女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(22)

青年ハンター、「A GUNNER」は、岩山龍との激闘のさなか、不意の攻撃に晒される。
起死回生の閃きで、即死は免れたものの、彼は右足に重傷を負う。
スキル「火事場力+2」が解除できない状況下、その傷は徐々に悪化し、彼の銃撃の精度を奪っていった。
岩山龍の進軍を止める方法があれば、負傷した足でも岩山龍に追いつく事ができ、存分に射撃ができる。
何か方法がないのか…と思っていた際に、彼の耳に聞きなれた声が聞こえた。

「ねぇ、大丈夫ー!? 助けに来たよッ!」

それはシェリーと、あの悪ガキ三人組のうちの二人だった。

一瞬、この状況に何故と思った青年だったが、シェリーがいつの間にか、武器をライトボウガンを持ち替えているのに気が付く。
同時に、それがこの状況の打開策になるかもしれない、との直感が閃いた。

青年は、ヘヴィボウガンを納銃すると、岩山龍の攻撃を喰わないよう、皆に峡谷道の端に寄るようジェスチャーで指示した。
3人と青年は、揃って道端に移動するが、その時、シェリーは、青年が足を引きずっているのに気がついた。

「ねぇ、貴方、脚どうかしたの!? もしかして、怪我!?」
「大した事はない! それより、お前たちの武器は何だ!?」
「え、えっと、私がライトの『グレネードボウガン』…」
「弾薬は?」
「…拡散弾Lv2」
「それは良い! その弾薬を選んだのは、村長の指示か!?」
「え、ううん、違うよ…。 貴方が言ってたでしょ、前に。 拡散弾は、最強の弾丸だって…」
「そうか…! あんな何気ない一言を覚えてたのか、助かる!」

シェリーの胸中に、熱いものが込み上げてきて、思わず言葉として出そうだったが、彼女はそれを寸前で抑える。

「拡散弾の撃ち方は、分かるのか!?」
「もちろんよ! ちゃんと村長に聞いてきたから! この通り、弾丸も調合してもらったわ」

そう言って、シェリーは拡散弾50発の詰まったバックパックを、青年に見せる。
青年は、その異様な光景を見て絶句する。 …ギルドでは禁止されている、拡散弾の大量調合。
彼女には、弾丸を調合する知識も技術もない故の苦肉の策だろうが、もし万一、被弾して誘爆すれば、爆死確実の危険行為だ。

…少し考えて、青年は、最もベストであろう戦法を、シェリーに伝える。

「よし、じゃあお前は、岩山龍の右肩を狙ってくれ!」
「右肩?」
「そうだ、岩山龍の肩を部位破壊して、進軍速度を鈍らせるんだ! 出来るな!?」
「うん、分かった! 任せてっ!」
「それと、一つ言っておくが、立ち位置は、岩山龍の鼻先、峡谷道の端ギリギリから肩を狙え」
「そんな遠くから!?」
「ああ、結構な長距離射撃だが、丁寧に狙っていけば、さほど難しくない!」
「う、うん…」
「それと、もう一つ! 俺がお前の居る岸壁の頭上に、時々弾丸を撃ちこむ事があるが、それは岩山龍の攻撃の合図だ!」
「えっ!?」
「そうなったら、すかさず納銃して、全力で逃げろ! 逃げられないと思ったら、岩の窪みを探して飛びこめ!」
「う、うん、わかった!」
「…そして、あいつらの武器は何だ!?」

青年ハンターは、少し離れて佇んでいる、ディキシーとマイノに視線を向ける。
それを聞いたシェリーは、ディキシーとマイノに向き直り、大声で聞いた。

「ちょっと! ディキシー! マイノ! アンタたちの武器、何!? 教えて!」

だが、ディキシーとマイノは、苦々しい思いで一杯だった。
好きだった相手を青年ハンターに奪われ、せめて最後くらい見返してやる、と思って戦場に残ったのだが、当のシェリーが青年と話している時の、あの隠しきれないほどの喜びの表情。
そして、この、自分たちの武器を聞いて来る時の、彼女のいかにもぞんざいな表情。

