする。

ただし、先も言ったように、通常弾には貫通性能がない。
この戦法を最大に生かすには、岩山龍の脇に空いた「穴」を確実に通す必要がある。
脚を痛めている彼が、確実に、しかも効率よく弾丸を弱点に届かせるには、どうしても岩山龍の動きを止めなければならなかった。

ディキシー達二人の攻撃で怯んだ時、そして反撃の瞬間には、岩山龍の進軍も止まる。
青年は、ディキシー達の攻撃のタイミングを見計らいながら、それに合わせて、「穴」めがけ猛烈な連射を繰り返す。


「グゥォォオ、オオォォォン!」

岩山龍が、苦悶の呻きに似た咆哮を漏らす。
こっちは、予期せぬ痛みで思わず出た「反射行動」。
反射行動の動作と、随意行動の動作もよく観察すれば見分けは付くのだが、ディキシー達二人の方向を見ると、案の定2人は、予定外の行動に、戸惑う様子を見せていた。

それに対し、空に一発銃弾を撃ってから、左手を挙げる。

悪ガキ2人のうち、マイノがそれに気づいたようで、あっちも手を上げて応える。
様子を見れば、そこからカウントをリセットして、再度攻撃行動に入るようだ。

「(よし、いいぞ、その調子だ…!)」

こちらの行動に対し、きちんと応じてくれる悪ガキども。
それをどこか微笑ましく感じながらも、彼は射撃を続行する。

「…テメェ、涙流しやがっテ、痛ェんだろうガッ! さっさとくたばりやがレッ!」

岩山龍が血の涙を流していたという事は、おそらく、もう岩山龍は瀕死だ。
ズタズタになった循環器から漏れ出た体液が、他の組織にも浸潤し、奴らの攻撃で、体外に漏れ出てきたのだ。

予想以上の体力を持つ岩山龍だったが、この物理的な瀕死の兆候がある以上、あと一息で倒せる事は間違いない。

…しかし、岩山龍の進軍は、一体となった彼ら4人の攻撃に晒されながらも、止まらない。
この村の「大城門」は、単に切り出した岩石を使って作った城壁なので、ミナガルデ郊外の砦に備えられている「撃龍槍」のような防衛施設は存在しない。
つまり、「大城門」に到達されると、それを押し返す方法がない。
また、この戦法は、ディキシー達の攻撃が起点になっている。
奴らの戦うスペースが潰されても、岩山龍を怯ませる事が不可能になり、それに連れて弱点狙撃は困難となる。
だから、どっちにせよ、大城門到達までに決着を付けなくてはならないのだ。

「…お前は、もうこれ以上、先には進ませネェッ!」
「そうだ、その意気だッ! ここで、仕留めるぞッ!」

ディキシーの上げる怪気炎に、銃撃で応じる青年ハンター。
しかし既に岩山龍は、大城門前の広場に大きく乗り込み、その半分にまで到達していた。
大城門到達まで、あと、400m。

青年ハンターとシェリー、そしてディキシーとマイノ。
対する岩山龍は、まさに噛み合い続ける獣同士のように、必死の激闘を繰り広げ続けた。

<続く>

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*Comment

 

続編キター!
そして、正解キター!!
って、クイズではなかったですね!
今回も、臨場感あふれる場面、楽しく読ませていただきました。
ドンドルマさんの物語を読んで、改めて、ラオのクエストを受けると、ただ貫通を打っていただけだったクエストが、今では、青年ハンター達のように、自分も、画面の中にいるよーな感じで、手汗かきながら、討伐してました!
作業だったラオのクエストが、楽しくなりました!
おかげで天鱗も、三枚あつまりました!
これからも、お身体に気をつけて、頑張ってください。
  • posted by Mの人 
  • URL 
  • 2010.10/31 12:25分 
  • [Edit]

NoTitle 

どうも。頭の中に「英雄の証」が鳴り響く、ヴぃっぱです。

A Gunnerの「弾が無い」という発言に気をとられて、通常弾Lv3の事は頭にありませんでした。
いやはや、丼$魔さんのストーリーを展開する能力には脱帽です。

今後、シェンガオレン戦を描く事などありましたら、「大敵への挑戦」を高らかに響かせてくださいね。

それでは。
  • posted by 蒼星石@ヴぃっぱ 
  • URL 
  • 2010.10/31 18:42分 
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  • posted by  
  •  
  • 2010.10/31 20:33分 
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NoTitle 

初めてコメントしてから時間が経ちすぎで申し訳ございません。
私も小説を書いていますが、自分のダメダメすぎて紹介できません。
中途半端なところから呼んでいるので最初の方呼んでみました。
青年ハンターの性格、変わっていませんか?
  • posted by KATANA 
  • URL 
  • 2010.10/31 23:22分 
  • [Edit]

NoTitle 

おぉー、聞こえますねー。これなんてサウンドノベルwww

モンハン大好き人間なら多分みんな聞こえますよね!相変わらずいい小説ですね!
頑張ってください!
  • posted by 者武 
  • URL 
  • 2010.11/01 00:42分 
  • [Edit]

 

ソルト学長のくだりを読んでいて全身に鳥肌が立ちました。しっかり脳内に響いてきましたよ、「最終決戦」もとい「英雄の証」が!初めてラオと戦った時の最終エリアでの興奮が蘇りました!!
ヴぃっぱさんも書かれてましたが、次は「大敵への挑戦」をぜひ!僕はあの曲を目覚ましに設定するほどこよなく愛しているので(笑)シェンガオレン戦を小説にして下さい!!
  • posted by 634 
  • URL 
  • 2010.11/01 18:57分 
  • [Edit]

 

読み終わって大きく一つ溜め息をつきました
読んでいる間、呼吸すら忘れる程に見入ってしまいました

あたかも自分がその場に居合わせるかのような緊張感、高揚感に感動して鳥肌がたちました
この後の展開もとても楽しみにしていますね
  • posted by 蒼衣 飛鳥 
  • URL 
  • 2010.11/02 01:32分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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