女神の機械槍

モンスターハンター関係の二次創作(イラスト・小説)ブログでしたが、最近はオリジナル小説に傾倒中です。

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「GUNNER'S HEAVEN」:Prologe「Overture」(16)

「うおああああーっっ!!」

村人達の絶叫を聞きながら、マイノとタッシュもまた、その光景を見ていた。

峡谷道で立ち上がった岩山龍が、反動をつけて岸壁に体当たりした結果、山肌がぼろりと崩れた。
その中空に、取り残されるように村人たちが投げ出されたのだ。

何十メートル下の崖下に向かって。

「(な…なんだよ、あれ…)」

目にした光景が現実のものと信じられずに、思わず攻撃の手を止めた二人だったが、呆然としている暇などなかった。

岩山龍は、岸壁への体当たりを終えると、ゆっくり前足を地面に降ろす。
だが、たったそれだけの動作ですら、見上げる者達からは、崩落する山岳…あるいは土石流が自分達を飲み込み、押しつぶしていくかのように思えた。
岩山龍の作る影が再び地面を覆い、その圧力から逃れようとしたところで、その巨体ゆえの質量は、周囲に凄まじい振動を起こし、ハンター達の逃げ足を奪った。

「うおおっ!?」

体勢を崩すマイノとタッシュ。
振り返れば、岩山龍の顔が、そして口顎が、まるで二人を喰いちぎらんとするかのように肉薄している。
その巨大な口顎が、バクリと空いた。

喰われる、と一瞬身構えた二人だったが、さにあらん、岩山龍の頭が、ブンと音を立てて唸ったかと思うと、眼前から姿を消した。
気づけば、岩山龍の頭は体ごと天高く伸び上がり、次の瞬間、もの凄い風切音を立てつつ、ぬかるんだ地面の土砂を豪快に跳ね上げながら、地面を舐めるように頭を振り回してきた。

「グォォオオオオッ!」
「ぐあぁっ!」「ぎゃあっ!」

マイノとタッシュは、ガードもできずに岩山龍の頭に激突し、それぞれが水面を跳ねる小石のように、岸壁まで吹き飛ばされた。

「マイノ! タッシューッ!」

村人達の悲鳴が聞こえる。
だが、セレトは現状を認識するのだけで手一杯で、何が起こっているのかに、全く付いてこれていなかった。

岩山龍のあの動き。
こちらを目視し、攻撃対象に自らの意志を持って反撃したあの動きは、どう見ても、「邪魔物を排除しようとする動き」だった。

「(バカな…!? 岩山龍が、こちらを認識して、直接攻撃してくるなんて…!)」

16年前、シェリーの父親は、老山龍と戦った時、全くの無傷だったし、特に攻撃を受けている様子もなかった。

老山龍に知性はない、それは間違いない。
だが、目の前の岩山龍には、ごくわずかだが、知性の光があった。
それは赤ん坊程度の、こちらを認識し、自分の感情を拙く表すだけの、ほんの微かな意志。

だか、あの巨体でその意志を発露させた時、それは凄まじい攻撃に変ずる。
赤子の弱々しい駄々とは違う。
岩石や大木の攻撃を、易々とはじき返す生物の一撃を耐える方法など、あるはずがないのだ…!

「マイノ、タッシュ! 大丈夫かーっ!」

マイノ達に駆け寄る村人の声で、ようやっと正気に戻るセレト。
だが、怪我をしたのはマイノ達だけではない。
セレトは、動揺する村人達に大声で指示を出した。

「二人はどうじゃ!? おい、誰か、『秘薬』を持ってくるんじゃっ!」
「分かった! 俺が持ってくるぜっ!」
「大丈夫です! 村長、二人は息があります! 生きてます!」
「骨はどうじゃッ!? 折れとるか!?」
「…大丈夫です! 打撲とすり傷はひどいですが、どこも折れてなさそうです!」

マイノとタッシュは、二人揃って気絶していたが、幸運にも、直撃ではなく、かするように弾かれただけに済んだのと、鎧を着込んでいたせいで、致命傷とならずに済んだ。

村人が、気絶しているマイノ達の鼻をつまみ、口を開けさせて秘薬を飲ませている。
これなら、ほどなくして戦線復帰は可能だろう。

岩山龍の方を見ると、ディキシーとシェリーは、腹下で交戦を続けていた。
あの攻撃、腹下にも影響がなかったはずはなかろうが、ちょうど二人ともガードできる武器。
それで何とか攻撃を凌いだのだろう。 …よし。

