女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(21)

セレト村に繋がる峡谷道にて、岩山龍と激闘を繰り広げる青年ハンター、「A GUNNER」。
だが、岩山龍は、悠久を生きる古龍の名にふさわしく、まさに不死身だった。
どれだけ弾丸を撃ちこもうとも、その進軍速度は全く衰えない。
それは、潤沢に用意していたはずの弾丸ですら、足りないかもしれないという危機感を感じさせていた。

刹那、彼の全身を、包み込むような膨大な殺意が叩いた。
銃身一体の状態から立ち戻った彼が、その殺意の方向を見定めると、岩山龍が首を曲げ、こっちを見ていた。
ごく薄く漂う硫黄の香りと、爛々と輝く双眼。

岩山龍が全身を大きくくねらせたのを見た瞬間、彼は回避行動へと移った。
双眼に宿る、あまりにも純粋な殺意と害意。
彼はその色に、「知性」の香りを感じたのだ。

その予感は的中した。 岩山龍の攻撃は、普通のものではなかった。
岩山龍は、青年を逃がさないよう、全身を使って押しつぶそうとしていた。
それはまるで、大地震に崩れ落ちる山肌のよう。

青年は既にヘヴィボウガンを納銃して駆け出していたが、それでも岩山龍の方が少し早かった。
全力で走るも、逃げられないと悟った青年は、崖際に沿って大きく跳躍をする。

だが、黒雲のような影が青年を飲み込み、そのまま凄まじい地響きと轟音を伴いながら、青年が居た一帯は、岩山龍の巨体によって押しつぶされた。

岩山龍が作り出した、周囲に轟く鳴動の余韻。
それはしばらくの間続いたが、やがて鎮まると、岩山龍は、その巨躯を起こし、何事もなかったかのように、再び進軍を開始した。


「…何だ、今のは…。」

だが、青年ハンターは、生きていた。
峡谷道の端にあった巨石の脇に張り付いて、岩山龍の攻撃を間一髪で避けたのだ。
岩山龍が通り過ぎたのを確認してから、四肢を怖々と伸ばす様は、岩の窪みに潜んで荒波に耐える磯貝を思わせた。

危機一髪の窮地から、無事逃れ得た安堵感に、自身で大きく息をつく。

断崖の真下に落ちていた巨石…。
多分、対老山龍戦のために用意されていたのが、何らかの手違いで地面に落ちていたもの。
さすがの岩山龍であろうと、地形をまるごと変化させるほどの膂力はない。
全力の体当たりならまだしも、さっきの攻撃は、単に寝ころんだだけ、とも言える。
低い可能性ではあったが、もしもあの巨石が砕かれなければ、僅かながらその脇に空間ができるはず。
これしか方法がなかったのも事実だが、それは岩山龍の巨大すぎる体を逆手に取った、起死回生の回避方法だった。

だが、彼にとっては、岩山龍の攻撃など、全くの想定外だった。
基本的に、老山龍に知性は存在しないと言って良い。 故に、攻撃を喰らうはずなどないのだ。
事実、彼の体験でも、ギルドガンナーのレポートでも、老山龍に知性の存在を伺わせるものはなかった。

しかし、老成した個体…。 
特に、G級クラスの個体は、既存の個体にない行動を取ってくる事がある。
それが、周囲の環境に適応したものなのか、それとも、老成する事で知恵を得たものかは分からないが、おそらくは、岩山龍のさっきの攻撃も、それに類する物と思われた。

ならば、こちらもそれに対応した行動を取らなくてはならない。
今まで全く攻撃の気配が無かったのに、突如こちらを攻撃してきたのは、ここが峡谷の歪路になっていたせいもあろう。
カーブを曲がった際、たまたま岩山龍の視界に自分が入ったためと思われた。

「(…視界に入りさえしなければ、攻撃される事はない、か)」

だが、それだけで済ませてはならない。
万が一、視界に入らないように行動したとしても、不測の事態というものは必ず来る。
全職種中、最も防御力に劣るへヴィガンナーにとっては、不意の攻撃を喰らう事が一番恐ろしい。
それに対応する策をきちんと取っておかなければ、待ちうける運命は死あるのみ、だ。