「(…ハンターなのに、俺達の武器の事すら興味なしかヨ)」

「…俺の武器ハ、大剣の『バスターブレイド』」
「…俺は、『ウォーメイス改』だ」

「よし、お前らは、岩山龍の頭を叩いてくれ!」
「…頭を叩いてって!」

そう言うと、青年ハンターとシェリーは、また打ち合わせなのか、お互い何事か話をして、定位置につき、射撃を始めようとしてた。

「お、おイ、俺達にハ、それだけかヨ!」
「…極力被弾しないように、用心するんだ!」
「ちょっと待て! 被弾しないだけなら、腹下に入り込むという方法もあるだろう! ギルドナイトなら、もっと良い指示ができないのかッ!?」
「…さっきの話を聞いていたか!? 両肩が砕ければ、岩山龍は地面に突っ伏す! 圧死したくば、腹下に居ろッ!」

マイノの抗弁は、青年に軽く一蹴された。

「…畜生!」

もはや行先すら分からぬ怒りが、2人の中で渦を巻く。
だが、朝の戦闘と同じように、岩山龍に当たって跳ね飛ばされて…を繰り返さなければならないのかと思うと、その絶望感が重く全身を覆い尽くし、もはや怒りを表に出す気にもなれなかった。

「お前ガ…。 お前ガ、この村にやって来るからヨ…。」

恨めしそうな表情で、岩山龍を見上げるディキシー。

今は既に雨はほぼ止み、白い薄雲の中に蒼黒く存在する巨魁。
荒く削り出された、岩石の彫刻のようなその顔は、全くの無表情。
振動による大音響を伴いながら進軍するその顔に、ディキシーは怒り任せの大剣を叩きこんだ。

「…何もかも、メチャクチャじゃねぇかッ!」

だが、その大剣はあっけなく弾かれ、またもディキシーはバランスを失って、泥水の中に転がされる。

自分は…自分は、なんと無様なのか。
まるで、猫に捉えられ、瀕死のまま玩具にされ続ける、哀れな小鼠のようにさえ思えた。


その頃、村長宅では、セレトとブロディが、村人を使いに出して、周囲の状況を確認していた。

「フランク、鎮守の滝周辺はどうじゃった!?」
「ダメだ! ミルヴェルの滝の周囲は、まるで洪水みたいになってる! 山に渡る吊橋のすぐ下まで水が来てて、とても渡れる状態じゃない!」
「橋はそこだけじゃないだろうが! 他の所はどうだったんだよ!」
「あるにはあるが、先の森に例の怪鳥が居るんだよ! 危なっかしくて橋を渡れないんだ!」
「そうか、じゃあどっちにせよ、山に渡るのは危険だな…。 高台に全員で移動するしかないか」

村人の話を総合し、避難場所を検討していたセレトとブロディだったが、それを聞きつけた村人が口を挟んでくる。

「ねぇ、それってどういう事!? ギルドのハンターは、老山龍と交戦してるんじゃないの!?」
「ディキシー達も救援に向かったのに、それでも倒せないっていうのか?」
「…倒せるかどうかは、正直、分からんとよ」

ブロディが苦りきった顔で、そっけなく返答する。
それを引き継いで、セレトが返事を返した。

「ワシもギルドのハンターの戦闘ぶりをみたが、正直、戦局の趨勢は分からん…。 皆には手間だが、今から、安全な場所まで避難をしてもらいたい!」
「避難って、敵はそんなすぐ近くまで来ているのかよ!?」
「現在、老山龍は、おそらく第4砦に到達しつつあるッ! 第5砦が通過されたとすると、大城門まで辿り付くまでに、2時間あるかどうかじゃ!」
「待ってくれ! 趨勢が分からんって、実際はどうなんだよ! 老山龍を倒せる可能性は、全くないのか!?」
「正直、ワシが見た限りでは、状況は互角じゃ! ここに岩山龍が侵攻してくる可能性も、少なからずありえる!」

「なんだと」や「そんな」という村人の声が、嘆息やどよめきに混じって聞こえる。

「ま、待ってよ! 安全な場所に避難って、どこ!?」
「ブロディやハンセンの家の近くが、ちょうと山際で、最も被害を逢いにくい場所にある! 皆、そこに避難せよ!」
「マジかよ! …ま、いいけどよ」

「ひとつ質問があるんだけど、良いか!?」
村の男が挙手し、ブロディに質問をしてくる。

「何だよ」
「ウチの母は、心臓を悪くしてる…。 この雨の中で、体を冷やさせたくないんだ! 良かったら、ウチの母親だけは家の中で、休ませてもらえないか!?」
「ああ、別に構わんぜ」