「…誰か! 転落した者達の救出に向かえッ!」
「俺が行くぜ、ウィー!」
「よろしく頼むぞ、ハンセン! おい、それと、手が空いた者は、薬を持って岩棚の上に登れっ! 上にも怪我人がいるかもしれん!」

指示を受けた村人たちは、ハンセンの馬車に何人かが乗り込み、それとは別の者たちが、峡谷道の岸壁を登るべく、近くの林道への向かい始めた。

ときおり吹き付ける強い風と、体温を容赦なく奪っていく氷雨。
眼前に、圧倒的な迫力を伴って進軍してくる岩山龍の顔を見ると、セレトは、まるで漆黒の氷河が、このヒンメルン峡谷を遡って浸食しているかのような錯覚を覚えていた。


ハンセンは、馬車に数人を乗せたまま、岩山龍から極力はなれた場所…峡谷道の岸壁ギリギリを突っ走り、崩落地点へと急ぐ。

目の前に、崩落した土砂の上に横たわる人影が何人か見える。
投げ出された人形のような、無惨なその姿を見て、一瞬、死んでいるのかも…と最悪の事態を覚悟したが、奇跡的にも、全員が生きていた。

岩山龍の攻撃を受けて転落した者は6人。
だが、なんと幸運な事に、崩落した山肌の段差に全員が一度引っかかり、転落による衝撃は分散されていた。

下が雨でぬかるむ泥だったのも、衝撃を大幅に減少させた要因だったのだろう、1人は軽傷ですらあった。
だが、残りの5人は生きてこそいたものの、両足や腕の開放骨折という重傷を負い、意識を失っていた。
出血も激しい。すぐさま処置しないと、命に関わる。

ハンセンは、村人を指揮して、全員の頭を動かさないように丁寧に馬車に運び込ませると、止血のために四肢を紐できつく縛りあげ、崖上に居る面子との人数確認を行うように告げた。

「あんたはどうするんだよ、ハンセン!」
「俺は馬車でコイツラを、ワトソン爺さんの所に見せてくる!」
「秘薬や、回復薬Gじゃダメなのか!?」
「止血のために少し飲ませるのはいいが、飛び出てる骨を繋いでからでないと、肉が締まって逆効果なんだよ!」
「…分かった! 気をつけてな!」

だがそこで、崖上から響く何人かの声が小さく聞こえた。

「うおーいぃぃ! ハンセェーン、上にもぉ、怪我人が居るーッ! 回復薬を、もっと、くれない、かぁーっ!?」

「分かったぁーっ!!」

ハンセンは両手を振り回して、見えているかも分からない合図をする。
そして、その場に居た村人達に、馬車の幌から大量の秘薬や回復薬を取り出して渡した。

「薬は残していく! 骨さえ折れてなきゃ、大抵の傷にはてきめんなはずだ! 上の連中を早く見に行ってくれ、ウィー!」
「分かった! おい、いくぞ、みんな!」
「おお!」

さっき、何人かは村長の命令で、薬を持って上に登ったはずだ。 だが、それでも足りなかったという事は、多分落石罠の部隊は、ほぼ全員が何らかの外傷を負ったのだろう。 つまり、全滅という事か。

「くっ…。」

予想以上…。
16年前は、村が壊滅こそしたものの、ここまでの人的被害はなかった。

老山龍は、攻撃してこないんじゃなかったのかよ。
あんな連中と、俺たちがまともに戦える訳がねぇだろうが。
あの訓練を受けていたはずのクソガキどもは、一体何やってやがんだ。

岩山龍の、あまりにも巨大すぎる脇を眺め通り抜けながら、そんな事を考える。
岩山龍への憤りは、ハンセンの中で、ゆっくりと、村長とハンター達への憤りに変化していった。


ハンセンに薬を貰った村人…ロビンソンが、ようやっと林道から崖の最上部にたどり着いた時、そこには絶望的な光景が広がっていた。
落石を岩山龍に落としていた村人たちは、殆どが森の中に崩れるように横たわっていたのだ。