それを正しく理解していた彼は、戦闘を継続しながらも、岩山龍の攻撃行動の条件を探す事にした。
とりあえず、岩山龍を追いかけ、心臓に続く「穴」めがけて、銃身に残る貫通弾を撃ち尽くす。

…だが、その時初めて、彼は自身の異常に気がついた。

弾丸の軌道が、おかしい。

数発撃ちこんでみたが、どの弾も、彼の理想のラインを描かなかった。
弾丸は「穴」に飛び込むのだが、心臓に続く「路」を通らない。

この異常事態に驚愕した彼は、貫通弾を撃ち止め、「アルバレスト改」の気配を探る。
さっきの岩山龍の圧迫で、銃身がわずかに変形しているのかと思ったが、それは違った。
彼が見る限り、アルバレスト改には、何の異常もなかった。

ならば、何故…?

そう思いをめぐらした瞬間に、彼は原因に気がついた。
全身の昂ぶりにかき消されて気づかなかったが、彼は右足を痛めていた。
右足に意識を集中すると、足首周辺が異様に痛むのが分かる。

「(くっ、そういう事か…!)」

これで貫通弾が、「路」を通らない原因は分かった。
足を痛めているので、射撃のための適切な位置取りが、知らず遅れていたのだ。

一瞬、回復薬を飲む事を考えたが、それをすると「火事場力+2」が解除されてしまう。
右足首の激痛が、打撲あるいは肉離れ等の原因によるものなら良い。
それなら薬を飲んで養生すれば良くはなる。

だがもしも、足首の骨にヒビ、あるいは折れていた場合は、その限りではない。
秘薬・回復薬で全身の代謝を促進し、傷を直したとしても、骨はそう簡単にはくっつかないからだ。
回復薬を飲んだのに、足の痛みが引かず、「火事場力+2」が解除されてしまうという事態だけは絶対に避けなければならない。

「足の痛みに耐える」か「骨には異常がないと信じて回復薬を飲む」か。

脳裏に、その究極の二択が浮かぶが、次の瞬間には、彼は「足首の痛みに耐える」事に決めた。
痛みは尋常ではないが、足が動かない訳ではないのだ。
立ち位置をきちんと意識してさえいれば、射撃精度は元に戻るはず。

そう結論付けた彼は、とりあえず岩山龍の攻撃条件を探す事にした。
痛む足をこらえて岩山龍の脇を走り過ぎ、顔面の前に位置する。

そして彼は、「通常弾Lv3」を装填すると、照準を岩山龍の口腔に合わせ、立て続けに弾丸を撃ちこんだ。
「通常弾Lv3」とは、かつての円盤弾にヒントを得た弾丸であり、弾頭部が硬く加工されているため、跳弾するという効果がある。
外殻などの開いた部分に撃ちこんでも、跳ねて逸れるだけだが、こういう窪んだ部分に撃ちこむには最も適している。

「通常弾Lv3」が、岩山龍の口腔内で花火のように跳弾する。
弾を飛びこませた口腔の上下顎骨は、かなり丈夫な骨であるため、さほどダメージは与えられない。
だが、そこには舌周囲の神経群が密集しているため、痛みを与えるのには適している。
舌や咽頭を跳弾で切り刻まれ、岩山龍は痛みに耐えかねて、顔を大きく青年目がけて振りまわしてきた。

その攻撃は予想外に伸びてきたが、安全マージンを多めに取っている青年には、その攻撃は全く届かない。

「1、2、3、4、5…」

青年は、何かを測りながら射撃を続ける。
またも、口腔内に「通常弾Lv3」の跳弾の火花が激しく飛び散った。

「12、13、14…」

岩山龍は、その激痛を伴う攻撃に対し、頭を大きく振って反撃するが、「通常弾Lv3」は多少の遠距離でも威力が衰えない。
距離を多めに取っている青年には、その攻撃は全く当たらなかった。
青年は時に様子を見たり、岩山龍が攻撃してきても構わず射撃していたりしたが、ほどなくして銃を撃ち止めた。