「何、じゃあ、全員、この雨の中、外で待機、って事かい?」 それはゾラの発言だった。
「当たり前だろうが! 俺ん家に、村の人間の家族全員が入るかよ! 病人と、子供老人だけだっ!」
「ちょっと待っておくれよ! じゃあ、ウチの家財道具とかは、持っていけないのかい!? 服や、飼ってるモスも?」
「当然だッ! そんな場所の余裕あるかッ!」
「そんな! そんな酷い話があるかい!」
「財産よりも、まず食糧と薬を優先して持っていけ! 貴重品は二の次じゃ!」これはセレト。
「他、質問はないかッ! …無いなッ! 全員、避難準備、急げッ!」

連絡を手早く終わらせると、セレトとブロディは避難の準備に取り掛かる。
そして、村人も全員が足早に村長宅を出て、避難の準備を始めた。

「なんだいなんだい、こっちの事情は全くおかまいなしかい! ちょっと、アンタ! 今から荷車使って、荷物を運び出す作業始めるよ!」
「何だよ、ゾラ! まさか、ブロディの所…あんな高台まで、家財道具持って行くつもりじゃないだろうな!」
「当たり前じゃないか! 貴重品はもちろん、家財道具も全部だよ! そんな、貧乏くさい生活できないよ、あたしゃ!」
「待ってくれよ、本当に全部か!?、俺、腕を怪我してるんだけど…」
「それくらい何さ! 大の男が言い訳してんじゃないよ! さっさと準備しな!」
「そうよ、お父さん!」コルネット。


場面は再び、峡谷道に戻る。
岩山龍はちょうど、第4砦を突破しようとしていた所であった。
丸太と漆喰で、隙なく組み上げられた砦だったが、その程度の作りの砦が岩山龍に通用しようはずもなく、障害物と認識した岩山龍の一撃で、見る影もなく木端微塵に吹き飛んだ。

砦の脇には林道を通る迂回路があり、岩山龍が砦を崩しに入っても、かなり余裕を持って先回りをする事はできる。
今、まさに崩されようとしている第4砦を迂回して、砦の北側に青年ハンターとシェリー、少し遅れてディキシーとマイノがやってきて配置に付く。
予期せぬ4人パーティとなった彼らの前に、砦を突破した岩山龍がほどなくして姿を見せ、彼らは再度交戦を始めた。

シェリーが拡散弾で右肩を砕き、ディキシーとマイノが顔を攻撃、青年が弱点を狙撃…という布陣。
剣士が2人、ガンナーが2人という構成なら、この布陣はセオリーに則った、ベストに近い戦術であろう。
だが、いざこの方法で戦ってみると、全然歯車がかみ合わない。
それはここに居る全員にとって、全く予想外の事実だった。

岩山龍の右肩を、青年に言われたとおり狙撃しようとしていたシェリーは、実際に銃を構えてみて動揺した。

彼女は、峡谷道の端から遠距離射撃で、拡散弾を岩山龍の右肩に撃ちこむよう指示された。
青年は、この行為を「それほど難しくない」と言った。

だが、それは彼女にとって、想像を絶する難易度だった。
肝心の狙撃地点…岩山龍の肩は、ここからだと、殆ど「点」にしか見えない。

「(これが、それほど難しくない…!?)」

青年ハンターの事を、盲目的に信じ切っていた彼女の心中に、初めて浮かんだ疑問。
いや、これは、超人的な戦闘力を持つ彼だからこその認識なのだろう。
専門のガンナーである彼にとっては、確かに難しくないのかもしれない。

「(…いや、でも、やるんだ)」

彼は、自分が拡散弾を選んだ事を、褒めてくれた。
自分の身を案じて、超遠距離射撃をするように勧めてくれた。
だから、彼の期待に答えたい。

正確に、正確に肩をめがけて撃とうとするが、緊張で腕が震える。
そして、その正確に撃ちだしたはずの拡散弾は、イメージしていた着弾地点から大きくずれ、背中で爆発した。

「(う…!)」

次弾を装填し、リロードして、再度撃ちこむが、今度は地面に着弾した。

基本的にボウガンは、体に密着させ、「骨で固定する」事で、ブレる事のない正確なエイミングを可能とする。
シェリーの構えは、見た目それっぽく構えているだけで、ガンナーの「構え」の本質を理解している訳ではなかった。
当然、筋肉の微細な動きは、固定の甘い銃身に伝わり、結果、弾道は大きく歪む。