「コラッ、俺たちゃ食料じゃねぇぞ!」

そして、その端で、何かと棒きれで格闘している村人が3人。 

それは、見知らぬ、あの十字架の形をした鳥が、1匹。

「おい、フランク! どうしたんだ、この状態は!?」
「…ロビンソン!? 良いところに来てくれたッ!」
「クローヴィスはどうした!? ここを指揮してたんじゃなかったのか!?」
「そこで、頭を木にしこたま打ちつけて、気絶してるッ! 全員があの体当たりの衝撃で、木立の中に吹き飛ばされだんだ!」
「怪我は!?」
「大丈夫! 俺たちが薬を飲ませた! だが、途中でコイツが襲いかかってきたんだよ! 俺たちを食おうとしてやがる! 早く、気絶している連中を、崖下に連れていってくれ!」
「分かった! おい、みんな、全員をおぶって下るぞっ!」
「ああ、分かった!」「OK!」
「急いでくれ、ロブ! コイツ、毒を吐きやがる!」
「待ってろよ、すぐに戻って来るからな!」

そう言って、気絶している村人をおぶったロビンソンの視界の片隅に、もう1匹の怪鳥が、遠くからこちらをめがけて滑空してくるのが見えた。

いや…1匹じゃない。

雨と遠目で見えなかったが、すぐさまそれは黒点から鳥の姿へと変貌した。 

怪鳥は3匹、飛んできていた。


その頃、秘薬を飲まされたマイノとタッシュは、村人に頬を張られて、ようやく目を覚ました。

「あ、あれ…?」
「気づいたか、マイノ、タッシュ! 行け、岩山龍はまだ健在だぞっ!」
「…。」
「どうした、行かないか! 早く戦うんだっ!」
「あ、ああ…」

マイノとタッシュは、今、この状況をやっと思い出したかのように、虚ろな瞳のまま、再び戦場に赴く。

「行けぇッ! 奴をブチのめせッ! 絶対に、奴を村まで辿りつかせんなよッ!」

マイノは、離れた所から無責任に檄を飛ばすブロディを睨みつけると、再び岩山龍に立ち向かう。
だが、そこでタッシュが、思わぬ発言をした。

「…おい、ディキシー、シェリー、顎下と代われ! こっちは、時々攻撃が来るっ! ガードできる武器の連中が、ここに居ろッ!」

「はア!?」

何という身勝手か。
言ってる事はまぁ合理的かもしれないが、その空気も読まない、傲慢も度を超した発言に、周囲の全員が絶句する。
戦闘中であるにもかかわらず、ディキシーもシェリーも、呆れた視線を寄越したほどだ。

「早く代われっ! このままじゃ、俺たちゃまともに攻撃ができねぇ! ガードできない俺達が、攻撃の来ない腹下に居座った方が、効率が良いんだよ!」

確かにそれはそうだ。
最善手のみを必要とするこの状況下、効率だけを考えたら、そちらの方がまだマシだろう。
自分の不出来を他人に押しつけるような態度に釈然としないディキシーとシェリーだったが、「分かったヨ! じゃあ、お前、腹下まかすゾ!」と言って、彼ら二人と場所を交代した。

「(何だヨ、あいツ…。)」

心中でブツクサ言うディキシーだったが、とりあえず目の前の敵に集中しなければならない。
それに、圧迫感のある真っ暗な腹下から抜けられて、気分的にはそれなりに楽になった。
シェリーを気遣う事もなく、思い切り大剣を振り回せる。

「行くゾ、シェリー! しっかり付いてこいヨ!」
「分かってるわよ!」

二人は顔の左右に別れ、それぞれが丁度顎下を攻撃する。
ディキシーがなぎ払いと切り上げで顎下を狙い、シェリーはやはりリーチの長さを生かして、ギリギリから顎下を突く。

「喰らいやがレ、このデカブツがッ!」
「このっ! この!」

即席コンビにしては良い感じで息が合っている。
しかし、息が合えば合うほど、不安も大きくなる。
そう、攻撃が成功すればするほど、岩山龍の敵意も比例して大きくなるはずだから。

「気を付けるんじゃぞ! この老山龍、どうやら我らを敵だと認識しておる! 攻撃を食らえば、大怪我では済まんぞ!」
「老山龍は、攻撃してこないんじゃなかったのかヨ!」