「…そうか、そういう事か…。」

そして、まだ残弾が多く残る「通常弾Lv3」をポーチに戻し、「通常弾Lv2」を装填すると、一発だけ、岩山龍の眉間に撃ちこんだ。 すると、岩山龍は、その弾丸が眉間を当たると同時に、青年に対して頭を振り回してきた。

「…『反射』で2秒、『随意』で7秒か。 鈍いな」

「…ま、それもこの巨体ゆえ、か」

そうひとりごちると、彼は再び弱点狙撃を行うため、岩山龍の前腕周囲に位置取ろうとする。
右足の激痛に、思わず脂汗が出るが、我慢できないほどではない。
昂ぶる気の奔流に身を任せ、彼は「老山龍の心臓」目がけて、貫通弾の連射を再開した。


その頃、セレト、シェリー、ディキシーとマイノを乗せたブロディの馬車は、峡谷道を南下していた。
雨が小降りとなり、近道のために林道を走る馬車は、かなりスピードを出しているため、派手に揺れている。
第4砦近くの林道で、セレトは幌の中から、馬を操っているブロディに話かける。

「おい、ブロディ! まだ老山龍は見えんのか!?」
「まだだ! もうちょっと南の方だろ! アイツ、結構やるじゃねぇか!」
「そうか! それはいい!」

時刻は既に昼11時。
セレトの見立てでは、岩山龍は第4砦に到達しようかとしている頃のはずだったが、まだそこまで辿りついてないという事は、あの青年が岩山龍の進軍を抑えているのだ。
あの青年の戦闘ぶり、どれだけのものかと胸が逸ったが、意外にもすぐに、第3砦の途中で、岩山龍の姿が見えてきた。

「おい、見ろヨ、アレ! 老山龍ダ!」
「おおっ!」

林道の影から、見間違えようもない巨大な影が、峡谷道を埋め尽くすように進軍しているのが見える。
彼らは林道の中に馬車を止めると、揃って岩棚の上に出る。

眼下に見えたのは、岩山龍と、青年ハンター…「A GUNNER」が交戦している姿だった。

「おおおっ!」

青年は岩山龍の脇に追随し、前腕脇でまとまった射撃を行うと、納銃して走りだし、追いついた後にまた射撃、という流れで攻撃をしていた。

ここからでも見える、青年の持つ「アルバレスト改」のマズルフラッシュ。
その小さな銃撃の閃きで、まるで山岳が割れるように、岩山龍が大きく怯んだ。
岩棚の上から見ていても、巨大な岩山龍が体を起こすと、ぐぉん、という圧力と共に、すぐそこまで顔が近寄る。
この巨魁をいとも簡単に揺るがすとは、ギルド所属のガンナーとは、なんと凄まじいのか…!
その光景を見て、セレトの口から、思わずため息のような、小さなつぶやきが漏れる。

「(あれは…本当に、『アルバレスト改』なのか…!?)」

それは、セレトのハンターとしての常識を遥かに超えた、驚異的な攻撃力。
青年のボウガンは、確かに「アルバレスト改」だったはず。
自分も使った事があるから、分かる。
決して強いボウガンではないはずのあの銃に、あそこまでの戦闘能力が眠っていたとは、ついぞ知らなかった。

だが、それでも…。
それでいて、なお…。

「(それほどの腕がありながら…。 なぜ『アルバレスト改』なんじゃ…?)」

確かに、岩山龍は結構な頻度で怯んでいる。
それからも、彼の攻撃は確かに通用しているとは分かる。
だが…。

「おおお…!」

青年を見ている、ディキシー達全員の口から、小さな歓声が上がった。
岩山龍は、彼らが見ている間にも、何度も怯みを繰り返していた。 
彼らが闘っていた時と比べ、進軍速度は明らかに鈍く、まるで見えない網に絡め取られたかのよう。 
ブロディが、興奮に顔を紅潮させて問いかけてくる。