それからも、シェリーは何度も拡散弾を撃ちこむが、命中率は極めて悪く、肩には数発しか当たらない。
肩を砕けと言われたのに、表皮の装甲が少しばかり剥がれた程度だ。

「(どうして…、どうして!?)」

期待に応えられないという焦燥感が、彼女の全身を包む。
岩山龍の反対側では、彼が颯爽と貫通弾を連射している。
彼が見ているのに、何故自分は、こんな簡単な事ができないのだ…?

その思いが、彼女の脚を前に進める。
少しだけなら、近寄っても大丈夫なはず。 
近寄れば、的は自然大きくなるから、腕が悪くても当てられる。
拡散弾を当てられるなら、きっと彼も褒めてくれる。

彼女の脚が、一歩、また一歩前に出る。

…やがて、彼女の立ち位置は、岩山龍の攻撃が届く危険域へと踏み込もうとしていた。


そして、困惑していたのは、ディキシーとマイノも同様であった。
大剣で思い切り斬りかかっても全く通用しないし、ハンマーで全力をこめて叩いても、時に弾かれる。
仕方なく、顎下の部分を狙おうとするが、そのためには思い切って踏み込む必要がある。

すると、彼らが最も嫌がっている、例の攻撃が来るのだ。
岩山龍は、顔を大きく上げると、地面を舐めるように頭を振りまわしてくる。
この攻撃が非常にいやらしく、回避のタイミングが全く読めない。
機先を制して振ってきたり、攻撃の途中でも、突如頭を振ってきたりする。
もちろん、その大仰な攻撃に対し、反応そのものはできるのだが、攻撃範囲が広すぎて避けられないのだ。

シェリーが単身で、岩山龍と戦っていた時に抱いていた感想。
それを彼らも、全く同様に感じていた。

「(くそっ、何か、奴の攻撃の前兆が分かれば…!)」

マイノは内心、舌打ちをしながら、攻撃のチャンスを測っていたが、なかなか前に踏み出せない。
少なくともディキシーは、大剣のガードがあるため、なんとか踏み込んで顎下を攻撃しに行く事ができる。
しかし、ハンマーはガードができない。

もしもノーガードで岩山龍の頭に吹き飛ばされれば、良くても気絶、悪くて即死だ…。
それに、自分が吹き飛ばされた時は、多分ディキシーも一緒に飛ばされている。
そうなると、自分たちを回復させてくれる役目は、青年ハンター…。 
いや、多分シェリーがその役を負うことになるだろう。
彼女の前でそんな無様は晒せないし、まして青年に助けてもらうなど、考えたくもない。

そのため、彼はハンマーのリーチを活かし、ギリギリの所から当てて逃げて、を繰り返していたが、ハンマーが弾かれるたびに、反動で彼の両腕に痺れるような衝撃が走る。

「(畜生、こんな事で…!)」

あまりの効率の悪さに、思い切って踏み込み、力の乗った一撃を喰らわせようか、と思った瞬間。
振りかぶった彼のハンマーを、ジュイン!という甲高い音が、衝撃とともに彼のハンマーをを弾く。
彼が思わずたたらを踏んだ瞬間、岩山龍の頭が天高く伸び、彼の眼前を轟、という音とともに、疾風の如く奔り過ぎていく。
そして、岩山龍の頭は、顎下に居たディキシーを捉え、またも彼を小石のように軽々吹き飛ばした。

「ディキシーッ!!」

慌ててディキシーの方に駆け寄るマイノ。
峡谷道の端には、ブロディ達が置いていった回復薬がある。
そこから、秘薬を取り出すと、慌ててディキシーに近づく。

「う、ウ…。 ちく…」
「喋るな、ディキシー! ほら、薬だ!」

マイノはハンマーをそばに置くと、ディキシーの頭を片膝に乗せ、口を開けて薬を飲ませる。

「大丈夫か!? ディキシー」
「あ、あア、何とカ…。 ちくしょウ…」

意識は大丈夫のようだ。
ホッと息をつくマイノだったが、その時、自分のハンマーに傷があるのが、目に入る。
金属製のハンマーを、一直線にえぐり削ったような傷。

多分、青年ハンターの弾丸だ。
そう直感したマイノは、青年を見る。
青年は、さっきからずっと、弾丸を岩山龍めがけて連射している。
その攻撃は、素人目で見ても正確無比で、今の弾丸がたまたま外れたものとは到底思えない。
明らかに意図的に発射されたものだ。

まさか、あの状況下で、岩山龍の攻撃を察知したというのか?
だが、どうやって? そんな事が、可能なのか?