だが、その発言を裏切るように、再度岩山龍が吼える。
そして、眼の前の邪魔者たちを振りはらうように、またも土砂をまき散らしながら頭をぶつけてきた。

「うぉぉおおおっ!」
「きゃああっ!」

さっきのタッシュ達同様に、風に舞う枯れ葉の如く吹き飛ばされるディキシーとシェリー。

「ディキシー! シェリー! …バカな、ガードしなかったのかッ!? おい、誰か!」

すかさず、村人達が秘薬を持って、吹っ飛んだディキシーとシェリーの介抱に向かう。
だが、ディキシーとシェリーは気絶しておらず、意識があった。怪我もそれほど酷くない。

「お前ら、何やってたんだ!? ガードしなかったのか!?」
「してたけド、全然意味なかったヨ! あんなとんでもない攻撃、受けきれるかッ! …いデッ!」
「おい、無理すんな! 早く、秘薬を飲めっ!」

ガードが全く意味ない、という事はないだろう。
あの岩山龍の攻撃ですら、致命傷はもちろん、気絶する事なく凌ぐ事はできたのだから。

だが、ディキシーは秘薬を飲むと、腹下に居るマイノとタッシュに呼びかけた。

「おい、タッシュ、やっぱ顎下と代われッ! ガードは殆ど意味なかったッ! 動きの鈍い俺たちじゃ、あの攻撃を避けられねぇ! 脚のあるお前らが、攻撃を見切って避けた方が良いッ!」

しかし、タッシュの返事は想像外のものだった。

「断るっ! 俺たちがもしも攻撃を喰らえば、即死しかねねぇ! お前等、盾で致命傷は避けられるだろうが! 薬類はあるんだから、それでどうにかしてろ、グズがッ!」

「何だと、テメェ…!」

「あんた達、何こんな状況で仲間割れしてんのよ! 敵は岩山龍でしょう!?」

「あ、あア…。」

シェリーにたしなめられ、正気を取り戻すディキシー。
確かに、ここでお互いが喧嘩をしてもポジションが代えられる訳ではない。

やむなく再び顎下に陣取るディキシーとシェリーだったが、薬すら無限にある訳ではない。

ディキシーは、無表情に進軍する岩山龍を見ながら、泣きそうな表情を浮かべる。
…薬の在庫の有無はどうであれ、岩山龍を撃退するまで、何度もあの攻撃を喰って、気絶して、再度戦って…を繰り返さなければならないのか。
もし、防御に失敗すれば、俺たちが即死しかねないのに…。

「畜生…。 何なんだよ、こレ…!」

恨み言を吐きながら、破れかぶれで突進するディキシー。
だが、力まかせに繰り出したその大剣は、想像通り、岩山龍の外殻にあっけなく弾かれた。


その時、腹下でハンマーを振り回していたマイノが、隣で乱舞をしていたタッシュに聞く。

「おい、良いのか!? ディキシー達と交代しなくて!? ガードは殆ど意味なかったみたいじゃないか! 俺たちがあの攻撃を見切れば、それで済む話ではないのか!?」

「じゃあ、お前一人で顎下に行ってろよ! 俺はそんな、非能率な話は願い下げだッ!」

その発言を聞いて、長くタッシュの友人をやってきたマイノもさすがに呆れた。
確かに、あの一撃はもう二度と喰らいたくないほどの衝撃だった。 
マイノだって、あれを喰らえと言われれば確かに願い下げだ。 
だが、それを友人に押しつけたまま、というのは筋が違うだろう。

「なら、俺とディキシーが交代するぞ! それなら布陣も崩れないし、アイツにとっても望ましいだろうからな!」
「勝手にやってろ、ボケ!」
「ならば、そうさせてもらうぞ!」

マイノはハンマーを担ぎ直すと、隙を見て腹下から脱出する。
そして、顎下で二人、攻撃を繰り返しているディキシーに声を掛けた。

「おい、ディキシー! 俺と交代しろ! 老山龍のあの攻撃は、距離を取って見切れば済む事だ!」
「何やってんダ、マイノッ! 今、出てくるんじゃネェ!」

何、と思ったその瞬間、真っ暗だった足下が急に明るくなる。
振り返れば、岩山龍が、またも首をもたげ、頭を振りかぶる仕草をしていた。
そう、マイノがたった今言った、あのなぎ払う攻撃を繰り出そうとしていた所だった。