「おい、爺さん! あの調子なら、ラオの奴をブッ倒せるかもしれねぇんじゃねぇのか!? いい感じだぞ!?」

だが、ブロディの問いかけを、セレトはやんわり否定した。

「…多分、無理じゃ」

「…あ?」

その意外な返答に、全員がセレトの方を振り返る。

「多分、奴の攻撃だけでは、あの老山龍を倒す事はできん…と思う」
「何でお前にそんな事が分かんだよ! 何か、根拠あって言ってんのか!」

「…シェリーの父親と、一緒なんじゃ」

思わぬその言葉に、全員が絶句する。
眼下では、またも岩山龍が怯んで咆哮を上げた。

「ワシが見る限り、あの青年は、シェリーの父親と同じ程度にしか、ダメージを与えてないように思えるんじゃ」
「なら良いじゃねぇか! あの時は、シェリーの父親しか戦う奴居なかったがよ、今回はまだ3人いるぜ!」

そう言って、ブロディはディキシー達を顎で指す。
しかしセレトには、今までの戦いぶりから、シェリーはともかく、ディキシーとマイノは期待できる戦力ではない事が分かっていた。
それに、言ってなかった事が、もう一つ。

「それと…。 お主たちには今まで黙っておったが、アレは、『老山龍』ではない」
「な…!?」

ブロディが絶句する。

「あれは、『岩山龍(イェンシャンロン)』…。 老山龍の老成した個体で、さらに硬い外殻と不死身の生命力を持つ相手なんじゃ」
「なんでそんな事を黙ってやがった、爺いッ!」

ブロディが激昂し、セレトの胸倉を掴んで吊り上げるが、セレトはブロディの眼を見返し、冷静に返す。

「それを言った所で、何とする? この事実を事前に述べていたら、岩山龍が老山龍に変わるとでも言うのか?」

そう言って、ブロディの手を払った。

「…想定していたより、さらに強い敵が現れたと言って、村人の士気を下げれば良かったか?」
「く、くそがッ!!」

確かに、言葉で何と装飾しようと、目の前の現実は変わらない。
セレトもできうる限り、対老山龍戦の対策を練っていたのは間違いない。
だが、それが何故か、老山龍が岩山龍に変わっただけで…。

「じゃあ、今からでも、こいつらを戦わせるしかねーじゃねーか! おい、テメエら、何ボーッとしてやがる! さっさと行けッ!!」

ブロディの怒りの行先は3人に向き、皆に向かって蹴りを放とうとしたので、3人は慌てて岩棚から峡谷道へと降り始めた。

「手を抜きやがったら、ラオに踏まれるより先に、俺がブチ殺すからなァッ!」

ディキシー達の背に、そう声をかけると、ブロディはセレトに向かって問いかけた。

「おい、爺ィ! 俺らが他に出来る事は何かねーのかよ!」
「ここに回復薬を置いて、一度村に戻る。 奴らが岩山龍を倒せるにせよ何にせよ、まずは村人を全員避難させるんじゃ」
「…。 それしか、ねーな…。」

ブロディは戦闘に参加できない事が不満そうであったが、本来、岩山龍による被害を最小限に食い止めるという点においては、彼もセレトと全くの同意見だった。

「じゃあ、爺ィ、乗れ! 村に飛んで帰って、全員避難させるぞ!」
「ああ、頼むぞ、ブロディ!」

ブロディとセレトが、再度村に帰る支度を始めた時。
峡谷道に出ようとしていたディキシーとマイノは、シェリーを呼びとめた。

「おい、シェリー! シェリーってばヨ!」
「何、どうかしたの!? 早く、彼の所に行きましょう!」
「その前に、聞きたい事があるんだヨ」
「…何? 何なの?」

「…。 あのヨ、シェリー、アイツ、この老山龍が『岩山龍』って事は、分かってるんだよナ!?」
「…そうよ。 その通りよ」
「それで、奴は、『岩山龍を倒せる』って言いきったんだよナ」
「それが、どうしたの?」

「…。 じゃあ、俺たち、戦わなくても良いんじゃねぇカ…? あの人の、邪魔になるかもしれねぇしヨ…。」

だが、それを聞いて、シェリーは呆然とした表情になった。

「…最悪ね、アンタたち」

それを言われて、2人の顔が真っ赤になる。

「な、なんだト! 最悪っテ、どういう事だヨ、シェリー!」
「どうもこうもないわよ! それって、アンタたちが逃げたいだけでしょ!? それが最悪でなくて、何なのよ!」
「馬鹿、俺たちがノコノコ出ていったって、足手まといの邪魔になるだけって言ってるじゃねーカ!」