青年の超人的行為に畏怖心を抱きつつも、内心の驚愕を隠せないマイノ。
だが彼は、そんな事があった事など知らぬかのように、マイノの目の前で、貫通弾の連射を猛然と繰り返していた。


青年ハンターは、貫通弾を連射しつつも、悪ガキ達の方を一瞥する。
幸いにして、2人同時にダウンという最悪の状況は避けられたようだ。

そして、この状況を冷静に分析しながら、自分の見立てが甘かった事を、内心で自省していた。
中央ギルドの管轄下にない地方のハンターであっても、独特な武器の使いこなし方をしたり、見知らぬ戦術を取る者たちは居る。
その可能性を信じ、彼らに矛を預けたが、残念な事に、彼らは全くの素人だった。

まず、すぐさま、シェリーはボウガンを殆ど扱った事がないことに気づいた。
拡散弾が背中に着弾するとか、本当に初めてボウガンを使った事がない人間でもない限り、ありえない。
そして、弾丸が着弾しない事に自分でも焦れているのだろう、岩山龍との距離が徐々に縮まっている。

「(…何をやってる、シェリー!)」

また、あの悪ガキ2人も、全く武器の使い方がなっていなかった。
勇ましいのは格好ばかりで、大剣やハンマーにおける、「力の乗せ方」を欠片も理解していない。
故に、攻撃は弾かれてばかり。
岩山龍が攻撃に来るタイミングも読めないのだろう、無謀な特攻ばかりを繰り返すので、わざわざ貫通弾を使って武器を弾き、それを知らせた。

彼ら2人が、揃って岩山龍の目の前に居る間は、奴らに対し岩山龍の攻撃が向くので、一瞬だが狙撃のチャンスが生まれる。
それは確かにありがたい。 
だが、あんな風にダウンされると、当然奴らは回復のために、峡谷道の端に避難する。
すると、目の前の敵を排除した岩山龍は進軍を続け、奴らが復帰するまでは狙撃のチャンスが巡ってこないのだ。

しかも、仮に2人揃ってダウンされたら、自分が奴らの回復に向かう事になり、それは射撃の機会を大きく減ずる。
それだけは避けたいと思った青年は、彼らの動向に気を配り、悪ガキの無謀な攻撃を弾いたのだ。

パーティ戦では、皆の力が噛みあい、お互いの適切なフォローによって、人数以上の力を発揮する事はよくある。
だが、突出した一人の戦力が、他人の意図せぬ行動により、大きく削がれる事もまたよくあるのだ。

…だが、青年ハンターの目の前で、悪ガキたちは、攻撃を知らされてなお、2人で岩山龍に特攻していった。

「(馬鹿が…ッ!)」

心中で思わず毒づき、怒りに似た感情を抱く青年ハンターだったが、それでも彼は冷静だった。

「(2、3、4、5…。)」

岩山龍の攻撃の気配に気を配りながら、同時に他の3人の行動にも気を配る。
そして同時に貫通弾による攻撃。
この場はいわゆる「サポートガンナー」に徹するのが最適と判断し、戦局を作り上げていく。

もっとも、彼自身はそれほどサポートの経験がある訳ではない。
彼の友、孤高の戦闘銃「アルバレスト改」は、パーティ戦におけるガンナーの必須弾薬、麻痺弾と回復弾を装填できないからだ。
しかし、彼の急拵えのサポートガンは、それでも目覚ましい活躍を発揮した。

岩山龍の攻撃がシェリーに向く前に、牽制でシェリーの居る岸壁の一部を、貫通弾で砕く。
落石に気づいたシェリーは、岩山龍の攻撃を、必死に走って逃げのびた。
何度も岩山龍に向かっていく悪ガキ2人に対し、一撃を喰らうと判断した際は、武器を弾いて致命傷を避けさせた。
こうして致命的な破綻に陥る事無く、出来た僅かな隙を逃さずに、存分に貫通弾を撃ちこむ。
それによって怯んだ隙に、さらに貫通弾を撃ちこみ、さらなる怯みを生む。