「どけろっ、マイノ!」
「おおおおおっ!」

三度土砂を巻き上げながら、地面を疾駆してくる岩山龍の頭。
シェリーはステップの後にガードし、ディキシーも直撃しない位置で大剣を構えガードする。
マイノは腹下に戻るように、大きく身を捻って避けようとしたが…。

無惨にも、三人はやはり吹き飛ばされ、泥水をまき散らしながら転がった。

「ディキシー! シェリーッ!」

倒れた三人に、それぞれ駆け寄る村人たち。
ディキシーとマイノは、全く身動きしていないが、即座に村人達が薬を飲ませた所を見ると、気絶だけで済んだらしい。 
セレトも、最も近くで倒れたシェリーに駆け寄ったが、彼女は意識を保っていた。

「大丈夫か、シェリー!」
「…大丈夫です、さっきので、防御のコツは掴んでましたから…」

そう言って、シェリーは立ち上がろうとするが、脚が言う事を聞かない。

「無理するでない! ほれ、回復薬Gを飲むんじゃ!」
「…ありがとうございます」


その時、腹下で一人、乱舞を繰り返していたタッシュの双剣が、鈍い音とともに火花を散らして、岩山龍の腹に弾かれた。

「ち、さすがに切れ味が落ちてきたか…」

外皮と異なり、腹下は比較的柔らかい部位なのだが、それでもある程度の鋭さを持った武器でないと、貫く事はできない。
タッシュは双剣を納め、腹下からなんなく脱出すると、ポーチから砥石を取り出す。
目の前では、岩山龍に吹き飛ばされたディキシーとマイノ、シェリーが揃って村人から介抱を受けていた。

「何やってんだかね、クソどもが…」

タッシュはそう言うと、岩山龍から距離を取り、しゃがみ込んで砥石を使い、鈍った武器の切れ味を回復させようとした。

その行動自体に全く問題はなかった。
ただ、あえて言えば、不運だったとしか言いようがなかった。

突如、タッシュの脳天に、バチャリと紫色の液体が振りかかる。 何だこれは、と思った彼が、その液体の、気化した煙を吸い込んだ時、全身を凄まじい吐き気と痛みが襲った。

後ろを振り向けば、そこには例の、十字架を象った鳥が居た。

「(何だ、コイツ…!?)」

その怪鳥…「ガブラス」は、古龍に付き従って行動し、被災した後の弱った獲物を狙い、毒を吐き掛けて仕止める食性を持つ。 いわば「腐肉の狩猟者」。

弱った獲物を狙う狡猾さと執拗さは相当なもので、ハンターが採取や採掘のために座り込んでいるのを、弱っているものと勘違いして攻撃を仕掛けてくる事さえある。

そのガブラスは、砥石を使うために、一人しゃがみこんだタッシュを、弱っていると勘違いして狙ったのだろう。

「何だ! てめぇ、何しやがる!」

追い払おうとして武器を振り回すものの、空を飛ぶガブラスに双剣は届かない。
一方的に翻弄されているうち、ガブラスの尻尾がタッシュの顔面を叩く。

「ううっ!?」

視界を奪われた次の瞬間、タッシュはガブラスの滑空攻撃を喰らって転がった。
毒で体力を奪われていたのか、何でもない攻撃が予想以上に効く。

「畜生、て」

だが、その後の言葉は続かなかった。
ガブラスの攻撃を喰らっている間に、岩山龍は湾曲する峡谷道に沿って、わずかに行軍路を変えていた。

それは、この世の物とは思えぬ、そして人生に於いて、本来なら味わう事はないであろうはずの苦痛。

最初の感覚は、わずかな熱さと、ささいな痛みだった。

次の瞬間には、体の中から聞こえる、バキバキという嫌な音ともに、足先から鋭さを伴う熱感が一斉に襲ってきた。
それら全てが激痛であった事を理解する前に、タッシュの意識は強制的に、暗闇の中に引きずり込まれた。


…タッシュは、その下半身を岩山龍に踏まれていた。

<続く>
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丼$魔

Author:丼$魔
モンスターハンターをこよなく愛する熱・血・猿。

しかしどういう経緯を辿ったか、最近はオリジナル小説を更新中。

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