だが、シェリーは嫌悪感を顔に浮かべたまま言い捨てた。

「ホントに最悪ね、アンタたち…。 心底見下げ果てたわ」
「だから、逃げたい訳じゃないって、言ってるだろうガ!」
「剣士同士ならともかく、ガンナーと剣士のコンビは、殆ど立ち場所が被らないわ。 別にアンタたちが参戦しても、多分彼は全く困らない」
「!? …な、何で、お前にそんな事が分かるんだヨ!」
「実際に体験済みだもの」

うぐ、と2人は答えに詰まる。

「だから、遠慮なく参加して良いわよ」
「…。」

だが、そう言われても、2人の口からは、何も出てこない。

「…もしかすると、確かに、彼は単身でも、『岩山龍』を倒すかもしれない」
「でも、あたしは彼の力になりたいの。 あの人が黙って一人で戦ってるのを見てるだけなんて、できない」
「だから、戦うわ。 たとえその結果が、無残な死だったとしても」

「…お前、それで、いいのかよ…」
「無論よ」

ライトボウガン「グレネードボウガン」を片手に、そう決意を述べるシェリーの言葉は、無謀極まりないものだった。
だが、その言葉の端々には、例え愚かしいと言われようと、確かに恋する乙女の情熱がある。
そのシェリーの瞳を見て、ディキシーもマイノも、もう、シェリーを自分に振り向かせるのは無理だと観念した。

「ちくしょウ…。」
「…。」

「どうするの、アンタ達。 別に、ここにこのまま残ってても、良いのよ? どうせ役に立たないかもだし」

「…バカ言うなヨ」
「…あんまり、人を見くびるんじゃないぞ」

「…何、戦う気なの?」

「あア! そもそも、立ち位置が被らなイ、っつったのはオメーだろがヨ!」
「お前の言う、ギルドナイトがどれほどの物か、間近で見せてもらうぞ!」

ディキシーとマイノは、内心で畜生、と叫びながら、それぞれ大剣とハンマーを握り直した。

「もシ、ギルドナイトの奴がヘボかったりしたらヨ、俺らが先にラオを狩るからナ、覚えとケ!」
「ふん、彼に限ってそれはないわよ! アンタ達こそ、意気込みすぎて、ラオの頭に吹き飛ばされないようにしなさいよ!」


ここで場面は、ディキシー達から、岩山龍と交戦中の青年に移る。
だが、彼らの想像とは裏腹に、青年ハンター…「A GUNNER」は、苦戦を強いられていた。

彼が思っていたよりも、右足の怪我は重傷だった。
無理な疾走を繰り返しているうちに、右足首は、徐々に痛みを通り越し、それに連れて感覚が麻痺しはじめてきた。
今では、腫れぼったい熱感と圧感だけが残って、すでに他の感覚がない。
まるで右足の膝から下が、石になってしまったかのようで、全く言う事を聞いてくれない。

彼のように、細かい工夫を積み重ねて高いパフォーマンスを出す狩人は、良くも悪くも精密機械のようなもので、一つの異常が全体に悪影響を及ぼす。
今までは、弾丸を弱点に撃ちこむ事で、怯ませて岩山龍の進軍を止める事ができたので、そこにさらに撃ちこむという好循環の射撃が出来ていた。
ところが、今は肝心の射撃位置に走り込むまでに時間がかかる。
自然と、岩山龍を怯ませる間隔も、それに連れて伸びる。
焦った青年は、無理に射撃を続けたが、「穴」を通すも、射角の関係で弾が「路」を通らず、弱点の心臓に当たらない。
なので、撃ちこんでも老山龍は怯まず進軍を続け、結果的にワンチャンス当たりの狙撃量が激減し、結局、青年は痛めた足を酷使しなければならない、という悪循環に陥っていた。