序盤のパターンを再現し、多少ではあったが、岩山龍の進軍速度は落ち始める。
それを感じ取った青年ハンターの心中に、わずかながら安堵感が生まれる。

「(よし…。 このまま、このまま行くんだ)」

”眼の前の些細な不遇を嘆く事なかれ”
”成果は常に、実直に積み上げた努力と研鑽の先にこそあるものだから”
”ただ正確に、ただ丁寧に、最速の効率を持って、何物にも惑わされず、ただ正確な射撃を積み上げていけ”
”お前は、ギルドナイトのヘヴィガンナーなのだから”
”それがお前に課された使命なのだから”

心の中で聞こえた声は、彼が自分に言い聞かせたものだろうか。
再び、超人的な集中力を発揮し始めた彼の目の前に、第5砦が姿を見せた。
それは、今までの砦と異なり、大きめの岩石と漆喰で作られた、堅牢な砦だった。

「(…チャンスだ!)」

岩山龍は、多分今、瀕死のはず。
銃で手ごたえというのもおかしな話だが、でもそんな予感が、確かにある。

この頑強な第5砦を崩すには、岩山龍といえど、多少は時間がかかろう。
足止めされているその時に、貫通弾を連射して、止めを刺してやる…。

アイテムポーチから、高揚しつつも貫通弾を取り出そうとした時、だが全身を悪寒が貫いた。

彼の指が、ポーチの底を掻いた。

慌てて、ポーチの中身を目視で確認するが、貫通弾を収納していた部分は既に空だった。
サポートガンナーに徹した事で、計算以上の数の貫通弾を使ってしまったのだ。
ガンナーの禁忌にして、最大の失策「弾切れ」。
それを、仕方ない部分もあったとはいえど、今この状況で招いてしまうとは…!

眼の前では、岩山龍が動きを止め、目の前の砦を眺めている。
砦を障害物と認識し、どうやって壊そうかと考えているのだろう。
だが、この絶好のチャンスに、撃つべき弾丸はない。

「(…!!)」

焦燥感が、彼の全身を駆け巡る。
だが、彼が逡巡している間にも、岩山龍は、天空から全身を叩きつけるようにして、砦に体当たりした。
それは、まるで巨大な隕石の落下。
ズゴォ、と凄まじい音と地響きが周囲に轟き、地面をも揺るがす。

だが、彼は銃を手に持ったまま、その光景を呆然と見ていた。
岩山龍との激突で砦は大きく損傷し、周囲にバラバラと石片が飛び散る。

「(まさか…まさか、こんな事になるとは…!)」

焦燥感に加え、絶望と後悔までもが、彼の全身を駆け巡る。

再度の岩山龍の激突で、棒立ちになっている青年ハンターの周囲にも、細かい石が飛んでくる。
細かいといっても、こぶし大程もあるそれが、青年にガツンガツンと当たり、彼は思わず後ろによろける。

「ねぇ、貴方! 一体どうしたの!? 足が動かないの!? もう、岩山龍が砦を破壊してるのよ! 早く避難して!」

岩山龍が砦に接近した事で、ディキシー達は避難を始めていたが、その最中、シェリーが棒立ちの青年を見咎めた。
そして様子がやはりおかしいと察するや、青年の手を引いて、強引に避難させた。

だが、その言葉も、半ば青年ハンターの耳には届いていなかった。
第5砦に潜り込むかのように、荒々しく体当たりを繰り返す岩山龍を、呆然と見るだけの自分。

そう、もう自分には、何もできない。
弾薬を持たぬガンナーなど、もはやただの人にしか過ぎないのだから。

<続く>
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*Comment

NoTitle 

続編キタ――(゚∀゚)――!!
ガンナーにとって一番やってはいけない行為・・・「弾切れ」
あとはキックと銃での打撃w
でも、腕利きのガンナーが弾切れとは不覚。
あとはシェリーが緊急事態を察して弾を渡すことしか予想できないけど丼先生ならばきっと・・・きっと・・・凡人には予想も付かない展開を繰り広げてくれるだろうと勝手に思ってますww
  • posted by kamiomiya 
  • URL 
  • 2010.10/27 08:01分 
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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