しかも、懸念すべき点は、もう一つあった。
ガンナー最大の禁忌、「弾切れ」。

剣士と異なり、ガンナーは弾薬が無くなれば、当然戦えない。
この老山龍戦のために持ってきた貫通弾は、『岩山龍』だった時のためを想定して、調合素材含め、かなりの量を持ってきていた。
だが、それでいてなお、弾薬が底を尽きかけている。
正直、「火事場」の気の力で砲身を強化し、火薬を増した特製弾薬を撃ちこめば、ある程度余力を残して討伐できるだろう、という見立てはあったのだ。 だが、目の前の岩山龍は、全く瀕死になる様子がない。

多少狙撃の間隔が伸びても、弱点を正確に狙えれば、多分弾は足りる。
しかし、この要請クエストにおいては、岩山龍が村に侵攻してもアウトなのだ。
つまり、ある程度限られた時間の中で、可能な限り正確に弾丸を撃ちこまなければならない。
それが焦りとなり、青年にもう一発、もう一発…と無駄弾を撃たせる要因になっていた。

「(何か、老山龍の脚を止める方法があれば…!)」

もし、仮にそれがあれば、存分に弱点狙撃ができる。
怯ませて岩山龍の進軍を止める事ができ、そこに無駄なく狙撃ができる。
しかし、朦朧とする頭には、なんら良いアイデアが浮かばない。
大量出血によって「火事場」を発動させ、超人的な集中力を発揮し続けた反動だろう。
それに加え、おそらく、右足から出血している。
モノブロスの熱は猛く体を巡っているのに、体の芯だけが、冷えたように寒い。

「(…これも、呪いなのか)」

朦朧とした頭で、そんな事を考える。
かつて、「伝説のガンナー」と呼ばれた偉大な先人が、最強の飛竜に単身挑み、脚を怪我したまま闘い抜いた。
結果、彼はその最強の飛竜…モノブロス亜種こと「モノデビル」を倒すも、脚の怪我は酷く、手術を余儀なくされた。
その後、懸命なリハビリにもかかわらず、脚は元に戻らず、彼はそのまま引退した。

奇しくも、その飛竜の鎧を着た自分が、同じように足の怪我に苦しめられている。
これが、モノデビルの呪いと言わずして何と言うのか、と思ったその時。

「大丈夫!? 助けに来たよッ!」

聞きなれたあの声が、彼の耳に届いた。

<続く>
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*Comment

丼$魔さん、質問です! 

「円盤弾」てなんですか?素材は円盤石とカラ骨小とかですかね。円盤形の弾丸ならもしかしたら若干の切断属性があったり…しないですよね。DOS以前の弾薬というのは予想できるのですが。
  • posted by 634 
  • URL 
  • 2010.10/06 18:44分 
  • [Edit]

円盤弾つーのは 

円盤弾はですね、「無印」のみに存在した弾丸です。
この話は「MHG(P)」と「Dos」の中間時期が舞台になってますので、当時のガンナーには円盤弾の存在を知ってる者が居る、って事にしてます。

で、円盤弾は「円盤石」と「カラの実」で調合できまして、文中で推測できるように、跳弾による追加ダメージが狙えます。 
3連発で最大12発所持です。

威力値が20で電撃属性が3付いてましたが、素材に円盤石を使うので、使えない弾として認知されてたそうです。
あまりにも勿体なさ過ぎて、撃った事のないガンナーも居たとか。

ちなみに、切断属性があるという噂があったそうですが、今ではガセという事で結論されてます。
  • posted by 丼$魔 
  • URL 
  • 2010.10/06 19:07分 
  • [Edit]

 

まさかの即レス有難うございます!
無印の遺物でしたか。そして切断属性の噂があったとは!でもガセですか~。なんとなくディスクカッター的想像をして、切断属性持ちの弾なのかな~と思ってました。
参考になりました!
  • posted by 634 
  • URL 
  • 2010.10/06 19:30分 
  • [Edit]

NoTitle 

待ち望んでいた続編キタ - .∵・(゚∀゚)・∵. - ッ!!
火事場で底力を上げたものの弾薬が尽きかけているとは!
弾切れでLV1通常弾を諦めず撃ち続け武神闘宴をクリアした記憶が甦りますw
さてルーキーと本職ガンナーがどのように今後戦闘するのか楽しみですヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノ
  • posted by kamiomiya 
  • URL 
  • 2010.10/08 15:54分 
  • [Edit]

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プロフィール

丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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